日本の農家所得向上の 経験から何を学ぶか?

Miguel, Edward (2005)
“Poverty and Witch Killing”.
Review of Economic Studies,
72(4):1153-1172.
報告者:有本寛
2009/11/18
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背景と課題
• 貧困と犯罪の間の因果関係?
• タンザニア西部の「魔女信仰」と「魔女狩り」
– 文化的?経済的?
• 課題:
– 負の所得ショックが犯罪に及ぼす影響を定量的
に分析すること
– 「魔女狩り」が経済的要因に依るものかどうかを
識別
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仮説
• 所得ショック仮説:
– 負の所得ショックが魔女狩りの原因
• スケープゴート仮説
– 災難の原因を「魔女」に求めて制裁
• 仮説の識別:
– スケープゴート仮説なら,所得変動を起こさない
災難であっても「魔女狩り」が起こるはず
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検証戦略
• 降水量(降水異常)を所得の代理変数とする
– 降水量は「魔女狩り」とは直接は無関係:
• 干ばつや洪水は「魔女狩り」の理由とは認識されてい
ない
– 天水依存農業のため,所得と高い相関
• 降水異常の年に「魔女狩り」件数が増えるか
どうかを検証する
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データ
• 村レベル(N=67)
– 過去11年分の災害・災難,殺人(魔女狩り)件数
– 降水量データ
• 家計レベル(N=1293)
– 67村からそれぞれ15~20戸を無作為抽出
– 所得(2001年のみ)など
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分析方法
• 「魔女狩り」の推定式:(2)式
– Mkt: k村のt年における「魔女狩り」件数
– α2k:村固定効果
– Xkt:村の属性変数
– Rkt:降水異常ダミー(干ばつ,洪水)
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手順
• 降水異常  所得(Table 3)
– クロスセクション分析(N=67)
– 降水異常に襲われた村は,そうでない村に比べ
て所得が低いか?
• 降水異常  「魔女狩り」(Table 4)
– 固定効果推計
– 同じ村のなかで,降水異常の年は「魔女狩り」が
多く発生しているか?
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降水異常の影響
降水異常に襲
われた村の所
得は低い
伝染病に襲わ
れた村の所得
は必ずしも低く
ない
クロスセクション
降水異常と「魔女狩り」
降水異常の年は「魔女狩り」の発生頻度が上がる
伝染病の年であっても「魔女狩り」の発生頻度は
変わらない
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仮説の検証
• 降水異常:所得down,「魔女狩り」増える
• 伝染病:所得に影響なし,「魔女狩り」変化無
• 所得を下げる降水異常のみが「魔女狩り」の
頻度を上げる
– × スケープゴート仮説
– ○ 所得ショック仮説
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結論
• 降水異常は負の所得ショックをもたらすと同
時に,「魔女狩り」の確率を2倍に高める
• 伝染病は「魔女狩り」の要因とはなっていない
• 「魔女狩り」は文化的な理由よりは経済的な
理由によって起きている蓋然性が高い
• ただし「魔女狩り」は伝統宗教が信仰されて
いる地域で多く発生  文化的な背景も
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