Management and Decision Softwares

経営科学の意思決定
問題と解決技法1・2・3
もくじ(経営科学の意思決定問題)
1.数理計画法とその応用
生産計画・資源配分問題(線形計画法)
輸送問題・ネットワーク最適化(輸送解法)
人員問題・割り当て問題(組合せ最適化)
日程問題・プロジェクト管理(PERT/CPM)
順序問題・生産スケジューリング
2.統計とシミュレーション
需要予測(時系列データ分析・回帰モデル)
在庫管理・商品管理(発注方式)
設備利用問題(待ち行列モデル)
シミュレーション・リスク分析(モンテカルロ法)
3.投資意思決定と社会的決定
意思決定分析(決定基準・ディシジョンツリー)
ゲーム理論(ナッシュ均衡)
階層的意思決定(AHP)
文献紹介
経営情報論’01/12/3(11/26)
2
経営科学(マネジメント・サイエンス)
本スライドでは経営科学(MS)、ないしオペレーションズ・リサーチ(OR)の
伝統的な意思決定技法を紹介する。
経営科学は、経営問題を数学の言葉(目的関数と制約条件のペア)で記
述した数理モデルを作り、最適方策を検討したり、その解法を研究するこ
とを通じて、現実の問題解決に役立てようとする学問である。ここで言う経
営の問題とは、例えば次のようなものである。
「10種類の製品を製造しているある企業が、【利益】をできるだけたく
さん得られるようにするためには、どの製品を何単位ずつ生産したら
よいか? ただし、原材料、作業者、設備などの現在利用できる【資
源】の使用量は、一定の範囲に限られている。」
このタイプの経営問題は生産計画問題、あるいは資源配分問題と呼ばれ
る。上の問題の文章に現れる【利益】は、この企業の「目的」(Objective)で
あり、各【資源】の使用量上限が「制約」(Constraints)である。
上記のような経営科学アプローチは、日常業務において反復して起き
る半構造的ないし構造的意思決定問題に対しては、一定の成功を収
めている。これらは意思決定支援システム(DSS)の対象領域である。
また近年のERP/SCMといった情報技術では、その分析・診断・計画・
最適化のためのコンポーネントにおいて、経営科学技法が活用されて
いる。
経営情報論’01/12/3(11/26)
3
経営科学の意思決定
問題と解決技法1
数理計画法とその応用(11/26)
生産計画・資源配分問題(線形計画法)
輸送問題・ネットワーク最適化(輸送解法)
人員問題・割り当て問題(組合せ最適化)
日程問題・プロジェクト管理(PERT/CPM)
順序問題・生産スケジューリング
生産計画問題(線形計画法LP)
例題.2種類の製品AとBを生産している工場がある。
製品Aを1単位作るには原料4kgが必要で、2人の作業者が2時間設
備を使用する。
製品Bを1単位作るには、原料が5kg必要で、5人の作業者が1時間設
備を使う。
しかし、原料の使用可能量は1日30kgまでであり、作業者は現在25
人しかいない。また残業はできるが、高々1日12時間までしか、設備
は使えない。
製品1単位あたりの利益は、製品ごとに異なる。製品Aが5万円、製品
Bが9万円である。
この工場で利益を最大にするには、製品AとBをそれぞれ何
単位ずつ生産すれば良いか。
このタイプの問題は線形計画問題(LP)として記述でき、かつシンプレ
クス法という、コンピューター向きの良い解法がある。
[線形計画問題(LP)としての定式化]
目的関数:Z=5X+9Y →最大化
制約条件: 4X+5Y≦30、 2X+5Y≦25、 2X+Y≦12、ただし各変
数は非負.
経営情報論’01/12/3(11/26)
5
線形計画問題のグラフによる解法
線形計画問題(LP)の最適解は、制約条件の不等式と、各変数
が非負である条件(各座標軸)で囲まれる多角形図形( 実行可
能領域と呼ばれる)の頂点の中に必ずある。それゆえ2変数の
問題に限っては、図のようにグラフで書けば、だいたいどの頂点
が最適解に対応するかが分かる。
X
-3
-2
-1
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
Y
4X+5Y=30 2X+5Y=25 2X+Y=12 Z=5X+9Y
8.4
6.2
18
40.8
7.6
5.8
16
42.2
6.8
5.4
14
43.6
10
6
5
12
45
5.2
4.6
10
46.4
8
4.4
4.2
8
47.8
3.6
3.8
6
47.4
2.8
3.4
4
45.2
6
2
3
2
43
1.2
2.6
0
30
4
0.4
2.2
-2
17
-0.4
1.8
-4
4
2
-1.2
1.4
-6
-9
-2
1
-8
-22
-2.8
0.6
-10
-35
0
-2
0
-3.6
0.2
-12
-48
-4.4
-0.2
-14
-61
-2
-5.2
-0.6
-16
-74
-6
-1
-18
-87
-6.8
-1.4
-20
-100
-7.6
-1.8
-22
-113/3(11/26)
経営情報論’01
/12
4X+5Y=30
2X+5Y=25
2X+Y=12
2
4
6
8
10
6
補足:双対性・相補性
線形計画法の利点は、最適解、つまり利益を最大にする(あるいは費用
を最小にする)効率的な資源利用計画を決定できること、および企業の
目標に対する貢献の度合いとして、各資源の価値を計測できることであ
る。これは仮に現在の制約が逼迫したとき、単位あたりどれだけの利益
が減るか(あるいは費用が増えるか)という感度として計算される(→限
界価値、双対価格、または「影の価格」などともいう。)
また線形計画問題の「双対性」(デュアリティ)は、利益最大化問題が解
けるなら、それに対応する費用最小化問題として、書きなおせることを意
味し、数学的に美しい性質である。ちなみにこの例題の双対問題は、以
下のようである。
[前のスライドの例題の双対問題]
目的関数:W=30P+25Q+12R→最小化、
制約条件:4P+2Q+2R≧5、5P+5Q+R≧9、および非負条件.
比較すると分かるが、これは元の線形計画問題の、係数の表を縦横に、
また不等号の向きを逆に、それぞれ読み替えたもである。最適解は一致
し、そのときのP、Q、Rは各資源の双対価格(=元の目的関数における
各資源の余剰変数の係数)である。(→Solverで両問題を解き、この事実
を確認しなさい。)
経営情報論’01/12/3(11/26)
7
輸送ネットワーク問題
ある商社では、2つの倉庫を持ち、3つの小売店に商品を輸送す これは実
る計画を立てている。2つの倉庫W1とW2はともに在庫量60、3
つの小売店S1とS2とS3の需要量は、それぞれ50、40、30で 行可能だ
ある。倉庫Wkからから小売店Sjへの単位当たり輸送費用は、表 が最適解
のようである。最少の輸送費用で全小売店の需要を満たすには、 ではな
い!(最
どのように輸送すれば良いか。
適解は6
輸送表
総輸送費用
780
輸送費用
30)
小売店
小売店
倉庫
W1
W2
需要量
S1
3
4
50
S2
6
12
40
S3
10
7
30
在庫量
倉庫
60 W1
60 W2
需要量
120
輸送費用
S1
50
0
50
S2
10
30
40
150
S3
0
30
30
420
210
在庫量
60
60
120
780
輸送問題は、特殊な構造を持つ線形計画問題である。つまり需
要地区消費量と供給地区の生産量のそれぞれの合計が等しい。
(余った分はダミー倉庫に置くと考えれば良い。)これを図のよう
な輸送表で表すと、横(行)の合計と縦(列)の合計が、それぞれ
の地区の需要量と供給上限と一致する。
経営情報論’01/12/3(11/26)
8
輸送経路の限界費用と最適計画
この未使用経路
未使用の経路
W1→S1は、最大30
実行できる輸送計画案が求まったとして、それが最適であることはどのように
W1→S3を使っ
もう一つの未使用経
単位まで増やせる。
判定できるだろうか? 線形計画問題の基本性質を利用すると、どの未使用
ても、費用を節
路W1→S1を使うと、1
経路の限界費用もマイナスでないことがその条件であると分かる。
よって改善効果は5
約できないこと
輸送量あたり5万円
×30=150万円、
輸送経路の限界費用は、そこを1単位分の輸送に使うことによって、どれだけ
が分かる。 (限
節約できると分かる。
総輸送費に影響があるかを示す指標だ。よって、もし現在の輸送計画にマイ
総費用は630になる
界費用=9)
(限界費用=-5)
ナスの未使用経路があれば、その経路の使用は総輸送コストの節約に貢献
はず。
するわけだから、できる限り多くの品物を流すのがベターである。
輸送表
経路13の限界費用=
輸送表
経路11の限界費用=
-5
小売店
小売店
倉庫
S1
S2
倉庫
S1
S2
S3
在庫量
W1
0
-1
改善後の輸送計画は最適解である。
W1
-1
1
0
60 W2
0
1
なぜなら2つの未使用経路(13,22)
W2
1
-1
0
60
需要量
50
40
の限界費用はともに正(4,5)であり、
需要量
50
40
30
120
輸送費用
0
6
輸送費用
1
-6
0
-5
それゆえもはや改善の余地は無いか
輸送費用
輸送表
総輸送費用
輸送表
らである。
小売店
小売店
小売店
倉庫
S1
S2
S3
在庫量
倉庫
S1
S2
倉庫
S1
W1
3
6
10
60 W1
20
40
W1
50
10
W2
4
12
7
60 W2
30
0
W2
0
30
需要量
50
40
30
120
需要量
50
40
需要量
50
経営情報論’01/12/3(11/26)
輸送費用
180
240
輸送費用
150
420
9
S3
1
-1
30
在庫量
60
60
120
3
9
630
780
S3
0
30
30
210
在庫量
60
60
120
9
630
780
割り当て問題(人員配置)
ある会社の営業部第一課には4人の部下が配属されている。この課に
割り当てられた仕事は4つあり、それぞれ難易が異なる。一人一つの
仕事を担当することにして、1課の社員それぞれが、各仕事をこなすの
にかかる時間が下表のように見積もられた。所要時間の合計を最小に
するには、どの社員にどの仕事をやってもらうべきか。
仕事1
仕事1
仕事1
仕事2
仕事2
仕事2
仕事3
仕事3
仕事3
仕事4
仕事4
仕事4
社員1
社員1
社員1
1 28
社員2
社員2
社員2
227
社員3
社員3
社員3
005
社員4
社員4
社員4
23 8
0 14
07
002
16
335
38
12 4
06
0
4
12
0
1
00
2
22
3
0
3
12
(単位:時間)
(単位:時間)
(単位:時間)
ハンガリー法(簡便法)の手順:
開始 ①各行からそれぞれの最小値を引く。
②各列からそれぞれの最小値を引く。
③すべての0をできるだけ少ない直線で消す。
もし行(列)の数より少なくできなければ⑤へ進む。
④ -1.0を含む線上の行と列をすべて無視して、残っ
た値の中で線を引かれていない値の最小値を求め、
線が引かれていない各値から引く。
④-2.直線の交点には上で求めた値を足してから、③
に戻る。
⑤各行各列で0が1つだけの所に星印*をつける。
終了
割り当て(アサインメント)の問題は、人を仕事に割り当てたり、機械を
製品に割り当てたりする問題で、輸送問題と似ているが、違いは1対1
の対応であること。少数点以下への分割ももちろんできない。
こうしたタイプの問題は、一般には整数計画法とか、組み合せ最適化
問題と呼ばれ、効率的に解くのが難しい。しかし、人員問題のタイプに
特定すると、ハンガリー法と呼ばれるうまい方法が昔から知られている。
しかしこの程度のサイズの例題ならば、Prologを使って簡単に解を枚挙できる。(練習問題)
経営情報論’01/12/3(11/26)
10
日程問題(PERTチャート)
図のようなネットワークで描かれるプロジェクトを考える。各作業の作業
時間と費用が、表のように分かっている。このプロジェクトの最早完了時
刻を求めよ。また工期日数と費用の関係を示せ。
5
0
2
D
3
B
5
7
2日
3日
E
プロジェクト全体
の最早完了時刻
11
4日
A
1
2
6
2日
C
4
F
2日
3角は各ノードの
最早開始時刻
4
6日
作業
A
B
C
D
E
F
作業時間
標準
2日
3日
2日
2日
4日
6日
特急
1日
2日
2日
1日
2日
4日
費用
標準
10万円
8万円
12万円
4万円
10万円
20万円
PERT/CPMは、1958年に米国海軍の潜水艦の開発計画を委託された
民間会社が共同開発した、プロジェクト評価技法PERTと、それとほぼ同
等の分析を行うCPMと呼ばれる米国化学系メーカーがやはり同時期に
共同開発した手法とを合わせた、プロジェクト管理技法の総称である。
PERT手法を実際に業務で使うには、MS Projectのようなソフトウェアが便利だろう。PERT問
題は線形計画問題として定式化されるため、LINDOを使って解くこともできる。また前スラ
イドと同じく、この程度の例題なら、Prologプログラムを作るのも比較的簡単な練習問題で
ある。
11
経営情報論’01/12/3(11/26)
特急
25万円
12万円
12万円
7万円
20万円
36万円
順序付け(スケジューリング)
5つの仕事(ジョブJ1~J5)それぞれを、2台の機械(マシンM1とM2)にこ
の順番でかける処理を考える。加工時間は表のように与えられている。
このときガントチャートを作図し、総作業時間を最小にする加工順序を求
めなさい。
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9
機械
仕事
J1
J2
J3
J4
J5
M1
5
1
9
3
10
M2
2
6
7
8
4
(単位:時間)
M1
M2
J2
J4
10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29
J3
J2
J5
J4
J3
J1
J5
J1
ガントチャート
工場では、一般に機械が固定据付されており、その配置を変えたり、台
数を増加させることは簡単にできない。その代わりに、異なる製品を投入
する順番を工夫することで、総作業時間を短縮すること(ないし総滞留時
間の最小化)ができる。このタイプの問題は順序付け(シーケンシング)な
いしフローショップ・スケジューリングと呼ばれる。
より一般に、機械は位置も変更できるケースは、ジョブショップ・スケ
ジューリングというが、たいてい上記の順序付け問題よりも難しい。とくに
任意の仕事数、2機械の場合(あるいは3機械で特殊な場合)には、ジョ
ンソン法/ジャクソン法と呼ばれる解法が、順序付け/ジョブショップ・ス
ケジューリングにそれぞれ使える。
経営情報論’01/12/3(11/26)
30
12
経営科学の意思決定
問題と解決技法2
統計手法とシミュレーション(12/4)
時系列データ分析(傾向、循環、ランダム性)
在庫管理(発注方式・商品管理)
設備利用問題(待ち行列モデル)
シミュレーション・リスク分析(モンテカルロ法)
需要予測(時系列データ分析)
時系列データの動きを説明する要因は、傾向、循環変動、季節変動、
ランダム変動の4パタンに分解される。いいかえれば、時系列データは、
これらの要素の合成として説明・予測される。
ある製品の売上高が、4月 50万円、5月 60万円、 6月 70万円、
7月 85万円であったとする。4ヶ月単純移動平均法により、8月以降
の売上高を予測せよ。
ある製品の売上個数は、過去7年間、以下のようであった。傾向線を当
てはめて、予測式を求めなさい。また1997年には何個売れると予測
されるか? (ヒント: いろいろ方法はあるが、最も手っ取り早いのは
Forecast関数による傾向値予測
Excelシートではオートフィルで傾向値が出る。)
1990
1991
1992
1993
1994
1995
1996
1997
売上個数
年度
500
傾向予測
450
年度
売上個数
売上個数 オートフィル Forecast関数400
1990
176
176
176
172.9643 350
1991
212
300
212
212
209.5
1992
235
235
235
246.0357 250
1993
280
280
280
282.5714 200
1994320 320 319.1071 150
320
1995375 375 355.6429 100
375
50
1996380 380 392.1786
380
0
1997
?
428.71429? 428.7143
1988
(単位:万個)
(単位:万個)
売上個数
500
450
400
350
300
250
200
150
100
50
0 1990
1989
1990
経営情報論’01/12/3(11/26)
1992
1991
1994
1992
年度
1993
1996
1994
1995
1998
1996
14
1997
年平均需要 発注費/回
在庫管理(発注方式・商品管理)
EOQ 
年間保管費/個の半分
在庫変動シミュレーション
在庫(インベントリー)
在庫変動シミュレーション
(発注点法による)
発注量
13 発注費/回
EOQ
12.90994
発注費/回
保管費/個
20000
(発注点法による)
発注量
11
リードタイム= 2
発注点
15 保管費/個
1200
将来の生産や販売の必要に
リードタイム= 3
発注点
20
備えた蓄え。 変動法則: 在庫=MAX[0、前期在庫+納入-販売]
変動法則: 在庫=MAX[0、前期在庫+納入-販売]
販売需要=INT(RAND()*10)
総在庫費用
品切損失
在庫変動
工場では原材料、仕掛け、完
販売需要=INT(RAND()*10)
総在庫費用
販売実績=MIN[在庫、販売需要]
443600
0%
販売実績=MIN[在庫、販売需要]
成品
35
時間
販売店では商品
納入
販売需要 販売実績 発注費用 管理費用
在庫
発注
納入
販売需要 販売実績
0
10
13
0
5
5
20000
12000
0
10
11
0
5
5
30
1
7
13
0
3
3
20000
8400
1
3
11
0
7
3
2
15
0
13
5
5
0
18000
25
2
1
11
0
2
1
適正な在庫水準を決定し、そ
3
19
03
134
9
9
0
22800
11
11
8
4
れを維持する
4
17
0
0
2
2
0
20400
20
4
15
11
11
0
0
在庫
5
10
13 5
0
7
7
20000
12000
19
11
11
7
7
経済的発注量(EOQ)
販売需要
15
6
10
13 6
0
0
0
20000
12000
23
0
11
7
7
7
15
07
13
8
8
0
18000
リードタイム
34
0
11
0
0
10
8
22
08
13
6
6
0
26400
39
0
11
6
6
安全在庫
9
18
09
0
4
4
0
21600
31
0
0
8
8
5
10
13
1310
0
50
50
200002
156002
29
11
8
1311
0
50
50
200001
96001
28
0
12
12
1312
13
90
90
200005
144005
発注点方式
23
0
3
6
9 12 15
13
21
013
13
40
40
00
252000
23
定期発注方式
14
29
014
13
5
50
05
348005
時間
18
11
15
27
015
0
2
20
04
324004
14
11
ABC分析(商品管理)
合計
14000015 303600
経営情報論’01/12/3(11/26)
個数
在庫管理
発注方式
在庫
発注
時間
設備利用問題(待ち行列モデル)
単一チャンネルモデル
(窓口1ケ、先入先出FIFO、待ち最大長無限の場合)
お客の到着モデル
窓口サービスのモデル
待ち行列(Queue、 Waiting Line)と
システム内にn人いる
確率
1分間に平均何人来ますか?
1分で平均何人処理できますか?
は、お客がサービス開始を待って並 (平均到着率)
(平均サービス率)
n1   、  =   1.


P
n


ぶことを指す。
A=
人
C=
人

例えば、切符売り場、レジ、病院、 平均、何分に一人来ますか?システム内の平均人数
平均何分でサービス完了します?
バス停など、日常の広範囲に見ら


分
LD=

. 分
れる現象。また機械の故障と修理 B=


1


や、情報システムの利用統計にも
A=1/Bという関係に注意。 待ちの平均人数
C=1/Dという関係に注意。
応用される。
2
2
待ちの長さや時間についての統
L時間tの確率=A・Exp(‐A×時間)


時間間隔の分布モデルは指数分布
q






1 
計を取れば、サービスに対する顧 人数の分布モデルはポアソン分布 ←指数分布と表裏一体
客の満足度が測定できる。
システム内の平均滞留 時間
待ち行列理論は、確率論を使って、
待ちの現象をモデル化し、現有設備
の診断、設備投資による改善効果
の予測に活用する。
お客の到着モデル
窓口サービスのモデル
平均到着率、平均サービス率 、かつ <
のとき、システム内に
Pn    n 1   
1
 -
W 
n人いる確率
平均待ち時間
り小さくないといけな
Wq  W
ただし、 は利用率を表し、1よ
=


である。
経営情報論’01/12/3(11/26)
ただし待ち時間 0の人を除
16
い
シミュレーションとリスク分析(モンテカルロ法)
需要
乱数
0
16
1
20
2
30
3
45
4
66
5
79
6
96
シミュレーション(simulation)
乱数 需要 製造数→1
2
3
4
5
6 製造数→1
1 81
6 販売
1
2
3
4
5
6 売残
0
2 48
4
1
2
3
4
4
4
0
例題. あるパン屋さんでは、自家製食パンを焼くのに、1本当たり
3 98
7
1
2
3
4
5
6
0
原価100円かかる。販売価格は250円だが、需要は不確定である。
4 32
3
1
2
3
3
3
3
0
5 52
4
1
2
3
4
4
4
0
過去120日間の販売を統計してみたところ、表のようであった。
6
68
5
1
2
3
4
5
5
0
このデータをもとに、30日間のシミュレーションを行い、1日何本の
7 54
4
1
2
3
4
4
4
0
食パンを焼くのがよいか決めなさい。ただし、食パンの本数は最低1
8 50
4
1
2
3
4
4
4
0
で最大6とする。
9 22
2
1
2
2
2
2
2
0
10 62
4
1
2
3
4
4
4
0
食パン販売量のヒストグラム
6
1
2
3
4
5
6
0
表.食パンの売れ行き 11 85
12
83
6
1
2
3
4
5
6
0
販売数
日数
30
13
5
0
0
0
0
0
0
0
1
0
20 14 59
25
4
1
2
3
4
4
4
0
1
5 15 59
4
1
2
3
4
4
4
0
20
2
12 16
1
0
0
0
0
0
0
0
1
15
17
31
3
1
2
3
3
3
3
0
3
18
10
2
1
2
2
2
2
2
0
4
25 18 24
19 115
0
0
0
0
0
0
0
1
5
16 20 96
6
1
2
3
4
5
6
0
6
20 21 490 4
1
2
3
4
4
4
0
4
1
2
3
4
4
4
0
7
4 22 51
0
0
0
0
0
0
0
1
8以上
0 23 12
24 39
3
1 本数2
3
3
3
3
0
合計
120 25 45
3
1
2
3
3
3
3
0
26 99
7
1
2
3
4
5
6
0
27 50
4
1
2
3
4
4
4
0
28
1
0
0
0
0
0
0
0
1
29 44
3
1
2
3
3
3
3
0
30 54
4
1
2
3
4
4
4
0
合計
106
25 経営情報論’01
50 73 91 98
5
/12104
/3(11/26)
平均利益
108.3 216.7 308.3 358.3 316.7 266.7
8以 7
上
6
5
4
3
2
1
0
日数
日
7
99
2
3
4
5
6
注意!
0
0
0
0
0
現実のしくみを人工的なモ
0
0
0
1
2
デルによって再現すること。
0
0
0
0
0
各回の平均値で見る
0
0
1
2
3
人工的なモデルによる実験を
0
0
0
1
2
と、この例題では4本が
通じて、現実問題に対する近
0
0
0
0
1
0
0
0
1
2
ベストに近いように思
似解を求めようとする。
0
0
0
1
2
0
1
2
3
4
われる。しかし、シミュ
0
0
0
1
2
とくにコンピュータープログラ
0
0
0
0
0
レーションによる意思決
ムによるシミュレーションは、
0
0
0
0
0
2
3
4
5
6
解析的にモデルの最適解が
定では、
0
0
0 (平均利益の)
1
2
求まらない場合に向いている。
0
0
0
1
2
期待値だけでなく、リス
2
3
4
5
6
0
0
1
2
3
モンテカルロ法(Monte
Carlo
0
1
2
3
4
クの程度を測る指標、
method)2 3 4 5 6
0
0
0
0
0
すなわち(平均利益の)
0
0
0
1
2
乱数(ランダム・ナンバー)を
0
0
0
1
2
標準偏差や最悪値など
2
3
4
5
6
用いて、数値実験を繰り返し、
0
0
1
2
3
が重要。
平均値が真の答えに近づい
0
0
1
2
3
0
0
0
0
ていく統計学的性質(大数法
→00 実験データの統計
0
0
1
2
則)を利用する近似解法。
2
3
4
5
6
をとって調べる。
0
0
1
2
3
0
10
0
17
0
29
1
52
2
76
17
補足:確率分布
正規分布のグラフ(累積密度関数)
確率(probability)
1.200
確率とは、ある不確実な出来事(=事象;イベント)が起
きる可能性を特定する数値である。確率は0と1の間の
数で、不可能な事象φは確率0、す全事象Ωは確率1、そ
れ以外の事象AやBは集合の演算∩、∪を使うと、つねに
p(A)+p(B)=p(A∩B)+p(A∪B)を満たす。
1.000
0.800
0.600
0.400
確率変数、乱数(random number)
0.200
値が確率法則に従って変化するものを確率変数あるい
は乱数という。コンピュータープログラムによって、発生さ
せたものは擬似乱数と呼ばれる。
3.8
3.2
2.6
2
1.4
0.8
0.2
-0.4
-1
-1.6
-2.2
-2.8
-3.4
-4
0.000
正規分布のグラフ(確率密度関数)
0.150
0.100
0.050
正規分布(Normal Distribution)
4
0.200
0.8
2.4
0.250
-0.8
0.300
0.000
平均値を中心に、左右対称の釣鐘型の確率密度をもつ
分布。累積分布はS字型になる。サイコロやコイン投げと
違って、変数の取りうる値は連続値である。
3.8
3.2
2.6
2
1.4
0.8
0.2
-0.4
-1
-1.6
-2.2
-2.8
-3.4
平均0、標準偏差1の標準正規分布
経営情報論’01/12/3(11/26)
で、x>2の領域を赤で分割した図。
x
-4
f(x )
0.350
確率分布(probability distribution)
確率変数がとりうるそれぞれの値に対して、確率の値を
定めたもの。正規分布、二項分布、一様分布、3角分布
などがよく使われる。また正規分布や指数分布のように
連続型の確率モデルでは、一定の値の範囲の確率を求
めるために、積分が使われる。
-2.4
0.400
0.350
0.300
0.250
0.200
0.150
0.100
0.050
0.000
0.400
S1
-4
0.450
18
経営科学の意思決定
問題と解決技法3
意思決定とゲームの分析(12/11)
意思決定分析(ディシジョンツリー)
ゲーム理論(ナッシュ均衡)
階層的意思決定(AHP)
意思決定分析(決定基準)
スキー場の降雪量の確率分布
3状態の確率をそれぞれ
25%,35%,40%とすると、
期待利益( 2台増設のとき)
=(5)*0.25+(10)*0.35+(30)*0.40、
降雪が多い
期待利益( 1台増設のとき)
=(50)*0.25+(10)*0.35+(0)*0.40、
イシケッテイ(確率判断と行為選択)を研究する分野は、意思決定論ないし決定理論
例年並み
期待利益(現状のまま)
(decision theory)と呼ばれ、経営科学の他、経済学、心理学、数学、統計学の各分野、そ
=(60)*0.25+(5)*0.35+(-15)*0.40、
意思決定(decision making)と意思決定分析(decision analysis)
して情報技術に強く関連する。意思決定分析は、判断や選択はどうあるべきかという規
降雪が少ない
範理論だけでなく、合理的な意思決定を診断・処方するしくみを提供する。例えば利得表
合計
やディシジョントゥリー(決定木)を使えば、直観的に問題を表現することができる。また難
しい投資意思決定に直面した人々が、自身で診断と処方を行えるように、、コンピュータ
0%
20%
40%
60%
80%
100%
による意思決定支援が研究されている。
スキー場の利得表(利益額)
各基準値
状態 降雪が 例年並 降雪が
代替案
多い
み
少ない
スノーマシンを
2機増設する
5
10
30
スノーマシンを
1機増設する
50
10
0
現状のまま
60
5
-15
折衷値(ハービッツ基準)
不確実性下の決定基準
80
状態
折衷値
代替案
最悪値 最良値 (β=0.55) 期待値
スノーマシンを
2機増設する
5
30
18.75
16.75
スノーマシンを
1機増設する
0
50
27.5
16
現状のまま
-15
60
26.25
10.75
折衷値
60
スノーマシンを1
意思決定の基本要素は、代替案(行動)と状態(要因)と結果(利益・費用)である。図の
機増設する
40
利得表(ペイオフマトリックス)では、スノーマシンを追加購入するか否かを検討中のある
現状のまま
スキー場の意思決定問題を表している。不確実性のある場合は、最悪値に着目したマキ
20
スノーマシンを2
シミン基準(費用のときはミニマックス基準)や、状態確率を予測した上で期待利得最大
0
機増設する
化基準を使って選択する。また不確実性への態度の悲観性(楽観性)やリスク回避の程
最悪値
最良値
-20
20
経営情報論’01/12/3(11/26)
度を考慮した方法もある。
0← β →1
決定木(ディシジョンツリー)
決定木(decision tree)
決定木は意思決定の過程を図案化し、最適解を求める方法である。表から数値を読
み取りで計算する手順では、時間を追って段階的に選択を繰り返すような複雑な意思
決定を表すことが難しかった点が、決定木によって克服できる。
それぞれ、□は決定ノード、○は確率ノード、△は結果ノードである。
ロールバック分析(後方帰納)
各結果ノードから根のノードに向かって逆向きに、期待値最大化にしたがって部分最
適解を求めていく。最終的に決定木全体の最適解が得られる。これをロールバック分
析あるいは後方帰納(バックワードインダクション)という。
ロールバック分析で期待利得最大
Tree Age社のDATAという意思決定
化行動を求めた図
分析ソフトで作図した決定木
経営情報論’01/12/3(11/26)
21
ゲーム理論(ナッシュ均衡)
利害関係がある相手がいる社会的状況では、相手の戦略を考えに入
れて、自分自身の合理的行動を選ぶ必要がある。
ゲーム理論で言う「均衡」とは、こうしたゲーム状況における戦略的思
考および社会状態を予測する数学モデルである。J.ナッシュは、N人非協
力ゲームの均衡解を、ゲームのプレイヤーがお互いに相手の合理性を
前提とした「最適反応」(ベストレスポンス)として定義した。
ナッシュ均衡では、すべてのプレイヤーが相手の出方を一定と仮定し
たときに、単独で行動を変えても得しない。
2
・
・
がいくらになるかが特性関数によって定義される。コア
概念などにより、合意されうる望ましい提携構造を予測。
2
2
,
2
0 , 2.01
・
標準形ゲーム(非協力ゲーム)。同時手番のゲームを表
現する。戦略組と結果の対応は利得表によって表される。
ピザナッシュ均衡を中心に論じられる。繰り返しゲームに拡
張できる。
・
展開形ゲーム(非協力ゲーム)。決定木を使って手番を
2.01 , 0
0.1 , 0.1
明示する。先行するゲーム履歴は信用できるシグナルと
して解釈され得る。
2
うど
ん
・
繰り返しゲーム。標準形や展開形のゲームが有限ない
し無限期間繰り返されるゲーム。進化ゲーム論における
中心的な考察対象。
表2.囚人ジレンマ型ゲーム
経営情報論’01/12/3(11/26)
<
<1
表1.協調性が試されるゲーム
1
<1
<1
>1
1
ピザ
うどん
「囚人のジレンマ」ゲームは、1950年代にド
レッシャ-とフラッドが実験した結果を、タッカー
>2
が紹介して有名になった。表1には2つのナッ
2 ,1
0 ,0
シュ均衡があって、いずれが実現するかは、予
ピザ
測不可能だった。一方、表2には唯一のナッ
シュ均衡があるが、それは両者の非協力状態
である。協力状態は両者にとって望ましい結果
0 ,0
1 ,2
であるにもかかわらず、裏切りの同期があり実
<2
う
ど
ん
現しない。
2ゲーム理論には大別して以下の4種類のゲーム形式が
ある。
ピザ
うどん
提携形ゲーム(協力ゲーム)。誰と誰が組むと共有利益
<
22
期待利得と最適応答(1)
● 一つの代替案をいつも選ぶことを純粋戦略といい、いくつかの代替案
を確率的に混じり合わせて使うことを混合戦略という。
● 先の食事問題で混合戦略のナッシュ均衡を求めてみると、(p=2/3、q
=1/3)が混合ナッシュ戦略となる。
プレイヤー1の最適反応マップ(黄色の線)。相手の混合戦略q
に対して、最も高い自分の期待利得を与えるpを決める。
0.3
0.7
0.7
0.7
0.7
0.7
0.7
0.6
0.6
0.6
0.6
0.6
0.4
0.6
0.6
0.6
0.7
0.7
0.7
0.7
0.7
0.8
0.8
0.8
0.5
0.5
0.6
0.6
0.7
0.7
0.8
0.8
0.9
0.9
1
1
0.6
0.4
0.5
0.6
0.6
0.7
0.8
0.9
1
1
1.1
1.2
0.7
0.3
0.4
0.5
0.6
0.7
0.9
1
1.1
1.2
1.3
1.4
0.8
0.2
0.3
0.5
0.6
0.8
0.9
1
1.2
1.3
1.5
1.6
0.9
0.1
0.3
0.4
0.6
0.8
1
1.1
1.3
1.5
1.6
1.8
1.0
0
0.2
0.4
0.6
0.8
1
1.2
1.4
1.6
1.8
2
2
1.5
v1
1
0.5
0
S7
経営情報論’01/12/3(11/26)
0.9
0.2
0.8
0.8
0.7
0.7
0.6
0.6
0.6
0.5
0.5
0.4
0.4
0.6
0.1
0.9
0.8
0.8
0.7
0.6
0.6
0.5
0.4
0.3
0.3
0.2
0.3
q
0.0
1
0.9
0.8
0.7
0.6
0.5
0.4
0.3
0.2
0.1
0
0
V1
p
0
0.1
0.2
0.3
0.4
0.5
0.6
0.7
0.8
0.9
1
プレイヤー1の期待利得
q
0
p
23
期待利得と最適応答(2)
● 食事問題におけるプレイヤー2の混
合ナッシュ戦略が描く最適反応マップ
は、図中の赤線のようになる。均衡を
求めてみると、2つの純粋戦略ナッ
シュ均衡と共に、(p=2/3、q=1/3)
が混合ナッシュ戦略となることがわか
る。
1.5
v1
0.5
1
1.1
1.1
1.2
1.2
1.3
1.3
1.4
1.4
1.5
1.5
0.6
0.8
0.9
1
1
1.1
1.2
1.3
1.4
1.4
1.5
1.6
0.7
0.6
0.7
0.8
0.9
1
1.2
1.3
1.4
1.5
1.6
1.7
0.8
0.4
0.5
0.7
0.8
1
1.1
1.2
1.4
1.5
1.7
1.8
0.9
0.2
0.4
0.5
0.7
0.9
1.1
1.2
1.4
1.6
1.7
1.9
1.0
0
0.2
0.4
0.6
0.8
1
1.2
1.4
1.6
1.8
2
0.5
0
S7
1
0.4
1.2
1.2
1.2
1.3
1.3
1.3
1.3
1.3
1.4
1.4
1.4
0.8
0.3
1.4
1.4
1.4
1.4
1.4
1.4
1.3
1.3
1.3
1.3
1.3
0.6
0.2
1.6
1.6
1.5
1.5
1.4
1.4
1.4
1.3
1.3
1.2
1.2
0.4
0.1
1.8
1.7
1.7
1.6
1.5
1.5
1.4
1.3
1.2
1.2
1.1
1
0.2
q
0.0
2
1.9
1.8
1.7
1.6
1.5
1.4
1.3
1.2
1.1
1
2
0
v2
p
0
0.1
0.2
0.3
0.4
0.5
0.6
0.7
0.8
0.9
1
プレイヤー2の期待利得
0
p
各プレイヤーの最適応答のグ
ラフ:交点がナッシュ均衡であ
る。
経営情報論’01/12/3(11/26)
24
q
展開形ゲームと不完全情報
● 展開形(Extensive Form)は手番に順序
のあるゲームをゲームの木(決定木)に
よって表現する。
● また展開形はプレイヤーの利用できる不
完全な情報を情報集合によって表せる。
先手の情
報集合
後手の情報
集合
このゲームにおける後
手は、先手の行動を
観察できない(つまり
情報集合が一つに
なっていて区別できな
い)。しかし仮に先手
がaを選ぶのが分かっ
たとすれば、後手はd
を選ぶしまた先手がb
でもやはりdを選ぶ。
それゆえ先手は自分
の選択によらず、後手
がdを選ぶと推論して、
bがaより1上回ると結
論する。均衡は(1,1)
となる。
ゲーム木1:不完全情報ゲーム
経営情報論’01/12/3(11/26)
25
階層的意思決定(AHP)
一対比較表(パソコン選定の基準)
B
A
機能
使い易さ
価格
省スペース
機能
1
3
5
7
使い易さ
1/3
1
5
7
価格
1/5
1/5
1
3
省スペース
1/7
1/7
1/3
1
√ 1×3×5×7 ≒
√ 1/3×1×5×7 ≒
4
√ 1/5×1/5×1×3 ≒
4
√ 1/7×1/7×1/3×1 ≒
4
4
合計
幾何平均
3.201
ウェイト
0.540
1.848
0.312
0.589
0.099
0.287
5.925
0.048
1.000
ウェイトの整合性(上表の各セル×各ウェイト)
B
A
機能
使い易さ
価格
省スペース
機能
0.540
0.180
0.108
0.077
使い
易さ
0.936
0.312
0.062
0.045
価格
0.497
0.497
0.099
0.033
省ス
ペース
0.339
0.339
0.145
0.048
意思決定問題では、一つ以上の代
替案を選ばなければならないか、ある
いはすべての代替案を総合評価に
よって順位付けする必要が生じる。
評価の基準はいろいろありうる。例
えば、自動車を買おうとするとき、価
格は確かに重要だが、メーカー、性能、
色・デザイン、オプション品なども気に
なるかもしれない。また人によって、そ
れぞれどの項目を重視するか、その
程度が異なる。
T.サーティ教授によって提案されたA
HP(Analytic Hierarchy Process)という
手法は、評価基準間のウェイトを決定
する手続きとして、一対比較を繰り返
し用いる。
一対比較は、AはBと比べてどの程
横計/
度重要かを質問する。回答はきわめ
横の計 ウェイト
て重要(9)~同じ程度(0)まで(Bの方
2.312 4.279
が重要ならばその逆数)のいずれか
1.328 4.257
0.415 4.180
C.I.
で答えてもらう。
0.203 4.195
0.08
26
経営情報論’01
平均
4.2278 /12/3(11/26)
一対比較表から統合ウェイトを求める
一対比較表(機能にかんする評価)
一対比較表(機能にかんする評価)
B 機種 機種 機種 幾何 ウェイ
A
P
Q
R 平均
ト
B
A
機種P 1
機種 機種 機種 幾何 ウェイ
P
Q
R 平均 ト
2
3
1.817 0.540
機種P 1
機種Q
1/2 1
2
1.000 0.297
機種Q 5
機種R
1/3
1/2 1
0.550 0.163
3.367 1.000
機種R 3
1/5
1
1/3 0.405 0.109
2
2.154 0.582
1/2 1
1.145 0.309
3.705 1.000
一対比較表(価格にかんする評価)
一対比較表(価格にかんする評価)
B
A
機種P
機種Q
機種R
B 機種 機種 機種
A
P
Q
R
機種P 1
1/3 1/7
機種Q 3
1
1/3
機種R 7
3
1
機種 機種 機種 幾何 ウェイ
P
Q
R 平均
ト
1
1/3 1/2 0.550 0.163
3
1
2
1.817 0.540
2
1/2 1
1.000 0.297
3.367 1.000
幾何
平均
0.362
1.000
2.759
4.121
ウェイ
ト
0.088
0.243
0.669
1.000
統合されたウェイト(各基準のウェイト×基準間のウェイト)
0.540 0.312 0.099 0.048
B
使い
省ス 総合
A
機能 易さ 価格 ペース ウェイト
機種P
0.540 0.109 0.163 0.088 0.346
機種Q
0.297 0.582 0.540 0.243 0.407
機種R
0.163 0.309 0.297 0.669 0.247
経営情報論’01/12/3(11/26)
最終目標から代替案までに
いたる各評価階層において、
各基準間の一対比較表を完
成させた後、それぞれの表に
おいてウェイトを求める。
厳密には、固有値と固有ベ
クトルを求めるが、ここでは幾
何平均による簡便法を用いて
いる(前頁の中央の図参照)。
整合性指数(CI)=(平均-
項目数)/(項目数-1)が、
おおむね0.1程度以下なら
OK。そうでないときは、一対
比較をやり直す(前頁下の図
の右下隅参照)。
各表のウェイトを統合して、
総合ウェイトが最大の代替案
を求める。
27
経営科学の入門文献
1.
2.
3.
4.
5.
6.
7.
他に良書は多いと思いますが、ここでは数
式のあまり出てこない本を中心にあげまし
た。より専門的なテキストについては経営工
学分野の先生に聞いて下さい。また表計算
を活用するテキストは洋書の方が充実して
いると思いますが、省きました。
中村雅章(1997).経営意思決定手法の基礎.同友館.
OR手法の分かりやすいテキスト。とくに確率シミュレーションの所がよい。 文献3,
5,6と同じく、各章末に練習問題が付いている。ちなみに本スライドの例題は、この
文献1を参考にした。
杉浦司(2001).データサイエンス入門:経営に活かすデータ解析の基礎知識.日本実業出版社.
ITにおける経営科学手法活用を紹介した本。眺めているだけで面白いが、統計・
データ分析や経営科学のテキストで1度はきちんと学ぶ必要があるだろう。
宮川公男ら(1999).入門経営科学:ExcelとLotus1-2-3による演習用FD付き.実教出版.
統計処理、在庫管理、線形計画法、待ち行列に焦点を絞って、表計算ソフトを使い
ながらトレーニングできる。理論の説明は前半は比較的しっかりしている。同著者ら
による、より薄い入門書「経営情報入門」 (同出版社)もある。
甲斐章人(1988).経営工学入門.泉文堂.
4は、統計分析や原価計算などの分野が丁寧に紹介されて折り、かつてIE(インダ
ストリアル・エンジニアリング)から発展した経営工学の王道をしのばせる。
定道宏(1989).経営科学(経営情報学講座10).オーム社.
過度な数学的テクニックを用いず、しかし経営科学手法の数理的エッセンスを学べ
る。各章に練習問題もあり、初学者が十分理解できるように配慮されている。
田畑吉雄(2000).経営科学入門.牧野書店.
児玉正憲(編)経済の情報と数理〈15〉。数式を使って理論の説明が中心。
荒木勉(1999).経営科学.情報処理テキストシリーズ.実教出版.
情報処理試験の対策として書かれたものだが、実用的手法にも一部言及するなど、
類書との差別化を図っている。分岐限定法とDPの箇所は分かりやすかった。
経営情報論’01/12/3(11/26)
注:上のニコちゃんマークは講義用テキストとして1年通じて使用したことのあるものです。
28
文献(続き)
6.
中川覃夫・三道弘明(1995).オペレーションズ・リサーチ(生産管理 理論と実践
12).日刊工業新聞社.
以下の文献6,7,8,9は前出の1~5と比べるとやや数学っぽいといえるが、さほど数式は
出てこない。6はとくにスケジューリングの所がよい。
7.
木下栄蔵(1996).マネジメント・サイエンス入門:経営・政策科学の戦略モデル.
近代科学社.
マルコフモデル、ファジィ理論、ゲーム理論などを紹介しており、とくに野球のモデルOERAや
AHPの章が特色。
8.
藤田恒夫・原田雅顕(1989).決定分析入門.共立出版.
意思決定論。意思決定分析への入門。腰を据えて地道に勉強したい人向き。
9.
松原望(2001).意思決定の基礎(意思決定の科学1).朝倉書店.
ベイジアン意思決定論の入門書として画期的だった著作の全面改訂版。また著者は近年、
新書版を含め、計量社会科学のテキスト・教養書を、数冊出版している。
10.
高橋三雄(1996).ビジネス情報技術:Windows95対応意思決定支援ソフト活用法.
日科技連.
パソコンソフトを用いた実践的な意思決定支援の入門。新版が待たれる。
11.
飯島正樹ら(2000).意思決定のための経営情報シミュレーション.同文館.
販売データ分析、投資経済性分析、VBAを使った意思決定シミュレーションの3部構成で充
実した内容。1年間の講義+演習方式で 1冊仕上げたが、準備が要り結構苦労する。
12.
ウォートン・スクールら(2000).意思決定と情報(MBA全集8).ダイヤモンド社.
気軽に読める難しい本。練習問題は無い。ただし、最初に読むべきかの判断は意見が分か
れそう。
経営情報論’01/12/3(11/26)
29
文献(番外)

E.ゴールドラット(2001).ザ・ゴール.ダイヤモンド社.
制約の理論(TOC)を小説仕立てに紹介した本。上司から3ヶ月以内の建て直しか、
さもなくば工場の閉鎖を命じられた工場長の苦悩の日々。ロボットを導入したのに工
場の生産性があがらない。それどころか在庫がたまる一方なのはなぜか? 偶然再
会したかつての大学の恩師は、彼に謎めいた示唆を与える。彼は数学の才能を生
かして、物理学の教授から経営コンサルティングに転進していたのだ。

P.バーンスタイン(2001).リスク(上・下).日経ビジネス人文庫.
この本は確率やギャンブルへの期待についての研究史を、古代人の知恵から現代
におけるヘッジファンドまで、壮大なスケールで描いた教養書。前半は確率と統計の
数学を開拓した研究者たちの、教科書には出ていない逸話が豊富。後半は意思決
定論、ゲーム理論、投資工学の話題に及ぶ。文庫本になって手軽に入手できる。

G.ベルスキー・T.ギロヴィッチ(2000).賢いはずのあなたが、なぜお金で
失敗するのか.日本経済新聞社.
投資はギャンブルなのか? だとすれば数学的な計算で損をしない投資の方法に人
間は興味が無いのだろう。そんな落とし穴は、企業で重要な決断をする立場にある
人たちも陥る可能性が十分にある。あなたの判断や選択を誤謬に導いている心理
法則、系統的誤謬のパタンを、涙を流さずに楽しみながら学べる。

D.ホフスタッター(1990).メタマジック・ゲーム.白揚社.
第2次大戦の前後、経営科学・情報科学の境界領域で活躍した科学者・数学者たち
について書かれた本。著名な科学ライターである著者は、人工知能を巡るエッセー
「ゲーデル、エッシャー、バッハ」(いわゆるGEB本)が1980年代のAIブームに乗って
話題を呼んだが、この本も同様に、ぶあついが、知性を刺激する本である。
経営情報論’01/12/3(11/26)
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