看護記録の質の向上 - とりネット/鳥取県

看護記録の質の向上
倫理的な看護記録を
目指して!
平成20年3月
病院看護職員施設間交流事業
看護管理者能力向上研修会
6グループ
提案趣旨
提案内容
倫理に関する看護記録監査表を
県内の病院で活用する
倫理面での看護記録の質がレベルアップする
看護記録表現事例集
倫理に関する看護記録監査表
監査項目
好ましくない表現例
評 価
具体的記載例
好ましくない表現例
Ⅰ.人権・人格を侵害する表現
修正例
人権に関わる表現
①人種、本籍地、職業、家族状況、経済状況、宗教、信 ①患者及び家族の人権・人格を尊重した表現で記
条に関すること
載
1.人権・人格を侵害する表現
人権・本籍地・職業・経済状況・ ○○のような仕事なので
宗教・信条に関して尊重して
××だ
いる
ご主人と母親の仲が悪い
具体的な状況を記載している
暴言を吐く
嫁との仲がよくない
飲み屋で働いているため禁酒できない
暴れる
話が通じない
人
権
に
か
か
わ
る
表
現
2.患者の状況や性格に関する否定的な表現
知的なことに関して具体的な
ボケ症状
場面を記載している
説明しても反応が鈍い
理解力が低下・不良・悪い
身体的・言語的・精神的状態に
関して、医学的用語や具体的状態
好ましい表現例
目つきが悪い
悪臭がする
○○人のため意思疎通がとれない
②状況表現に関すること
暴言を吐き、暴れている
しばらく放っておいたら食べ始めた
Ⅱ.患者の状態や性格に関する否定的な表現
患者は「嫁との関係はよくない」という
息子は「母は○○の仕事をしていたのでお酒はや
められないという
日本語が話せないので意思疎通が難しい
②具体的な状況や場面を記載する
「何やっとんや」と大声をだし、壁を殴打する
離れた場所から見守ると食事を始めた
①知的なことに関すること
ボケ症状がある
①具体的な状況や場面を記載する
数回説明したが忘れている
一日中ボーっとしている
日中ベットの上で何もしないで過ごしている
理解力低下、理解力が悪い、理解力不足
○回説明したが理解が得られない
年齢のわりに理解力がある
説明したとおりにできている
②医学的用語を使用する、または具体的状態を記
載する
目つきが悪い
横目で凝視する
太りすぎ
体重○○㎏、肥満あり
悪臭がする
汗のにおいが強い
③性格に関すること
③患者の性格を特定する表現は記載しない 頑固
家族が説得しても承知しない
わがまま
個室なのでペットを入れてもよいはずだという
④態度に関すること
④状態や場面を具体的に記載する
機嫌が悪い
話しかけても返事がない
しつこく聞いてくる
一日に○回質問する
消極的で意欲なし
「自信がないし、自分でやろうと思わない」という
①職員間の誤った敬語、敬称に関すること
①職員間の敬語、敬称は記載しない
○○先生に報告
○○医師に報告
先生に上申する
医師に報告する
指示を仰ぐ
指示を受ける
②指示・命令的表現に関すること
②患者を支持する立場で記載する
自分でやらせる
自分でできるように促す
指示に従うよう注意したが従わず
○○について説明したが応じてもらえない
③権威や権限を表す用語に関すること
③医療従事者の権威や権限を示す用語は使用しない
監視下で
見守りながら・観察のもとで
外泊許可が下りる
外泊することになる
①症状や診断・治療など医師の領域に踏み込んだ表現 ①医学的診断は記載しない
ラシックスの効果あり尿増量
○時ラシックス1A静注。○時~○時の尿量○○ml
バルーンカテーテル留置による膀胱炎か
バルーンカテーテル留置による炎症が考えられる
縫合不全により腹部ペンローズドレーンより便汁の排液 腹部ペンローズドレーンより茶褐色で便臭のする
がある
排液がある
②身体的状況・言語的状態・精神的状態に関すること
を記載している
患者の性格を特定するような表
頑固
現の記載がない
気難しい
態度に関して状況や場面を具体
機嫌が悪い
的に記載している
しつこく聞いてくる
仏頂面
医療従事者が優位であるかのように感じさせる表現
職員間の誤った敬語や敬称の記
○○先生に報告
載がない
上申する
指示を仰ぐ
指示・命令的表現でなく、患者を
自分でやらせる
支援する立場で記載している
付き添い○○まで歩かせた
医
感 あ療
じる従
さか 事
せの者
る よが
表 う優
現 に位
で
患者に指示に従うように注
意したが従わず
医療従事者の権威や権限を示す
監視下で・監視する・要監
用語の記載がない
視
外泊の許可が下りる
○○が許可される
関 医
の
わ 学
確
る 的
定
表 診
に
現 断
医学的診断の確定に関わる表現
症状や診断・治療など医師の領域
脱水にて頻脈なのか
に踏み込んだ表現がない
ラシックスの効果あり
バルーンカテーテル留置に
招 し客必要時看護師介助
き く観多量、中等量、少量
表
や誤性
現
す 解 にCVポート指導、清潔操作がいまいち
い を乏
よる膀胱炎か
評価方法:好ましくない表現がない→○
好ましくない表現がある→×
2007 年 4 月 作成
鳥取県病院看護職員間交流事業 検討会(6G)
夜間のトイレ歩行時は見守り介助する
○g、○ml
、測定可能なものの表現
清潔部位や消毒後の刺入部を触ろうとする。再度
清潔操作の指導が必要
記録への倫理的配慮
看護の中で倫理、人権、権利擁護という
漠然とした配慮を行っている。
記録への倫理的配慮を意識しているのか?
倫理的配慮が看護記録に生かされているの
か?
アンケートの目的
現場で記録を行っている看護師にアンケートによる実
態調査を行い
・実際の記録の中に倫理的配慮欠ける記載を
行っているのかを知る
・記録に対する看護師の倫理意識を知る
アンケート内容
①経験年数
②診療録の開示の有無
③日本看護協会出版の
「看護記録の開示に関するガイドライン」の周知度
④日本看護協会出版の「看護者の倫理綱領」の周知度
⑤看護記録の表現や記載内容について注意する習慣
⑥看護記録監査実施の有無・頻度
⑦記録査定用紙に倫理的項目の有無
⑧看護記録の表現で心がけていることについて
⑨記録の中で実際に使用している表現
アンケート結果
7病院 768名の看護師のアンケート回収
経験年数
1~5年
6~10年
11~15年
16~20年
21年~
未回答
172
144
94
119
229
10
経験年数
21年~
31%
16~20年
15%
未回答
1%
1~5年
22%
11~15年
12%
6~10年
19%
診療記録開示
分からない
20%
未回答
2%
開示方法
未回答
7%
配布型カルテ
開示
17%
開示していな
い
7%
開示している
71%
申請型カルテ
開示
76%
分からないと答えた数は経験年数が低いほど多かった。
(1~5年35% 6~10年25%であった。)
記録のガイドライン・倫理綱領
倫理綱領
記録のガイドライン
未回答
1%
知っており、何
度か読んだ
15%
知らない
37%
知っており、何
度か読んだ
26%
未回答
1%
知らない
42%
知っているが,
読んだことは
無い
47%
知っているが,読
んだことは無い
31%
120
100
100
80
80
60
60
40
40
20
20
0
0
1~5
6~10
11~15
16~20
21~
1~5
6~10
11~15
16~20
21~
注意しあう習慣・記録の監査
監査用紙の倫理項目
記録の監査
記録の内容を注意しあう習慣
行っていない
6%
未回答
行っている
1%
14%
行っていない
30%
未回答
3%
あまり行ってい
ない
35%
時々行っている
44%
行っている
67%
監査用紙の倫理項目
【監査の頻度】 週1~3回
月1~3回
年1~5回
未回答
6%
30%
47%
17%
未回答
34%
含まれている
36%
含まれていない
30%
記録上で心がけている事
記録でしないように気をつけていること
人権・人格を侵害する表現
状態・性格に対する否定的表現
客観性に乏しい表現
医療者優位の表現
心がけている
577
505
487
534
時々心がけている158
229
235
188
1000
あまり心がけていない
18
21
34
33
心がけていない
3
3
2
2
未回答100
12
10
10
11
心がけている
時々心がけている
10
あまり心がけていない
心がけていない
未回答 1
現
る表
心がけている
時々心がけている
現
心がけている す
的
定
害
時々心がけている
る否
を侵
す
格
あまり心がけていない
に対
・人
格
権
人
・性
心がけていない
態
状
未回答
表
しい
に乏
客
性
観
現
表
現
表
の
位
優
者
療
医
あまり心がけていな
い
心がけていない
未回答
実際に記載している表現
良い表現
悪い表現
人権・人格を 状態・性格に
医療者が優
客観性に乏
侵害する表 対する否定
位であるか
しい表現
現
的表現
のような表現
201
12
268
153
215
940
1682
503
看護師の意識調査では倫理に欠けた表現を使用しないよう
しているという回答が多かったが、実際に使用している表現
では悪い表現の記載があった。
特に状態や性格に対する否定的表現の記載が多かった。
記載している表現
多量・中等量・少量(564)
ナースコール頻回(513)
訴えが多い(435)
落ち着きが無い(350)
ボーっとしている(314)
5~10分ごとにナースコールがあった(268)
理解力低下(229)
理解が得られない(201)
~と説明したが患者は納得しない(162)
自分でしてみるように促す(153)
監視下で(151)
消極的で意欲なし(122)
高齢のためか(108)
好ましくない表現の
使用率は経験年数
との関係は無かった。
看護記録における倫理的配慮
現状の問題点
看護記録の倫理的配慮について意識はし
ているが、倫理的な記録をしていない
どのような表現が倫理的配慮に欠けた記
録なのか理解できていない
提案内容とその利点
倫理に関する看護記録の監査表の使用を次の理由から提案します
1.患者の尊厳を守る記載の必要性を認識できる
2.倫理に関する記録の自己評価・他者評価を行う
ことで倫理的表現が身につく
3.自院の記録の質的向上がはかれる
4.県内の病院で記録の質的向上がはかれる
代替案との比較
監査表以外の方法
記録に対する学習会の開催
利点:一度に多人数に伝達できる
欠点:①全員が参加できない
②その場限りになる可能性が高く、
持続的な効果が期待できない
③習熟度に個人差がある
自己学習、記録の研修に参加
研修に参加するのは特定の人
意識(興味)の有無で参加度、学習意欲が変わる
提案内容のリスクと条件
監査表使用のリスクと条件
1、監査に人と時間を要す。
一冊監査するのに約10~45分時間が必要
勤務時間内に監査をすると中断せざるを得ない。
監査項目の表現内容が理解できていない。
→使用開始時、使用方法の説明をする。
学習会を行い、監査項目内容や言葉の理解をする
2、監査表を提案しても利用されず、改善されない。
→院内の記録委員会等、活用していく。
実現までの準備計画
看護記録監査表の使用に向けて
1、各病院に監査表を配布
2、各病院内で担当者・責任者を決定
〈看護部・記録委員会・倫理委員会等に提案〉
3、各病院で倫理に関する学習会の開催
4、使用方法の決定
いつ、だれが、どのように
倫理的な看護記録
人間関係の構築