物理システム工学科3年次 「物性工学概論」 第10回光エレクトロニクス(3) 半導体レーザと光通信 物理システム工学科量子機能工学分野 佐藤勝昭 第9回の復習:光通信とレーザー • 光ファイバー通信とは • 光ファイバー通信の要素技術 – 光ファイバー、光源、光検出器 • レーザー – 自然放出と誘導放出 – 反転分布 – さまざまなレーザー – レーザー光の特徴 自然放出と誘導放出 • 自然放出(spontaneous emission):励起状態か ら基底状態への緩和によって発光 • 誘導放出(stimulated emission):光の電界を受 けて励起状態から基底状態へ遷移、この逆過程 は光吸収。前者が後者より強ければ、正味の誘 導放出が起きる。 • この現象がlaser=light amplification by stimulated emission of radiationである レーザーと反転分布 2 1 • 電界を受けて状態1 から2に遷移 • 同じ確率で状態2か ら1に遷移 • 2のポピュレーション が1のそれより大き いと正味の誘導放出 が起きる。 さまざまなレーザー • 気体レーザー:例) He-Ne, He-Cd, Ar+, CO2, Excimer: 気体の励起状態に反転分布を作る • 固体レーザー: 例) YAG:Nd(ヤグ), Al2O3:Ti(チタンサファイア), Al2O3:Cr(ル ビー): 固体中の局在中心を光学的に励起、反転分布を作る • 半導体レーザー: 例) GaAlAs, InGaN:電子とホールの高密度注入により反転分布 を作る。 第10回の講義内容 • • • • レーザー光の特徴 レーザーの応用 半導体レーザー 半導体レーザーの構造 – DH(ダブルヘテロ)構造 – DFB(分布帰還)レーザー – MQW(多重量子井戸)レーザー • 半導体レーザーの動作特性 • 戻り光とノイズ:光アイソレーター レーザー光の特徴 • 光波の発振器または増幅器 • 位相がそろっている 可干渉(coherent)、 指向性(directivity) 単色性(monochromatic) 高エネルギー密度(high density) 超短光パルス(ultra short pulse) • フォトンのボース凝縮状態:巨視的に現れた量子 状態 レーザーの応用 • 照明(レーザポインタ、レーザディスプレー:輝度、指向性 を利用)、通信(光ファイバ通信:光強度、コヒーレンスを 利用)、記録(CD, CDROM, CDR, DVD, MO, MD:コ ヒーレンス、エネルギー密度)、加工(レーザスクライバ: 半導体の素子の分離・切断、光硬化樹脂の成形)、リソ グラフィ(エキシマーレーザによる紫外線フォトリソ)、微小 計測(マイケルソン干渉計を用いた微動ステージの位置 決め)、ジャイロ(光ファイバーのサニャックループを用い た加速度計測)、薄膜成長(エキシマーレーザによるTFT 用ポリシリコンのラテラル成長)、医療(レーザメス、局所 加熱による患部治療)、印刷・印画(レーザプリンタ、カ ラー写真のレーザ焼き付け) QUIZ • 次の応用はレーザーのどのよう な特徴を利用しているか – レーザーポインター – レーザープリンター – 光ディスク – レーザーメス – 光通信 半導体レーザー(LD (laser diode)) • LED構造において、劈開面を 用いたキャビティ構造を用い るとともに、ダブルヘテロ構造 により、光とキャリアを活性層 に閉じ込め、反転分布を作る。 • DFB構造をとることで特定の 波長のみを選択している。 半導体レーザーの構造 http://www.labs.fujitsu.com/gijutsu/laser/kouzo.html 半導体レーザーの材料 • • • • 光通信帯用:1.5μm;GaInAsSb, InGaAsP CD用:780nm GaAs DVD用:650nm GaAlAs MQW DVR用:405nm InGaN ダブルヘテロ構造 • 活性層(GaAs) をバンドギャッ プの広い材料 でサンドイッチ: ダブルヘテロ (DH)構造 戻る http://www.ece.concordia.ca/~ i_statei/vlsi-opt/ DHレーザー • 光とキャリアの閉じこめ – バンドギャップの小さな半導体をバンドギャップの大き な半導体でサンドイッチ:高い濃度の電子・ホールの 活性層に閉じこめ – 屈折率の高い半導体(バンドギャップ小)を屈折率の低 い半導体(バンドギャップ大)でサンドイッチ:全反射に よる光の閉じこめ DFBレーザー • 1波長の光しかでないレーザです。つまり、 通信時に信号の波がずれることがないの で、高速・遠距離通信が可能です。 (通信速度:Gb/s = 1秒間に10億回の光を 点滅します。電話を1度に約2万本通話させ ることができます) 戻る http://www.labs.fujitsu.com/gijutsu/laser/kouzo.html LDの製造工程 最初に、MBEで6層のエピタキシャル成長を行 います。 次にMBE装置からウエハを取り出し、フォトリソ グラフィと化学エッチングでストライプをつくりま す。 この際n-GaAs層を表面保護層として0.1μm残 すことが技術的ポイントです。この表面保護層 はMBE中で行われる第3の工程、熱エッチング において蒸発除去されます。この熱エッチング は、ある基板温度でGaAsが再蒸発し、 AlGaAsは蒸発しない性質を用いています。こ の熱エッチングにより新鮮なAlGaAs層が現れ るので引き続き同一装置内で第2回結晶成長 をし、クラッド層、キャップ層を作ります。 http://www.rohm.co.jp/products/databook/ld/pdf/lazertokutyou-j.pdf 半導体レーザーの動作特性 電流vs発光強度 発光スペクトル 佐藤勝昭編著「応用物性」(オーム社) WDMで進む大容量化 光産業技術協会のHPから 光多重通信(WDM) •http://www.okioptical.com/html/docs/FiberOptics.html 光通信における磁気光学デバイス • 戻り光は、LDの発振を不安定にしノイズ発生の原因 になる→アイソレータで戻り光を阻止。 • WDMの光アドドロップ多重(OADM)においてファイ バグレーティングと光サーキュレータを用いて特定 波長を選択 • EDFAの前後にアイソレータを配置して動作を安定 化。ポンプ用レーザについても戻り光を阻止 • 光アッテネータ(磁界により光強度の制御) 半導体レーザモジュール用アイソレータ Optical isolator for LD module Optical fiber Signal source Laser diode module 光アイソレーター • ファイバー網からの戻り光が光源の半導体レー ザーに入射するとノイズのもとになる。戻りビーム をカットするために用いるのが光アイソレーター 光アイソレータの仕組み 光アドドロップとサーキュレータ EDFA(エルビウム添加ファイーバー増幅器) • 光を光のまま増幅す る増幅器 • ガラスに添加した Er3+イオンをポンプし て励起状態に反転 分布を作り出し、ファ イバーを伝わる光で 誘導放出を起こし増 幅する。 http://www.bayspec.com/EDFA.htm 光ファイバ増幅器
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