18・食文化と試行錯誤

18・食文化と試行錯誤
2011.11.15. 青山・文化人類学
18・食文化と試行錯誤
2011/11/15 - [2]
食文化の「翻訳」
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明治20年代(1887-96年)
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明治30-40年代(1897-1912年)
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いわゆる「洋食文化」がひとびとの生活に入り込み始めるが、ほ
とんどは「外食」
次第に自分たちの台所で「洋食」を作り始める
ハードウェア(食材や器材)は次第に充実し始める
不器用な翻訳・でたらめな翻訳(ミルクライス・どじょうのトマ
トシチュー・さしみにマヨネーズ・サラダおにぎり)
試行錯誤 trial and error の時代=自分たちであれこれ翻訳を試
してスキルを上げる時期
大正~昭和ヒトケタ(1912-34年)
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試行錯誤の結果上がったスキルを元に、ソフトウェア(レシピや
調理技術)が充実してくる
上手な翻訳(肉じゃが・さんまのバター焼き・月見キャベツ)
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和洋折衷料理の誕生
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まずは(5)食材・(8)メニューが入り、それからやや遅れ
て(1)調理器具・(3)調理補助具が入る
(6)調理技術・(7)調味技術はなかなか広まらない(∵ス
タンダードが決まらないから)→各人各家での試行錯誤
が始まる
明治末の和洋折衷パターン「西洋風日本料理」
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洋風の「食材」を和風に「調理・調味」したメニュー
昭和初期の和洋折衷パターン「日本風西洋料理」
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和風にアレンジされた西洋料理の登場、あるいは、日本の料理の
枠内への西洋料理の取り込み
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第二次大戦前までのまとめ
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食材というハードウェアはすぐに入ってきたが、それに
伴う調理技術などのソフトウェア、調理器具などの大型
ハードウェアが入り込むまでには時間がかかった
明治末になって「西洋風日本料理」が試行錯誤され、次
いで昭和初期になって「日本風西洋料理」がほぼ確立す
る
調理技術の標準化は、ラジオなどのマスメディアが食文
化に関与することで成し遂げられた
※1935年吉田家の食卓が純和風であったのは、地方にお
いて貨幣経済の浸透・商品流通の広域化・情報の流入が
進んでいなかったことの一つの証である。
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第二次大戦後のポイント
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台所>家屋構造の大変革と、食品加工産業の肥大化、お
よび流通技術の革新によって、ハード・ソフトともに非
常に(異常に?)充実してくる
食卓レベルでは、和洋中その他の「並存」スタイルが確
立する
家計レベルでは「素材の加工機会の減少」「それに伴う
自家製メニューの衰退」が進む……「消費者」化
1950-60年代の自給自足型→購買消費型への移行が、
わたしたちの「試行錯誤」プロセスに大きな変化を与え
た
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「大量消費社会」以降
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わたしたちは、それ以前に比べて「試行錯誤」をする機
会が減った
「ノラネコ」と「飼いねこ」モデル
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「試行錯誤メニューができない」ことがただちに問題な
わけではない
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ノラネコは、自分の餌は自分でとらなくてはいけない。だけれど
も、自分の餌を自分でとる能力は身につけているから、どこでで
も、なんかとして自分で生きている
飼いねこは、自分が何もしなくてもごはんを食べることができる。
だけれども、もし万一ノラに放り出されたらおそらく一週間も生
きていけない
文化は食文化だけではないから、わたしたちは別の部分では試行
錯誤しているかもしれない
だが、わたしたちの「試行錯誤能力」が衰えるとしたら、
それは問題
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「文化」と試行錯誤
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前期の授業で、文化とは「ひとびとが、周囲の環境に適
応しながら、創り出し・継承していくもののすべて」の
ような話をした(cf. ヤノマミや原始人の話)
その「創り出す」のプロセスで決定的に大事なのが、
「試行錯誤」という行為
また「継承する」ときにも、本来は「よりよいもの」を
めざして作り替えていったはず(ただ単に守るだけでは
ない)
なぜならば、そういう「試行錯誤」こそが、ヒトの脳の
もつ大きな力であるから
どれほど「広めたい」「受け継いでほしい」ものを自分
の手で・体で・頭で創り出せるか、がポイントとなる
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授業内課題
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我が家の・わたしの「試行錯誤」メニューと呼ばれるも
のを紹介してください
できればある程度レシピをつけて
ひとと話していて意外に思われたようなメニューとか、
あるいは母自慢の創作料理とか、こんなものにこんなも
のを組み合わせるとおいしい、とか
あるいは市販のものをちょっとおいしくするための一手
間とか、そういうのでもかまいません
あくまで「我が家の・わたしの」なので、みのもんたや
伊東家の食卓で紹介されていたもの、夕方のバラエティ
ニュースで紹介された「ちょい足し」などは省きます
(メディアの影響だけならNG、そこからさらに発展させ
ていたらOK)
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授業内課題参考1(昨年度インプレより)
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私は夏によく「トマトの冷製茶漬け(仮名)」を作って食べます。
レシピは毎回適当なのですが……。小さい鍋に水を入れて、トマ
トのくし切り(好きな量)を入れて、だしの素としょうゆを入れ、
味つけして煮ます。皮がめくれてきたらとって、ボールに移して
氷を入れて冷たくなったら、冷たいごはんの上にぶっかけます。
上にキュウリやラー油やごま、ごま油をかけるのです!! 意外にお
いしかったので続けています(^w^)。これも結局「トマトは美容
にいいから!」という私の欲で発明された創作料理です。友達に
もお勧めするのですが、「名前がキモイ!」と批判されます……。
リンゴのプリザーブのチーズピザ(母の創作料理):〔材料〕市
販のチーズピザ・リンゴ・さとう・グラニュー糖 〔作り方〕市
販のチーズピザにプリザーブにしたリンゴを乗せ、その上にグラ
ニュー糖をかけオーブントースターに。
うどんにアボガド・キャベツ・わかめなどを乗っけて、ごまドレ
ッシングをかけて、食べるラー油をかける! お好みでめんつゆ
もちょっとかける。おいしいです。
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授業内課題参考2(昨年度インプレより)
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納豆腐カレー(豆腐の上に納豆をかけ、さらにその上から全体を
覆うようにカレーのルーをかける)
うちにはカレーライスには何でも入れていい(おいしければ)と
いうのがあります。例えば、あさり、餅、納豆、桃、パン粉、板
チョコ、生クリームなど入れて食べたことがあります。これは成
功例で、失敗したのはマヨネーズ、みりん、ブルーチーズでした。
母から教えてもらったので、「ごはん+納豆+砂糖+しょうゆ」
ごはんです。食べる前は気持ち悪くて絶対やだと思っていたけど、
食べたらはまってしまいました(笑)。そこから私なりに発展させて、
卵をプラスするともっとおいしくなりました。
自分で料理を作って偶然おいしいと思ったのが、ゆでたそばの上
にアボガドソース(くりぬいてこしょうと塩と粉チーズとオリー
ブオイルを加えて混ぜたもの)を乗せて、あとは普通にそばのつ
ゆにつけて一緒に食べたら、すごくおいしくなって、自分でも感
動しました。