X線天文学と 宇宙の高エネルギープラズマ 名古屋大学KMI 現象解析研究センター 松本浩典 新潟大学集中講義 1 通常の天文学 (乙女座銀河団) 2 X線でみると… 3 目で見る世界とX線の世界 ©SDSS 銀河団=銀河の集団 ©RASS 銀河団 = 数千万度の火の玉 世界観が変わった! 4 集中講義の内容 • • • • X線、X線放射過程 超新星残骸プラズマ 銀河団プラズマ 天の川銀河中心プラズマ 新潟大学集中講義 5 講義にあたって 講義中の質問、大歓迎です。 スライド中心の講義です。 ペースが早過ぎるときは、 遠慮なく言ってください。 新潟大学集中講義 6 X線について 新潟大学集中講義 7 電磁波 http://www.astro.isas.jaxa.jp/xjapan/xrayintro/light.html 光子E = 電磁波 hν = 電磁波hλ/c 新潟大学集中講義 8 X線 http://www.astro.isas.jaxa.jp/xjapan/xrayintro/light.html X線光子E = 0.1keV~100keV X線天文学の慣習 軟X線: E<1keV、硬X線: E>10keV 新潟大学集中講義 9 エネルギーの単位 eV: エレクトロンボルト (電子ボルト) +1V e 1Vの電位差で電子を 加速したときに、電子 が得るエネルギー 0V 1eV=1.6e-12 erg =1.6e-19 J 新潟大学集中講義 10 次元解析 E = hν ~ kT 4 T~10 K×[E/1eV] E=1keVのX線の発生 =熱的なら、10^7Kの現象が関与 新潟大学集中講義 11 X線 http://www.astro.isas.jaxa.jp/xjapan/xrayintro/light.html 12.4Å 比較: ボーア半径 0.5Å 𝜆= 𝐸 ( ) X線は原子と直接相互作用 1𝑘𝑒𝑉 新潟大学集中講義 12 1barn=10-24 cm2 X線・ガンマ線と物質の相互作用 炭素原子 1 .光電効果 2. 弾性散乱 3. コンプトン散乱 4. 対生成 X-ray data Booklet http://xdb.lbl.gov/ 新潟大学集中講義 13 断面積 古典電子半径 mc^2 = e^2/r r = e^2/mc^2 ~ 3e-13 cm^2 トムソン散乱断面積 σ = (8π/3)r^2 = 7e-25 cm^2 ~ 1 barn 新潟大学集中講義 14 光電効果 γ 光子は消滅。電子飛び出す(光電子)。 新潟大学集中講義 15 光電効果 K edge 断面積 σ∝E^-3 σ∝Z^5 K edge 光子E>K edge … K殻電子飛び出す 新潟大学集中講義 弾性散乱 γ 光子のE変化なし。電子飛び出ない。 新潟大学集中講義 17 コンプトン散乱(非弾性散乱) γ 光子E減少。電子飛び出る。 新潟大学集中講義 18 コンプトン散乱(非弾性散乱) 断面積 σ∝Z 原子内の電子数に比例 新潟大学集中講義 19 対生成 γ 光子消滅。電子・陽電子が飛び出る。 新潟大学集中講義 20 対生成 断面積 σ∝Z^2 原子の静電エネルギー に比例 新潟大学集中講義 21 重い荷電粒子(陽子etc)と物質の相互作用 電離損失 物質を電離しながらエネルギーを失う。 新潟大学集中講義 22 Bethe-Bloch電離損失公式 定性的導出 W.R. Leo “Techniques for Nuclear and Particle Physics Experiments” 𝑧𝑒: 入射粒子の電荷 γ: 入射粒子の相対論的因子 v: 入射粒子の速度 Ne: 物質の電子個数密度 𝑣: 物質の電子の束縛振動数 me: 電子質量 もっと厳密な式は、例えば Review of Particle Physics http://pdg.lbl.gov/index.html 新潟大学集中講義 23 色々な粒子の電離損失 W.R. Leo “Techniques for Nuclear and Particle Physics Experiments” 入射粒子v~0.96cで最少 新潟大学集中講義 24 その他 • 重たい荷電粒子 –チェレンコフ放射 • 入射粒子V > c/n (n:物質屈折率) • 軽い荷電粒子 –電離損失 • 軽いのでジグザグ運動。 • 同種粒子の散乱。 –制動放射 新潟大学集中講義 25 宇宙の観測 H.Bradt, “Astronomy Methods” 地球大気による光の減衰 新潟大学集中講義 26 電波の観測 大気減衰なし。ミリ波だと水分子が吸収。 新潟大学集中講義 27 赤外線の観測 水、酸素などの分子が吸収。 新潟大学集中講義 28 可視光の観測 (奇跡的に?)大気吸収がない。 新潟大学集中講義 29 紫外線の観測 大気(窒素・酸素など)による光電吸収 新潟大学集中講義 30 X線の観測 大気による光電吸収…大気圏外で観測 新潟大学集中講義 31 ガンマ線の観測 大気によるコンプトン散乱 新潟大学集中講義 32 大気圏外での観測 ロケット 高度~100km 数10分しか観測できない。 人工衛星 高度>500km (例:すざく衛星…500km, 1周100分 Chandra … 16000~139000km, 1周64時間) 新潟大学集中講義 33 X線天文学のはじまり 2012年は、X線天文学50周年 新潟大学集中講義 34 1962年 ASE-MITのロケット実験 自転 ガイガー カウンター Space Science Reviews, 1965, 4, 151 35 太陽系外X線源の発見 Sco X-1, Cosmic X-ray Background 新潟大学集中講義 36 X線放射過程 新潟大学集中講義 37 熱的放射と非熱的放射 • 熱的放射: 電子がマクスウェル分布 –代表例: 黒体放射、光学的に薄いプラズ マからの放射 • X線スペクトルにexp(-E/kT)の曲がり • 非熱的放射: 電子がpower-law分布 –代表例: シンクロトロン放射 • X線スペクトルもpower-law 新潟大学集中講義 38 Specific intensity I(ν, Ω) n ある面(法線 n)を、ある方向 (Ω)へ通過する光線(振動数ν) のエネルギー n dE I ( , ) cosdAdtdd 単位は、例えば [dE] = erg [I] = erg /cm^2/s/str/Hz 新潟大学集中講義 39 フラックス ある面(法線 𝑛 )を単位面積・単位時間あた りに通過する光線のエネルギー (I(ν,Ω)を全方向で積分) 𝐹(𝜈) = 𝐼(𝜈, Ω) 𝑐𝑜𝑠𝜃𝑑Ω 単位は例えば、 [F(ν)] = erg/s/cm^2/Hz 新潟大学集中講義 40 光度(Luminosity) L(ν) 天体が振動数νの光で全方向に放射して いるエネルギー。 単位は例えば[L(ν)] = erg/s/Hz 新潟大学集中講義 41 光度とフラックス L(ν) 距離D フラックスF(ν) もし天体が等方的に放射していたら、 L(ν) = 4πD^2 F(ν) 多くの場合、等方放射を仮定して、フラックス から光度を推定。 新潟大学集中講義 42 熱的X線 •光学的に厚いプラズマ =黒体放射 •光学的に薄いプラズマ 新潟大学集中講義 43 光学的に厚い天体 光子が抜け出てくるまで、何度も物質と衝突。 黒体放射 新潟大学集中講義 44 黒体放射のスペクトル H. Bradt Astronomy Methods 新潟大学集中講義 45 黒体放射フラックススペクトル kT=1keV kT=3keV kT=10keV 新潟大学集中講義 46 X線を出す物体の温度 I(ν, T)が最大になる ν hν_max = 2.82 kT 1keVのX線…ν=2.4e17Hz ν_max = 2.4e17 Hzのとき、T = 2.0e6 K 数百万度以上でないとX線は出ない。 新潟大学集中講義 47 黒体放射の例 • 中性子星表面からのX線 –kT~0.1keV • 降着円盤 –多温度の黒体放射の重ね合わせ 新潟大学集中講義 48 光学的に薄い場合 発生した光子が、そのまま出てくる 熱的制動放射 新潟大学集中講義 49 連続成分: 熱的制動放射 •高温のため、プラズマ 状態 •電子は、マクスウェル ボルツマン分布 •電子が、イオンの電場 で曲げられて、X線放出 50 熱的制動放射 詳細は、例えばRybicki & Lightman “Radiative Processes in Astrophysics” Emissivity = 単位体積あたりの放射率 𝜀 𝑓𝑓 スペクトル 𝜀𝜈 𝑓𝑓 1 𝑑𝑊 = = 1.4 × 10−27 𝑇 2 𝑛𝑒 𝑛𝑖 𝑍 2 𝑔𝐵 𝑑𝑡𝑑𝑉 (erg s-1 cm-3) 1 𝑑𝑊 −38 −2 = = 6.8 × 10 𝑇 𝑛𝑒 𝑛𝑖 𝑍 2 𝑔𝑓𝑓 𝑒 −ℎ𝜈/𝑘𝑇 𝑑𝑡𝑑𝑉𝑑𝜈 (erg s-1 cm-3 Hz-1) 51 定性的理解 Emissivity 1 𝑑𝑊 𝑓𝑓 −27 2 2 𝜀 = = 1.4 × 10 𝑇 𝑛𝑒 𝑛𝑖 𝑍 𝑔𝐵 𝑑𝑡𝑑𝑉 (erg s-1 cm-3) イオンと電子が衝突 εff∝n_e n_i (多くの場合n_e~n_i) 衝突回数は電子速度に比例 εff∝T^0.5 新潟大学集中講義 52 スペクトルの例 ff 1 2 dW 6.8 1038 T ne ni Z 2 g ff e dVdtd hv kT 曲がり方温度。 光度ne ni V 𝑛𝑒 𝑛𝑖 𝑉: emission integral (emission measure) kT=1keV kT=3keV kT=10keV 新潟大学集中講義 53 輝線: 特性X線 γ 空席が発生 •衝突で励起 •光電効果 特性X線 新潟大学集中講義 54 輝線: 特性X線 特性X線のエネルギー γ •どの殻からどの殻へ 落ちるか。 •原子内のその他の 電子の状態 新潟大学集中講義 55 特性X線の呼称 微細構造も含めて Kα線 L殻 K殻 Kβ線 M殻K殻 Lα線 M殻 L殻 Lβ線 N殻L殻 など ©X-RAY DATA BOOKLET 新潟大学集中講義 56 電子が出る時もある 空席が発生 •衝突で励起 •光電効果 オージェ電子 新潟大学集中講義 57 特性X線を出す確率 (蛍光収率) ©X-RAY DATA BOOKLET 新潟大学集中講義 58 特に重要な特性X線 例:天の川銀河中心X線 •6.4keV線 中性Fe Kα線 •6.7keV線 He状イオンFe Kα線 •6.9keV線 H状イオンFe Kα線 Koyama et al. 2007, PASJ, 59, 245 新潟大学集中講義 59 どんなイオンになっているか 新潟大学集中講義 60 Seward, F. & Charles. P. “Exploring the X-ray Universe” 二電子性再結合 ν この場合は、ヘリウム状イオンのKα線より、 少しだけエネルギーの低いX線が出る。 サテライト線 新潟大学集中講義 61 連続成分: free-bound放射 γ 自由電子が捕まった場合 新潟大学集中講義 62 Free-bound放射 0 電子の 運動E の範囲 光子数 E スペクトル 電子の運動E の範囲 -Eb Eb F-B放射からも温度がわかる。 新潟大学集中講義 E 63 光学的に薄い高温プラズマのX線放射 連続成分 制動放射、FB遷移 輝線成分 サテライト線なども全て考慮 X線天文業界でメジャーなプラズマモデルは、 MEKAL、APEC、Raymond-Smithなど。 新潟大学集中講義 64 プラズマX線放射モデルのパラメター • 温度 – 衝突電離平衡プラズマの時は、 kT_e = kT_p = kT_イオン化 – 衝突電離非平衡 … 超新星残骸など 各種の温度が異なる。 nt: 密度×電離時間もパラメター • アバンダンス – 各原子の存在比(n_z/n_p)。太陽組成や宇宙 組成が基準。 • Emission Integral – n_e n_p V 明るさを決める(normalization) 新潟大学集中講義 65 太陽組成比の例 X線天文で良く使う、Anders & Grevesse Anders E. & Grevesse N. (1989, Geochimica et Cosmochimica Acta 53, 197) 個数密度比(n_Z/n_p)。水素Hを1として、 Mg: 3.80e-5 He: 9.77e-2 Si: 3.55e-5 C: 3.63e-4 S:1.62e-5 N: 1.12e-4 Ar: 3.63e-5 O: 8.51e-4 Fe: 4.68e-5 Ne: 1.23e-4 新潟大学集中講義 (代表的なものだけ) 66 等価幅 I ライン強度 IL erg/s EL 連続線強度 IC(EL) erg/s/eV E(eV) 等価幅 EW = IL/I(EL) eV 等価幅 新潟大学集中講義 67 等価幅とアバンダンス 連続成分強度 IC(EL)∝nenp ライン強度 IL∝ nenion 𝐼𝐿 𝑛𝑒 𝑛𝑖𝑜𝑛 𝑛𝑖𝑜𝑛 𝑛𝑍 𝐸𝑊 = ∝ = ∝ 𝐼𝐶 𝐸𝐿 𝑛𝑒 𝑛𝑝 𝑛𝑝 𝑛𝑝 等価幅はアバンダンスを反映 新潟大学集中講義 68 APECモデルによる計算例 アバンダンス 1 solar kT=1keV kT=3keV kT=10keV 新潟大学集中講義 69 6~7keVの鉄の特性X線あたり kT=1keV kT=3keV kT=10keV 6.7keV輝線は、 多くの 微細構造線 サテライト線 の混合 新潟大学集中講義 70 1keVあたりを拡大 kT=1keV ライン放射の 寄与が大。 主に鉄。 kT=1keV kT=3keV kT=10keV 新潟大学集中講義 71 高温プラズマのcooling curve Seward, F. & Charles. P. “Exploring the X-ray Universe” Cooling rate = P×n_e n_i V 新潟大学集中講義 72 光学的に薄い高温プラズマ放射の例 • • • • 超新星残骸 楕円銀河 銀河団 星のコロナ などなど、枚挙にいとまがない。 新潟大学集中講義 73 非熱的X線 代表例:シンクロトロン放射 新潟大学集中講義 74 Power-law 型スペクトル Log N N 非熱的な放射の場合、電子のエネルギー分 布はpower-law型をしている場合が多い。 Log N∝-p LogE N∝E^-p E power-lawを生みだす機構 …例えばフェルミ加速 新潟大学集中講義 Log E 75 シンクロトロン放射 相対論的電子が、 磁場に巻きついて 放射 http://www.isas.ac.jp/ISASnews/No.201/micro.html 新潟大学集中講義 76 サイクロトロン振動数 p 𝑣 𝑝𝜔 = 𝑒 𝐵 𝑐 𝑒𝑣𝐵 𝜔= 𝑝𝑐 電子が遅い 電子 ωΔt B ☉ 𝑒𝐵 𝑝 = 𝑚𝑣 𝜔𝐵 = 𝑚𝑐 電子が相対論的 𝑒𝐵 𝑝 = 𝛾𝑚𝑣 𝜔𝐵 = 𝛾𝑚𝑐 新潟大学集中講義 77 シンクロトロン周波数 2 𝛾 𝑒𝐵 𝐸 定性的 𝜔c ∼ 𝛾 3 𝜔𝐵 = = 𝑚𝑐 𝑚𝑐 2 詳しくは 3 𝛾 2 𝑒𝐵 𝐸 17 𝜔c = ∼ 1.0 × 10 𝐻𝑧 2 𝑚𝑐 1𝑇𝑒𝑉 新潟大学集中講義 2 2 𝑒𝐵 𝑚𝑐 𝐵 1𝑚𝐺 78 粒子の速度が遅いとき(サイクロトロン放射) Rybicki & Lightman “Radiative Processes in Astrophysics” 観測者が見る電場 t 周波数分布 ω/ωB ωB=qB/γmc 新潟大学集中講義 79 粒子が中間速度 観測者が見る電場 周波数分布 ω/ωB ωB=qB/γmc 新潟大学集中講義 80 粒子が相対論的(シンクロトロン放射) 観測者が見る電場 0.29ωcぐらいでピーク 周波数分布 ωc/ωB ω/ωB 新潟大学集中講義 81 電気双極子放射 2 −3 放射率P (erg/s): 𝑀𝐿 𝑇 1 3 2 2 −1 電荷e (esu): 𝑀 𝐿 𝑇 加速度 a (cm/s2): 𝐿𝑇 −2 光速 c (cm/s): 𝐿𝑇 −1 次元解析: 𝑃 ∝ 𝑒2 2 𝑎 3 𝑐 ちゃんとやると、𝑃 = 新潟大学集中講義 2𝑒 2 2 𝑎 3 3𝑐 82 1個の電子のシンクロトロン放射 放出される光子の平均的なE(erg) 2 𝐸~ℎ𝜔𝑐 ∝ 𝐵 𝐸 放射率P(erg/s) 2 2 2𝑒 𝑒𝛾𝛽𝐵 2 2 𝑃= 3 ∝𝐵 𝐸 3𝑐 𝑚 (粒子の静止系で電場=𝛾𝛽𝐵) 磁場との角度が色々な粒子がいるので、 2 4𝑒 𝑒𝛾𝛽𝐵 𝑃 = 3 9𝑐 𝑚 2 E = 2.54 × 10 𝑒𝑉 𝑠 1TeV 3 新潟大学集中講義 2 B 1mG 83 2 シンクロトロン放射のスペクトル Power-law分布(∝E^-p)をしている電子が シンクロトロン放射をすると、 F(E) ∝ E^-Γ Γ = (p+1)/2 [F] = photons/s/cm^2/eV 放射スペクトルもpower-law。 べき Γ : photon indexと呼ぶ。 新潟大学集中講義 84 Power-law放射の定義の違い 業界(波長)により定義が違うことがある。 電子がE^-pの分布のとき、 S(ν)∝ν^-α : α=(p-1)/2 [S] = erg/s/cm^2/Hz 電波業界で主に使用 F(E)∝E^-Γ : Γ= (p+1)/2 = α+1 [F] = photon/s/cm^2/eV X線業界で主に使用 新潟大学集中講義 85 シンクロトロンX線放射の例 • パルサー風星雲 • 活動銀河核のジェット • 超新星残骸 などなど 新潟大学集中講義 86 X線放射過程は他にもたくさん • 荷電交換反応 • 非熱的電子による低エネルギー光子の逆 コンプトン散乱 • 熱的電子による低エネルギー光子の逆コ ンプトン散乱 • 非熱的電子による制動放射 • 電子がPower-law分布でない非熱的放射 などなど。 新潟大学集中講義 87 X線検出技術 新潟大学集中講義 88 X線の検出: 比例計数管 ν 窓(Beなど) アンプ 芯線 希ガス(Arなど) +少量の混ぜ物(CH4など) 新潟大学集中講義 R 1000~2000V 89 動作原理 ν Zが大きくて気体 希ガス 光電効果 電離損失 (一次電子雲) 比例係数管の電 場で加速。 衝突電離で増幅 (二次電子雲) なだれ増幅 新潟大学集中講義 90 入射光子のエネルギー測定 出力電圧(V) ∝二次電子数 N ∝ 入射光子 E(=hν) エネルギー分解能ΔE/E ∝ ΔV/V ∝ ΔN/N (ガイガーカウンター: 感度をあげるため、電圧をうんと 上げる。そのため、NとEが比例しない。) 新潟大学集中講義 91 エネルギー分解能 一次電子数 N’ ∝ E/W (W~20eV) ΔN’ ∝ sqrt(N’) = sqrt(E/W) ΔN’/N’ ∝ sqrt(W/E) 二次電子N ΔN/N = sqrt (W/E + なだれ増幅ゆらぎ….) 実際の比例計数管は、ΔE/E ~0.1 (@5keV) 新潟大学集中講義 92 位置を測定 ν V1 x V2 大きな抵抗を持つ芯線 L x/L ~ V2/(V1+V2) 新潟大学集中講義 93 エネルギー分解能をあげる 二次電子数N ΔN/N = sqrt (W/E + なだれ増幅ゆらぎ….) • • Wが小さい なだれ増幅しない 半導体検出器 新潟大学集中講義 94 例:pn型半導体 n ν p 空乏層中の 光電効果、電離損失 で一次電子雲発生 一次電子数N = E/W W=3.6 eV 増幅しなくても良い。 新潟大学集中講義 95 半導体検出器と比例計数管の比較 半導体検出器(Si) 比例計数管 Mn KαとKβ 分離できない。 Mn Kα 5.89keV Mn Kβ 6.49keV ©大野喜明修士論文@大阪大学 新潟大学集中講義 96 X線CCD 1pixelが一つの半導体検出器 エネルギー分解能が良い。 位置分解能も良い。 新潟大学集中講義 97 時間分解能 読み出し回路を各ピクセル毎に作れない。 バケツリレー 時間分解能に劣る (例:すざく衛星8秒) 新潟大学集中講義 98 長所短所 時間 例 エネル 空間 ギー 分解能 分解能 分解能 比例計数管 × △ ○ Einstein, ROSAT, ぎんが, etc. X線CCD ○ ○ × あすか、すざく、 Chandra, XMMNewton ,etc もちろん、検出器は他にもたくさんあります。 新潟大学集中講義 99 X線反射鏡 金属板のバームクーヘン。薄く当てて反射。 金属と光 プラズマ振動数 金属内の自由電子の反応スピード 次元解析 −1 プラズマ振動数 𝜔𝑝 = 𝑇 1 3 2 2 電荷 𝑒 = 𝑀 𝐿 𝑇 −1 電子数密度 𝑛 = 𝐿−3 電子質量 𝑚 = 𝑀 𝜔𝑝 = 𝑛𝑒 2 𝑚 X-ray 𝜔 > 𝜔𝑝 遮蔽が効かず、金属に侵入。 新潟大学集中講義 101 金属の屈折率 X線領域では、𝑛 = 1− 𝜔𝑝 2 𝜔 <1 すれすれ入射で全反射 𝜔𝑝 の大きい金属=貴金属(Au、Pt etc)を使用 新潟大学集中講義 102 活躍中の主要X線天文衛星 すざく衛星(日本) 2005年7月~ 総重量1.7t 消費電力660W 全長6.5m 新潟大学集中講義 103 すざく衛星搭載機器 X線望遠鏡 (XRT) X線CCD (XIS) + 硬X線検出器(HXD) 新潟大学集中講義 104 X線望遠鏡(XRT)+X線CCD(XIS) • 表面照射型(FI) 3台 (現在2台;1台故障) – E>2keVの有効面積大 • 裏面照射型(BI) 1台 – E<2keVの有効面積大 • 角度分解能~2分角 • エネルギー分解能~130eV@6keV • 有効面積~160cm^2 (FI), 110cm^2 (BI) at 8keV バックグラウンドノイズが低い。 高エネルギーdiffuse放射の検出が得意。 新潟大学集中講義 105 硬X線検出器(HXD) • 半導体検出器(PIN) + シンチレーター(GSO) – PIN 10—70keV – GSO 40—600keV • 時間分解能 61μs • 画像は取れない (光学系なし) 低いバックグラウンドノイズ。高エネルギー 放射の検出が得意。 新潟大学集中講義 106 アメリカ: Chandra衛星 •全長14m, 4.6トン (すざく 全長6.5m, 1.7トン) •スペースシャトル コロンビアで1999年打ち上げ 107 Chandra衛星の特徴 かに星雲: Chandra衛星 ROSAT衛星 X線望遠鏡+X線CCD 綺麗なX線画像 108 ヨーロッパ: XMM-Newton衛星 •全長10m , 3900トン •アリアンVロケットで、1999年打ち上げ 109 XMM-Newton衛星の特徴 X線望遠鏡+X線CCD 空の何も無い所を 長時間見た結果 •全てブラック ホール 暗い天体まで よく見える。 110
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