通訳翻訳論5 通訳の実務 会議通訳 獨協大学 国際教養学部言語文化学科 永田小絵 会議通訳 専門分野における相互交流と 国際理解の促進を支える 会議通訳とは ◦ 会議通訳者(Conference Interpreter) ◦ 一般に「同時通訳者」とも呼ばれる ◦ 同時・逐次通訳の技術を習得している ◦ 国際会議の通訳を務める ◦ 大部分はフリーで活動する 日本では、自ら営業し顧客を開拓する完全なフリーラン ス通訳者は非常に少なく、「通訳エージェント」に登録 して派遣されるのが一般的(ときには知人や元の勤め先 などから直接受注することもある)。 通訳エージェントでは登録の際に面接を受ける。履歴書 を提出し、学歴・職歴および通訳翻訳実績を確認すると ともに、得意分野の申告やスキルチェック等が行われる。 通訳エージェントがランク付けが行い、通訳者として登 録される。 通訳者のランク付け(S・A) S Aランク要件に加え、医薬品など特定の分野 での認定 A 実務経験10年以上の同時通訳及び逐次通訳実 務経験者。 (100名以上の国際会議、記者会見、セミナ ー、シンポジウム、 講演会などの同時通訳及び逐次通訳の実務経 験、並びに民間企業役員、 政財界、 各国大使館、皇室等を含む各国主要VIP等の 会見、 各種スピーチ、随行/対談通訳等) 同時通訳養成課程の修了生(中退者不可)。 通訳者のランク付け(B・C) B 実務経験5年以上の同時通訳及び逐次通訳実務経験者。 (各種国際会議、記者会見、セミナー、シンポジウム、 講演会などのサブ同時通訳及び逐次通訳の実務経験、 並びに民間企業役員/管理職レベル社内会議、戦略会 議等、 政財界、各国大使館等を含む各国主要VIP等の会 見、各種スピーチ、随行/対談通訳等) 同時通訳養成課程の修了生 C ◦ 実務経験5年未満の同時通訳及び逐次通訳実務経験者 一般通訳 ◦ 実務経験3年程度、一般的な商談・随行において、正確で 適切な逐次通訳ができる 会議通訳者の仕事 ビジネス ◦ 商談、外国人スタッフとの打ち合わせ、テレ ビ会議、 プレゼン、契約・買収・合併など の交渉、研修、シンポジウム、セミナー、投 資家向け広報(IR)など ◦ フリー以外にインハウス(社内)通訳の需要 学術関連(学会、講演会、シンポジウム) ◦ 人文科学・社会科学・自然科学全般 記者会見、インタビュー 政治的な国際会議、政府間交渉 国際会議場 大規模な国際会議場 円卓形式 シアター形式 同時通訳ブース 同時通訳装置の置かれた常設ブース ブースから見える会場の風景 ホールに設置する仮設ブース 大学内に設置された訳演習室 専門分野の会議でのブース内 会議通訳者になるには 資格制度はない ◦ 通訳スクールで学ぶことが会議通訳者への近道 OJTの紹介を受け、簡単な仕事から開始 ◦ ◦ 見本市ブース付き、商談通訳、通訳コンパニオン、随 行通訳など一般通訳の仕事から開始する 主に半年以上在籍している成績優秀者を講師が推薦 最上級クラス進級 ◦ 誰でもなれる。問題は仕事がとれるかどうか。 講師や先輩と一緒に会議デビュー 順調にいけば会議デビュー後5年ほどで中堅通 訳者 一般通訳 同時通訳は原則として行わない(まれにウィスパ リングが求められる程度) 求められるのは通訳技術の提供だけではない 会議通訳者と異なり一人で働くことが多い 業務の内容は多岐にわたるが、主に研修通訳や随 行、簡単なビジネス・ミーティングを行う 通訳内容は専門性の低いものが多い 特に研修通訳は政府の外郭団体である国際交流協 力センターが長期間にわたって主催することが多 く、非英語一般通訳者の業務を多く提供している 一般通訳の仕事 日常レベルでのコミュニケーションを主とする 一般通訳のレベル分け ◦ あいさつ、日程説明、会食、買い物の世話、会場案 内、エスコート、国際見本市など → 駆け出し ◦ 専門性・技術性の低い商談、交渉、随行、宴会、工 場見学など → 経験2年程度~ ◦ 技術研修通訳、視察団随行、一般的な講演、複雑な 企業ミーティング → 経験5年程度~ 一般通訳の仕事が順調なら会議通訳者は目指さ ない人が多い。 日本における 国際会議通訳業務の流れ 資料の受け取り エージェントから依頼 資料読み、調べ物 <事前準備> 打ち合わせ 会議本番 終了報告 通訳の事前準備 資料の読み込み 訳語調べと単語帳の作成 参考図書による予習 周辺知識の拡充 スラッシュ・リーディング (読み原稿作成) 資料の整理 通訳業務の成否の8割は 準備にかかっている! 会議通訳者の仕事と暮らし 会議通訳者として 第一線で活躍する女性を 取材した番組を視聴して 会議通訳業務に関する理解を 深めましょう。
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