スライド 1 - Institute of Astronomy, Univ. of

天体物理学 I : 授業の内容
天文学は天体からの光を研究する学問です。
そこでこの授業では、「光」をどう扱うかの基礎を学びます。
授業計画は、
A.水素原子
B.エネルギー準位
C.熱平衡
F.光のインテンシティ G.黒体輻射 H.等級
J.光の伝達式 I
D.線吸収
E.連続吸収
I.色等級図
K.光の伝達式 II L.星のスペクトル
という順で進めます。
最後まで行くと、星のスペクトルがどんな仕組みで決まっているかが判る、
というのが目標です。
AからEまでは光の吸収に関係する物理の話です。Fでは光の強さをきちん
と定義します。GからIは光の強さを天文学でどう使うかを示します。JからLは
光がガス中を伝わる様子を式に表わし、その式を解いて星のスペクトルを導き
ます。それでは、始めましょう。
H 等級
今回の内容
(H.1 ) 等級って何?
等級の歴史、星の等級は地震の等級とどこが違うのかなどを説明します。
( H.2) みかけ等級
何種類かある等級の内最も良く使われる等級で、観測した明るさを示します。
( H.3) 絶対等級
天体を見た時の明るさは距離に影響され比較に不便です。同じ距離に並べ
たとした時の等級を絶対等級と呼びます。
( H.4) 輻射等級
普通の等級は一定の波長での明るさを表わします。これは、全波長で測った
とした時の等級です。
( H.5) UBVシステム
最も広く使われている等級システムを解説します。
( H.6) その他のシステム
それぞれ特徴のある等級システムの紹介です。
授業の内容は下のHPに掲載されます。
http://www.ioa.s.u-tokyo.ac.jp/kisohp/STAFF/nakada/intro-j.html
H.1. 等級って何?
紀元前2世紀にギリシアのヒッパルコスが目で見える星の明るさを1等から6等まで
の6グループに分けました。(と、プトレマイオスの「アルマゲスト」に書いてあるそうで
す。) その後、1830年にジョンハーシェル、1856年ポグソンが定式化しました。
ハーシェルの方法
口径Daの望遠鏡で明るさAの星を、口径Dbの望遠鏡で明るさBの星を見たら
同じ明るさに見えたとします。 これは、
A×Da2 = B×Db2
したがって、 A / B =Db2 /Da2
を意味します。
こうして、等級が1等上がると明るさは約 (1/2.5)倍に落ちることを見出しました。
=
ハーシェルの真似をして、自分たちで1等差が明るさで何倍かを推定して見ましょう。
下の表(理科年表より)は何等の星が何個 あるかを示しています。
等級(M)
個数
累積(NT)
log NT
-1
0
1
2
3
4
5
6
2
7
12
67
190
710
2000
5600
2988
8588
3.48
3.93
2
9
21
88
0.30 0.95 1.32 1.94
278 988
2.44
2.99
とても大雑把な仮定をおきましょう:
(1) 星の本当の明るさは皆同じ
0等
(2) 星の数密度は一様等方
N0
すると、
N4
(1)暗く見える星は遠くにある。
(2)ある等級より明るい星はその等
級で決まる距離内にある。
ことが判ります。
4等
前ページの表を見ると、
N0=ゼロ等までの星=-1等と0等の和= 9個、
N4= 4等までの星=-1、0、1、2、3、4等の星の和 = 988個
です。N4がN0 の約100倍 なのは、4等までの星が含まれる空間が100倍大き
いからと考えるのです。そこで、星がゼロ等に見える距離を D0、その時のフラッ
クスを F0 とします。ゼロ等より明るい星は体積 V0= 4πR3/3 内に含まれます。
(1) 距離が X・D0 の時の星のフラックス F は幾つでしょう?
(2) フラックスが F 以上の星が含まれる 体積 V はいくつでしょう?
(3) フラックスが F 以上の星の総数 N をF, Fo, No で表わして下さい。
星の見かけ等級 m が1等増すと、明るさ F は 1/A になると考えます。
(1) 1等の星のフラックスは F1=(1/ A)F0 です。m等の星のフラックス
はいくつですか?
(2) 1等の星の距離 D1を D0 を使って表わして下さい。
(3) m 等の星の距離 Dm を D0 を使って表わして下さい。
(4) m 等までの星の総数 Nm を A、m、N0 を使って logNm=
の形で、表わして下さい。
(1) 下のグラフ枠に(m、logNm)をプロットして下さい。
(2) プロットした点を一次式で近似して下さい。有効数字は1桁。
(3) Aはいくつですか?
4
log N
3
2
1
0
-1
0
1
2
3
M
4
5
6
我々が決めたAの値を使って等級の定義を作りましょう。前々ページの(1)で
Fm = (1/ A)mF0 と学びました。
上の式を変形して、 等級mの定義 m= の式を導いて下さい。
この節の最初で、ハーシェルは A=2.5 に定めたと学びました。ハーシェル
のAを使って、上と同様に等級mの定義 m= の式を導いて下さい。
H.2. みかけ等級 (apparent magnitude)
ボグソンが決めた見かけ等級 m の定義は、
m(λ)=ー2.5 log10[ F(λ) / Fo (λ) ]
F(λ) =対象天体のフラックス
Fo(λ) =基準天体(ベガ)のフラックス
フラックスは波長により変化しますから、同じ星でもその見かけ等級は波長に
よって変わるのです。
ベガはどの波長でもゼロ等です。
ハーシェルは星の等級が1等増すと、明るさは1/A=0.4倍 に減るとしまし
たが、ボグソンの新しい定義ではこの数字が少し変わります。次の問題で確か
めて下さい。
(1) ボグソンの式を変形して、m等の星のフラックスFを求めて下さい。
(2) ボグソンの等級が1等上がるとフラックスは1/Aになります。
Aはいくつでしょう?
あまり大した差ではありませんから、1等増えると明るさとしては (1/2.5)
に減ると覚えていても構いません。
等級の定義としては(我々のものも含め)どれでも構わないのですが、結果的
にはボグソンの定義が広く使われることになりました。
等級には等級差が小さい時に使える便利な性質があります。
等級がmとm+Δmの二つの星を考えます。
すると
m=-2.5 log (Fm/Fo), m+Δm= -2.5 log ( Fm+Δm/Fo)
Δm=-2.5 log ( Fm+Δm/Fm )
Fm+Δm/Fm =10-0.4 Δm =exp[-(ln 10)・0.4 Δm]
今は Δm<<1の場合を考えていますから、
exp[-(ln 10)・0.4 Δm] ≒ 1- (ln 10)・0.4 Δm
=1-2.3026 ・0.4 Δm=1-0.92 Δm
つまり、
Fm+Δm/Fm ≒ 1- Δm
例えば、0.1等大きいというのは1割暗いことなのです。
割りと便利だと思いませんか?
0等フラックス Fo (1)
ゼロ等のフラックスの定義は天体の明るさを決める基礎です。しかも、天文学の性
質上それを天体の観測と結び付けて定義しなければ使い物になりません。そのた
め、昔からゼロ等をどう決めるかの研究がされてきました。
(1) IAU(International Astronomical Union)1922年総会
写真等級(photographic magnitude)と
写真実視等級(photovisual magnitude)
を北極系列 (north pola r sequence) の96星で定義。
αUMi(北極星、Polaris)=2等で基準星だったが、後に変光星と判明。
(2) Johnson(1953)により、光電管による新しい等級の提唱
αLyr (A0型)= 0等
(3) CCD測光の導入で有効波長、ゼロ等フラックス等は精密化しています。
(4) 最近提唱されたAB等級はゼロ等フラックスを初めに定義しています。
0等フラックス(2)
注意しておきたいのはフラックスと違い、等級mには周波数表示と波長表示の
違いはないことです。
mλ =-2.5log10[F(λ)/Fo(λ)]
=-2.5log10[λF(λ)/λFo(λ)]
=-2.5log10[νF(ν)/νFo(ν)]
=-2.5log10[F(ν)/Fo(ν)]=mν
だからです。
現在ではゼロ等のフラックスFoは、多数の標準星のセット+精密な大気モデルから
決められています。下のシステムではV(ベガ)=0.03、A0V星のカラー=0
下の表は、実用上の目的から、波長λに対してFo(ν)が示されているので注意して
下さい。1Jy=10-26W/m2/Hz です。
F(mag=0,ν)
バ ンド
U
B
V
Rc
Ic
J
H
K
L
M
N Q
λ(μ)
0.366 0.438 0.545 0.641 0.798 1.22 1.63 2.19 3.45 4.8 10.6 21
Fo(Jy) 1790 4063 3636 3064 2416 1590 1020 640 285 170 36 9.4
Bessell, Castelli,Plez 1998
Rieke,Lebofski,Low 1985
0等フラックス(3)
αLyr
αLyr(Vega) のスペクトルは10000Kの黒体輻射に近い。しかし、
遠赤外観測人工衛星のIRAS(InfraRed Astronomical Satellite 1983)
では、温度T=10,000K, 立体角Ω=1.57・10-16の黒体円盤から
のフラックスを0等として採用しました。
x3
Fo( )  1.57 10 B (T  10,000K)  2.09 10 
(Jy)
exp x  1
1.4388
1.4388
x

T (104 K ) m  m
16
3
A0V星の半径Rは太陽の2.5倍=1.74×109m
αLyrの距離Dは7.7pc=2.37×1017m
したがって、視半径θ=R/D=7.34×10-9
αLyrの立体角=πθ2=1.69×10-16
上の1.57と少し違う(8%)のはA0V星の有効温度Teff=9800Kとの2%の
温度差による総フラックス差(8%)を補うためでしょう。
αLyrは黒体輻射を比べると、以下の特徴があります。
1) UBVバンドでずれが大きい。後の課で説明する。
2) 下に示すように遠赤外でフラックス超過が見られる。ダスト円盤がついていた。
特に、(2)は予想外で、中間・遠赤外域 ではαLyr を標準とする等級システムは
作ることが出来なくなりました。
下の表は、ベガ= αLyr のフラックスを現在使用されている測光標準システムのゼ
ロ等フラックスFo及び、IRAS が採用した黒体輻射により定義されたゼロ等フラック
スを比較したものです。標準システムとベガが黒体フラックスと比べ UBV で食い違
い、λ=12-100 μでベガのフラックスが黒体を大きく上回っていることが判りま
す。
バ ンド
U
B
V
Rc
Ic
λ(μ) 0.366 0.438 0.545 0.641 0.798
Fo(Jy) 1790 4063 3636 3064 2416
Vega
1736 3941 3527 2972 2343
FIRAS 2420 2887 2951 2764 2397
12
25
60
100
41.5 11.0 9.5 7.7
28.3 6.73 1.19 0.43
4
log F(ν)
B V
(Jy)
R I
αLyr(Vega)と黒体輻射と比べると、
J
U
3
Fo(Vega)
H
F(IRAS)
K
L
青い波長帯で
黒体輻射からずれ
2
遠赤外超過
1
0
-0.5
0
0.5
1
1.5
log λ(μ)
H.3. 絶対等級 (absolute magnitude)
天体からのフラックスは距離の二乗に反比例しますから、同じ種類の天体で
も距離が違うと見かけ等級は異なります。
それでは、天体の真の明るさが決められないので、天体を全て同じ距離にお
いたと仮定し、その時得られるであろう等級を計算から割りだすことにしまし
た。その基準距離としては10pcが選ばれました。それが絶対等級です。
絶対等級= 天体を距離10pcに置いたとした時の等級
α Lyrae (ベガ) は等級を決める基準星でその(見かけ)等級は0です。
α Lyr の距離は約 8pc です。 α Lyr の絶対等級は何等でしょう?
どちらの等級もゼロ等は地球から見るベガで決めています。
絶対等級のゼロ等は10pc離れた所に置かれたベガと勘違いしがちですが
違います。
見かけ等級
絶対等級
星の距離は様々。
星の距離は10pcに揃える。
等級基準はαLyrで距離は 8pc
等級基準はαLyrで距離は 8pc
αLyr
基準
7.7pc
αLyr
基準
7.7pc
10pc
距離指数(Distance Modulus)
光度 L は、ある星が単位時間当たり放出する輻射エネルギーです。光度も
輻射強度と同じく単位振動数当たりの光度 Lν、単位波長当たりの光度 Lλ
がありますが、面倒ですから当分ただの L で済ませます。
さて、光度Lの星が10pcの距離にあった時の等級はその星の絶対等級Mで
す。ではその星が距離D にあった時のみかけ等級mはいくつでしょう。
mの計算 :
Mとmの定義から出発しましょう。
m=-2.5 log (FD/Fo)、
M= -2.5 log (F10pc/Fo)
FD=L/(4πD2)、
F10pc=L/(4π10pc2)
でした。
ですから、
m=M-2.5 log (FD/F10pc)
=M-2.5 log ( 10pc2 /D2 )
=M+5 log (D/10pc)
この式は、距離D=10pcなら
D>10pcだと
m=M、
m>M
になることを表わしています。
前ページの式から、 m-M=5 log(D/10pc) です。
多くの星はスペクトルを調べるとその絶対等級Mが推定できます。ですから見
かけ等級mを観測で求めると、( m-M )が計算できるのです。
したがって、天文学ではしばしば距離Dの代わりに、 ( m-M )が使われます。
( m-M )は距離そのものではないので「距離指標」( distance modulus ) と呼
ばれます。
距離指数の例
天体
距離
距離指数
αCen
1.4 pc
-4.3
αLyr
7.7 pc
-0.57
大マゼラン雲
50 kpc
18.5
M31(アンドロメダ銀河)
0.71 Mpc
24.3
18 Mpc
31.3
Virgo銀河団
H.4.輻射等級 (Bolometric Magnitude)
輻射等級 mBOL は全波長に渡る総輻射フラックス ∫F(λ)dλ に対する等級です。
mBOL=-2.5 log [∫F(λ)dλ / FoBOL]=-2.5 log (F / FoBOL)
通常の等級ではA0型の主系列星であるベガ (α Lyr) をゼロ等にして決めていま
した。それに倣うと、輻射等級のゼロ等もベガの総フラックスで決めそうですが、
違うのです。
輻射等級がゼロ等の星は、 mV=0 である F3型の主系列星です。
その総フラックス
FoBOL = 2.5 ×10-8 W/m2
なぜ、A0 型でなく、 F3 型が選ばれたか、それはVバンドにスペクトルピークがく
るのがA0でなく、F3だったからなのです。
輻射等級も見かけ輻射等級と、絶対輻射等級があるのは他と同じです。
見かけ輻射等級 Apparent Bolometric Magnitude :
mBOL=-2.5 log [∫F(λ)dλ / FoBOL]=-2.5 log (F / FoBOL)
絶対輻射等級 Absolute Bolometric Magnitude
MBOLは10pcから見た輻射等級。
F= ∫F(λ)dλ=共通
logλF(λ)
Vバンド
1
B型
スペクトル V
B型
A型
暗い
A型 やや明るい
F型
M型
F型
明るい
暗い
M型
0
-1
-0.5
V
0
logλ(μ)
同じ総フラックス同士でV等級をくらべると、F3V型星が最も明るい。
そこで、V=0のF3V星の輻射等級 mBOL=0と定めました。
すると、V=0の星の mBOL は全て0より小となります。
mBOL(V=0)=輻射補正(BC)と呼びます。
輻射補正 Bolometric Correctionは、下式で定義されます。
mBOL = mV+BC
ここに、見かけ輻射等級 Apparent Bolometric Magnitude :
mBOL=-2.5log[∫F(λ)dλ/FoBOL]=-2.5log(F/FoBOL)
FoBOL : mV=0のF3Vの星の全フラックス=2.5 10-8 W/m2
BCは、mV と、あとカラー[B-V]か温度T程度の情報しかない天体の全フラッ
クスを推定するために使用されます。
H. 5. UBVシステム
眼視等級
ヒッパルコス星表 (前2世紀)
1等=最も明るい星。
Pogson
1856
6等=目で見える最も暗い星。
ma-mb=-2.5log(Ea/Eb)
m=等級
E=入射エネルギー
口径 D m の望遠鏡を覗いた時、何等まで見えるか?
暗い晩の人間の瞳孔径=7mm  mb=6等
Dm
 Eb×( 7mm)2 =Ea ×(D m)2
ma = mb-2.5log(7mm/D m)2 =6+2.5log(D2106/49)
=16.8+ 5logD
写真システム 北極星の周りの96星(周極星)のセットが標準星。 (IAU1922)
Pg : photographic magnitude
0.43 μm
Pv : photovisual magnitude
0.54 μm
UBVシステム=最も広く使われている測光系です。
H.L.Johnson and W.W.Morgan, 1953, Ap.J. 117, 313-352
U Corning 3384
350 nm
B Corrning 5030 + Schott GG13
+
1P21 フォトマル 430 nm
V Corning 9863
(RCA)
UBV Response Curve と A0型星のスペクトル (
)
透
過
率
U
3,000
A0星
B
4,000
550 nm
V
5,000
λ(A)
6,000
UBVシステムの標準星
ゼロ等の決定 (次ページの
)
V
B-V
Sp.
V
B-V
Sp.
αLyr
0.03
0.00
A0V
γUMa 2.45
0.00
A0V
109 Vir
3.75
-0.01
A0V
α CrB 2.23 -0.02
A0V
γ Oph 3.72
0.04
A0V
HR 3314 3.89 -0.01
A0V
B-V=-2.5 log (B出力/V出力)+1.040、
U-B=-2.5 log (U出力/B出力)- 1.120
A0V 6星のカラーの平均値=U-B=B-V=0
UBV Primary Standard Stars
V
α Ari
B-V
)
(次ページの
Sp.
V
B-V
Sp.
2.00
1.151 K2III
HR 875
5.17
0.084
A1V
β Cnc 3.52
1.480 K4III
η Hya
4.30
-0.185
B3V
α Ser
2.66
1.165
K2III
τ Her
3.89
-0.155
B5IV
HR8832
5.57
1.010
K3V
β Lib
2.62
-0.111
ε CrB
4.15
1.227 K3III
10 Lac 4.88
B8V
-0.203 O9V
UBV 標準星
H.Johnson in Basic Astronomical Data 1963
0
V
前ページの標準星の等級とカラー B-V
(カラーはスペクトルの傾きです。)
1
2
3
K2III
K2III
B8V
B5IV
K4III
4
5
K3III
B3V
O9V
A1V
6
-0.4
0
B-V
K5V
1
1.6
標準星と色補正(1)
(ここは、実際に観測データをいじる時の話)
標準システム Aに対して、 Bシステムでは図のように感度が少し長波長側
に寄っていたとします。Bシステムで測った等級をAシステムに統一しないと
比較ができません。
感
度
A
B
赤い星 (長波長側が強い)
青い星 (短波長側が強い)
λ
λA
λB
例えば、図の赤い星と青い星は、Aシステムでは同じ等級だが、Bシステムでは
異なる等級となります。
Bシステムの観測値をA(標準)システムでの値に直さなくてはなりません。
標準星と色補正(2)
感
度
A
B
星1
VA-VB
VAとVBの差が生じる原因は、左図からわかるように、スペクトルの傾きです。
そこで、傾きの違いで、VAとVBの差がどう変わるかを右図にプロットしました。
星1
星1
星2
β
星2
λ
0
1
カラー(B-V)B
λA
λB
VAーVB=α(B-V)B+β
と普通、1次式を仮定します。
αを決めるためには、 (B-V)Aが青(≒0)と赤(≒1.5)の両方欲しい。
ーー> 標準星がO,B,A型(青星)とK型(赤星)から選ばれています。
H.6.UBVシステムの拡大
RIJKLMN Johnson/Mitchell 1962 Comm.Lunar Plantary Lab.1,73
Johnson et al. 1966 Comm.Lunar Plantary Lab.4,99
バンド R
I
0.7
0.9
λc
J
K
L
M
N
Q
1.25
2.2
3.4
4.9
10.2
20.0
Cousins 1976, Mem.RAS 81, 25 の R, I バンドの新提案。
バンド Rc
0.638
λc
H (1.63μ)
注意
Ic
0.797
Glass 1974 MNAS SA,33, 53
λ(R)とλ(Rc) 、λ(Ⅰ)とλ(Ⅰc)はちょっとだけ違うのです。
実際の観測にはもっと大きな標準星表を使います。
UBVRcIc
JHK
の追加。
Landolt 1992、Astron.J. 104,340
Elias et al. 1982、AJ, 87, 1029.
その他のシステム(1) Stromgren 4-color system
B
U
バルマー不連続、金属量、
温度をより正確に測る。
透
A-F型星向き
過
率
uvby
V
A0星
u: 完全にバルマージャンプ
より短波長側。
u
b: メタル吸収の影響をB
ほどは受けない。
y: 基本的にはVと同じで、
0.3
v
b
0.4
y
0.5
0.6 λ(μ)
巾が狭い。
m1=(v-b)-(b-y) :
金属量
c1=(u-v)-(v-y) : バルマー不連続
b―y : 温度
その他のシステム(2) DDO system
McClure 1976 AJ 81、182
35フィルター
G,K型星に狙いをつけたシステム
B
U
4-colorのu と同じ
V
38フィルター
透
vより金属吸収によい 過
率
41フィルター
A0星
48
CNバンド測定
45
38 41
42,45,48
35
42
連続光
0.3
0.4
(35-38)カラー: バルマージャンプ
(38-42)カラー: 金属量
(42-45)カラーと(45-48)カラー: 重力と温度
0.5
0.6
λ(μ)
その他のシステム(3) Thuan-Gunn システム
Thuan/Gunn1976 PASP 88, 543
市街地の水銀線と夜光の[OI]線 を避ける。
基準星は。
CD+174708
(G型矮星)
で、この星の
g=9.50
g-r=u-v=v-g=0
と独特の定義。
B
U
V
透
過
率
A0星
u
v
g
r
0.3
0.4
0.5
0.6 λ(μ)0.7
その他のシステム(4)
Fν(0等)=3631Jy
AB等級
SDSSで採用
AB=-2.5 log [fν/3631Jy]= 8.900-2.5 log [fν(Jy)]
旧来のゼロ等がABで何等になるか?
F(mag=0,ν)
バ ンド
U
B
V
Rc
Ic
J
H
K
L
M
N Q
λ(μ) 0.366 0.438 0.545 0.641 0.798 1.22 1.63 2.19 3.45 4.8 10.6 21
Fo(Jy) 1790 4063 3636 3064 2416 1590 1020 640 290 170 36 9.4
AB
0.768 -0.122 –0.002 0.184 0.442 0.897 1.378 1.885 2.744 3.324 5.009 6.467
0等フラックスの比較
UBVシステム
ABシステム
4
V
log F(Jy)
3.5
3
B
U
Rc
AB等級
Ic
J
H
K
通常の等級
2.5
L
M
2
1.5
N
1
-0.5
0
0.5
logλ(μm)
1
1.5
星がゼロ等に見える距離を D0、その時のフラックスを F0 とします。ゼロ等より明
るい星は体積 V0= 4πR3/3 内に含まれます。
(1) 距離が X・D0 の時の星のフラックス F は幾つでしょう?
(2) フラックスが F 以上の星が含まれる 体積 V はいくつでしょう?
(3) フラックスが F 以上の星の総数 N をF, Fo, No で表わして下さい。
(1). F=Fo/X2
(2). V=X3Vo
(3).(2)より N=X3Noだが、(1)より X=(Fo / F)1/2 だから、
N=(Fo / F)3 / 2 No
星の見かけ等級 m が1等増すと、明るさ F は 1/A になると考えます。
(1) 1等の星のフラックスは F1=(1/ A)F0 です。m等の星のフラックス
Fm はいくつですか?
(2) 1等の星の距離 D1を D0 を使って表わして下さい。
(3) m 等の星の距離 Dm を D0 を使って表わして下さい。
(4) m 等までの星の総数 Nm を A、m、N0 を使って logNm=
の形で、表わして下さい。
(1).Fm = (1/ A)mF0
(2).前ページの(1)を使うと、F1 =Fo/X2 =(1/ A)F0
よって、 D1=X・Do=A1/2Do
(3).Fm =Fo/X2 =(1/ A)mF0
なので、 X=Am/2、 Dm =Am/2 ・D0
(4).(3)の解より、m等までの星の体積VmはVm =A3m/2 ・V0
したがって、Nm =A3m/2 ・N0
logNm= (3 logA/2)m+ logN0
(1) 下のグラフ枠に(m、logNm)をプロットして下さい。
(2) プロットした点を一次式で近似して下さい。有効数字は1桁。
(3) Aはいくつですか?
(2) log Nm=0.9+0.5m
4
log N
(3) 上式を前ページの
3
(4)と比べると、
log A = 1/3=0.33
2
log 2=0.30, log2.5 =0.4
なので、 A=2.2
1
0
-1
0
1
2
3
M
4
5
6
我々が決めたAの値を使って等級の定義を作りましょう。前々ページの(1)で
Fm = (1/ A)mF0 と学びました。
上の式を変形して、 等級mの定義 m= の式を導いて下さい。
上式の対数をとると、 log Fm = -m log A + log F0
m=-(1/ log A )log(Fm/F0)、log A=1/3 なので、
m=-3 log(Fm/F0)
この節の最初で、ハーシェルは A=2.5 に定めたと学びました。ハーシェル
のAを使って、上と同様に等級mの定義 m= の式を導いて下さい。
上と同じ式で、A=2.5を代入します。 (1/log 2.5)=2.5129 なので、
m=-2.5129 log(Fm/F0)
(1) ボグソンの式を変形して、m等の星のフラックスFを求めて下さい。
(2) ボグソンの等級が1等上がるとフラックスは1/Aになります。
Aはいくつでしょう?
(1) m=ー2.5 log10(F / Fo )から、
F=10-0.4m Fo
(2) 上式から1等上がるとFは10-0.4=1/ 100.4 になる。
したがって、A=100.4 =2.512 である。