心理学基礎論 4月14日 感覚・知覚① 感覚の測定 内容(4月14日、21日?) 閾値の測定から精神物理学へ ウェーバーの法則(1840頃) フェヒナーの法則(1864) 感覚測定の新しい動き スティーブンスのベキ法則(20世紀前半) 閾値 1.絶対閾 ・・・ある感覚が生じるために最低限必要な 刺激量 例:ヒトの視覚の絶対閾 ・・・1km(?)の暗闇の先にともるロウソクの 火 (出典:「心理学への招待」) (厳密には波長その他の条件によって色々色々かわる) 2.弁別閾 ・・・2つの刺激が「違う」と分かるために最低 限必要な強度差 ・・・別の言い方をすると、2つの刺激が物理 的には異なっていても、その差が弁別閾以 下だと、ヒトにはその違いが分からない 閾値 ⇒ カンタンに言うと、感覚の敏感さ についてのひとつの尺度 1840年頃、閾値に関するひとつの興味深 い法則が、生理学者ウェーバーによって確 認された ⇒ウェーバーの法則 ウェーバーの法則 弁別閾についての法則 どの感覚についても(!)次の法則が成立 I 一定 I I ・・・ 元となる刺激の物理量 △I ・・・ その刺激の変化に気づくのに必要な 最小の刺激変化量(弁別閾) 例 「重さのウェーバー比=0.02」 I 0.02 I I 0.02 I 例えば、I = 20グラムのときの弁別閾は、 △I = 0.02×20グラム = 0.4グラム 少し具体的(?)に・・・ I=50グラムのときは、そこに一円玉一枚のっけ ただけで重さの変化に気づく (△I = 0.02×50グラム = 1グラム) I=100グラムだと、1円玉2枚で気づく (△I = 0.02×100グラム = 2グラム) I=3000グラムだと、一円玉60枚でやっと気づく (△I = 0.02×3000 = 60グラム) なぜ閾値なのか? なぜ最初に閾値の話をしたのか? ⇒現代の感覚測定研究は、閾値に関する生 理学者たちの研究から出発したと言えるか ら 感覚研究(感覚の測定)の歴史 生理学者による、各感覚器官の閾値の研究 フェヒナーの「精神物理学」 「精神物理学的測定法」 マグニチュード推定法 信号検出法 ・・・etc. フェヒナーの法則 「感覚の大きさ」を測定したいと思っていた フェヒナーは、閾値(弁別閾)を利用するこ とを思いついた 簡略化して言うと・・・ ある重さからある重さへ「増えた」と感じた とき、それは重さの感覚が「1増えた」もの とする 感覚が何もない状態を「0」とする そこから少しずつ音量を上げていって、初 めて「聞こえた!」と感じたときの感覚量 (絶対閾のときの感覚量)を「1」とする そこからまた少しずつ音量を上げていって、 初めて「音が大きくなった!」と感じたとき の感覚量を「2」とする 以下同様 フェヒナーの法則(1864) S = k log I+c S:感覚量、I:刺激の物理量、kとc:定数 フェヒナーの法則の意味 刺激量が2倍になっても、感覚量も2倍にな るとは限らない 例えば光の強さが2倍になると、感じる明 るさは1.4倍とか 色々な感覚について成立する ちょっと変わったところでは、お金に対する 感覚にも。 お小遣いが500円から1000円になるとす ごく嬉しいが、5000000円から5000500円 になってもあまり嬉しくない 歴史的意義 心理的な量を測定することに成功した。 すべての科学は対象の客観的測定(観 察)から始まる。 科学的な心理学の可能性を示した 現実生活での適用 音の単位デシベル フェヒナーの法則を考慮して、 空気振動エネルギーそのものではなく、 それを対数にしたものを、音の単位に適用 Pe dB 20log10 P0 おまけ:フェヒナーの法則の導出 ある重さからある重さへ「増えた」と感じた とき、それは重さの感覚が「1増えた」もの とする より正確には・・・ ある重さからある重さへ「増えた」と感じた とき、それは重さの感覚が「1K増えた」も のとする(このKは適当な単位) より正確には・・・ I S K I S・・・感覚の大きさ K・・・適当な定数 これを無理やり微分にする dI 1 dS K K dI I I それを積分する 1 dS K I dI 1 dS K I dI S K log I K log I C ウェーバーの法則とフェヒナーの法則の違い 「刺激が大きくなるほど、弁別閾が大きくなる(そ の刺激の変化に鈍くなる)」という点ではどちらも 同じ しかし重要な違いは・・・ ウェーバーの法則 Δ物理量/物理量=一定 フェヒナーの法則 感覚量=Klog物理量 フェヒナーの法則は、「感覚量の大きさ」と いう、目に見えないものを直接方程式の中 に入れている ⇒物理学者等からしばしば批判される部分 スティーブンスのベキ法則 スティーブンスのベキ法則が生まれた経緯 ①ウェーバー&フェヒナーの法則にあてはま らない現象が出てきた ②「感覚量を直接報告させる」手法の開発 ① 批判もあったが、フェヒナーの法則は ウェーバーの法則とセットで一定の評価を 得た しかし、ウェーバー&フェヒナーの法則に あてはまらない感覚現象がしばしば報告さ れるようになってきた 例:電気ショック ② 「この蛍光灯の明るさを100としたら、 「あの蛍光灯の明るさはいくつ?」 という質問に対する被験者の回答をそのまま感 覚量のデータとする方法 フェヒナーたちは「うまくいきっこない」と思ってい た(?)ようだが、やってみると結構きれいにデー タとれる、ということをスティーブンスたちが発見 そのデータを整理し、以下の法則を得た ⇒スティーブンスのベキ法則 n S KI S・・・感覚量 I・・・刺激の物理量 K、n・・・適当な定数 この数式でも感覚のデータに結構あては まる、ということを発見 かつ、ウェーバー&フェヒナーの法則より も豊かな内容を持つことになった ⇒nの値によって、物理量⇔感覚量の関係 が色々かわる(フェヒナー的関係はその中 のひとつにすぎない、ということになる) 色々な感覚のn(ベキ指数)
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