地球内部の温度分布とニュー トリノ地球科学 地質温度計 相転移境界:オリビン・ウ オズレアイト転移およびリ ングウッダイトの分解 核物質の融点・マントル 地殻熱流量 図.1.1 地球内部の温度構造 (Poirier 2000) 地球内部の温度の推定 1.地温勾配と地殻熱流量 Q=KdT/dZ ~ 1x10-6 cal/cm2 sec ~ 4.2x10-2 J/sec m2 = 1 HFU K(熱伝導率)~5x10-3 cal/cm sec K したがって dT/dZ~ 20 K/km 2.地質温度計 Geothermometer 輝石の化学組成と相平衡図から温度を推定:輝石温度計(pyroxene geothermometer) 3.相転移境界の温度 410km(~1450C), 660km(~1600C) の地震波速度不連続面 4.下部マントルは断熱温度勾配 5.核マントル境界の温度:鉄・軽元素系の相関係、ソリダスが外核の下限、ケイ酸塩の 融点が上限 6.鉄の融点:内核の温度の上限 1.地温勾配と地殻熱流量 地殻熱流量(mW/m2) =熱伝導度×地温度勾配 ①地中の温度(温度勾配)を測る。 ②岩石コアの熱伝導率を測定 Q=K・dT/dZ ~ 1x10-6 cal/cm2 sec ~ 4.2x10-2 J/sec m2 = 1 HFU K(熱伝導率)~5x10-3 cal/cm sec K したがって dT/dZ~ 20 K/km ◆地殻熱流量 地下の温度は地表条件の支配を受けない深さ以深において,深さとともに増大し ている。そのために,わずかずつではあるが,地球内部から外に向かって流れ出 す熱が観測される。この熱の流れを地殻熱流量という。単位面積・単位時間あた りの地殻熱流量をQとすると,Q=K・dT/dhである。,Kは熱伝導率を表している。 普通の岩石では,Kは1.3×10-4~4.2×10-4W/m・K(0.003~0.01cal/cm・s・K) という範囲の値をもっている。 地殻熱流量の測定は,地球の全域にわたって平均して行われているわけではなく, まったく観測されていない広範な地域もある。現在までに測定された地殻熱流量 の平均値は,大陸部でも海洋部でも6.9×10-2W/m2(1.65×10-6cal/cm2・s)であ る。なお,地殻熱流量を表す場合, 1×10-6cal/cm2・s=1HFUとする地殻熱流量 単位を用いることも多い。 による 地殻熱流量(mW/m2) =熱伝導度×地温度勾配 ①地中の温度(温度勾配)を測る。 ②岩石コアの熱伝導率を測定 Q=K・dT/dZ 地殻熱流量の平均値は,大陸部でも海洋部でも6.9×10-2W/m2(1.65HFU)であり, ほとんど差がない。 ② 大陸部の場合,新生代の造構造帯において熱流量が高く,盾状地では熱流量 が低い。いいかえれば,-般に地質時代の若い地域ほど熱流量が高い。 ③ 海洋部の場合,海嶺地域で熱流量が高く,海溝地域で熱流量が低い。深海盆 地域の値はほぼ平均的な値と等しい。 長い棒の中にサーミスタとよばれる温度計を棒の先端,中 ほど,根元といった具合に何か所かにつけて,それぞれの サーミスタの温度差を抵抗値に変え,記録させる。 地質温度計 Geothermometer 地質温度計と地質圧力計 2.地質温度計 Geothermometer 輝石の化学組成と相平衡図から温度を推定:輝石温度計(pyroxene geothermometer) Garnet-clinopyroxene thermometry 3.相転移境界の温度 410km(~1450C), 660km(~1600C) の地震 波速度不連続面 マントル遷移層の温度: 地球内部の温度定点 410 kmの地 震波不連続 面: OlivineWadsleyite 転移 660 kmの地 震波不連続 面: Ringwoodite の分解転移 マントル遷移層の温度: 地球内部の温度定点 1600oC 1450oC 410 kmの地震波不連続面: Olivine-Wadsleyite 転移 660 kmの地震波不連続面: Ringwooditeの分解転移 相転移境界の温度 410km(~1450C), 660km(~1600C) の地震 波速度不連続面 断熱温度勾配 断熱的な温度変化 =(∂V ∕ ∂ T)p(∂T ∕ ∂S)p = V(V-1 (∂V ∕ ∂ T)) T(T-1(∂T ∕ ∂S)p =aVT/Cp 地球内部での断熱温度勾配 dT/dZ ad 静水圧平衡の式 dP = rgdZ を用いて断熱温度勾配は dT/dZ ad= (aVT/Cp)rg = gaT/Cp マントルの断熱温度勾配を求めよ。マントルの物性値はα = 10-5 K-1、 g = 10 ms-2、 T = 2000K、Cp = 103 J kg-1 K-1 とせよ。 dT/dZad= 0.2 K/km 地球内部の温度分布と断熱温度勾配 H, He, C, N, O Mg, Si, Fe 核マントル境界 135 GPa 3000 K 地球中心 365 GPa 6000 K 内核外核境界 330 GPa 5000 K 135 GPa and 3000K at the core-mantle boundary, 330 GPa and ~5000K at inner core-outer core boundary, 365 GPa and ~6000K at the center of the Earth. 5 地球核の温度 鉄の相平衡状態図 Feの融解曲線は融点直下の 固相によって傾きが変化する g 固相の情報は融解曲線 を決める上で重要である α:bcc ε g:fcc ε:hcp 図36 Mg/Si ratio of the mantle: Volatility (e.g., McDonough, 2003) vs Removal of Si into Core (e.g., O’Neil, 1991; Allegre et al., 2001) McDonough (2003) Mantle Relative abundance Refractories Moderately volatiles Volatiles Planetary volatility trend @1AU Lithophile elements 3.2 3.1 3.0 2.9 2.8 2.7 Log 50% condensation temperature (K) at 10-4 atm Removal of Si from the mantle by metallic iron may explain Mg/Si ratio of the mantle: Entry of 5~7 % of Si into the core? 7 軽元素(H, C, O, Si, S)について Si ・ 宇宙存在度が高い (e.g. Birch, 1952; Ringwood, 1959) ・ マントル中の量がC1コンドライトの組成と比べて少ない (e.g. Ringwood, 1959; Allegre et al., 1995) ・ 地球中に最も多く存在する元素の一つである ( e.g. Birch, 1952; Ringwood, 1959) 外核中に含まれる軽元素が全てSi だと仮定して計算したSi 量:14~20 wt% 理論計算値 ・ 20 wt% ・ 18 wt% ・・・Ringwood (1959) (C1コンドライトとの比較から) ・・・Poirier (1994) (地球核の密度欠損から) 実験値 ・ 14-20 wt% ・・・Balchan and Cowan (1966) (衝撃波実験から) 地球核の温度構造を知る手かがり CMBの温度 マントル 外核 (液体) 液体 固体 内核 (固体) 外核が液体であることから 核を構成する鉄合金の融点よりも高温 ICBの温度 内核が固体、外核が液体であることから 核を構成する鉄合金の融点 高圧下での鉄合金の融点測定は http://www.axialis.com/ 地球内部構造の模式図 地球核の温度構造を推定する上で重要である はじめに ・地球核の温度構造 地球核の温度構造はよく分かっていない :温度分布 内核-外核境界 (ICB)の温度の 不確かさ2000 K コア-マントル境界 (CMB)の温度 不確かさ1000 K 外核 CMB ICB 地球の温度構造 大谷・掛川、(2005)を一部改変 1-1. Introduction • 核の密度欠損 外核の密度 純鉄よりも10%程度小 内核の密度 純鉄よりも5%程度小 DV=1% Δρ=5% Mao et al. (1990) Δρ=10% Brown and McQueen (1986) 軽元素: H, C, O, Si, S (Poirier, 1994) After Boehler (2000) 熱膨張係数 (a)の圧力依存性 n a V a 0 V0 a0=10*10-5 n=5 Simon’s equation (P-P0)/a=(Tm/T0 c ) -1 ICB圧力まで外挿したFe-17 wt%Si合金の融解曲線 This study Schurmann and Hensgen (1980) Temperature (K) 6000 Simonの式 (P-P0)/a=(Tm/T0)c-1 Fe-17 wt%Si 5000 4000 3000 2000 マントル 1000 0 CMB 0 外核 ICB 50 100 150 200 250 300 350 Pressure (GPa) CMB圧力で3300 K、ICB圧力で4000 K FeとFe-17 wt% Si合金の融解曲線の比較 SiのFeの融点に対する効果 500 K 120 GPaで500 K下げる 内核の温度の推定方法 外核は熱対流しているので断熱温度勾配 に従う。 熱源の分布とニュートリノ地球科学 ◆地球の熱源 [地球形成時の重力エネルギー] 重力エネルギーは衝突によっ て熱エネルギーに変換される。このときの熱エネルギーの一部は 地球内部にとらえられ,地球を暖めるのに使われた。また,核の 物質(主に鉄)が中心部に沈むとき,やはり重力エネルギーが熱 エネルギーに変換される。これらのエネルギーが現在の地球内 部の高温部をつくり,その熱がしだいに外側に運ばれている。 [放射性同位体による崩壊熱] 地球を構成する岩石中には,微 量ながら放射性同位体が含まれている。その主なものはU,Th, Kで,これらが自然崩壊するときに熱を発生する。特に花こう岩や 玄武岩は,超塩基性岩(かんらん岩など)にくらべて発熱量が多く, 放射性同位体は地殻に濃集していることがわかる。 放射性同位体は時間とともに減少していく。地球全体に含まれ る放射性同位体量が,コンドライトに含まれるものと同じであると 仮定すると,現在では崩壊熱は1年に9.5×1020J/年,45億年前 では7.2×1021J/年となる。 地球の熱収支 ・熱の散逸 太陽光として太陽から放出された光は、 地球軌道付近で約1.37kW/m2(太陽 定数)のエネルギーを持つ。 地球表面から宇宙空間の80mW/m2 Qout = 44 TW (全地球表面) = 44X1012 W ・熱の生成 a) 地球形成期の熱(微惑星衝突+核の分離の重力エ ネルギーの解放) b) 放射性熱源 235U, 238U, 232Th, 40K:QR= 24 TW (コ ンドライトから推定) c) 核からマントルへの熱: Qc = 3-10 TW (ジオダイナ モを駆動するのに必要な熱) 内訳: 核の冷却 2-9 TW; 内核の結晶化の潜熱 0.34 TW 核の形成の重力エネルギー開放 0.66 TW ユーリー比(Urey Ratio) = 地球内部の生成熱/地表からの 熱散逸 = QR/Qout= 24/44~0.55 図 4. 太陽系の元素存在度 熱源となる元素U,Th,K 6 Geologically Useful Decay Schemes Parent 235U Daughter 207Pb Half-life (years) 4.5 x 109 238U 206Pb 0.71 x 109 40K 40Ar 1.25 x 109 87Rb 87Sr 47 x 109 14C 14N 5730 232Th 228Ra 1.405x1010 図6 木星型惑星 地球型惑星 原始惑星系 原始太陽 図5 難揮発性の親石元素 Sc Ti Y La Eu Tb Lu ThU V Sm Mg Si Ca Ba CeNd Sr Yb Ta Li 揮発性の程度 Zr Nb Al (Mantle+Crust)/C1 1.0 高 Cr 難揮発性の元素 揮発性・やや揮発性の元 素 <1300K 親鉄元素 Fe 低 Cu Mn Ga Na Sn Co 揮発性 元素 K Rb 0.1 Ni 親 鉄 元 素 0.01 Zn P 強親鉄元素 In Re Cd Ge Ag 0.01 0.001 Tl Pb Ir Os Cs Au Bi Neutrino geophysics: provides a direct measurement of the distribution of radiogenic elements in the earth Neutrino geophysics K Th U Beta decay produces electrons and anti-neutrinos (geo-neutrino) Neutrino detector at Kamioka mine, KamLAND Geological map 地震波速度異常 +1% 高速(低温) -1% 低速(高温) 新しい地球観測方法 ミューオン(Muon)地球科学 ミューオンも地球惑星科学に適用されつつある. 宇宙線起源のミューオンは,地球の表層部を透過する. 火口付近に上昇するマグマのモニターに対して有効性が 示されている.このような地殻表層部での変動現象のモ ニターとして,ミューオンによる宇宙線ラジオグラフィ は、地球惑星科学分野において様々な可能性が期待され る.(Tanaka, Nagamine et al., 2001; http://www.kek.jp/newskek/ 2002/novdec/muon.html) 19 浅間山 Tanaka, Nagamine et al., 2001; http://www.kek.jp/newskek/ 2002/novdec/muon.html 20 Tanaka, Nagamine et al., 2001; http://www.kek.jp/newskek/ 2002/novdec/muon.html 21
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