国際ビジネス研究学会中部部会 第20回研究会 平成23年4月16日 神奈川大学 丹野勲先生 ベトナムの制度と国際経営ー 労働法と人的資源管理、企業法・投資 とコーポレートガバナンスを中心として コメント 愛知大学・筑波大学 星野靖雄 1 発表論文の内容 I. ベトナムの労働法と人的資源管理 II.ベトナムの企業法・投資法とコーポレ―トガバナンス-2005 年企業法、および2005年共通企業法を中心として 丹野勲著 2010 アジアフロンティア地域の制度と国際経 営ーCLMVT(カンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナム、タ イ)と中国の制度と経営環境ー、文眞堂の第5章 ベトナ ムの制度と国際経営ー経済・ドイモイ政策・人的資源、労 働法と人的資源管理、企業法・投資法とコーポレートガバ ナンスを中心としてー(146-224頁) とほぼ同じ内容である。 発表論文では、ベトナムに限定しているのであるが、著 書では、アジアフロンティア地域であるカンボジア、ラオス、 ミャンマー、ベトナム、タイ(CLMTV)と中国の労働法、企業 法、投資法の国際比較研究を実地調査を実施し、現地資 料を分析しており、精力的研究であり大変興味がもてる。 2 しかしながら、コーポレートガバナンスについては、 制度だけでなく、実際の所有構造を分析する必要が あるが、ベトナムについてはその点が触れられていな く、中国については、上場企業の所有構造の節はある がデータによる説明はなされていないので、追加され れば研究上一層優れた成果になる。 また、ベトナムについての研究は、丹野勲・原田仁 文, 2005 ベトナム現地化の国際経営比較―日系・欧 米系・現地企業の人的資源管理、戦略を中心としてー で,日系・欧米系・現地企業を対象として、日本語・英 語・ベトナム語の質問表調査とケース研究を行い、そ れらの特徴、特に、日系企業の人的資源管理の戦略 を実証的・理論的に考察しているので評価できる。 3 質問1. ベトナム、日本、欧米の著書と統計を利用されている が、欧米の学術誌に掲載されている論文を引用等をされ ていない理由は何でしょうか。 例えば、Indro and Richards (2007)では、ベトナムでは、 弱い法的、調整的システムにより、外国企業は小さい規模 で、非公式な形で進出する傾向があるとしている。 Brassard(2004)は農業での性による賃金格差があり、北部 の方が賃金が安く、18歳以下の子供は大人の25%の賃金 であると指摘されている。Kaneko (2007) は、2005年の会 社法でWTOへの参加はできるが、国有企業の改革を目指 すものの保守的であり、コーポレートガバナンスの中心は 国のコントロールである。Thang他(2007)はベトナムへの 欧米や、日本の人的資源管理の移転可能性を議論してい る。Makino・Tsang(2010)は、ベトナムでは、香港、台湾、 フランスの歴史的な繋がりがFDIの決定に従来の変数に対 して追加的説明力を持っていることを示した。 4 質問2.論文の16-17頁で「外資系企業で起こった ストライクのうち、台湾資本企業と韓国資本企業 で約6割を占めており、台湾と韓国企業にストラ イクが特に多い。」 とありますが、日系企業では どうでしょうか、発生確率ではどうでしょうか。 質問3. 論文の31頁で、ベトナムでは、株式会社の 株主総会では(2名以上の有限会社での社員総 会も)、定足数、普通決議を原則として65%以上 (特別決議75%)と規定しているとのことですが、 ミャンマー、タイ、中国、日本、米国では株主総 会の普通決議は50%で、どこからこの制度が導 入されたのでしょうか。 5 質問4. 論文の19頁、6行目に、ベトナムでは企業 に労働組合の設置義務があるということですが、 日系企業では約96%であるとされていますが、 残りはどのように解釈されるのでしょうか。 質問5.論文の12頁で、時間外労働賃金は、①通常 日の時間外労働は通常労働日の時間給の少な くとも150%相当、②週休日の時間外労働は、通 常労働日の時間給の少なくとも200%相当、③祭 日または有給休暇の時間外労働は、通常労働 日の時間給の少なくとも300%相当,(2002年の労 働法の改正)、深夜時間外労働は昼間時間外の 少なくとも30% の付加給。どうしてこのように厳し く、現実の企業経営の問題にならないのでしょう か。 6 質問6.丹野・原田(2005)の第2章のベトナムにおける 日系・欧米系・ベトナム企業の人的資源管理に関す る実証的研究、文眞堂、45頁, 質問表調査は、2000 年9月に実施した。調査対象は、ベトナムで事業活 動をしている日系企業106社(日本語)、欧米系企業 200 社(英語)、ベトナム企業300 社(ベトナム語)に アンケートを郵送し、日系企業27社(回収率25%)、 欧米系企業12社(回収率6%)ベトナム系企業23社 (回収率7%) 1.郵送企業のリストはどこから収集されたのか。 2. 情報公開に最も、協力的と考えられる欧米系 企業からの回収率が最低であった考えられる 理由はなんでしょうか。 7 References 1.Brassard, Croline 2004 Wage and labor Regulation in Vietnam within the Poverty Reduction Agenda, Policy and Society, 23 2 49-77. 2. Indro, Daniel C., Malika Richards, 2007 The Determinant of foreign parter’s equity ownership in Southeast Asian joint ventures, International Business Review 16 177206. 3.Kaneko, Yuka 2010, Theories and Realities of Asian Corporate Governance: From ‘Transplantation’ to the Asian Best Practices, Procedia-Social and Behavioral Sciences Vol.2 Issue 5,Pages 6883-6895. 5. Makino, Shige, Eric WK Tsang 2010, Historical ties and foreign direct investment: An exploratory study, Journal of International Business Studies, 1-13. 4.Nguyen, Thang V. 2003 Managing change in Vietnamese state-owned enterprises: What is the best strategy? Human Resource Management Review 5.鈴木岩行 2010 7の書評 和光経済、Vol.43 No.1、pp.69-72. 6.丹野勲・原田仁文, 2005 ベトナム現地化の国際経営比較―日系・欧米系・現地企 業の人的資源管理、戦略を中心としてー13 423–438. 7.丹野勲著 2010 アジアフロンティア地域の制度と国際経営ーCLMVT(カンボジア、ラ オス、ミャンマー、ベトナム、タイ)と中国の制度と経営環境ー、文眞堂 8.Thang, Le Chien , Chris Rowley,Truong Quang Malcolm Warner 2007 To what extent can management practices be transferred between countries? The case of human resource management in Vietnam、Journal of World Business 42 113–127. 8 Refereed Articles(2007-2010) by Hoshino • 87. The Impact of Ownership, Internalization, and Entrymode on Japanese Subsidiaries' Performance in Brazil(査読付き) Japan and the World Economy (Mario Henrique Ogasavara, Yasuo Hoshino 、学術雑誌 、2007 ) 19 / , 1-25 • 88. The Performance Impacts of Stock Options in Japan(査読付き) Japanese Journal of Administrative Science (Hamid Hassan, Yasuo Hoshino 、学術雑誌 、2007 ) 20 / 1 , 27-41 • 89. The Influence of Firm-specific Advantages and Entry Mode Choice on Performance :The Case of Japanese Foreign Direct Investment in Australia(査読付き)International Journal of Services Technology and Management (Kais Ben Youssef, Yasuo Hoshino 、学術雑誌 、2007 ) 8 / 4/5 , 329-343 • 91. Establishment, Survival, Sales Growth and Entry Strategies of Japanese MNCs Subsidiaries in India(査読付き) Journal of Developmental Entrepreneurship (Mehdi Rasouli Ghahroudi, Yasuo Hoshino 、学術雑誌 、2007 ) 12 / 4 , 433-447 • 92. The Effects of Entry Strategy and Inter-Firm Trust on the Survival of Japanese Manufacturing Subsidiaries in Brazil(査読 付き)Asian Business & Management (Mario Henrique Ogasavara, Yasuo Hoshino、学術雑誌、 2008) 7, 353-380 • 93. Beginning of Stock Option-Based Compensation in Japan: A Test of Alternative Theories(査読付き) Journal of Financial Management and Analysis (Hamid Hassan, Yasuo Hoshino, 学術雑誌、2008) 21/2, July-December, 11-35 • 94. Implications of Firm Experiential Knowledge and Sequential FDI on Performance of Japanese Subsidiaries in Brazil(査読 付き)Review of Quantitative Finance and Accounting (Mario Henrique Ogasavara, Yasuo Hoshino、学術雑誌、2009) 33/1, July, 37-58 • 95. Entry mode Strategies and Performance of Japanese MNCs in Australia and New Zealand: the Role of Japanese Employees(査読付き)Asian Journal of Finance & Accounting (Sriya Kumarasinghe, Yasuo Hoshino、学術雑誌、2009) 1/1, 87-105 • 96 Long-term Employment Contracts in Japanese Companies and the Corporate Profitability in the Post Economic Bubble Era (査読付き)Journal of Financial Management and Analysis (Hamid Hassan, Yasuo Hoshino、学術雑誌、2009) 22/2, JulyDecember, 26-48 • 97. A Suggested Investigation of the Performance of Japanese Joint Ventures, Acquisitions and Wholly-owned Subsidiaries, (査読付き)Research in Climate Change, Applied Statistics and Managerial Science, (Yasuo Hoshino、学術雑誌、2009) 1/1, 43-50 • 98. The Role and Perceptions of Middle Managers and Their Influence on Business Performance: The Case of Sri Lanka(査読 付き)International Business Research (Sriya Kumarasinghe, Yasuo Hoshino 、学術雑誌 、2010 ) 3 / 4 , 3-16 • 99. Assets Growth, Foreign Ownership and Type of Industry in Multinational Companies(査読付き) International Business Research (Mehdi Rasouli Ghahroudi, Stephen Turnbull, Yasuo Hoshino 、学術雑誌 、2010 ) 3 / 4 , 244-259 9 Books(2007-2010) by Hoshino 14. Collaborative Research in Financial Services and Administrative Science (Evergreen Publishing 、2007 ) ISBN 0-9750961-4-1 15. Asia-Pacific Financial Markets: Integration, Innovation and Challenges (Elsevier 、2008 ) ISBN 978-0-7624-1471-3 16. Selected Papers Commemorating the 10th Anniversary of the JAAS (Japanese Association of Administrative Science) (Evergreen Publishing 、2008 )ISBN 978-1-921473-95-1 17. Collaborative Research in Applied Statistics, Quantitative Finance and Economics(Evergreen Publishing 、2009 ) ISBN 978-1-921473-85-2 18. Collaborative Research in Electronic Healthcare-Computer Intensive Time Series, Pharmacy Informatics and Bioinformatics (Evergreen Publishing 、2009 )ISBN 978-1-921473-98-2 10 星野のHP http://leo.aichi-u.ac.jp/~hoshino/ • What's New • 2011年3月4日 愛知大学国際問題研究所主催・経営行動科学学会中部部会共催 石川 昭(青山学院大学名誉教授、米国テキサス大学ICC研究所シニア・ リサーチ・フェロー) 講演会 「国際危機管理を巡って」で 司会を務めました。 YouTubeその1、YouTubeその2、YouTubeその3、YouTubeその4 YouTubeその5、YouTubeその6、YouTubeその7、YouTubeその8 写真1:石川先生(右側手前より3人目)歓迎昼食会 写真2: 愛知大学 車道キャンパス 同窓会室にて • YouTubeで、“石川教授”でも検索可能 • 2011年3月4日 上記講演会の後、経営行動科学学会中部部会が開催されました。 YouTubeをご覧ください。 YouTube No.1 司会:石川教授 愛知大学大学院のNorhidayah Mohamadさんが、星野との共著論文 Foreign Direct Investment and Performance of Japanese Subsidiaries in Malaysia を発表しました。 YouTube No.2、YouTube No.3、YouTube No.4 11 • 2011年 1月26日 2010年度愛知大学経営総合科学研究所主催・経営行動科 学学会中部部会共催 霍見(つるみ)芳浩(ニューヨーク市立 大学バルーク校経営大学院教授)講演会で 司会を務めました。YouTubeをご覧ください。講演は分割して アップロードしました。 • YouTubeで、“つるみ教授”での検索可能 12
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