物理システム工学科3年次 「物性工学概論」 第9回光エレクトロニクス(2)

物理システム工学科3年次
「物性工学概論」
第9回光エレクトロニクス(2)
光通信:光ファイバーとレーザー
物理システム工学科量子機能工学分野
佐藤勝昭
第8回の復習
光電変換:光を電気に変える
• 光伝導(photoconductivity)
• 光電子放出(photoelectron emission)
• 光起電力効果(photovoltaic effect)
– フォトダイオード、フォトトランジスタ
– 太陽電池
• 実際の応用について学んだ
– 街灯自動点滅器、太陽光発電、CCDカメラ
第8回の問題
• 夜になると街灯が自動的に点
灯する仕組みを説明せよ。
– 光を受けて抵抗が低くなるCdS
光伝導センサーと固体リレーが
接続されており、明るいときには
ランプの回路が開くようにしてお
く。暗くなるとリレーの電流がoff
になり、接点が閉じてランプが点
灯する。
第8回の質問(1)
• CdSのセンサーが感知するのはどうしてですか(何を感
知するのですか)、それと他の部品の名称の解説もお願
いします。(MT)
– A:感知するのは光のありなしです。CdS光伝導センサーに光
があたると、キャリア(電子とホール)がCdS中に生成され、電
気抵抗が低くなって電流が流れやすくなるのです。CdSは他の
半導体に比べ光伝導の感度が高いので用いられています。
– この電流をnormally-on型のリレーの制御側に流してやると、
電流が流れたときに回路が切断されます。
– 最近は、機械式ではなく、固体式のリレーが使われます。
質問2
リレーって何?
• 大きな電流を、弱い電流(または小さな電圧)で
on/offするための装置: 例)ランプの点滅
http://www.omron.co.jp/ecb/magazine/p29.html (オムロンのHPより)
スイッチとリレーでランプを点灯させる
•
1)S1を押します(ON)
2)操作コイルに電流iが流れ鉄心を磁化します。
3)電磁力によって鉄片は鉄心に吸引されます。
4)鉄片が鉄心に吸着されると、可動接点と固定接点が接触しランプが点灯します。
5)S1をもどすと(OFF)操作コイルの電流がなくなり鉄片を吸着する力が消滅して、復帰バネの力で鉄片はもとの
状態へもどります。
6)鉄片がもとの状態にもどると接点部が離れ、ランプは消えます。
質問1
http://www.omron.co.jp/ecb/magazine/p29.html
機械式リレーと固体リレー
• 機械式リレーは、電磁石の原理を応用し
ている。リレーの入力側コイルに電流を流
すと電磁石の原理により出力側機構が稼
動し、出力側切替接点が切り替わり、出
力信号の制御を行う。
• 固体リレーでは、可動部がなく、フォト・カ
プラと駆動回路、そしてトライアックまたは
サイリスタの半導体スイッチから構成され
ている。
質問1
第8回の質問(2)
• トラップ準位というものがわからない(SY)
– 半導体の欠陥や不純物の作る準位で、ドナーやアク
セプターと呼ばれているものと同じです。
– 例えば、CdSにおいてAl不純物がCdを置換している
とドナーになります。ドナーは電子を1個捕捉していま
すが、この電子は伝導帯に励起され伝導電子となっ
ています。従って、ドナーは電子を失ってイオン化した
(+に帯電した)状態になっています。光で励起された
電子は、ときにこの+電荷に捕まるのです。これをト
ラップされたといい、その準位をトラップ準位というの
です。
光伝導とトラップ
伝導帯
トラップ準位
光励起
再結合
価電子帯
• キャリアは、バンド内
を移動し伝導に寄与
した後、ギャップ内の
準位に捕捉(trap)さ
れるが、再び熱的に
解放され、伝導に寄
与する。再結合して
消滅するまで光伝導
に寄与する
第8回の質問(3)
• エレクトロニクスIIIの授業で、CdSセルを使って夜
になったら自動点灯するライトを作っていますが、
トランジスタをリレーの代わりにするにはどうすれ
ばよいですか
– 通常の固体リレーでは、1次側と2次側を電気的に切
り離すためにフォトカップラーというデバイスを用いて
います。また、交流をon/offするためにトライアックとい
う特殊なトランジスタを用いています。しかし、1次側と
2次側を切り離す必要がなく、直流で点灯するのなら、
エミッタ接地のトランジスタのバイアス回路にCdSを使
うだけでもトランジスタのon/offは可能です。
第8回の質問(4)
• インバータエアコンというのがありますが、あれも交流か
ら直流に変えてからまた交流にするのですか。(FH)
– そのとおりです。交流をいったん直流にし、もう一度モータに流
す電流の断続の周期を変えているのです。このため、室外機
がonになるときに独特のドレミファ音が聞こえます。
インバータは、蛍光灯、電
子レンジ、電車などいろい
ろなところに使われていま
す。
広島国際学院大学酒井研のHPより
第9回・第10回に学ぶこと
• 光ファイバー通信と光エレクトロニクス
• 光ファイバー通信とは?
• 光ファイバー通信用要素技術
– 送信機:半導体レーザーについて
– 伝送路:光ファイバーについて
– 受信機:フォトダイオード
– 波長多重(WDM)
– 光増幅器:EDFAについて
– 光アイソレータについて
光ファイバー通信システム
• 光ファイバー通信はどのように行われているか調べてみ
よう。
ブロードバンドとナローバンド
• 最近、ブロードバンド(BB)という言葉が飛び交っている。ブロード
バンドとナローバンドとは何か?
• ブロードバンドは広帯域、ナローバンドは狭帯域と訳される。情報
を伝送するための「道の太さ」が広いか狭いかを表している。
• 道の広さは転送速度(単位bps=bit per second)で表す。通常のメ
タル(銅ケーブル)を用いたアナログ電話回線は56kbps、ディジタ
ル(ISDN)回線でも128kbpsです。これらはナローバンドという。
• これに対して同じメタルでも、ADSL(非対称ディジタル加入者線)
は下り1.5Mbps、上り512kbpsとなっておりブロードバンドといえる。
• 光ファイバーFTTH (fiber to the home)では、上下線とも
100Mbpsなので、ADSLの67倍の早さである。
光ファイバーはBBの主役
• FTTHはアナログモデムの1790倍の100Mbit=13MBの情報量を1sに転送できる。
• CD一枚(約640MB)のダウンロードは約1分
http://www.kyoto-bb.net/bb/top.html
QUIZ1
• 日本とアメリカの距離を1万kmとして光ファイバー
通信で信号が伝達する時間を計算せよ。ただし、
屈折率を1.5と仮定する。
• 静止衛星の地上高度は35,000kmである。衛星
経由で信号が到達するのにどれだけ時間がかか
るか。
光ファイバー
• 長距離にわたって光が減衰せずにすすむ
• 全反射を用いている。
東工大影山研HPより
www.mitsubishi-cable.co.jp/ kiden/photo/high_cab.jpg
全反射
媒質 1
エバネセント波
ic
媒質 2
臨界角
c
ic
全反射とエバネセント波
QUIZ2
• 屈折率1.5のコアと屈折率1.3のクラッドを考えた
ときの臨界角を求めよ。
• 実際の系では、屈折率の違いは1%程度である。
屈折率1.4のコアと1.38のクラッドの場合はどうか
光ファイバーの伝搬損失
1530~1565nm
佐藤・越田:応用電子物性工学(コロナ社、1989)
• 短波長側の伝送
損失はレーリー
散乱
• 長波長側の伝送
損失は分子振動
による赤外吸収
• 1.4μm付近の損
失はOHの分子
振動による
光通信システムの進展
http://www.sgkz.or.jp/nenpoh/34_sangyo/002.html
http://magazine.fujitsu.com/vol48-3/6.html
半導体レーザーと光通信
• 光通信の光源は半導体レーザー、電気信号を光
の強弱に変えて伝送する。
http://www.labs.fujitsu.com/gijutsu/laser/what.html
レーザー
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自然放出と誘導放出
さまざまなレーザー
レーザー光の特徴
半導体レーザー
半導体レーザーの構造
半導体レーザーの閾値
DFBレーザー
LDの製造工程
自然放出と誘導放出
• 自然放出(spontaneous emission):励起状態か
ら基底状態への緩和によって発光
• 誘導放出(stimulated emission):光の電界を受
けて励起状態から基底状態へ遷移、この逆過程
は光吸収。前者が後者より強ければ、正味の誘
導放出が起きる。
• この現象がlaser=light amplification by
stimulated emission of radiationである
レーザーと反転分布
2
1
• 電界を受けて状態1
から2に遷移
• 同じ確率で状態2か
ら1に遷移
• 2のポピュレーション
が1のそれより大き
いと正味の誘導放出
が起きる。
さまざまなレーザー
• 気体レーザー:例) He-Ne, He-Cd, Ar+, CO2, Excimer:
気体の励起状態に反転分布を作る
• 固体レーザー:
例) YAG:Nd(ヤグ), Al2O3:Ti(チタンサファイア), Al2O3:Cr(ル
ビー):
固体中の局在中心を光学的に励起、反転分布を作る
• 半導体レーザー:
例) GaAlAs, InGaN:電子とホールの高密度注入により反転分布
を作る。
レーザー光の特徴
• 光波の発振器または増幅器
• 位相がそろっている
可干渉(coherent)、
指向性(directivity)
単色性(monochromatic)
高エネルギー密度(high density)
超短光パルス(ultra short pulse)
• フォトンのボース凝縮状態:巨視的に現れた量子
状態