求償・免責について 第三者加害行為事案に 伴う事務 地方公務員災害補償基金 富山県支部 平成22年7月23日 第三者加害行為事案とは 補償の原因である災害が、第三者の不法行 為によって生じた場合をいい、「交通事故」、 「公務執行妨害」、「校内暴力事故」や「飼犬 による咬傷事故」などが典型的な例 直接の加害者だけが第三者(=損害賠償義 務者)ではない。 →従業員の使用者、責任無能力者の監督者や 動物占有者など 第三者加害行為事案とならないもの① 柔道の訓練中に負傷した場合 →相手に故意や重大な過失が認められなけれ ば、正当行為として是認 被災職員が停車中の車に追突して負傷した 場合 →被災職員の一方的過失により生じた災害で あり、相手に過失が認められない 第三者加害行為事案とならないもの② 看護師が入院中の精神病患者に殴られて負 傷した場合 →精神病等の者は通常、心神喪失状態にある と考えられ責任能力を問えない。 ※責任能力の有無に関する主治医の意見書 が必要となります。 治療費は誰が負担するのか 賠償先行(原則) →療養費を加害者本人 や保険会社(自賠責保 険、任意保険)に支 払ってもらう方法で、通 常はこの方法となる。 基金の補償は免責され る。 補償先行 →賠償先行ができない場 合で、被災職員の申し 出に基づき、基金が支 払う。補償先行を行うと、 基金は加害者に損害 賠償(治療費)を請求す ることになる。 共済組合の短期給付との関係 公務災害として認定された場合、私傷病ではないた め、共済組合による短期給付(いわゆる3割負担) は適用されない。通常事案であれば、治療費全額を 基金が負担することになるが、第三者加害事案の 場合は第三者が全額を負担することになる。 認定前に、誤って3割のみ自己負担した場合であっ ても、認定後は速やかに病院に申し出て、全額を病 院から基金に請求させることが望ましい。また、3割 のみを自己負担したからといって、第三者に3割の みを負担させることは出来ない。 具体的な処理事例 事例1 通勤途上、交差点で赤 信号のため停車中、前 方不注意の後続車両 に追突された。 事例2 信号のない十字路に安 全を十分確認しないま ま侵入したところ、進行 方向右から侵入してき た車両に激突された。 事例1の場合 ①停車中に後方から追突されたような事例であ れば、通常、過失割合は 加害者:被災者=100:0 となる。 ②したがって、本人負担は発生しないため、基 金による支払いも通常は不要となる。 ③全額、加害者からの補償により対応する。 (賠償先行) 事例2の場合 ①事例1とは異なり、加害者の一方的な過失は認めら れないため、過失相殺がなされる。 加害者:被災者=40:60など ②災害の程度によっては、自賠責保険の範囲を超え、 本人負担が発生する場合がある。 ③このような場合、先行して基金から補償を行うことと なる。(補償先行) ④示談締結後に、職員の過失割合に応じた金額を基 金から加害者(保険会社)に求償する。 自賠責保険について 過失相殺がなされる場合であっても、自賠責保険の限度額(120万円 ※)を超えない程度の災害であれば、自賠責保険による賠償を先行さ せる。 ※被害者の過失割合に応じて減額される。 なお、過失割合が10割の場合は、第三者加害事案には該当せず、ま た自賠責保険も支払われない。ただし、自賠責保険上の注意義務は広 く捉えられており、居眠りのため対向車線にはみ出してきた車に正面か ら激突された場合でも、相手の過失割合が10割となることは少ない。 被害者の過失割合 7割未満 7割以上10割未満 限度額(120万円) 減額なし 20%減額 第三者加害行為事案における任命権 者の役割① 示談締結までの間、示談の内容が適正なものとな るよう適宜、被災職員から状況報告を受ける。 示談はいったん締結されると示談の当事者の双方 を拘束するため、示談を締結して損害賠償請求権を 放棄してしまうと、放棄した部分について一切加害 者に請求することが出来ない。 一般的な自動車事故であれば、通常、保険会社間 で話し合いを行い、お互いの均衡点を見いだすこと となる。 第三者加害行為事案における任命権 者の役割② 交通事故であっても任意保険未加入の場合 や傷害事件の場合は、時間の経過とともに求 償できなくなる恐れがあるため、速やかにか つ慎重な手続きが必要となる。 示談が調わないまま、いたずらに期間が経過 しないよう注意 →求償権は時効により消滅する。 示談内容の確認について 補償先行の場合は、後日、保険会社へ求償 する際の金額の算定に必要となりますので、 示談書の写しを必ず提出 また、賠償先行の場合であっても、基金が免 責された額を確定するために、同じく示談書 の写しの提出が必要となる。 求償権の時効 自賠責保険への請求権は、損害及び加害者を知っ たときから3年を満了すると消滅する。 ※平成22年3月31日以前の事故については2年 不法行為による損害賠償請求権は、損害及び加害 者を知ったときから3年を満了すると消滅する。 →示談の有無に関わらず権利が消滅する。 なお、任意保険は、書面等による合意が成立したと きから2年を満了すると消滅する。 自賠責保険における被害者と加害者 事例:職員Aは、同僚職員B が運転する公用車に同乗 中、赤信号で停車していた ところに、後方からCの運 転する自動車に激突され 負傷した。 対応:職員Bに対する加害者 はCであるが、職員Aの加 害者は職員B及びCとなる。 したがって、職員Bにか かった治療費はCに求償す るが、職員Aにかかった治 療費は職員B(実際にはB の属する地方公共団体の 加入する自賠責保険)及び Cに求償することとなる。 保険金と補償費 事例:生命保険、医療保 険又は傷害保険の保 険金を受け取った。こ れは損害賠償を受けた ことになるのか? 対応:いずれも受給権者 が既に払い込んだ保険 料の対価であり、不法 行為との原因とは関係 なく支払われるもので あるため、損害賠償と は見なされない。 人傷保険金と補償費 事例:自動車事故において、人身傷 害保障保険から保険金を受け 取った。これは損害賠償を受け たことになるのか? 対応:損害賠償にはあたらないが、 人身傷害保険は加害者の過失 割合に応じて後日加害者に求償 するため、基金から既に補償を 実施した場合であって、人傷保 険からも保険金を受け取ってい るような場合には補償が重複す ることとなる。したがって、間接的 に損害賠償を受けていることに なるため、基金の補償と重複しな いよう人傷保険の加入の有無や 保険金の受け取りの有無などの 状況を把握しておく必要がある。 おわりに 本来、公務上の災害であれば基金がその任により 補償することが原則 ただし、第三者の故意・過失による災害の場合、第 三者にその責めを負わすことなく、各団体の負担金 (税金)からなる補償費を療養費に充当することは 不適切 通常事案に比べて、事務は煩雑となりますが、公平 な損害の負担に資するよう、正義感をもって取り組 んでください。
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