国際比較法制論A 第5回授業 2006年5月18日 阿川尚之 連邦主義と州権主義の対立 合衆国憲法史三つの主要テー マ 連邦と州の関係(国のかたちと憲法) 政府と私企業の関係(資本主義と憲法) 政府と個人の関係(個人の自由と憲法) アメリカ合衆国とは何か?? 「フェデラリスト」39篇 主権を有する1つの国家か 主権を有する13の国家の連合か 主権を有する13の国家からなる主権を有する 1つの国家か 連邦政府の権限の範囲 誰がそれを決定するのか ジョン・マーシャル判事とは・・・ ヴァージニア州出身、トマス・ジェファソン のいとこ 代表的なフェデラリスト、アダムズ政権の 国務長官 1801年から1835年まで35年間合衆国最 高裁首席判事をつとめる 強力なリーダーシップを発揮 連邦最高裁の権限確立 司法審査制度の確立 司法審査制度の確立 (1) 連邦法に対する違憲立法審査権確立 州法に対する司法審査権の確立 Marbury v. Madison (1803) Fletcher v. Peck (1810) 土地売却を無効とする州法は連邦憲法の 契約条項に反し無効 司法審査制度の確立 (2) 州裁判所の判決に対する司法審査権の確立 Martin v. Hunter’s Lessee (1816) 戦争中没収された土地の所有権を認めた州裁判所の 判決は同じく無効 州を相手取った個人の訴えに関する司法審査権の 確立 Cohen v. Virginia (1821) 個人は州を相手取った訴訟を連邦最高裁に上告でき る 連邦政府の州政府に対する優 越の確立 McCulloch v. Maryland (1819) McCulloch v. Maryland (1/5) ①事実 『事実』 半官半民の合衆国銀行設立 メリーランド州が合衆国銀行のボルチモア 支店に課税 合衆国銀行支店長がこれを拒否 メリーランド州が支店長を州裁判所に訴え る McCulloch v. Maryland (2/5) ②争点 ③判決 『争点』 1)合衆国銀行は合憲か 2)州は合衆国銀行に課税できるか 『判決』 1)イエス 2)ノー McCulloch v. Maryland (3/5) ④理由 『理由』 連邦政府はその権限を州からではなく 人民から得ているため、その委任の範囲内 で絶対の権限を有している。 連邦政府は「必要かつ適切」条項により銀 行を設立する権限を有する。 州の課税は連邦の政策目的を妨げるから 無効。 McCulloch v. Maryland (4/5) ⑤意義 『意義』 1)連邦政府の広い権限行使を可能とする 2)連邦政府の成り立ちについて国民主権説を 確立 The Government of the Union then is emphatically and truly, a Government of the people. In form and in substance, it emanates from them. Its powers are granted by them, and are to be exercised directly on them, and for their benefit. McCulloch v. Maryland (5/5) ⑤意義 3)連邦裁判所の司法審査権を再び州に 対して確立 (反対派は、最高裁が合衆国銀行を違憲と しなかったことを非難した。 しかしそれによって、司法審査権を認める 結果になった) 連邦政府の通商規制権の確立 Gibbons v. Ogden (1824) Gibbons v. Ogden (1/4) ①事実 『事実』 NY州とNJ州の間のフェリー運行独占権をNY州 がフルトンに与える フルトンが独占権をオグデンに譲渡 ギボンズが連邦からの免許で同区間に フェリー運行を開始 オグデンが独占権の侵害だとしてNY裁判所に 提訴 NY裁判所はギボンズのフェリー運行差し止めを 命令 Gibbons v. Ogden (2/4) ②争点 ③結果 『争点』 NY州が与えた独占的フェリー運行権は憲 法に反して無効か 『判決』 イエス Gibbons v. Ogden (3/4) ④理由 『理由』 連邦政府は州際通商を規制する権限をもってお り、通商は航行を含む 連邦政府はこの権限にもとづいてギボンズにフェ リー運行権を与えた 連邦政府のもつ州際通商権限は排他的である したがってオグデンに与えられたNY州の独占権 は無効である Gibbons v. Ogden (4/4) ⑤意義 『意義』 連邦政府の州際通商規制権をはじめて解 釈 州際通商を広く解釈 連邦政府が同規制権を行使していない場 合については触れず 20世紀に連邦政府の権限の基礎となる 南北戦争と憲法 南北戦争と憲法 (1/4) ~南部連邦脱退の合憲性~ 『南部の主張』 州間の契約による合衆国成立 北部による契約違反 契約遵守義務の消滅 連邦離脱は合憲 新しい連邦の成立(南部連合) 祖国防衛の必要性 南北戦争と憲法 (2/4) ~南部連邦脱退の合憲性~ 『北部の主張』 人民による合衆国創設 連邦離脱は違憲 南部の反乱 鎮圧の義務 南北戦争と憲法 (3/4) ~戦争の性格~ 『南部の主張』 国家と国家の間の戦争 交戦権の行使 戦時国際法の適用 捕虜は保護されるべきもの 南北戦争と憲法 (4/4) ~戦争の性格~ 『北部の主張』 内乱 戦時国際法の非適用 捕虜は反逆者として裁判 (実際には戦時に準じた扱い) 連邦と州権をめぐる現代の問題 連邦と州権をめぐる現在の問題 通商規制権の範囲の変遷 ニューディール以後の憲法解釈 Lopez v. United States (1995) の衝撃 レーガン大統領の新しい連邦主義 修正第10条の見直し 州権の回復を通じての小さな政府 連邦と州権をめぐる現在の問題 修正10条 『本憲法によって合衆国に委任されず、 また州に対して禁止されなかった権限は、 それぞれの州または人民に留保される。』
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