プラズマ工学

プラズマ工学
九州工業大学電気工学科
趙孟佑
No.8
〜プラズマ生成の基礎〜
1
α作用(電子なだれ)
電子
陰極
z=0
紫外線
中性ガス
イオン
陽極
z=d
陰極から初期電子が放出される
(方法は何でもよいが、普通は紫外線とか宇宙線)
2
α作用(電子なだれ)
イオン
電子
陰極
z=0
陽極
中性ガス
z=d
電子が陽極に向かって進行
途中、電離して電子の数が増えていく
電子なだれ(electron swarm)という
3
α作用(電子なだれ)
陰極
陽極
中性ガス
z=d
z=0
電子1個が単位距離を進む間に起こす電離衝突の回数=α (m-1)
zでの電子のフラックスΓe d e
積分して、
dz
  e
 e (z)   eo exp( z)
4
電離係数α
陰極
陽極
A
z=d
z=0
V
電極間の電界V/dを保ったまま、距離dとVを変化させて、電流を
測定すると、電流は距離dに指数関数的に依存する。
I  I o exp( d)
係数αを電離係数という
5
電離係数α
これらの線の傾きから電離係数αを
もとめた
log10I
電界大
電界小
距離d
電離係数αは電極間の平均電界と中性ガス密度(圧力)に依存する
6
電離係数α
電離エネルギー eΦi
Φiはエレクトロンボルトでの値
電子は電界Eの方向に衝突無しでz進むとeEzのエネルギーを得る
電離エネルギーを得るのに必要な走行距離
ei i
zo 

eE E
距離zoを進んだ後で衝突すれば必ず電離を起こすと仮定する。
自由行程がzoより長い電子の数の全体に対する割合

Ne
i 
 exp  

No
 mfp E 
7
衝突
電子ビーム
x
• 電子が同一の速度vでビームを構成していると仮定
• 分子と衝突すると、速度vを失ってビームから離脱する
• dx進む間のビームを構成する電子の数の変化は
dNe  Nen dx
一個の電子が衝突する確率
8
衝突
電子ビーム
x
• x=0で電子の数をN0とすると
dN e
 N en
dx
N e  N o exp n x 
9
平均自由行程
• 電子ビームが散乱されずに残る数
 x 
N e  N o exp  

 mfp 
こういう式でかけるものをポアッソン過程と呼ぶ
1
0.8
e
N /N
0
0.6
0.4
0.2
0
0
0.5
1
1.5
2
x/
2.5
3
3.5
10
電離係数α
電子が単位長さ進む間の衝突の回数
1
mfp
自由行程がzoより長い電子の数の全体に対する割合

Ne
i 
 exp  

No
 mfp E 
電子1個が単位長さ進んで衝突する回数の内、電離になる回数
同じ意味
1
mfp

i 
 exp  


 mfp E 
11
電離係数α:電子1個が単位距離を進む間に起こす電離衝突の回数
実効電離係数α/Nn
平均自由行程はガス密度Nnに比例
1
mfp

i 
 exp  


 mfp E 
 i N n 
  exp  


Nn
E 
mfp
1

N n
代入


i 
  exp  

Nn
E
/
N



n 


B 
 A exp  

Nn
E
/
N
 
n 
電離係数をガス密度でわった
実効電離係数は実効電界
(換算電界)の関数

12
実効電離係数α/p

B 
 A exp  

Nn
E
/
N
 
n 

昔(1930年代)は、密度の代わりにガス圧力(Torr)で表すのが普通だった
p  N n T

B 
 A exp  
p
 E / p 

実験で求めた電離係数を結構よく近似する
13
実効電離係数α/p
Ionizat ion
coefficient
of
wat er
vapor
100
T=300 K
p
10
(1/cm/Torr)
1
Monte-Carlo Code
Ryzko
Risbud and Naidu
0.1
0
10
100
E/p
1000
(V/cm/Torr)
14
γ作用
陰極
イオン衝突による
二次電子の放出
z=0
陽極
z=d
電離衝突でできた正イオンが電界で加速されて陰極に衝突
衝突時のエネルギーで陰極から電子を放出する
⇒
二次電子放出
15
γ作用
陰極
イオン衝突による
二次電子の放出
z=0
陽極
z=d
(イオン衝突)2次電子放出係数:
γi
一個のイオンが衝突してでてきくる電子の数
入射イオンの種類、エネルギー、入射角、陰極材料に依存
16
γ作用
陰極
イオン衝突による
二次電子の放出
陽極
励起された原子からの
紫外線による光電子
準安定励起原子からの
電子放出
z=d
z=0
励起された原子からの紫外線による光電子 γp
準安定励起原子からの電子放出 γm
γ作用
  i  p m
正イオン一個に
換算した値
17
タウンゼント放電(火花放電)
紫外線
中性ガス
陰極
z=0
陽極
z=d
陰極から放出された一個の電子から始って、電子の数が次々に
増えていき、最後には過大な電流が流れるようになって、
放電に至る条件
18
タウンゼント放電(火花放電)
陰極から最初に出る電子のフラックス
o
陽極に到達した時の電子のフラックス
 o exp( d)
d
電極間で増加した電子のフラックス
 oe
 o
陰極に衝突するイオンのフラックス
 oe d   o
(イオンは電離により作られるため、電子の増加分と等しい)
陰極に衝突するイオンのγ作用により
放出される電子のフラックス

  e

 1
1   o e d  1
Γ1で放出された電子により作られた
2
イオンによる放出される電子のフラックス
d
1
19
タウンゼント放電(火花放電)
陰極に衝突するイオンのγ作用により
放出される電子のフラックス
Γ1で放出された電子により作られた
2
イオンによる放出される電子のフラックス

d
 n   n1 e
 e d  1


 1   o  e
d

  e

 1
1   o e d  1

 1 
d
1
n
が1以上なら、紫外線等が外部から来なくても、
最初の1個の電子だけで電流が持続する。
 e d  1 1
20
タウンゼント放電(火花放電)
 e d  1 1
1 
 d  ln   1


タウンゼントの火花条件式
電離係数がこれより大きくなると、電流がどんどん増えて、最
終的に放電(火花放電、Spark-over)に至る
21
パッシェンの法則
実効電離係数

B 
 A exp  
p
 E / p 

をタウンゼントの火花条件式に代入
1 
 d  ln   1



1 
B 
pA exp  
d  ln   1



 E / p 
放電発生電圧(火花電圧)をVsとする
E  Vs / d
代入
22
パッシェンの法則

1 
B 
pA exp  
d  ln   1



 E / p 

B  1 1 
pd exp  
 ln   1


 Vs / pd  A  
 1  1 
B
ln  pd  
 ln  ln   1 
Vs / pd   A    



 Bpd
A

ln  pd   ln 
Vs
 1 
 ln    1 


E  Vs / d
代入
両辺対数とる
整理して
23
パッシェンの法則



 Bpd
A

ln  pd   ln 
Vs
 1 
 ln    1 


整理して
Bpd
Vs 
ln  pd   C
ここでCは定数




A

C  ln 
 1 
 ln    1 


24
パッシェンの法則
Bpd
Vs 
ln  pd   C
圧力pのガスで満たされた距離dの電極間に直流電圧を
かけた時の放電電圧は、圧力と距離の積に依存する
定数Bはガスの種類で決まり、定数Cはガスの種類と
電極の材料で決まる。
25
パッシェン曲線
Bpd
Vs 
ln  pd   C
Vs
低い程、放
電しやすい
最小値をもつ
Paschen Minimumと呼ばれる
Pashcen 曲線
pd
衝突が起きにくい
衝突が多すぎて、電子のエ
ネルギーが高くならない
26
パッシェン曲線
Paschen Minimumは大体0.1~10Torr・cmの間で、
200~400V程度にある
27
パッシェン曲線
放電は、いつも一番近いところで起きるとは限らない
28
高周波放電
• 高真空(中性ガスとの衝突が殆どない)
– マルチパクタ放電
• 電子の極板間の移動時間=半周期
• 中真空(平均自由行程<電極間距離)
– RF(Radio Frequency)放電
• 電子の極板間の移動時間>半周期
29
マルチパクタ放電
電極 A
時刻 t1
時刻 t3
t1に電極Aを出た電子
t2に対向する電極Bに衝突
f
電極Bの極性が正に反転
時刻 t2
電極 B
電子は逆方向へ加速
電極 A、+
電極Aに衝突
t2
t3
t1
電極 B、+
Time
電子放出
30
マルチパクタ放電
電極 A
時刻 t1
時刻 t3
f
時刻 t2
電極 B
• 電子が極板の間を進む時間が半周期に相当する時、
電界から最大のエネルギーを得る
• 極板に衝突する1個の電子が1個以上の2次電子を
放出する
31
高周波中の電子の動き
f
d
• 電子は外部からの電界により加速されるが、電極
に到達する前に電界の方向が反転するので、電極
に到達できない
電子の運動方程式
m
dv
  c mv  eEo sin  t
dt
衝突による運動量損失
外部高周波電界
32
高周波中の電子の動き
電子の運動方程式
dv
m   c mv  eEo sin  t
dt
• 電子の速度も同じ周波数ωで変動すると仮定
• フェーザと同様に考えて
Ve j t
速度vのフェーザ表示
外部電界Eのフェーザ表示 Ee j t
m
dv
  c mv  eEo sin  t
dt
mjV&  c mV& eE&
eE&
V
m  j   c 
33
高周波中の電子の動き
eE&
V
m  j   c 
衝突が無いとき
eE&
V
jm
電子の速度は電界とπ/2位相が
ずれる
電子電流もフェーザ表示する
je  enev

&  jt
Je
e2 ne E&
J
m  j   c 
電子により消費される電力は単位体積あたり
p  je E
34
高周波中の電子の動き
e2 ne E&
e2 ne  j   c &
e2 ne
 j   c &
J

E
E
2
2
2
2
2
2
m  j   c 
m   c
m   c   c
ν
E


J
 j   c
ω
 2  c2
実効電力と同じように考えて、一周期平均をとった消費電力は
P
J 
1 & &
J E cos
2
e2 ne
m  2  c2
E&,
cos  
c
 2  c2
1 e2 ne  c
2
P
E
o
2 m  2  c2
より
E  Eo
35
高周波放電の条件
単位体積あたりに電子により吸収されるエネルギー
1 e2 ne  c
2
P
E
o
2 m  2  c2
電子一個あたりは、neでわって、
e2
c
2
E
o
2m  2   c 2
(A)
プラズマが生成されている領域の代表的な長さ Λ
拡散により、プラズマ生成領域から電子がなくなるのかかる時間
2
Da
両極性拡散係数
36
拡散方程式の解
N
n(x,t)  01
2

 x2 
exp  
Dt
 4Dt 
-3
density (m )
3
t=0.01s
t=0.1s
t=1s
t=5s
2
1
0
-5
-4
-3
-2
-1
0
1
2
3
4
5
x (m)
N01=1 (m-2),D=1m2/sの時の拡散の様子
37
拡散方程式の解
N01
n(x,t) 
2

 x2 
exp  
Dt
 4Dt 
粒子密度の分布は、exp項の値でほぼ決まる
x2
4 Dt
が同じところは、密度もほぼ同じ
密度の拡がる領域は
x  Dt
時間の1/2乗で拡散により密度がひろがっていく
38
高周波放電の条件
拡散により、プラズマ生成領域から電子がなくなるのかかる時間
2
Da
プラズマが維持されるには、この拡散による損失に均衡する
新しい電子が電離衝突により産まれないといけない。
電子一個が電離衝突でできるのにかかる時間は
1
 ion
νionは電離周波数
よって、
2
1

Da  ion
(B)
39
高周波放電の条件
電子一個により、電離衝突が起きるまでに吸収されるエネルギーは
(A)式を使って、
e2
c
1
2
Eo 
2
2
2m    c
 ion
νionに(B)式を代入する
2
e2
c
2 
Eo
2
2
2m    c
Da
放電が起きるためには、このエネルギーが電離エネルギーeΦionよりも
大きくないといけない
2
e2
c
2 
Eo
 eion
2
2
2m    c
Da
eEo2
c
Da
 2
2
2
2mion    c

高周波放電の維持条件
40