情報モラル, 判断力を育成する指導の在り方

情報モラルの理解と指導
高橋 邦夫
千葉学芸高等学校校長
平成13年度教育情報化指導者養成研修
情報モラルの理解
情報教育の目標
 情報活用の実践力
 情報の科学的な理解
 情報社会に参画する態度
情報社会のモラル
-情報モラルの理解(1)-
モラルの育成
 社会生活のモラル育成

社会参画の基本 (=教育の使命の一つ)
 日常生活のモラル


道徳的な考え方と態度
家庭教育+学校教育+社会教育
 情報社会での生活 …
情報社会での生活
 日常想定外の新たな状況


日常生活のモラルが必ずしも適切でない場合
がある
新たなモラルが求められる場合がある
 情報社会で適正に生活を送るには
⇒「情報モラルの育成」が必要

情報モラル=日常モラルの適用+α
新たなモラルの例
携帯型電話
 日常モラル

電話利用のマナー
 +αのモラル



コンサート会場などでの鳴動停止
ペースメーカー装着者直近での電源停止
病院,航空機機内での電源停止
新たなモラルの例
著作物の利用
 日常モラル


許諾を原則とする公正利用
私的複製,授業での複製などの公正利用
 +α


複製物の送信
複製物の送信可能化
情報社会の特徴
 通信相手

近くの人←→遠くの人,1人←→多数
 通信範囲

遠隔地との通信,1対多数との通信
 通信速度

瞬時←→不達,時差
 通信形態

マルチメディア,リアルタイム,マルチキャスト
情報社会のモラル
 情報社会は日常社会の延長にある

日常のモラルが適用される(多くの場合)
 情報社会は日常社会とは異なる面がある


情報通信手段使用の特性による相違
特別なモラル(情報モラル)の適用が必要な場
合がある
情報モラルとは
-情報モラルの理解(2)-
情報モラル
 情報社会で適正な活動を行うための基にな
る考え方と態度



対処的ルールを身に付けるだけでなく,ルール
の意味を正しく理解し,新たな場面でも正しい
行動がとれる
情報収集,情報発信,コミュニケーション,制作
活動等の場面での適正な活動
生活安全(デマ情報や不正アクセス等の備え)
情報モラルの要素
 日常生活上のモラル
 情報技術の特性を踏まえた活動
 文化的・社会的なコミュニケーションの範
囲・深度が変化する特性を踏まえた活動
基本的な考え方
人と人との間のコミュニケーション
人権への配慮
○差別・誹謗中傷の回避,知的所有権,プライバシー
文化的・社会的な環境,考え方の違いへの配慮
○予見や憶測による誤解の回避,適正な意見情報交換
技術的な環境の違いへの配慮
○情報機器の方式の相違,共通のデータ形式の利用
コンピュータや情報通信ネットワークの特性への配慮
○影響範囲の理解,コンピュータ犯罪,
ネットワーク使用犯罪の回避
情報モラルの指導
情報モラル指導の目標
 ルール,マナーを身につける
 対処方法を知る


加害の予防:トラブルを回避する
被害の予防:身の回りの危険に備える
 判断力を育成する


幅広い観点と考え方を身に付ける
新たな場面でも正しい行動がとれる
評価の観点
 情報モラルの大切さを知る
 情報モラルの大切さを受け止め,主体的に
行動できる
 ルールやマナーを理解した行動ができる
 生活安全上の危険に備えた行動ができる
情報モラルの指導の在り方
 情報社会に正しく参画するため
 考え方と態度を
 学校生活のあらゆる場面を通じて
 学習内容:知識,考え方,判断の観点
 学習方法:座学,考える活動,意見交換等
指導参考資料(1)
文部科学省委託事業
 「インターネット活用ガイドブッ
ク」モラル・セキュリティ編
 インターネット活用のための
「情報モラル指導事例集」
発行 コンピュータ教育開発センター
(CEC)
指導参考資料(2)
 【 教 材 】 ネット社会の歩き方

http://www.net-walking.net/
 【 資 料 】 ネチケット情報

http://www.cgh.ed.jp/netiquette/
 【情報交換】 i-ethicsメーリングリスト


学校教育と情報倫理メーリングリスト
http://i-ethics.k12.gr.jp/
指導参考資料(3)
 【法律】 法庫

http://www.houko.com/
 【判例】 最高裁判所

http://www.courts.go.jp/
情報モラルの内容
情報収集活動
 適正な手続きによる情報の収集
 知的所有権の尊重
 情報の信頼性についての意識
 情報の品質についての意識
情報発信活動
 プライバシーの保護

無断開示,漏洩への注意
 著作権などの尊重


著作物の複製,公衆送信
誹謗中傷など人権侵害に慎重な態度
 情報発信に伴う責任


正確,良質な情報,情報の更新,苦情処理
すべての人のためのユニバーサルデザイン
コミュニケーション活動
 コミュニケーション・マナー

netiquette(ネットワーク上のエチケット)
 相手への配慮



1対1,1対多のTPO
仮想人格か否か
信頼と警戒
情報通信手段の利用
 ガイドラインの遵守
 セキュリティへの配慮
 犯罪に巻き込まれないための対応
 一般社会の常識

契約履行義務,損害賠償責任
著作権の理解
知的所有権
 著作権(+著作隣接権)
 工業所有権

特許権,実用新案権,商標権,意匠権
 その他

種苗法,不正競争防止法など
知的財産権,無体財産権ともいう
著作権の理解
 著作物とは
 著作者
 著作者人格権とは
 著作権とは
 著作隣接権とは
 著作権の制限とは
 著作物を利用するには
著作権の尊重
 著作物




思想または感情を
創作的に
表現したもの
文芸,学術,美術,音楽の範囲に属する
著作物:小説,音楽,美術,映画,プログラムなど
編集著作物:新聞,雑誌,百科事典など
著作者
 著作者=著作物を創作した人


誰でも(幼稚園児でも)対象
法人が著作者になることもある
 著作者の権利


著作権,著作隣接権,著作者人格権
創作の時点で発生
著作者人格権
 著作者の人格的利益を保護する権利
 権利内容



公表権
未公表物公表の決定権
氏名表示権
氏名表示有無の決定権
同一性保持権 意に反する改変の禁止
 権利保護期間


著作者の一身に専属して譲渡不可
著作者の死後も尊重される
著作権
 著作物の利用を許諾したり禁止する権利
 権利内容

複製,上演,演奏,上映,公衆送信,口述,展
示,頒布,譲渡,貸与,翻訳,翻案,二次利用
 保護の期間


著作者の生存中+死後50年間
無名/団体の場合,公表後50年間
著作隣接権
 (著作物を公衆に伝達する)実演などの利
用を許諾や禁止をする権利
 権利内容

実演の録音,録画,放送,有線放送,送信可能
化,譲渡,貸与/レコードの複製,送信可能化,
譲渡,貸与/放送の複製,再放送,拡大伝達
 保護期間

実演等の時点から50年間
著作権の制限
 文化的所産の公正な利用で文化の発展に
寄与するため,著作物を無許諾で利用でき
る場合



著作権法30条~47条
私的使用,図書館,引用,教科書,教育放送,
教育機関,試験問題,展示,非営利上演,報道,
プログラムの所有者による複製など
複製物の目的外使用禁止,出所の明示義務
35条 教育機関における複製
 学校その他の教育機関(営利を目的として設置されている
ものを除く。)において教育を担任する者は、その授業の
過程における使用に供することを目的とする場合には、必
要と認められる限度において、公表された著作物を複製
することができる。
ただし、当該著作物の種類及び用途並びにその複製の部
数及び態様に照らし著作権者の利益を不当に害すること
となる場合は、この限りでない。
32条 引用


公表された著作物は、引用して利用することができる。こ
の場合において、その引用は、公正な慣行に合致するも
のであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的
上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。
引用=他人の著作物を自分の著作物に取り込む=
1.
2.
3.
4.
他人の著作物を引用する必然性があること。
かぎ括弧をつけるなど,自分の著作物と引用部分とが区別され
ていること。
自分の著作物と引用する著作物との主従関係が明確であること
(自分の著作物が主体)。
出所の明示がなされていること。
利用できる場合
 保護対象外である場合,権利制限により無許諾
利用できる場合を除き,原則として許諾必要
 利用権限取得方法
1.
2.
3.
4.
著作権者から著作物の利用について許諾を受ける。
(著作権管理団体から許諾の場合もある)
利用の仕方,許諾の範囲,使用料などを確認。
出版権の設定を受ける。
著作権の譲渡を受ける。
文化庁長官の裁定を受ける。
著作権のまとめ
 著作の時点で自動的に発生する


登録不要,©マーク不要(無方式主義)
世界知的所有権機関(WIPO)条約
 対価を支払い許諾を得て利用することが原
則
 無許諾で利用できる場合は限定的である
 詳細は著作権法,文化庁のWeb参照
個人情報の保護
プライバシー
 プライバシー



私的なことがらをみだりに他人に知られない権
利
立ち入ったことを聞かれても拒否できる
私的な秘密を意に反して洩らされない
個人情報
 個人を特定できる情報

商業的な価値もある
 不当な取り扱いをされる危険に備える必要
がある
 正当な目的の範囲内で正しく取り扱われる
ならば,開示して生活に役立てたい
個人情報の取り扱い
 収集目的の明示,適正な方法で収集

原則として本人から収集するなど
 目的の範囲内で使用する

第三者への提供は明示し,本人の了解
 漏洩を防止するよう努める義務
 透明性の確保

本人への開示,本人の要望あれば修正
個人情報保護関係の制度
 個人情報保護基本法案が国会審議中
 刑法

信書開封,秘密漏示,強要,名誉毀損など
 民法709条(不法行為)

故意または過失により他人の権利を侵害した
者は,損害を賠償する責任を課される
校内体制とトラブル対処
校内体制の在り方
 日常の場合を類推して適用する

情報手段を介しても特別視すべきでない
 個別の事件について個別の対応,指導が原則
 インターネット利用の際は,対外的窓口機能を整
備する

危機管理の側面も考慮
トラブルの予防と監視
 利用者教育の充実
 技術的保護・予防装置の活用


有害情報のフィルタリングなど
教育利用の利便性に配慮が必要
 アクセス記録(ログ)の監視


情報システムの保安管理技術
プライバシー保護に配慮が必要
トラブルへの対処
 ヘルプデスクの活用

地域ヘルプデスク/校内ヘルプデスクの設置
 相談機関窓口の把握

国民生活センターなど
 場合によって法律相談,専門家(弁護士)の
支援依頼
コンピュータセキュリティ
 不正アクセス
 コンピュータウィルス
参照先
 情報処理振興事業協会(IPA)セキュリティ
センター

http://www.ipa.go.jp/security/