電子図書館 – 概要と課題 杉本重雄 筑波大学・知的コミュニティ基盤研究センター 2003-1-24 筑波大学附属図書館シンポジウム 1 概略 • 電子図書館の研究開発を概観する。 – 電子図書館の機能について、これまでを振り返り、電 子図書館の概要を理解する。 • 図書館の視点から • 情報技術の研究開発の視点から • これから解決すべき課題について考える。 – 保存 – Interoperability(相互運用性・相互利用性) – 高度なアクセス支援(メタデータ) • まとめ 2003-1-24 筑波大学附属図書館シンポジウム 2 電子図書館の研究開発の概観 • 図書館での新しいサービスとしての電子図書館の 開発 – 大学図書館や国立図書館での開発 – ディジタルコンテンツとその利用環境の提供 • 新しい情報技術の研究開発(アメリカの例) – Digital Library Initiatives – National SMETE Digital Library • 新しいサービスの開発(新しい出版と流通の環境) – 出版社による商用サービス – e-Printや電子テキストの蓄積と提供(リポジトリ) 2003-1-24 筑波大学附属図書館シンポジウム 3 図書館での新しいサービスとしての 電子図書館の開発 • アメリカ議会図書館のAmerican Memory – アメリカの歴史資料のディジタル化 • カリフォルニア大学のCalifornia Digital Library – 9キャンパスをカバーするサービス • Digital Library Federation – 電子図書館開発に関する協調を進める • 電子化した資料の管理とメタデータ – Dublin Core Metadata Element Set – MODS (metadata object description schema) – METS (metadata encoding & transmission format) 2003-1-24 筑波大学附属図書館シンポジウム 4 新しい情報技術を指向した研究助成 • Digital Library Initiatives (phase-1, 2) – – – – 米国科学財団(NSF)他による共同助成 DLI-1:1994~1998, DLI-2: 1998~ Contents, Computing, Communication 国際共同研究の推進 • National Science Digital Library – もともとSMETE (Science, Mathematics, Engineering, Technology Education) – NSFの研究助成、DLIと関連 2003-1-24 筑波大学附属図書館シンポジウム 5 新しいサービス(出版と流通の環 境) • ネット上での出版の広がり – 特に学術雑誌 • 新しい形態のサービス – Virtual JournalやCrossRef • (無料の)コンテンツのリポジトリ – NCSTRL, NDLTD, e-Prnt archive – リポジトリ間の協調: Open Archive Initiative • 協調による付加価値サービス • メタデータのHarvestingとそれを利用したサービス 2003-1-24 筑波大学附属図書館シンポジウム 6 図書館での基本的なDLサービス • 電子出版物の提供 – 電子ジャーナルやデータベース • 「出版物」を提供する→図書館の基本サービス • 資料の電子化と提供 – 貴重資料,歴史資料の電子化と提供 • 保存とアクセス – 大学が発信する資料,学位論文の提供 • 電子化,電子化の支援 • 電子出版物の収集と提供 2003-1-24 筑波大学附属図書館シンポジウム 7 図書館での基本的なDLサービス • 情報資源へのアクセス支援 – サブジェクトゲートウェイ,ポータル • どこに有用な情報があるか • 仮想的な書架 – レファレンスサービス • 利用者環境の整備 – 図書館におけるコンピュータとネットワーク環境 – 情報資源の利用を支援するための様々なサー ビス 2003-1-24 筑波大学附属図書館シンポジウム 8 DLにとって重要な問題 • ディジタル資料の長期保存 – ディジタル化された資料 – ディジタルメディアで最初から作られた資料 (Born Digital) • Interoperability(相互利用性・相互運用性) – 複数のDLを総合的に利用したい – DLはボトムアップに作られる • 高度なアクセス支援,ナビゲーション機能,情報 資源の発見支援 2003-1-24 筑波大学附属図書館シンポジウム 9 ディジタル資料の長期保存 • 長期保存の問題 – メディアの保存,内容の保存,技術の保存? – MigrationとEmulation • Migration: 新しい環境への移植 • Emulation: 新しい環境に古い環境を(仮想的に)実 現する。 • ディジタル化した資料の保存 – 保存にむいた電子化 • 適切な標準の利用 2003-1-24 筑波大学附属図書館シンポジウム 10 ディジタル資料の長期保存 • Born Digital Resource – パッケージ系資源 – ネットワーク情報資源 • 粒度は? • 保存すべきものはどう決める? • 保存のためのメタデータ – OAISの参照モデル – 図書館でのコレクションの形成方針と保存方針 • 提供のレベル:Archived, Served, Mirrored, Linked・・・ • コレクションのレベル:Comprehensive, Research,Minimal・・・ 2003-1-24 筑波大学附属図書館シンポジウム 11 ディジタル資料の長期保存 • Internet Archive (http://www.archive.org/) – Wayback Machine • 過去のページを蓄積し、見せてくれる。 • 「リンク切れ」に対して有効(少なくとも自分の経験では。) – アメリカ議会図書館(LoC)との連携 • LoCのディジタル資料保存に関するプロジェクト (NDIIPP ) – National Digital Information Infrastructure and Preservation Program (http://www.digitalpreservation.gov/ndiipp/) – 議会からの大きな予算の下にスタート • 最大で$100M超 2003-1-24 筑波大学附属図書館シンポジウム 12 ディジタル資料の長期保存 • 国立国会図書館 – 納本制度審議会 • パッケージ系は既にスタート • ネットワーク系については小委員会をスタート • 納本対象に関する議論から – WWWページの収集と保存のためのシステムの試験 的運用 • ネットワーク系電子情報の収集・組織化・保存・提供等に係る 実施計画 • ロボットによる収集とメタデータ(Dublin Core) • Deep Webの問題 • 他の組織との連携の必要性 2003-1-24 筑波大学附属図書館シンポジウム 13 ディジタル資料の長期保存 • 大学図書館や公共図書館に求められること – 自館でディジタル化した資料の保存 – 大学や地域のディジタル出版物の保存 – その他の資料の保存 • パッケージ系/ネットワーク系 – 戦略が求められる 2003-1-24 筑波大学附属図書館シンポジウム 14 Interoperability (相互利用性・相互運用性) • DLはボトムアップに作られる – アクセス方法の違いをどう越えるか? – 有用な資源の存在をどう知るか? • Interoperabilityへの努力 – アクセス方法の標準化 • Z39.50は一例 • DLの場合はコンテンツアクセスをも含む – メタデータの相互利用 • Open Archives Initiative (OAI)の取り組み – 学術情報資源のリポジトリ間の協調的取り組み – メタデータハーベスティング – 資料の保存は時間を越えたInteroperabilityのため 2003-1-24 筑波大学附属図書館シンポジウム 15 高度なアクセス支援,ナビゲーション機能, 情報資源の発見支援 • GoogleやYahoo!だけで十分か? • 学術分野における有用な情報資源へのアクセス支援 – サブジェクトゲートウェイ • サブジェクトゲートウェイの実現上の問題 – どのようにして「有用な」情報資源を見つけるか? – どのように目録を作り,検索するか? • 有用な資源の探索、資源に関する記述(メタデータ) の作成は協調して行うべき 2003-1-24 筑波大学附属図書館シンポジウム 16 高度なアクセス支援,ナビゲーション機能, 情報資源の発見支援: メタデータ • NIIのGeNii • メタデータはキーとなる要素 • いろいろなメタデータがある – Dublin Core, IEEE LOM, METS, OAIS, MPEG-7, Indecs, etc. – 応用毎に拡張することもある • Dublin Coreはその典型 • 相互利用性との兼ね合いに気をつける • 「どのような対象か,どのような利用目的化」に よってどのようなメタデータ規則を利用すべきか を考えることが必要。 2003-1-24 筑波大学附属図書館シンポジウム 17 メタデータ • データに関する(構造化された)データ (Structured) Data about Data • 記述対象に関する「何か」を書いたもの メタデータ: 対象(情報) 資源について 書いたもの 2003-1-24 何らかの 資源(情 報資源) 筑波大学附属図書館シンポジウム メタデータ: 対象(情報) 資源について 書いたもの 18 Element SetとApplication Profile • Dublin Core Metadata Element Setといっている。 – Element Setは、メタデータを記述するための属性と値の 形式を決める。応用毎に決まるメタデータエレメントセット の適用規則をApplication Profileと呼んでいる。 • 応用毎にApplication Profileを持つことになる。 – Application Profileはメタデータの論理的な構造を決める。 • 例:このエレメントは必須。 • 例:これは3回以上5回まで繰返し可 • 複数のエレメントセットから適切なものを取り込んで Application Profileを作る 2003-1-24 筑波大学附属図書館シンポジウム 19 Element SetとApplication Profile Element set 1 省略可 必須 必須(繰返し不可) Element set 2 必須 Application Profile 2003-1-24 筑波大学附属図書館シンポジウム 20 国内の状況を考えてみる • 資料の電子化と提供の進展 – – – – いろいろな資料が提供されている。 大学附属図書館の努力 (素朴な疑問)図書館だけでどれだけできるのか? (素朴な疑問)電子化するだけで十分か? • 電子ジャーナルの提供の進展 – ずいぶん多くなった。 • 「あたりまえ化」→Good News – 敢えて「電子図書館」という必要はないのでは。 – (素朴な疑問)「もの」としての所蔵とアクセス権の所有の違 いが将来どのように影響するのか? • 社会的に時間をかけて解決していくこと 2003-1-24 筑波大学附属図書館シンポジウム 21 まとめ - 将来に向けて • ディジタル資料を提供するだけで十分か? – 図書館としての付加価値が必要では? → アクセスのしやすさ,利用方法のわかりやすさ • 情報資源への総合的なアクセスのしやすさは 十分か? – メタデータの重要性 • メタデータを共有,相互利用できないか? – 地域や分野毎の要求と広域での利用性 • 新しい情報技術の導入を効率よく行うには? 2003-1-24 筑波大学附属図書館シンポジウム 22 まとめ 電子図書館機能を発展させるために • コンテンツとサービス – 誰が、どのような環境で、どのように利用するのか • 協調の必要性 – 電子化した資料の利用の促進 – 有用な情報資源に関する情報の共有 • メタデータの重要性 – 情報資源の発見 – 情報資源へのアクセスと利用 – 情報資源の保存 2003-1-24 筑波大学附属図書館シンポジウム 23 ありがとうございました 参考: http://avalon.ulis.ac.jp/~sugimoto/Articles/ 2003-1-24 筑波大学附属図書館シンポジウム 24
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