Alfven波の共鳴吸収と位相混合

Alfvén波の共鳴吸収・
位相混合とコロナ加熱
国立天文台 桜井 隆
位相速度と群速度

wave packet

平面波:波数空間で幅ゼロ(δ関数)
実空間では無限に広がる

実空間で有限の大きさのpacketは波数空間での広
がりもゼロではない

フーリエ振幅
き
が
の周辺に局在していると
phase velocity
envelope: group velocity

k0

k
MHD波動

Alfvén wave
 非圧縮
 dispersion
relation
: Alfvén velocity
 group
velocity:
 磁場の方向にのみエネルギーを伝える
MHD波動

fast/slow MHD waves
 圧縮性
 dispersion
relation:
:音速
slow/fast mode:特別な場合

磁場に平行な伝搬

磁場にほぼ直角な伝搬
 fast
mode
 slow
mode
MHD波動の位相速度面
fast mode
Alfvén mode
slow mode
MHD波動の群速度面
fast mode
Alfvén mode
Alfvén mode
slow mode
位相速度面、群速度面


位相速度面の波面の包絡面が群速度面
群速度面の接線が波面
群速度面を使って衝撃波面の形を幾何学的に求める
共鳴と位相混合:両者の関係

共鳴吸収:強制振動
1.
2.

系の固有振動数に近い振動数で揺すると外部から効率
よくエネルギーが入る(これは一様な系でも起こる)
Alfvén速度が非一様な系の場合、固有振動数が磁力線
ごとに異なるので、駆動振動数に近い固有振動数を持
つ磁力線が大きな振幅を持つ
位相混合:自由振動


固有振動数の異なる磁力線が振動すると、隣り合う磁
力線の振動の位相がどんどんずれて行き、磁力線を横
切る向きに大きな速度勾配ができる。
自由振動の励起には共鳴が関係する
なぜAlfvén波は位相混合するのか

音波のようにどの方向にも伝われる波は、閉じた系
での固有振動数は離散的。
(音色というくらいだから,,,)


Alfvén波は磁力線を横切っては伝われないので、
系全体が単一の振動数で揺れる(グローバル)モー
ドは一般には実現しない
Alfvén速度に急な勾配があると、隣り合う磁力線が
相互作用して離散的固有振動を作ろうとする
(surface wave)。しかし勾配が有限である限り厳密
な意味での離散固有値はできない



Alfvén波の固有値は連続スペクトル、固有関数は
特異点を持つ
固有関数の特異点を消すために、振動数の違う波
を混ぜないといけない
同じような状況は、磁場にほぼ直角方向に伝わる
slow modeにおいても起こる(cusp resonance)。
群速度面のcuspの部分では波が磁力線を横切って
エネルギーを伝えられないからである。(しかし非常
に特殊な感じがする,,,ちょっと振動数を変えると逃
げられるのでは?)
共鳴吸収・位相混合の簡単なモデル

平衡状態
 low-β、一様磁場

Lはループの長さ
 密度ρが不均一のため
 磁力線の固有振動数
 共鳴条件
 例えば
が不均一

解の形
 z方向には粘性力しか働かないので
 ループ頂上での振幅

境界(z=0,L)での駆動速度場

基礎方程式
ë:resistivity ó:viscosity

空間スケールが
くらいになると散逸が効く



共鳴点
即ち
散逸がなければ V は発散する
で
実際は散逸項で決まる振幅に落ち着くはず
→共鳴吸収
しかしこのように共鳴点で大きな振幅となるために
は、駆動運動が単一の振動数 ! (δ関数的パワース
ペクトル)を持たなければならない(実験室ではあり
得る)
コロナループの場合、駆動源はランダムな運動なの
で、パワースペクトルに幅があり、特定の場所のみ
共鳴して振幅が大きくなることはない。

散逸が効き始めるまでの解の振る舞いは、散逸を
無視した固有関数 (特異点がある)を重ね合わ
せて発散を消すことにより得られる

解の漸近的振る舞い
(複素平面でpoleを回ったりRiemann面を上下した
り難しい作業をする)

surface waveの振動数
x<0, x>0の固有振動数の中間




surface waveは、
が階段関数の時には系の
固有振動で、減衰しない
[
が階段関数の時は、
となるところがな
い(特異点がない)]
が非一様であるため、完全に非圧縮の運動
ができず、隣り合う磁力線が相互作用し系全体を一
つの振動数で揺らそうとする(のだろう)。
しかし
が階段関数でなく滑らかなときには、
surface waveは減衰率
で減衰する(散逸はないのに)
波のエネルギーがsurface waveからbody waveに
移る

body waveのx方向実効波数

時間と共に大きくなる(小さいスケールを作る)
→phase mixing
スケールが

まで小さくなると散逸が効き波は熱化する
それまでにかかる時間(phase mixing time)
→
加熱率の見積もり

静止していた磁力線を共鳴振動数でú1の間駆動する

その後駆動がなければ、t<úmixまでその振幅を保つ

t>úmix では急激に減衰する
このような駆動速度場が平均ú2時間ごとにランダムに
加わる


加熱率(ëやóを含まない)

RTV scaling law

予想される温度
1 MK程度にはできる

しかし

時間がかかりすぎる
振幅が大きすぎる=>turbulentになる?
closed field (loop)でもopen field (solar wind)でも
はたらく(はず)
どうやって検証するか

有名な位相混合現象:Landau damping


冷たいプラズマ(流体として扱える)の固有振動:プラズ
マ振動数
分布関数に幅があるとき、無衝突系でもプラズマ振動
は減衰する
 波より速い粒子は波にエネルギーを与える
 波より遅い粒子は波からエネルギーをもらう
 熱的分布では遅い粒子の方が多いので、波のエネルギーが
粒子のエネルギーに移る
 分布関数の摂動 f はなくならない(無衝突系、散逸しない)
 電荷密度の摂動、波(静電ポテンシャル)は減衰する:いろい
ろな位相を持ったf を速度空間で積分するから
   f ( r , v, t )dv