通訳の実務(3) 会議通訳 専門分野における相互交流と 国際理解の促進を支える 放送通訳 海外のニュースをいち早く伝える その他の通訳業務 会議通訳 会議通訳者(Conference Interpreter) 一般に「同時通訳者」とも呼ばれる 同時通訳の技術を習得している 主に国際会議で通訳を務める 通訳技術そのものを提供することが仕事 大部分はフリーで活躍している エージェントによるランク分けがある Aランク:どんな専門分野でもこなせる同時通訳者 Bランク:全分野で逐次、一般的内容の同時通訳 C(一般通訳):経験年数が浅く、同時は得意分野で 会議通訳者の仕事 企業 学術関連の国際会議 記者会見、商談、記念式典、新製品発表会、 研修、VIP付き、社内会議 学会、講演会、シンポジウム 来日著名人の講演会 ビジネス関係のシンポジウム、セミナー パーティー、祝賀会、懇親会 国際会議場 大規模な国際会議場 ホテルなどの大会議室を使うこともある 同時通訳ブース 同時通訳装置の置かれた常設ブース ブースから会場を見る 会議通訳者になるには 資格制度はない 通訳スクールで学ぶことが会議通訳者への近道 OJTの紹介を受け、簡単な仕事から開始 見本市ブース付き、商談通訳、通訳コンパニオン、随行通訳 など一般通訳の仕事から開始する 主に半年以上在籍している成績優秀者を講師が推薦 最上級クラス進級 誰でもなれる。問題は仕事がとれるかどうか。 講師や先輩と一緒に会議デビュー 順調にいけば会議デビュー後5年ほどで中堅通訳者 国際会議通訳業務の流れ 資料の受け取り エージェントから依頼 資料読み、調べ物 <事前準備> 打ち合わせ 会議本番 終了報告 一般通訳 同時通訳は原則として行わない(まれにウィスパリング が求められる程度) 求められるのは通訳技術の提供だけではない 会議通訳者と異なり一人で働くことが多い 業務の内容は多岐にわたるが、主に研修通訳や随行、 簡単なビジネス・ミーティングを行う 通訳内容は専門性の低いものが多い 特に研修通訳は政府の外郭団体である国際交流協力 センターが長期間にわたって主催することが多く、非英 語一般通訳者の業務を多く提供している 一般通訳の仕事 日常レベルでのコミュニケーションを主とする 一般通訳のレベル分け あいさつ、日程説明、会食、買い物の世話、会場案内、 エスコート、国際見本市など → 駆け出し 専門性・技術性の低い商談、交渉、随行、宴会、工場 見学など → 経験2年程度~ 技術研修通訳、視察団随行、一般的な講演、複雑な 企業ミーティング → 経験5年程度~ 一般通訳の仕事が順調なら会議通訳者は目指 さない人がほとんど。 放送通訳 時差通訳 半生(セミ)同通 外国語ニュースを事前に翻訳し、放送時にはオリジナ ルの音声と同時に翻訳原稿を読み上げる(ボイス・ オーバー) 翻訳する時間がなく、一回か二回、ビデオに録画した ニュースを見てすぐにオンエアー 生同通 突発的な事故など速報性を要求されるニュースでは ぶっつけ本番で同時通訳をおこなう 放送通訳の言語的特徴 テレビの視聴者という不特定多数に向けて発信 するマスメディアの仕事である 耳で聞いてわかりやすい日本語 誤解を招く語彙は使わない(同音異義語など) 難しい漢語はさけて和語を使う なじみのない略語には補足説明 複雑な構文はさけて短い文で 映像にあわせて日本語訳を編集 アナウンサー並みの明瞭な発音、発声 放送通訳者の資質 ジャーナリスト アナウンサー 聞きやすい発音、発声、速度、正しいアクセント、抑揚 通訳者 世界の出来事に関心があり、時事問題に敏感 同時通訳にも対応できる通訳技術 翻訳者 時差通訳における読み原稿作成 芸能・スポーツの通訳 芸能通訳 来日したアーティストの記者会見、インタビュー、テレビ出演お よびその打ち合わせ、日常生活の世話、スケジュール管理、芝 居の稽古やリハーサルの通訳など多岐にわたる スポーツの通訳 国内外で開催されるスポーツ大会などイベントでの通訳(選手 団付き、事務局付き、VIP付き、プレス、インフォメーション、連 絡など) プロスポーツ(野球、サッカー、格闘技など)の選手付き、インタ ビュー、練習、スタッフ、他の選手とのコミュニケーション、生活 全般の世話 芸能・スポーツ通訳者の資質 自分が通訳を行うジャンルに関する幅広く深い 知識が必要 舞台度胸が必要 映画、演劇、音楽などに関する知識 スポーツのルール、周辺的情報(選手、記録、チームの勝敗な どなど) テレビ出演や記者会見など人前に出て通訳する ホスピタリティーが必要 アーティストやスポーツ選手と長時間ともに行動するため、世 話好きな性格が望ましい 政府機関、地方自治体 職員として団体や財団法人あるいは都道府県庁 の国際課などに勤務し、国際交流業務を行う。 通訳業務は本来業務の付帯的なものとして扱わ れる場合が多い。 仕事の内容 海外との連絡(翻訳業務を含む) 外国訪問の手配、随行、通訳 来日訪問団の受け入れ、接待、見学や訪問のアレン ジ、随行通訳など 官庁での国際業務 外務省 防衛庁 在日米軍との折衝における通訳、領海侵犯事件など の交渉通訳、自衛隊海外派遣など 警視庁 在外公館勤務、外交の通訳 通訳センター勤務 水産庁 乗船通訳 ボランティア通訳 各地の国際交流協会 仕事の内容 地域で開催される国際交流イベント 病院での医療通訳 外国人向け市民相談窓口業務 など 問題点 無償奉仕であるため責任感が薄い 語学の勉強のために参加する人がいる レベルの低い「使えない通訳者」が少なくない 読書案内--通訳の仕事 『通訳席から世界が見える A message after 22 years』 筑摩書房 『入門 通訳を仕事にしたい人の本』 中経出版 『放送通訳の世界―衛星放送のニュース番組を支える立役者 』 『通訳の現場から』 朝日出版社 読書案内--通訳の理論 『グローバル時代の通訳―基礎知識からトレーニング法まで』 『初めて学ぶ翻訳と通訳―言語コミュニケーション入門 』 『通訳の英語 日本語 』 『通訳のジレンマ―通訳になりたい人と通訳を雇いたい人のためのコミュ ニケーション論 』 通訳関係の書籍リスト 読書案内--通訳者によるエッセイ 『パーネ・アモーレ―イタリア語通訳奮闘記 』 『不実な美女か貞淑な醜女(ブス)か』
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