地球の化学組成の推定 1)隕石の化学組成からの推定 2成分モデル (Ringwood, Bankeなど) Ringwoodの2成分モデル: 地球は、 低温成分: C1コンドライト 10% 高温成分: 還元的な条件で、過熱して揮発成分を蒸発させた物質 90% Enstatite chondriteを仮定する場合もある。 天然の岩石からの推定: マントルの化学組成を推定する。 a) マントルゼノリス(マントル捕獲岩)からの推定: マントル起源の岩石には、カンラン岩(peridotite)と榴輝岩(エクロジャイトeclogite)が存在 する。 カンラン岩はカンラン石、輝石(斜方輝石,単斜輝石)からなりエクロジャイトは石榴石(ガー ネット)、単斜輝石、(石英)からなる。 マントルは主として、カンラン岩からなると考えられている。 マントルカンラン岩には、アルミナを含む鉱物として斜長石(Plagioclase),尖晶石(Spinel)、 石榴石(Garnet)を含むものがある。それぞれ、 斜長石カンラン岩(Plagioclase peridotite):高温低圧 尖晶石カンラン岩(Spinel peridotite):低温低圧 石榴石カンラン岩(Garnet peridotite):高温高圧 b) マグマからの推定:超苦鉄質マグマ:コマチアイトマグマ PREM 1、マントルの化学組成の推定方法: 始源的マントルの推定方法 マントル捕獲岩からの始原的マントルの組成の推定 (McDonough, 2001) MgO~38wt.% primitive Silicate Earth: 地殻+マントル マントル+地殻の元素存在度の特徴 (1)Ca, Al, REE, U, Thなどの難揮発性元素はC1コンドライトの約1.16倍 (2)SiはC1コンドライトの約0.83倍: マントルは輝石でなくかんらん岩的 (3)V, Cr, MnはC1コンドライトの0.23~0.62倍 (4)Fe, Ni, Co, Wなどの親鉄元素はC1コンドライトの約0.08~0.15倍 ニッケルのパラドックス: 低圧での平衡分配に比較してマントルに多すぎる。 (5)Na, KなどはC1コンドライトの0.18~0.22倍: 熱源となるKは少ないのは、揮発性元素として枯渇しているのか? それとも核に存在するのか(核の熱源として重要)? (6)Pt, Ir, Reなどの貴金属はC1コンドライトの約0.003倍 強親鉄元素のパラドックス: 低圧での平衡分配に比較して存在度はマントルに多すぎる。 (7)S, Cd, Seなどの揮発性元素はC1コンドライトの10-4~10-2 地球の地殻・マントルは揮発性元 素に枯渇している。 揮発性元素の一部は核に存在するのか? 地球は高温起源であったのか? 揮発性元素の枯渇 Ca Al Ti REE U Th etc Mg 1.0 Si V 親石元素 Cr Li 難揮発性 親石元素 Mn Na Depletion factor Fe Rb 0.1 Ni Co F Cu Mo x Zn In x As 親鉄元素 Re Ca P W 0.01 揮発性親石 元素 K Cd x Cs Pb Cl x Ag Sb Ge Tl Br Bi S x Pt Au Os Ir Pd 強親鉄元素 0.001 >1350 Se x 1000 700 Condensation temperature, K 400 図5 難揮発性の親石元素 Sc Ti Y La Eu Tb Lu ThU V Sm Mg Si Ca Ba CeNd Sr Yb Ta Li 揮発性の程度 Zr Nb Al (Mantle+Crust)/C1 1.0 高 Cr 難揮発性の元素 揮発性・やや揮発性の元 素 <1300K 親鉄元素 Fe 低 Cu Mn Ga Na Sn Co 揮発性 元素 K Rb 0.1 Ni 親 鉄 元 素 0.01 Zn P 強親鉄元素 In Re Cd Ge Ag 0.01 0.001 Tl Pb Ir Os Cs Au Bi Mg/Si ratio of the mantle: Volatility (e.g., McDonough, 2003) vs Removal of Si into Core (e.g., O’Neil, 1991; Allegre et al., 2001) McDonough (2003) Mantle Relative abundance Refractories Moderately volatiles Volatiles Planetary volatility trend @1AU Lithophile elements 3.2 3.1 3.0 2.9 2.8 2.7 Log 50% condensation temperature (K) at 10-4 atm Removal of Si from the mantle by metallic iron may explain Mg/Si ratio of the mantle: Entry of 5~7 % of Si into the core? 7 地球の2成分モデル 地球のモデルとしてRingwoodやWankeによって提案された二成分モデル がある。 リングウッド(Ringwood)およびベンケ(Wanke)によって提案されたモデル 地球は2成分の混合で説明できる。 A成分 (低温成分:Orgueil) B成分 (高温成分:高温~1000 Cで加熱またはE-Chondrite的な成分) 地球はA成分10%、B成分が90%からなる。 すなわち、C1コンドライトに比べて揮発成分に枯渇している。 火星はA成分が30%、B成分が70%からなる。 地球のマントルのニッケルのパラドックス マントル中にNiは過剰に存在する。すなわち、 マントルにおいて、NiとCoの存在度は、ほぼ等しい。しか し、金属鉄とケイ酸塩の間の分配係数は大きく異なる。 なぜか。 マントル起源のカンラン石中のNi~2000ppm程度 常圧、高温でのNiとCoの分配係数 D(Ni)~3100 D(Co)~200 コンドライトや火星隕石においては、カンラン石中のNi量が少ない。 隕石中のカンラン石中のNi~数百ppm 図5 難揮発性の親石元素 Sc Ti Y La Eu Tb Lu ThU V Sm Mg Si Ca Ba CeNd Sr Yb Ta Li 揮発性の程度 Zr Nb Al D~200 (Mantle+Crust)/C1 1.0 高 Cr 難揮発性の元素 揮発性・やや揮発性の元 素 <1300K 親鉄元素 Fe 低 Cu Mn Ga Na Sn Co 揮発性 元素 K Rb 0.1 Ni 親 鉄 元 素 0.01 Zn P 強親鉄元素 In Re Cd Ge D~3100 Ag 0.01 0.001 Tl Pb Ir Os Cs Au Bi 3100 200 図19 ニッケルはマントルに入りやすくなる。 ニッケルのパラドックスの説明 D, 分配係数 マントル内のCo/Ni 比は、低圧で高温の実験結果とあわない。 より高圧でのCo/Niの分配を反映している。 深いマグマの海 での核形成 Ni Co >40 GPa 圧力, GPa Co/Ni in the mantle implies very deep magma ocean ニッケルのパラドックスの解釈 深いマグマオーシャンでの核マントルの平衡 と分離 核とマントルが非平衡であった。 初期地球の諸過程 強親鉄元素のパラドックス: 強親鉄元素は、マントルに多すぎる。 マントル中に強親鉄元素、Ir, Pt, Au, などは金属鉄とケイ 酸塩の元素分配で期待されるよりも過剰に存在する。 3100 200 >3x104 >4x104 105 図5 難揮発性の親石元素 Sc Ti Y La Eu Tb Lu ThU V Sm Mg Si Ca Ba CeNd Sr Yb Ta Li 揮発性の程度 Zr Nb Al (Mantle+Crust)/C1 1.0 高 Cr 難揮発性の元素 揮発性・やや揮発性の元 素 <1300K 親鉄元素 Fe 低 Cu Mn Ga Na Sn Co 揮発性 元素 K Rb 0.1 Ni 親 鉄 元 素 0.01 Zn P 強親鉄元素 In Re Cd Ge Ag 0.01 0.001 Tl Pb Ir Os Cs Au Bi 強親鉄元素のパラドックスは: 地球集積のなごり:隕石重爆撃 マントルの強親鉄元素存在度と隕石衝突 Late Veneerの存在の有無 海の起源とLate Veneer Late Veneerによる有機物の供給: 生命の起源 小天体衝突と恐竜絶滅:イリジウムの異常の説明 隕石中の強親鉄元素 The Sm-Nd age and the 39Ar - 40Ar age of A-881757 [1] indicate their source basalt flow crystallized at 3870 Ma and was impacted at 3800 Ma. [1] Misawa et al. (1993) GCA 57, 4687-4702 Impact event: 月と地球への隕石重爆撃 の痕跡か? レゴリス研究の重要性 初期地球の諸過程 地殻+マントルの元素存在度と元素の分類 CM CO CV 図11 図12
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