ミクロ経済学のフロンテ ィア Copyright © 2004 South-Western 22 情報の非対称性 • ある事柄に関連する知識をどれだけ入手して いるかに差があるとき、それを情報の非対称 性( information asymmetry )という。 Copyright © 2004 South-Western 隠された行動:プリンシパル、エージェント、モラ ルハザード • モラルハザード(Moral Hazard) • モラルハザード(Moral hazard)が意味しているの は、完全に監視されていない個人が正直でなかっ たり、他の望ましくない行動に走る傾向のこと。 • 雇用主は、モラルハザードの問題に以下のように 対処することができる。 • 監視の改善(Better monitoring) • 高賃金(High wages) • 後払い(Delayed payment) Copyright © 2004 South-Western 隠された行動:プリンシパル、エージェント、モラ ルハザード • モラルハザード • エージェント(agent)とは、プリンシパル(依頼人)と 呼ばれる他人の為に行動する人物。 • プリンシパル(principal) とは、エージェント(代理 人)と呼ばれる人物がその人のために行動する対 象の人物。 Copyright © 2004 South-Western 隠された性質:逆選択とレモンの問題 • 逆選択(Adverse Selection) • 逆選択(Adverse selection) とは、観察できない属 性の組み合わせにより、情報の無い集団(人)の 観点からは望ましくない状態になる傾向。 Copyright © 2004 South-Western 隠された性質:逆選択とレモンの問題 • 逆選択の例: • 中古車市場:中古車の買い手になるかもしれない人々 は、車について買い手の知らない何かの欠陥を売り手 が知っているのだろうと推測して、中古車を買おうとは ないことがある。このことは、「レモンの問題」と呼ばれ ることがある。 • 保険:健康上の問題を隠してもっている人々は、そうで ない人々よりも健康保険に入りやすい。 • 労働市場:企業が賃金の切り下げを行うと、高い生産 性の労働者ほど退職する傾向にある。 Copyright © 2004 South-Western 私的情報を伝達するシグナリング • 市場はどのように情報の非対称性に対応して いるか? • シグナリング(Signaling) • シグナリングとは、情報をもっている集団(人)が、情報 の無い集団(人)に対して私的情報を明らかにするため にとる行動。 • スクリーニング(Screening) • スクリーニングがおきるのは、情報のない集団(人)が、 情報のある集団に対して情報を明らかにさせようとする ときである。 Copyright © 2004 South-Western 情報の非対称性と市場 • 情報の非対称性の研究によって、我々は市場 について用心をしければならなくなる新しい理 由が得られている。 Copyright © 2004 South-Western 情報の非対称性と公共政策 • ある人々が他の人々よりもよく知っていること があるときには、市場は資源を最適な利用に 供することに失敗するかもしれない。 Copyright © 2004 South-Western 情報の非対称性と公共政策 • 情報の非対称性がある場合には、政府の介 入が必要になるかもしれないが、下記のように 、三つの事実がこの問題を複雑にしている。 • 民間市場は、シグナリングとスクリーニングを用い てみずから情報の非対称性に対応できる場合が ある。 • 政府が民間市場の参加者よりも多くの情報をもつ ことはめったにない。 • 政府それ自体が、不完全な制度である。 Copyright © 2004 South-Western 政治経済学 • 政治経済学(political economy)は公共選択 (public choice )と呼ばれることもあるが、経済 学の手法を用いて、政府がどのように機能し ているか研究する分野である。 Copyright © 2004 South-Western 政治経済学 • どのように政府が公共政策を決定するかに関 連した問題を研究: • コンドルセの投票パラドックス(The Condorcet Paradox) • アローの不可能性定理(Arrow’s Impossibility Theorem) • 中位投票者定理(The Median-Voter Theorem) • 利己的な政治家(Self-interested Politicians) Copyright © 2004 South-Western コンドルセの投票バラドックス 有権者のタイプ Type 1 Type 2 Type 3 全有権者に占め る割合 最も良い 35 45 20 A B C 2番目に良い B C A 3番目に良い C A B Copyright © 2004 South-Western コンドルセの投票バラドックス • コンドルセの投票パラドックスが起こるのは、 多数決原則が社会にとって推移的な選好を作 り出せないときである。 • 推移的な選好(選好の推移性)とは、AがBよ り好まれ、BがCより好まれるときには、AはC より好まれるということを意味する。 Copyright © 2004 South-Western アローの不可能性定理 • アローの不可能性定理とは、ある条件のもと で、個人の選好を集約して、正当な一つの社 会的な選好を導き出す仕組みは存在しないこ とを示す数学的な結果のことである。 Copyright © 2004 South-Western アローの不可能性定理 • 以下の全てを満たす投票システムは存在しな い: • 一致性(Unanimity) • 推移性(Transitivity) • 無関係な選択肢からの独立性(Independence of irrelevant alternatives) • 独裁者の不在(No dictators) Copyright © 2004 South-Western 中位投票者定理(Median Voter Theorem) • 中位投票者定理とは、有権者全員で直線上 の一点を選び、各有権者はその点が自分の 最も望ましい点と最も近くなることを願うとき、 過半数原則の多数決制では、中位投票者が 最も好む点を全員で選ぶ点として取り上げる ことになることを示す数学的結果。 Copyright © 2004 South-Western 政治家もまた人間 • 政治家にも利己心が行動の動機になっている 者がいる。 • 政治家には、自分の有権者の支持を確保する 為に国益を犠牲にする者もいる。 Copyright © 2004 South-Western 行動経済学(BEHAVIORAL ECONOMICS) • 最近、行動経済学という分野が現れ、経済学 者が心理学の基本的な洞察を使って、経済問 題の分析に利用するようになってきている。 Copyright © 2004 South-Western 行動経済学 • 人々はいつでも合理的というわけではない。 • 人々は、自信過剰である。 • 人々は、少数の印象深い観察事実に重きを置き すぎる傾向がある。 • 人々は、自分の考えを変えたがらない。 • 人々は、最後通牒ゲーム( ultimatum game ) で示されるように、公平さを尊重する。 • 人々は、長期にわたっては終始一貫していな い。 Copyright © 2004 South-Western 要約 • 多くの経済取引において、情報は非対称的で ある。隠された行動が起きる場合には、エージ ェント(代理人)がモラルハザードの問題にさら されていることを、プリンシパル(依頼人)は心 配したほうがよい。品質が隠されている場合に は、売り手の間の逆選択の問題を、買い手は 心配したほうがよい。民間の市場は、時には、 シグナリング(情報発信)とスクリーニング(振 り分け)によって情報の非対称性に対処する 場合がある。 Copyright © 2004 South-Western 要約 • 政府の政策は市場の成果を改善することもあ るが、政府はそれ自体、不完全な制度である 。 • コンドルセのパラドックスは、多数決制が推移的な 社会の選好を必ずしも生み出さないことを示して いる。 • アローの不可能性定理は、いかなる投票の仕組 みも完全でないことを示している。 • 多くの状況では、民主的な制度は、他の有権者の 選好に関わらず、中位投票者が望む結果を生み 出す。 Copyright © 2004 South-Western 要約 • 政府の政策を決定する個人は、国益よりも利 己心によって動機付けられるかもしれない。 • 心理学と経済学の研究は、人間の意思決定 が伝統的な経済理論において仮定されるより もはるかに複雑であることを明らかにしている 。 • 人々は必ずしも常に合理的なわけではなく、 経済的成果の公平性に留意するし、また時間 を通じて非整合的なこともある。 Copyright © 2004 South-Western
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