スライド 1

≪特別講座≫
トルエン取り扱いにおける事故事例に学ぶ
『引火性液体(溶剤類)の安全な取扱い』
A社取扱い物質引火点
引火点
(℃)
物質名
アセトン
酢酸エチル
n-ヘプタン
トルエン
メタノール
イソプロピル ア ル コー ル
エタノール
灯油
軽油
<-20
-4
-4
4
11
11.7
12
40以上
45以上
常温で引火の危険
危険物分類
第4類
第1石油類水溶性
第1石油類非水溶性
第1石油類非水溶性
第1石油類非水溶性
アルコール類
アルコール類
アルコール類
第2石油類非水溶性
第2石油類非水溶性
以後『引火性液体(溶剤類)』とします。
A社取扱い物質引火点
冬気温
夏気温
屋内
温度
(下部)引火点
上部引火点
屋内温度で燃
えるものが多
いです。
要注意!!
夏・直射日光下
エタノール
メタノール
イソプロピルアルコール
トルエン
アセトン
n-ヘプタン
酢酸エチル
-60
-40
-20
0
20
40
環境温度(℃)
60
80
100
引火性液体(溶剤類)の危険性を示す性質
◆引火点が常温付近➽火災・爆発
見えない蒸気が事故を招きます
◆液の比重が水より小さい(軽い)
◆水に不溶なものもある
◆ガスの比重が空気より大きい(重い)
◆一般に電気の不良導体で、静電気を発生、
蓄積されやすい
取扱上のポイント
◆液の比重が水より小さい(軽い)
◆水に不溶なものもある
物質名
引火点
(℃)
液比重
水溶性
酢酸エチル
0.90
△
-4
n-ヘプタン
0.71
×
-4
0.87
×
トルエン
4
メタノール
0.79
○
11
イソプロピル ア ル コー ル
0.79
○
11.7
エタノール
0.79
○
12
★水溶性について ○:溶ける △:わずかに溶ける
×:溶けない
 水の流れに乗って溶剤が移動する
 側溝を伝わって広がる可能性
 水溜りだと思っていたら上面に溶剤
 特に水に不溶なものは注意
◆ガスの比重が空気より大きい(重い)
物質名
メタノール
エタノール
イソプロピル ア ル コー ル
酢酸エチル
トルエン
n-ヘプタン
蒸気比重
1.10
1.59
2.10
3.04
3.18
3.46
臭気に気付かない
床面を伝わり拡がる
ピットや側溝などに蒸気が滞留する
事例①:調整槽に粉体を投入中に発生した火災
3月の午後、気温21℃、湿度36%
・パウダー投入中に静電気発生
ポリエチレンパウダー入り
ファイバードラム
・ファイバードラムの金属部に帯電
可燃性
混合気
・同金属部より調整槽投入口
に放電
・可燃性蒸気に着火
トルエン等
含む調整液
・作業者被災
事例①:調整槽に粉体を投入中に発生した火災
引火性液体(溶剤類)の危険性を示す性質
◆引火点が常温付近➽火災・爆発
見えない蒸気が事故を招きます
◆液の比重が水より小さい(軽い)
◆水に不溶なものもある
◆ガスの比重が空気より大きい(重い)
◆一般に電気の不良導体で、静電気を発生、
蓄積されやすい
事例②:ろ過器の製品をトルエンで洗浄中、静電気
により発生した火災
窒素
トルエン
タンク
製品フレーク
ポリプロピレンホース
(外周へ銅線巻付)
ろ液回収
ろ過フィルター
火災が急速に拡大。
損害額11千万円
事例②:ろ過器の製品をトルエンで洗浄中、静電気
により発生した火災
被災影響範囲及び拡大の状況:
鉄骨スレート4階建て延面積1,812m2のうち1・2階の579m2を
焼損した。
施設等の被害状況:
建物579m2(柱・床・はり・窓等)
焼損設備機器 ろ過器・貯槽・ポンプ・電気設備(照明・動力・
制御) 配管他焼損
物質の被害状況:
第4類第1石油類(非水溶性)トルエン 1,000リットル
事例②:ろ過器の製品をトルエンで洗浄中、静電気
により発生した火災
引火性液体(溶剤類)の危険性を示す性質
◆引火点が常温付近➽火災・爆発
見えない蒸気が事故を招きます
◆液の比重が水より小さい(軽い)
◆水に不溶なものもある
◆ガスの比重が空気より大きい(重い)
◆一般に電気の不良導体で、静電気を発生、
蓄積されやすい
事例②:ろ過器の製品をトルエンで洗浄中、静電気
により発生した火災
●短期間(2~3日)の不定期作業
→仮配管としてポリ製ホースを使用
●開放型のろ過器を使用した洗浄
可燃性蒸気が発生しやすく静電気対策不十分の
状態で、危険物を取扱った。
対策:
①静電気対策
帯電防止と除電対策の徹底
②可燃性蒸気の滞留対策
排出設備を設け、密閉構造として窒素シール等を実施
事例③:遠心分離機で静電気による爆発
トルエンを含む
スラリー
覗き窓
爆発
ゴムライニング
事例③:遠心分離機で静電気による爆発
トルエンを含む
スラリー
ゴムライニング
作業員が火傷
事例③:遠心分離機で静電気による爆発
引火性液体(溶剤類)の危険性を示す性質
◆引火点が常温付近➽火災・爆発
見えない蒸気が事故を招きます
◆液の比重が水より小さい(軽い)
◆水に不溶なものもある
◆ガスの比重が空気より大きい(重い)
◆一般に電気の不良導体で、静電気を発生、
蓄積されやすい
混合・攪拌帯電の危険
かき混ぜると静電気が生まれる
帯電
水を含んだ可燃性液体の攪拌
は危険
水滴が液の中を動くと帯電
空気吹き込みによる攪拌は危険
気泡が液中を上昇→帯電
液面で気泡が裂ける→帯電
爆発混合気があれば爆発の危険
帯電
引火点が高くとも、タンクの蒸気部に
水素など軽質ガスが存在する場合は危険
混合、攪拌時の静電気対策
可燃性液体蒸発
溶解ガス放散
空 気
対策:不活性ガス
による置換・シール
可燃性ガス・蒸気
可燃性混合気
混合、攪拌
による帯電
着火源
燃焼
火災・爆発
対策:
①使用禁止ミキサー
・空気・ガスを用いるもの
・ジェット式ミキサー
・高速プロペラミキサー
②固体、液体が分散
する系では、導電率
の高い溶媒を使用
着火源とはどんなもの?
電気スパーク
衝撃火花
ハンマーによる打設など
工事にともなう火花
電気溶接、ガス溶接
高速カッター、投光機
静電気
皆さんの身体も静電気発生源(数万ボルト)
静電気対策
静電気が発生する状況
接触帯電 2つの物質が接触したとき
摩擦帯電 物質同士をすり合わせたとき
はく離帯電 接触したモノをはがしたとき
衝突帯電 物質と物質がぶつかったとき
流動帯電 ものが流れたとき
対策
帯電させないこと
逃がすこと
静電気対策
帯電させないこと
材質の選定
接触、剥離、流動の抑制
帯電した静電気を逃がすこと
湿度を上げる(発生した静電気を素早く放出)
アース(接地)を取る
静電服、静電靴を着用する
除電器(イ オナイザー)を使用する
健康への影響
多くの引火性液体は、労働安全衛生法で規
定する有機溶剤でもある。
蒸気を吸引しないよう、マスクを着用するなど
注意する。
最後に
引火性液体の事故は、毎年、繰り返し発生して
います。
その根本的原因は被災者の知識不足によるも
のがほとんどです。
正しい知識を身につけて安全に取扱いましょう。