公務災害における求償・免責

求償・免責について
第三者加害行為事案に
伴う事務
地方公務員災害補償基金
富山県支部
平成21年8月21日
第三者加害行為事案とは
補償の原因である災害が、第三者の不法行
為によって生じた場合をいい、「交通事故」、
「公務執行妨害」、「校内暴力事故」や「飼犬
による咬傷事故」などが典型的な例
 直接の加害者だけが第三者(=損害賠償義
務者)ではない。
→従業員の使用者、責任無能力者の監督者や
動物占有者など

第三者加害行為事案とならないもの①
柔道の訓練中に負傷した場合
→相手に故意や重大な過失が認められなけれ
ば、正当行為として是認
 被災職員が停車中の車に追突して負傷した
場合
→被災職員の一方的過失により生じた災害で
あり、相手に過失が認められない

第三者加害行為事案とならないもの②
看護師が入院中の精神病患者に殴られて負
傷した場合
→精神病等の者は通常、心神喪失状態にある
と考えられ責任能力を問えない

治療費は誰が負担するのか
賠償先行(原則)
→療養費を加害者本人
や保険会社(自賠責保
険、任意保険)に支
払ってもらう方法で、通
常はこの方法となる。

補償先行
→賠償先行ができない場
合で、被災職員の申し
出に基づき、基金が支
払う。補償先行を行うと、
基金は加害者に損害
賠償(治療費)を請求す
ることになる。

具体的な処理事例
事例1
 通勤途上、交差点で赤
信号のため停車中、前
方不注意の後続車両
に追突された。
事例2
 信号のない十字路に安
全を十分確認しないま
ま侵入したところ、進行
方向右から侵入してき
た車両に激突された。
事例1の場合
①停車中に後方から追突されたような事例であ
れば、通常、過失割合は
加害者:被災者=100:0
となる。
②したがって、本人負担は発生しないため、基
金による支払いも通常は不要となる。
③全額、加害者からの補償により対応する。
(賠償先行)
事例2の場合
①事例1とは異なり、加害者の一方的な過失は認めら
れないため、過失相殺がなされる。
加害者:被災者=40:60など
②災害の程度によっては、自賠責保険の範囲を超え、
本人負担が発生する場合がある。
③このような場合、先行して基金から補償を行うことと
なる。(補償先行)
④示談締結後に、職員の過失割合に応じた金額を基
金から加害者(保険会社)に求償する。
自賠責保険について
過失相殺がなされる場合であっても、自賠責保険の限度額
(120万円※)を超えない程度の災害であれば、自賠責保
険による賠償を先行させる。
※被害者の過失割合に応じて減額される。
なお、過失割合が10割の場合は、第三者加害事案には
該当せず、また自賠責保険も支払われない。

被害者の過失割合
7割未満
7割以上10割未満
限度額(120万円)
減額なし
20%減額
第三者加害行為事案における任命権
者の役割①



示談締結までの間、示談の内容が適正なものとな
るよう適宜、被災職員から状況報告を受ける。
示談はいったん締結されると示談の当事者の双方
を拘束するため、示談を締結して損害賠償請求権を
放棄してしまうと、放棄した部分について一切加害
者に請求することが出来ない。
一般的な自動車事故であれば、通常、保険会社間
で話し合いを行い、お互いの均衡点を見いだすこと
となる。
第三者加害行為事案における任命権
者の役割②
交通事故であっても任意保険未加入の場合
や傷害事件の場合は、時間の経過とともに求
償できなくなる恐れがあるため、速やかにか
つ慎重な手続きが必要となる。
 示談が調わないまま、いたずらに期間が経過
しないよう注意
→求償権は時効により消滅する。

示談内容の確認について
補償先行の場合は、後日、保険会社へ求償
する際の金額の算定に必要となりますので、
示談書の写しを必ず提出
 また、賠償先行の場合であっても、基金が免
責された額を確定するために、同じく示談書
の写しの提出が必要となる。

求償権の時効
自賠責保険への請求権は、損害及び加害者を知っ
たときから2年を満了すると消滅する。
 不法行為による損害賠償請求権は、損害及び加害
者を知ったときから3年を満了すると消滅する。
→示談の有無に関わらず権利が消滅する。


なお、任意保険は、書面等による合意が成立したと
きから2年を満了すると消滅する。
おわりに



本来、公務上の災害であれば基金がその任により
補償することが原則
ただし、第三者の故意・過失による災害の場合、第
三者にその責めを負わすことなく、団体の負担金
(税金)からなる補償費を療養費に充当することは
不適切
通常事案に比べて、事務は煩雑となりますが、公平
な損害の負担に資するよう、正義感をもって取り組
んでください。