一般に公正妥当と認められる 企業会計の基準とは テキスト第6章 田宮治雄 1 金融資産 (1)債権 テキストpp.196-197 2 取得した債権 営業活動で取得した債権 受取手形 電子記録債権 売掛金 (営業活動とは) 典型的には「購買」「製造」「販売」活動 財務活動で取得した債権 貸付金など 社債を取得した場合は有価証券に分類される 3 債権の評価 債権一般を取引する市場が未成熟 市場価格による時価評価の一般化が困難 取得時の価額 マイナス 貸倒見積額 テキストpp.196-197 4 営業活動で取得した債権 わが国の特徴 営業活動で取得した債権 = 売掛金 + 手形 出荷から現金回収までの時間が長い 例:請求まで最大1ヶ月 + 手形支払期間 利子は賦課されない 5 営業活動で取得した債権 世界的には 売掛金を現金(小切手)で回収する取引が中心 金額が大きく確実性が求められる時に手形を受け取ることがある わが国でも 手形をめぐる環境が変化している 信用不安の現実化 決済の電子化、ネットワーク化 手形の発行量は減少している 電子記録債権の普及が鍵となる 6 金融資産 (2)有価証券 pp.198-202 7 有価証券と貸借対照表 貸借対照表 流動資産 有価証券 固定資産 投資その他の資産 投資有価証券 8 有価証券 金融商品取引法第2条で有価証券と定めた証券 (権利を示す証書) 証券自体に価値があると法律で定めている 手形と小切手は有価証券であるが,会計では別途扱う 完全に電子化された(紙ではなくなった) 金融商品 将来キャッシュ・フローの権利に対する契約 将来収入、支出するキャッシュ・フローを見積もることが可能 時価情報の入手が他の資産負債と比較して容易 9 有価証券 保有目的により、評価方法が異なることが現在の会計基準の特徴 売買目的有価証券(時価評価) 有利と判断すれば企業はいつでも売却する 満期保有目的の債券(原価評価・償却原価法適用) 満期まで売却しないと経営者が宣言する 約束を破らなければ,キャッシュ・フローは確定する 確定したキャッシュ・フローの情報はそれなりに役に立つ 子会社株式,関連会社株式(原価評価) 経済的にみて,直接工場を持ったり,人を採用することと同じ効果 時価評価されていたほうが投資家に役に立つ 価格の変動はキャッシュの増減と同じ 固定資産などと同じ評価方法を採用する その他有価証券(時価評価・ただし、損益は実現するまで 認識しない) 長期投資目的や、いわゆる持合など 10 有価証券の評価 流動資産としての有価証券に計上できるのは,売 買目的有価証券に区分した有価証券と、返済期 限まで1年以内となった債券のみ 簿価と比較して時価が著しく下がった場合には、 どの区分の有価証券であっても時価まで減額し なければならない(有価証券の減損・テキスト pp.200-201) 11 棚卸資産 pp.202-211 12 棚卸資産 商品、製品、半製品、仕掛品、原材料、副 資材など 費用性資産 将来売却(消費)を通じて売上に貢献する(費 用として売上に対応できる)能力を持つ cf.貨幣性資産 売上原価計上額(製品商品の払出額)の計算 方法がその期間の利益に大きく影響する 製商品の払出額 = 払出単価 X 払出数量 13 原価配分(費用配分) 原価 発 生 基 準 取 得 原 価 基 準 当 期 の 収 益 に 対 応 す る か する 個別的対応 期間的対応 しない 将 来 の 収 益 に 対 応 す る か 費用 する 資産 しない 損失 14 払出数量の計算(p.203) 継続記録法 商品有高帳の払出記録に基づき計算する 棚卸計算法 日常は払出の記録をせずに、期末に実地棚 卸をして払出量を計算する 期首棚卸数量 当期払出数量 + 当期仕入数量 ー 期末棚卸数量 実際に 数える 15 払出単価の計算 期末棚卸資産の評価(pp.204-209) 個別法 平均法 継続性の原則の遵守 が求められる 先入先出法(FIFO) 後入先出法(LIFO) 移動平均法 総平均法 一度採用した方法は みだりに変更しない 現会計基準では使用が認められない 最終仕入原価法 売価還元法 16 減耗損と損益計算書 棚卸減耗損 有高帳の在庫数量と実地棚卸数量との差 継続記録法を採用している時のみ把握可能 <従来からの計上区分> 損益計算書 計上区分のあいまいさが批判されている 毎期同じように発生する部分 多額の損失が発生したとき または または 売上高 売上原価 販売費管理費 営業外収益 営業外費用 特別利益 特別損失 17 期末棚卸資産評価(続き) 低価法 期末棚卸資産の帳簿価額が時価より高いときは, 必ず時価まで引き下げる 時価:正味売却価額 売却したあと手元に残る金額(手数料等は差し引いた金額) 世界的にみれば、これまでも 棚卸資産の評価は低価法の採用が一般的 帳簿価額と評価損の関係 スライドで後述 18 評価損と損益計算書 評価損(区別しないで同列に扱う) 低価法適用による評価損 品質低下評価損、陳腐化評価損 評価損の記載 損益計算書 売上原価に含めることが原則 見本の評価損など明らかに販売費である場合のみ 災害によるなど明らかに異常な評価損のみ 売上高 売上原価 販売費管理費 営業外収益 営業外費用 特別利益 特別損失 19 棚卸資産の期末評価 原価 時価 棚卸評価損 棚卸評価損 棚 卸 減 耗 損 期末の棚卸資産価額 実 際 棚 卸 数 量 帳 簿 棚 卸 数 量 20 有形固定資産 pp.211-221 21 固定資産の種類 有形固定資産 無形固定資産 建物、機械装置、土地、車両運搬具、建設仮 勘定 営業権、借地権、特許権、商標権 投資その他の資産 投資有価証券、長期貸付金、長期前払費用 22 有形固定資産 使用することで収益に貢献する資産 土地を除いて、使用可能期間は有限 営業活動で使用する中で価値が減少する 物理的減価 機能的減価 陳腐化 不適応化 減価償却:価値減少分を見積もって費用化する 23 減価償却 有形固定資産の取得原価をその使用期間 に配分し、費用化する手法 機械 取得価額 \1,000,000 耐用年数 5年 目的:適正な期間利益の計算 (原価配分の一形態) 例 減価償却費 減価償却費 減価償却費 減価償却費 減価償却費 ¥200,000¥200,000¥200,000¥200,000 ¥199,999 第1年度 第2年度 第3年度 第4年度 第5年度 機械 残存価額 \1 (0%) 24 再掲:原価配分(費用配分) 原価 発 生 基 準 取 得 原 価 基 準 当 期 の 収 益 に 対 応 す る か する 個別的対応 期間的対応 しない 将 来 の 収 益 に 対 応 す る か 費用 する 資産 しない 損失 25 減価償却 減価償却の根拠 固定資産に価値の減少という事実が発生する 資産使用中はどれだけ価値が減少したかわからない 廃棄または売却して初めて確定する 資産使用中は仮定に基づいて価値の減少額(発生 額)を計算し、費用化する 26 減価償却費と損益計算書 工場で発生した減価償却費: 製品原価に加算されて売上原価に 損益計算書 売上高 売上原価 売上総利益 販売費管理費 本社・営業所で発生した減価償却費: 販売費および一般管理費に 減価償却費 営業利益 27 減価償却の方法 テキストpp.213-214 定額法 定率法 価値の減少率(償却率)は毎年同じと仮定する方法 期間全体の償却額合計は同額 価値の減少額(償却額)は毎年同じと仮定する方法 p.215第10年度の減価償却累計額が同じであることを確認 税法:計算式が大きく変わった 残存価額を\1とする 定率法の計算式が一新された 28 税法による定率法のイメージ 帳簿残高 償却保証額まで 償却額 = 帳簿残高 X 償却率 償却率:定額法償却率の2倍 (2011年4月以降購入分) 償却保証額到達後 償却額 = 毎年一定額 償却保証額 耐用年数 残存価額 = 1円! 29 その他の減価償却の方法 生産高比例法 固定資産の価値の減少を生産高で測定でき る場合に適用することができる 例:ジェット機のエンジンの減価償却 級数法 耐用年数5年の場合 1年目 2年目 5 X (取得価額 - 残存価額) 5+4+3+2+1 4 X (取得価額 - 残存価額) 5+4+3+2+1 30 減価償却と貸借対照表 貸借対照表 有形固定資産の帳簿価額 (減価償却後の価額) 有形固定資産 345 注記:有形固定資産の減価償却累計額は、\567です。 有形固定資産の取得価額 = \345 + \567 = \912 31 減価償却費と税金 減価償却の方法を変えると 使用期間全体の償却額は変わらないが 減価償却費の計上を早めることはできる 利益計上を先に延ばす効果 税金の支払を先に延ばす効果 例 定率法の採用 有利な減価償却を認めて、企業に政策にかなっ た投資をするよう国が誘導することがある 特別償却 割増償却 32 減損会計 対象となる資産 営業用(事業用)資産 有形固定資産、無形固定資産、投資など 帳簿価額>回収可能価額の場合 帳簿価額を回収可能価額まで引き下げる 帳簿価額<回収可能価額の場合はそのまま 33 減損会計のニーズ 取得原価で評価された資産が計上されて いる貸借対照表を信頼できるか 特に、時価が取得原価を下回った時に、財務 情報に対する利用者の信頼を獲得できるか 少なくとも、貸借対照表価額が時価を下回っ ていないことを制度的に保証することで、財務 情報の利用者の信頼を獲得したい 34 リース取引のメリットとディメリット メリット 銀行の借入枠の外で設備投資ができる 投資額を短い期間で費用化できる 導入初年度の資金負担が少ない リース期間 < 設備の耐用年数 の場合 ディメリット リース料は割高 中途解約は著しく不利 35 リース会計を導入する要請の背景 固定資産を取得する場合 損益計算書 リースを利用する場合 貸借対照表 損益計算書 貸借対照表 借入金 減価償却費 固定資産 賃借料 支払利息 実質優先 経済的に同じ効果があるならば 両者の財務諸表は同じ表現になるべき リースを利用した場合も、固定資産を取得した場合と 同様の財務諸表となるような会計処理を求める 36 リース会計の特徴 リース取引を2つに分類し、異なる会計処 理を求める ファイナンス・リース 経済的実質に即して、リースを金融として捉え、融 資を受けて固定資産を導入した場合と同様の財務 諸表となるように会計処理を行なう オペレーティング・リース 実質的に金融取引であると必ずしもいえないリー ス取引については、従来通り賃貸借として扱う 37 無形固定資産ほか pp.221-227 38 無形固定資産 究極の事業用資産 無形固定資産 企業が事業活動を行う基盤を形成する資産 使用して利益を得る目的で無形固定資産を保有 研究開発費は原則無形固定資産に計上されない。 目的は有形固定資産と同じ 発生した時に費用計上収益を獲得する確実性がない 繰延資産 忘れ去られようとしている資産 20世紀の遺物 <注意>繰延税金資産(税効果会計・後述)は,繰延資産では ない 39 買入債務 買掛金と支払手形 テキスト外 40 貸借対照表 買掛金(かいかけきん) xxx 負債 流動負債 買掛金 買掛金 受け取った商品に対する支払義務 営業債務 通常は利息は支払わない 借入金とは異なる債務 41 買掛金 買掛金が多いことはいいことか? もし買掛金を使わないで経営するとどうなるか 掛で買うことができるのはどのような企業か キーワード:信用 支払われないかもしれない危険を販売側が負 担する 42 貸借対照表 手形による支払 手形 所定の期日に支払を約束した証書 現金の代わりに手形を渡す 支払手形 xxx 買掛金 xxx 流動負債から流動負債に振替 手形を渡す行為がなぜ支払になるのか? キーワード:銀行の介在:取引の継続:信用 43 貸借対照表 現金預金 xxx 支払手形 xxx 手形の決済 満期日に当座預金から引き落とされる 手形や小切手を振り出すための預金 利息はつかない 預金が手形金額に足りなかった場合 債務者が支払を止めることはできない 当座預金: ともに減少 不渡り 手形で支払う件数は近年減少している 44 貸借対照表 買掛金と似た項目 買掛金 xx 未払金 xxx 未払金 商品や材料以外の購入で発生した支払義務 機械設備や消耗品などの購入 営業債務 負債としての本質は買掛金と同じ 45 有利子負債 借入金と社債 テキスト外 46 借入金と社債 借入金:銀行や親会社からまとめて融資を受ける 通常は信用度に応じた利息を支払う 返済時期や利率は契約により決定 社債:投資家に債券を買ってもらう 証券化することで、多くの投資家に少額ずつ買ってもらうこ とが可能 利率や返済条件は一律 格付けに応じた利率 割引発行 満期返済額と発行価額の差額は、期間ごとに利息計上 例:発行時 (借)現金預金 9,500 (貸)社債 9,500 期末 (借)支払利息 100 (貸)社債 100 47 引当金 pp.227-229 48 引当金 これまでの理論 費用収益対応の原則の適用 引当金計上の条件 当期の収益に対応する、まだ支払のない費用の計上 テキストp.228中ほど「重要なことは・・・」 テキストp.228 引当金の分類(p.229) 負債性引当金 評価性引当金 貸倒引当金以外の引当金 貸倒引当金 49 引当金 引当金が負債であることに重点を置いた見直し が始まっている 将来キャッシュ・アウトが確実に予想されることが引当 金計上の根拠 損益の対応関係は付随的な効果 テキストp.228中程(負債としての「〇〇引当金」~)の説明が逆転する 退職給付引当金(テキストpp.230-234)は、新しいタイ プの引当金のさきがけ 負債の一種という位置づけ 近い将来引当金という名称がなくなる? 例:退職給付引当金 退職給付に係る負債 50 税効果会計 pp.234-239 51 税効果会計の意味 税効果会計適用の原因 法人税・住民税・事業税は利益を基礎とする税金なのに・・・ 目的が違う という理由で、当期純利益を修正して課税所得を計算(p.160) 税引後の当期純利益が 業績を適切に示さなくなる 税効果会計適用の影響 損益計算書(テキストp.16) 法人税等調整額(当期純利益のすぐ上) 業績を適切に示すように法人税,住民税及び事業税の額を修正する 貸借対照表(テキストp.15) 繰延税金資産(流動資産および投資その他の資産) 将来損金として税額を引き下げる項目 52 企業結合会計 pp.239-242 53 企業結合会計 企業結合 2つ以上の企業が一つにまとまること 買収、合併、子会社化が該当 企業結合会計は受け入れる側が行う会計 受け入れる資産と負債を時価で評価する のれん 支払った価額 受け入れた資産負債の時価 差額がのれん 54 資産除去債務 pp.242-244 55 資産除去債務 きっかけ 負債はすべて計上する 稼働を始めた原発はいつか解体する日が来 るのは確実 汚染物質を取り除き、解体するためにかかる 費用は、稼働を始めた時から負債として認識 すべき 56 偶発債務 pp.245-247 57 偶発債務 将来債務が発生するリスクを背負っている場合 に財務諸表に注記する 手形の裏書 保証債務 裁判所に提訴された係争事件 債務発生の可能性が高まり,引当金計上要件を 満たすようになった場合には,引当金に計上する リスク情報開示の要請が高まる中で、偶発債務 の開示に注目が集まる 58
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