なぜ臓器移植法の改正が必要なのか 平成17年10月 衆議院議員 河野太郎 現行の臓器移植法の問題-1 • 現行法では、臓器を提供するためには、本人の生前の「脳死下での 臓器移植を認める」という意思表示が必要とされる。 小児の場合は、「脳死」「臓器移植」という概念を、本人が理解してい るかどうか確認できないため、現行法では、遺言能力がある15歳以 上に限って、臓器提供の意思表示能力が有効としている。 そのために15歳未満は臓器提供ができない。 • 十五歳以上のドナーから提供された心臓をはじめとする臓器は、大 きさが乳幼児にはあわない。 • 先天性の病気の場合、0歳児、一歳児で移植を受けなければ助から ないケースが多いが、国内ではサイズのあった臓器が提供されない ため、移植を国内で行うことができない。 • そのために、日本国内の乳幼児は、募金などに頼って海外で移植を 受けるしか選択肢がない。 現行の臓器移植法の問題-2 • 我が国では、移植を必要としている待機患者数に対して、 脳死からの臓器提供の数が圧倒的に足りない。 (件/人) 120 112 101 100 88 84 80 60 脳死移植件数 (04年一年間) 40 20 0 待機患者数 (05年1月4日) 5 心臓 4 肺 3 肝臓 5 すい臓 現行の臓器移植法の問題-2(続き) • 我が国では、移植を必要としている待機患者数に対して、 脳死からの臓器提供の数が圧倒的に足りない。 そのために: • ドナーに後遺症が残るにもかかわらず、生体臓器移植が 増えている(とくにC型肝炎患者に対する肝移植) • 海外で高い費用を払って移植を受ける患者が増えている • 諸外国でも移植に使える臓器の数は限られているにもか かわらず、数多くの日本人が移植を受けに来ることへの 批判が出始めている • 中国の死刑囚から提供された臓器で移植する日本人が 増えている • 東南アジア・中国などで、日本人向けの臓器密売の噂が 後を絶たない 海外の臓器移植法との比較 諸外国の移植法 現行の臓器移植法 遺族 承諾 拒否 不明 本人 遺族 承諾 拒否 不明 本人 承諾 ○ × ○ 承諾 ○ × ○ 拒否 × × × 拒否 × × × 不明 × × × 不明 ○ × × 本人の生前の意思表示がないままに脳死になった場合は、諸外 国では遺族の承諾で臓器提供を行うことができるのに対し、日本 の現行法はこのケースでは臓器提供をすることができない。 改正のポイント • 現行法 脳死下での臓器提供を承諾する意思表示を 生前にしている者が脳死になった時は、 遺族の承諾により臓器の提供を行うことがで きる • 改正案 脳死下での臓器提供を拒否する意思表示を 生前にしていない者が脳死になった時は、 遺族の承諾により臓器の提供を行うことがで きる 改正案と小児移植問題について • 改正案でも十五歳未満の者については、 本人の意思表示は不明という扱いになる。 • しかし、改正案では、本人の意思が不明な 場合は遺族が臓器提供に関する判断する ことができるため、有効な意思表示を行え ないとされている十五歳歳未満の者に関し ても、遺族の判断で臓器提供できる。 改正案と小児移植問題について(続き) • 改正案でも、児童虐待のおそれがある場 合には、臓器提供をすることができない 脳死について-現行法 • 患者が、脳死的な状態に陥っても、法的脳 死判定を受け、脳死が宣告されなければ、 死亡したとみなされない。 • 現行法では、臓器提供時に限り、法的脳 死判定が行われる。 脳死について-改正案の場合 • 臓器移植法の改正案であるため、脳死下 での臓器提供を拒否する意思表示をして いる者については、この改正案はそもそも 適用されないため、法的脳死判定が行わ れることはない。つまり脳死にならない。 脳死について-改正案の場合(続き) • 脳死を人の死と考えない者は、生前にその旨の 意思表示をすることによって、法的脳死判定を拒 否することができる。 法的脳死判定が行われなければ脳死にはなら ない。 • 脳死的な状態に陥った者の家族が、脳死を人の 死と考えなければ、法的脳死判定を拒否するこ とができる。 この場合も法的脳死判定が行われないので、脳 死にはならない。 脳死について-改正案の場合(続き) • 脳死的な状態にある者は、法的脳死判定が行わ れて、脳死が宣告されない限り、死亡を宣告され ることはない • 改正案では、 脳死は人の死である ということを、本人が生前に拒否している場合、 あるいは、家族が拒否する場合には、法的脳死 判定は行われず、脳死にはならないため、死亡 宣告はされない この法改正での適用範囲の広がり 5.5 0% 61.7 20% 40% ドナーカードを持っている者 32.8 60% 意思が不明な者 80% 100% 提供したくない者 現行法ではドナーカードを持っている5.5%が脳死になった時に臓器提供をす ることができる。この法改正により、32.8%の脳死になっても提供をしたくない 者をのぞく者が脳死になった場合に、遺族の判断で臓器の提供が行われる可 能性が出てくる。*提供したくない者の割合は、内閣府の世論調査による 臓器移植法の改正案 改正案 現行法 遺族 承諾 拒否 不明 本人 遺族 承諾 拒否 不明 本人 承諾 ○ × ○ 承諾 ○ × ○ 拒否 × × × 拒否 × × × 不明 × × × 不明 ○ × × 移植に関する世論調査 (平成十六年八月内閣府世論調査) 脳死下での臓器提供に関する本人の生前の意思表示がない場合に、 遺族承認で臓器提供をしてもよいとする意見合計 55.2% 本人の意思が確認できないので臓器提供するべきでない 35.4% わからない 9.0% 国民の過半数は、本人の意思が不明な場合に遺族の判断で臓器提供をすることに 賛成している。 本人の意思が確認できないので臓器提供すべきでないという割合(35.4%)は、 脳死下でも臓器提供をしたくないという者の割合(32.8%)とほぼ同じ
© Copyright 2024 ExpyDoc