長期的な計画を達成しようとするときであれ、まず、相

Chapter Two
Business Comunication
コミュニケーションの要素
•
発信者は媒体を選んでメッセージを受け手つまり受信者に送り、それが返
答をもたらす。そして、その返答で、今度はまた新たな対話が進展する。こ
のやりとりは、コミュニケーションの研究でいちはやく基本的な類型(モデ
ル)として取り上げられた。
•
このモデルを活かして、ビジネス・コミュニケーションのあらゆる状況を定義
して分析するのに役立つ分類法として、七つの要素を提案したい。
0
0
7
題
1
.
.
.
」
• 発信者(ソース)
誰が行動を起こすのか、なぜその人が行動を取るべきだと
思うのか、信頼性があり、効果的な発信者になるにはどうし
たらいいのか。
• 目標(ゴール)
自分はどんな結果を求めているのか。任務を言い渡されたと
きや、よいアイデアが浮かんだときなど、それぞれ初段階で
は目標は明確である。目標を忘れないように書き留めよう。
そして、目標達成のために要するコスト負担と目標達成後の
メリットとを比較検討しよう。そのメリットは、それほどまでにコ
ストをかけるだけの価値があるものか、その目標は、自分が
持っている同等あるいはもっと重要な目標との間に矛盾を起
こしたり、衝突したりしていないか。自分は、そして他者は、
目標達成のために危機をどのように正確にとらえ、結果を出
していくべきなのか、そして、どうやって達成された自分の成
果を測るのか。
• 受信者(オーディエンス)
自分にとっての相手は誰なのかを明確にする。どうやって支持をとりつけ
るか。相手は自分の提案に対し、肯定的か、批判的か、中立的か。自分
は彼らにどのように理解されているのか。自分が主に対面している相手
は1つの集団なのか、いくつかの集団なのか。自分の計画が成功したり
、失敗することによって影響を受ける二次的な集団はいるのか。自分が
思いもよらないような隠れた集団はいるのか。
• コンテクスト(状況・背景)
コミュニケーションは、ある特定の状況下で起きる。1人に伝えようという
こともあれば、何百万人に伝えようとすることもある。また、ある特定の企
業文化・歴史的背景・競争状況には、一定の基準がある。それらの基準
の中でコミュニケーションが行われることもあれば、基準を乗り越えて行
われることもあるし、顧客・潜在顧客、地 方・全国メディアなどの外部団
体と行われることもある。コミュニケーション戦略を計画する前に、自分が
コミュニケーションする周囲の状況をしっかり把握しよう。
• メッセージ
どんなメッセージを伝えれば、特定の相手とともに、自分の目標を達
成することができるのか。相手はどのぐらいの情報を必要としている
のか。どんな疑問を持ちそうか。自分の提案が相手にどの程度メリッ
トを与えるか。どうやって自分のメッセージを納得させて相手の記憶
に留めてもらえ得るか。いかにして自分の主張を、最高に説得力を
持たせるようにまとめるか。それらを考えることが重要だ。
• 媒体(メディア)
どの媒体を使えば、重要な相手に最も効果的にメッセージを伝達で
きるのか。話す・書く・電話する・E-メールを送る・会う・ファクスを送
る・ビデオテープを作成してメッセージを伝える・記者会見を開くなど、
伝達方法はさまざまあるが、どれがよいのだろうか。「媒体自体がメッ
セージである」というのは周知のことだろう。どの媒体を選択するかに
よって、そこから読み取れるメッセージは何か。例えば、会社の同僚
にメモを送る行為は、暗に面と向かって話したくない、という意思を示
すものであり得る。
• フィードバック
コミュニケーションは行為ではなくプロセスである。あるメッセージが
送られると、必ずそれに対する反応が起き、それがまた別のメッセー
ジを呼び起こす。ビジネス・コミュニケーションとは、ある特定の的に
ピンポイントで矢を射つといったものではなく、期待している結果に
導くためのプロセスを引き起こすということである。つまり、コミュニ
ケーションでは、それがたどるそれぞれの段階で、相手の意見を聞
き出し、さらに相手が応答できる機会を与えることが重要なのである。
そうすれば、相手が考えていることを知り、それに応じて自分のメッ
セージを調整して伝えることができるので、相手は、もっと深くプロセ
スに関わりたいと感ずるようになり、こちらの目的の達成に対して
もっと強く当事者意識が働くようになる。
• 上記の7つの分析的ツールを簡単に考察しただけでも、ビジネスにおける
コミュニケーションの課題とは、まさしく管理者の課題であるとおわかりに
なったかと思う。多くの場合、コミュニケーションは、ある計画的な行事のよ
うに起こるのではなく、管理者に突然降りかかってくる。そして、自分が重
要と考える話題や目標を、誰も問題にしてくれない場合もあるだろう。この
現実を有利な状況に転じさせるにはどうすればいいか。これには、前述の
発信者・目標・受信者・コンテクストメッセージ・媒体・フィードバックの7つ
の要素を理解することによって、管理者は、どのようなビジネスの状況に
あっても、つまり、広範な戦略の策定をしているときでも、ある特定のコミュ
ニケーション活動の考案をしているときでも、むだのない枠組みを持つこと
ができる。そして、このチェックリストを使えば、実際にコミュニケーションの
プロセスに入るまでに、より広い視野に向けて個別の課題を実行すること
になるので、成功する可能性が高まる。
コミュニケーション分析の事例
上司に対し 忙しい時に休暇を取れるかどうかを聞くとするときのことを考えてみよう。
1. 発信者
あなたは(大夏優秀な/優秀な/非凡な)部下であり、休暇願を出そうとしている
あなたは(部内でベテラン/駆け出しの立場)にある
2. 目標
自分の好きなときに休暇を取ること
3. 受信者
一次的受信者 直属の上司 (近しい/よそよそしい、友好的/非友好的、柔軟性
がある/厳格である)
二次的受信者 (同僚/部下/顧客/その他休眼を取ることで影響を受ける人々)
4. コンテクスト
仕事の量が多い
部の業務の (さして重要でない部分を担当している/特に重要である部分を担当し
ている)
最前に、特別な配慮を頼んだことが (ある/ない)
定まった前例や手続きが (ある/ない)
他の人か同様の配慮を頼んで (いる/いない)
5. メッセージ
個人的な事情で今回休暇を取ることか緊急に必要になった。
自分の仕事は、同僚か代わってくれるよう、手を回しである。
他の人も、同様の配慮をしてもらっている。
休暇の前後は、いつもより長い時間をかけて仕事をしっかりこなすことかできる。
休暇か取れるように、スケジュールと期限を立て直すことかできる。
こ好意をいただければ、後日それに報いたい。
休暇は自分にとってよいことである、ひいては、会社にとってもよいことである。
6. 媒体
• 1対1の会話
• 電話
• メモ
• ミーテインク
• 電子コミュニケーション
上記のうちのいくつか、または上記のすべて。
7. フィートハック
相手の中には、そのことを支持したり、理解を示す人もいれは、まるで無関心だった
り、あるいは敵意を持つ人がいたり、と反応はさまざまであろう。ことによると、彼らは、
本人か考えつかないような顛末について気付かせてくれるかもしれない。
• 前記の事例は一見単純な状況だが、その状況ですら、分析すれは、コミ
ュニケーションをする前に私たちかどんなに多くの要因を考えているかが
わかる。それはしばしば、半分無意識で考えているのかもしれないが、発
信者、コンテクスト、相手の態度の中の要因が変化すれは、メッセーシや
媒体をどう選択すべきかが決まってくる。異なる相手には、(それが、直
接的に対立しない限りにおいては)それぞれ異なるメッセージを送ろうと
決めるかもしれなし、また、費やす時間や労力と、得られる利益を注意深
く天秤にかけてみて、この要求は引っ込めようと判断するときもあろう。
コミュニケーションと認識
コミュニケーションとは、私たちが起きている時間のほとんどを通して行っ
ているものであり、大変な仕事である。人間は、生まれて産声を上げて以
来、何らかの形でコミュニケーションをしている。また、人間のコミュニケー
ションは大抵の場合、本能的なものであるか経験によるものか個性に基
づくものだ。成功する管理者の職務とは、コミュニケーションについての計
画をより深く分析して行い、コミュニケーションが受け入れられるにはどう
すればよいか、より客観的に考えることである。ここでは、管理者が行うコ
ミュニケーションの計画と実施に関して、さらに意識的に取り組む今き基本
的なツールについて説明する。 ビジネスで効果的なコミュニケーションを
行うことは少なくとも、個人的な関係においてのコミュニケーションと同様、
難しいことは確かである。無類の鋭さを以てマネジメントを観察して、どの
著作も一読の価値があるピーター・ドラッカーは、ビジネスの状況における
コミュニケーションがいかに難しいかを吟味して、次にあげる4つのコミュ
ニケーションの基本原則を発見している。
1.
2.
コミュニケーションとは、認識である
コミュニケーションを行う際、どんな媒体を使用するとしても、第1に問う
べきは、「これは受け手の認識の範囲を超えていないだろうか。受け手
はこれを受け止められるか」ということである。実際、受け手に理解され
たものだけが伝達され得るのである。例えば、ある従業員に業績が悪い
という評価を下す状況を考えてみよう。その状況下で、彼らは変わろうと
するだけの力量や臨機応変の才を備えていられるだろうか。彼らは批
判をはねのけ、自分の業績を正当化しようとするのではないだろうか。
コミュニケーションとは、期待である
70年にわたる研究の結果から、ある基本的な結論が導き出された。そ
れは、人は自分が開きたいと思うものを開き、あまりなじみのないもの
や自分にとって脅威と思うものは聞かない傾向があるということである。
「人間の心には、これから知覚しようとしているものが期待に反している
ことを悟らせようと、小刻みに積み上げるような、ゆるやかな変化を体験
させても、効果は生まれない」。相手の興味や期待を理解することによ
ってのみ、彼らに刺激を与えて、新しい角度から何か異なったものを見
出すことをすることができるのである、
3.
コミュニケーションとは、要求である
コミュニケーションは「常に、受け手に対し、何かを要求する。受け手が
何かになることを、何かをすることを、さらにまた何かを信じることを要求
する」。言い換えれば、コミュニケーションとは普通、受け手に何かを与
えさせようとするものである。その何かとは、注意・理解・洞察・支持・情
報・および、あるいはカネである。そしておそらく最も重要なのは、コミュ
ニケーションは「時間」を要求することだ。この時間は、ビジネスパーソン
にとって最も貴重な商品である。そこで、どんなビジネス・コミュニケー
ションでも、それに関わろうとする前に、なぜ自分はそれに時間を費やさ
なければならないのか、何をしたら彼らは貴重な時間を自分に割いてく
れるか、最終的に時間を割いてよかったと彼らは思ってくれるだろうか、
といった質問を自分に問いかけることが必要だ。
4.
コミュニケーションと情報は異なる。大体において相反する。しかし両
者は依存関係にある
人類の歴史が始まって以来ごく最近までは、たくさんのコミュニケー
ションがなされたが、事実を手に入れることは希で、その代償が高かっ
た。しかし、現在では、前世紀のメディアの爆発的増加に伴い、膨大な
量のデータが私たちとコミュニケーションの相手たちを圧倒するように
なった。高校生がE-メールでビル・ゲイツをつかまえることもできるし、
大量のデータベースにアクセスすることもできる。このように大量の情
報-事実-を手に入れることができるが、それらをどうやって識別し、
重要なデータと重要でないデータを区別すればよいのか。この状況は
私たちに、いつ連絡を取りたいのか、いつ情報を伝えたいのか、そして
どんな状況下であれば両者が両立できるのか、絶え間なく送り込まれ
る圧倒的に大量の事実の中から、相手の注意をどうやって引きつけ、
自分からのメッセージを取り出してもらうかという、新たな質問を問い
かけることになった。
人は本来、変化に対して抵抗感を持つものである。そこで、人々に関心を持
ってもらうことが大変価値のあることだという前提の下に、どのようにすれば
、最大の効果を以て人々をつかまえることができるか、自分が発信者として
、どんな存在であるかを考えながら、コミュニケーションの計画を始めてみる
ことにしよう。
発儒者-自分は発信者としてどんな存在であるのか
コミュニケーション分析のツールや、効果的な伝達方法のテクニックを習
得するのは極めて重要である一方で、最終的にコミュニケーターとして成
功するか否かは、人としていかに認められているかに大きく左右される。ア
リストテレスは、『弁論術』でこの問題に初めて直接に取り組んだ。『弁論
術』はコミュニケーション総論に関する研究書の中で今なお最も優れた著
作である。彼は、成功するコミュニケーションの本質を定義した。それには、
ロゴス、パトス、エトスの3つがある。
ロゴス(理性)は基本的には、言葉を支配する能力を意味する。ふさわしい言葉
を選択し、明確で整合性のある文章になっているか、各パラグラフで思想を簡
潔に区分して表現しているか、関連するデータをすべて識別し、説得力のある
議論を構築しているか。つまり、効果的なコミュニケーターになるための基本的
なスキルを持っているかということである。このアリストテレスの分類では、言葉
の構造と様式を自由自在に使える能力など、極めて重要な特質が数多く述べ
られている。
パトス(情念)は、自分と相手の感情を支配する能力である。ビジネスの状況で感情
について語るのは場違いだと思われがちだが、実際は、感情があらゆる交流の場で
大きな役割を演じている。仲間内でも自分の好きな同僚を進んで助けようとしていな
いだろうか。自分のことを尊重し、頼りにしてくれていると感じる上司のためとあれば、
きつい仕事もものともせずやってのけるだろう。そして、才能はあるが漠然と不信感
を抱いているライバルよりも、自分が信頼を置く有能な友人を昇進させようとするの
ではないだろうか。また、パトスには、共感(エンパシー)という概念も含まれている。
聞き手が個人の場合でも集団の場合でも、あるスピーカーの観点について、たとえ
同意していなかったとしても、自分たちの観点を理解してくれていたときは、そのス
ピーカーを支持する傾向がある。最も重要なのは、他のコミュニケーションと同様に、
ビジネスの状況でも、聞き手の正義感や、フェアプレー感覚や、人間としての尊厳に
訴える能力の有無がコミュニケーションの成否を決定することだ。それは、ときによっ
ては狭い個人的な利益への誘惑を乗り越えることができる。
エトス(理念)とは、基本的に、人としてどんな存在であるかということだ。社員・同
僚・上司が、自分を信頼する論拠があるか、彼らの目標が自分の要求より重要で
あるとき、それに自分の要求を従属させているか、自分の言葉や指示は一貫性を
持っているか、有言実行しているだろうか。少なくともビジネスの世界に限って言え
ば、エトスを現代的に解釈すると、「信頼性」と訳すのが最もふさわしいだろう。
パトスとエトスには特に、ビジネス・コミュニケーションにおける倫理的な配慮という
意味も含まれている。リーダーと言っても、他の人と同様、好ましくない性格を持ってい
たり、間違いを起こしたりすることもある。大変な成功を収めてはいるが、仕事一筋で横
暴であると広く知られているボンド・トレーダー(債券取引エキスパート)でも、おそらく有
能な部下とは利益を共有しようとしているだろう。また、たとえある議員が側近のメッセ
ンジャーと仕事外で情事に耽ったとしても、有権者はその議員を好ましく思い、彼が選
挙区の沿岸の漁猟権の拡大に尽力したとなれば彼を信じ、その情事を許すだろう。し
かしながら、聞き手側にいる人たちは常日頃、自分たちのリーダーが全体的に節度を
わきまえた人間か、支持したり尊敬したりするのに値する人間かといったことを考慮し
てから判断を下している。また、たとえ世の中のあらゆる分析や手法を用いたとしても、
その結果が全体像に合わない限り、それを支持してくれることはない。信頼できる人か
否かは、主に自分の短期的な利益より、もっと大きな目的のために尽力している、と聞
き手に思ってもらえるかどうかにかかっているのだ。
アリストテレスの分類は、もうひとつ重要なポイントを提起している。それは、ビ
ジネス・コミュニケーションの教育や実践における経験に現在でも広く実証されて
いることで、いくら管理者にコミュニケーション理論を活用できる能力や、広報活動
の小技を駆使する能力が備わっていても、人間性に対する理解力がなければ全く
何の結果を生み出すことにもならないことである。人間性に対する理解力は、幅広
い知識と経験によってしか得ることができない。コミュニケーションは、生物学や文
学のような、習得すべき知識の集大成ではない。コミュニケーションとは、決まり
きったものではなく、絶えず変わっていく対象について目を向けることである。
一部のビジネスパーソンたちが、特定の狭い専門分野や優れたアイデアの一
片から出発して輝かしいキャリアを打ち立てることがあるのは反論の余地がないこ
とだが、一方で、成功する管理者は概ね教養人でもある。つまり、成功する管理者
は、筆が立ち能弁で自分の分野の内外を問わず幅広い分野に関心を持っている
のである。例えば、名文を書く人は読書家でもある。彼らは、自分の専門分野での
発達に後れを取らないよう、専門書を読むのと同様、優れた新開や雑誌の記事・
小説・詩を定期的に読み、常に努力している。演説に秀でている人は、テレビで見
た政治家や、地元の大学で聞いた外部の専門家の優れたスピーチを聞き学んで
いる。また、国内情勢・国際情勢・歴史・科学・芸術など、幅広い範囲に関心を持て
ば、次回の社内パーティーのとき、話題に事欠かないだけでなく、全体的に、自分
の人間としての成長に大いに役立つ。他人の関心事にも興味を持ち、知識を豊か
にした上で会話に参加できれば、感情の通う関係ができあがり、自分自身の分野
で周囲の信頼も高まる。
聞くこと
コミュニケーションが上手な人は聞き上手である。これを忘れてはならない。一般に
人は、自分の目標を設定し目標達成に向けた行動計画を策定していくうちに、自分
が正しいことをしていると信じ込み(また、上司から失敗するなというプレッシャーを
かけられ)、その目標の売り込み役に転じやすい。しかし、同時に聞き上手でなく
なってしまう。大切なのは、どんなビジネスの目標も、達成するにはチームワークが
必要だということだ。聞き上手になるには、いくつかのテクニックを用いればよい。テ
クニックのポイントの一部については、詳細が「質疑応答への対処、聞き取りの5つ
の方法」(ハーバード・コミュニケーション・アップデート、1999年2月)に掲載されてお
り、その内容は次のとおりである。
0
1
7
1. 感情の移入(エンパシー)をする
他者と交流する場合、相手が1人であろうと大勢であろうと、提示されたある観点
に賛成であろうと反対であろうと、「自分はその観点を理解している」ということを
示す。相手が話す内容に細心の注意を払って聞けば、自分も相手と同じ関心を
抱いていることを、過去の経験を踏まえ類似の実例をあげて示すことができるだ
ろう。そうすることで、相手と共通の立場をつくることができる。それこそが、両者
が合意に達するのに必要なことである。
2. どこに意見の相違があるかをはっきりさせる
自分の観点に対して反対意見があったとき、それを無視したところで、反対意見
がなくなるわけではない。しばしば、辛抱強く聞くことによってのみ、意見の相違
の本当の原因を表面に浮かび上がらせることができる。
3. わかりやすく言い換える
相手に応答する前に、相手の関心事項を簡潔に言い直してみることである。仮に
自分が相手の関心事項を正しく理解していなければ、この時点でそれを突き止
めて明らかにすることができる。
4. 適切な質問をする
もしもある従業員が、仕事が多過ぎると不平を訴え、確かにそれは問題だ、とい
う場合は、次の質問を投げかけよう。「君にとって一番重要な仕事は何か。そして、
それに集中できないのは、君の仕事のどの側面が問題になっているからなの
か。」このように適切な質問を投げかけることは、問題解決の糸口となる。
5. 積極的に聞く
表面に出てくる不平や意見の裏に潜む感情や関心を理解するよう努めよう。人は
往々にして、自分自身の感情や関心について気付いていないものである。
6. すぐにフィードバックする
要請や関心に即座に応えられないことは確かによくあるが、その場合は少なくとも、
どのように解決するつもりかを相手に話しておかなければならない。非常に特殊な場
合を除き、自分がどのように今後進めていくつもりなのかを、相手に明確に示さずに
放置しておけば、 相手は苛立ち、無力感を覚えるようになる。
要するに、自分が成功するために協力を仰がねばならない人々の動機や関心に注意
を払うことである。提案や、自分の観点に対する反対を開きたくないというメッセージを、表
立ってであれ、暗に示すのであれ、相手に送らないように心掛けよう。自分の目標や、その
目標達成のための計画に対して反対を唱える人が一部いたとしても、その人が公平に意
見を聞いてもらい、関心も理解してもらっていると感じれば、物事は進んでいくものだ。
他人が話すことに対して、蓄積された情報に基づいて関心を示せば、必然的に話し
上手とか、コミュニケーションに長けているという評価が高まる。
発信者としての信頼性
発信者としての信頼性は、古代の哲学者が“auctoritas”と呼んでいたもの(それに最
も近い訳語として、「権威」)に目に見えないが影響を受ける。権威は、いくつかの異な
る源泉から生まれるものであり、組織内のいかなる階層でも生じ得るものである。組
織の底辺で清掃スタッフをしっかり見ている現場監督者が、その作業分野では真の権
威を握っており、場合によっては、大企業ではなまなかの上級管理者よりも高い評価
を受けていることがある。
権威を左右する要因は、次のようなことである。









自分の仕事の領域をどれだけよく知っているか。
仕事ですばらしい業績を上げているか。
他者にどれくらい信頼されているか。
自分の意見で新分野を開拓したか。
過去の実績。
根底に横たわる知性。
人間性への理解。
過去の状況において判断がいかに正しかったか。
どんな人間であるかについての印象を他人に与えてきたのか。
コミュニケーションの特質
自分が、コミュニケーションの発信者になったとき、会話やメモ、電話、インターネットメッセー
ジ、プレゼンテーション、提案や報告書のいずれにおいても、できるだけ効果的にメッセージ
を伝えたいと思うだろう。ここではどの効果的なビジネス・コミュニケーションでの発信者にも
あてはまる、基本的な特質について述べることにする。
正確さ
相手と対する際、人は暗黙のうちに信用を求めるものである。自分のデータの中に偶然、事
実に間違いがあることに相手のうちの1人にでも気付かれたら、その場で信用を失ってしまう。
ビジネスにおける不正確さの典型例としては、不十分なデータ、データ解釈の誤り、鍵になる
要因の見落とし、無意識な偏見、過大視などがある。それらすべての誤りをしないように注意
し、信頼を保ち高めよう。
明瞭さ
明瞭さをマスターするのは難しい。効果的に機能するため、組織には、正確で完全な情報、
わかりやすい指示、通常でも不測の事態でも意思決定者を誘導できるような方針が必要
である。誤解・あいまいさ・混乱は、むだな出費を生み欲求不満を募らせる。
教師や管理者の中には、KISSの標語を忠実に守る人たちがいる。KISSとは、‘‘Keep It
Simple, Stupid”の頭文字を取ったものだが、訳すと「こら、短くしておけ」、要するに人に何
かを伝えるときは短く、という意味である。しかし、ビジネスの状況ではほとんどの場合、簡
単な解決はもとより、手短な解決はない。明瞭さは、注意深く準備してようやく生じてくるも
のだ。そのためには、要点を盛り込み、分析し、まとめなければならない。ビジネスにおい
て、明瞭に文章を書き、話すには、明瞭な思考と表現が必須である。
簡潔さ
よい管理者のコミュニケーションは、簡潔で、多くの意味を少ない言葉で伝えるものでなく
てはならない。コミュニケーションをするのが社長に対してであれ、下級幹部にであれ、時
間給従業員にであれ、簡潔さを心掛けるのは基本的な美徳であると言える。誰の時間で
あれ、貴重なのだ。やらなければならない仕事があるのに、いたずらに長いコミュニケー
ションに付き合わされ、椅子にじっと座っているのをよしとする人などいない。プロクター・
アンド・ギャンブル社のように、一部の企業では、簡潔さについての規則を定めているとこ
ろもある。それらの企業では、上司は、1頁から2頁に納められたメモしか読まず、それ以
上の長いメモは読まないというのである。そのように制限することによって書類の量が
減った。もちろん、そのような制限で、報告されなければならないことすべてが網羅されて
いることが保証されるわけではないが。簡潔さというのは、もっぱら短い文だけで書くこと
や、必要な詳細を省略することを指すのではない。言葉1つひとつが価値があるように、
文章を構成することを指すのである。
力強さ
力強さとは、鮮明で、印象的であることを指す。組織の中の人は、多くの責任を持ち、毎日
多くの発信者からコミュニケーションを受け取っている。ミンツハーグは、管理者が、受け取る
情報やアイデアにいつも、ごく短い時間しか注意を与えられないことを例証している。管理者
の仕事には、中断や、注意を散漫にさせるもの、目の前にある仕事以外に注意を仕向けなけ
ればならない、いろいろな責任が付き物である。管理者は、このような仕事の山の中で、力強
い調子で書き、話すことによって、自分のコミュニケーションを際立たせることができる。
力強さは、正確さ・明瞭さ・簡潔さからある程度得られるものであり、また、言葉・イメージ・文
型の選択によってもある程度得られる。力強い文章は、能動態の動詞、具象名詞、精選され
た最少限の修飾語旬を特徴とする。力強い言葉によって理解されやすくなり、メッセージを
もっと記憶してもらえるようになる。また、力強い言葉によって、自信と確信を伝達することもで
きる。
人は、組織の建前の言葉に惑わされることはない。その典型例は、「われわれは開発中の
要件の研究に相当の時間を投入し、決定が必要とされる時点よりも事前に十分予想が可能
である諸般のニーズに対して解決策の提案を開発する予定である」といったものだ。この文章
は、よいビジネス文書の基準のすべてに反する。「われわれは……する予定である」は、「われ
われは現在……を実施中である」に書き換えるべきだ。また、例えば、「開発中の」と「開発す
る」といった言葉の重複や、「相当の」と「十分」といった意味の重複は、文章をふくらませるだ
けである。「提案」や「可能」のような無駄な修飾語句が付くと、重要な名詞のインパクトが薄れ
てしまう。「必要とされる」という受動態表現があると、「誰によって、いつ」必要とされるのか、
という疑問が出てくる。この典型例を「われわれは11月1日に貴社生産ライン拡張の提案を提
出する」と言い換えれば、3分の1のスペースで済み、メッセージは人の心に刻まれ、はるかに
有益な情報として伝わる。
なぜビジネス・コミュニケーションが特別なのか
数年前、ラマー・N・ラインシュJr.は「研究分野としてのビジネス・コミュニケーション」(マネジメント・
コミュニケーション・クオータリー、サウザンドオークス、1996年)(7)を展望した。彼は、古代アテネの
修辞学に関するアリストテレスの教育から、現代のマネジメント・コミュニケーションの訓練を行って
いる専門家までを調査し、現代のコミュニケーションの研究者にとって注目に値するいくつかの結論
に到達した。それは、効果的なビジネス・コミュニケーションには、「対象を知ること」と「やり方を知
る」ことの両方が必要である、というものである。 この彼の洞察は、単純に見えるかもしれないが、
ビジネス・コミュニケーションの本質をとらえている。対象を知ることとは、自分の目標を明確に定義
することである。やり方を知ることは、どのようにして自分自身や相手を理解し、メッセージを構築し、
論理的な議論を展開し、それを伝達するのに適切な媒体を選択し、スタイル(文体)やトーン(調子)
に鋭敏に対応すればよいか、ということである。ラインシュは、メアリー・ムンターの古典的価値のあ
るテキストや他の研究を引用して、ビジネス・コミュニケーションの特徴を強調している。ビジネス・コ
ミュニケーションは、瞑想や楽しみを生み出すことを目的とした小説とは違って、結果を生み出すこ
とを目的としているので、次の点に注意が必要である。
1. 結論を導き出した思考の過程にではなく、結論に焦点を絞ること。
2. 初めに目的をはっきり言い、強調すること。
3. 見出し、太字、斜体や、箇条書きにして各項目の頭に番号を振ったり、黒丸記
号(●)を付け、自分の言いたいことの要点を強調すること。プレゼンテーション
の場合は、繰り返しやトーン、明瞭な図表の使用などで強調する。最終的に資
料や説明書を受け取る人たちは、直接話すことのない人である可能性もあるし、
非常に忙しいため、それらにさっと目を通すだけかもしれない。
4. 直接関係する相手の個人や組織やコミュニティ全体に対して、自分の提案のメ
リットを強調して述べること。
5. 一国の中でも、そして世界で、さまざまな英語が存在する事実に注意して、確
実に自分のメッセージが主要な社外関係者の集団にあまねく伝わるようにする
こと。
プレゼンテーションでの話し方
•効果的なプレゼンテーションは、受信者との共感的な関係を保つスタイルとトーンを具体的に現
しているから、機能するのである。最善の分析をして、最も明確で説得力のある構造を作って話
をしたとしても、もしその言葉やジェスチャーが受け手につながるものでなければ、その労
•力が無駄になる恐れがある。重ねて言うが、共感的な関係を最大限に達成するかどうかは、コ
ンテクストをどの程度まで的確に判断するかに大いに左右される。
•例えば、以下の状況を考えてみよう。意思決定をする会議で上司に報告をする、同僚たちに
とっては好ましくない上からの決定を同僚たちに伝達する、営業チームを奮い立たせる、株主た
ちに期待に背くような知らせを発表する、部下たちに業務を割り当てる、支持を得なければなら
ない利益集団や地域コミュニティーに会社のプロジェクトを紹介する、スタッフ週会議を開く、懐
疑的な報道機関に製品・サービス・方針を説明する、などの状況を考えてみよう。それらの状況
の1つひとつで、自分のメッセージを、記憶に留めてもらえるように、共感を込めて、力強く話さな
ければならない。
•研究報告書や、注意深く選ばれた言葉での方針演説を発表するのでなければ、トーンは自然
な会話体にし、言葉は受信者の知性の中上級水準に合わせて選ぶのが重要である。これに
よって、全員が自分の言うことを理解できる一方、自分にとって最も洞察力のある聞き手(得てし
て世論形成者(オピニオン・メーカー)であることが多い)が、自分の主張に不変の価値を見出す
ことができるのである。この方法は、次にあげるいくつかの重要な基本原則を守ることを意味す
る。
1. 注意深くスピーチの準備をすること。しかし、一語一語書き出してはいけない。口に
出して練習しよう。そうすれば、口頭でのリズムが頭に刻み込まれる。しかし、本文
を暗記してはいけない。暗記したら、リハーサルをし過ぎたように聞こえるだろうし、
またもし主要な言葉のつなぎを1つでも抜かしてしまったら、頭が空自になる恐れが
ある。通常、主要な話題のリストを目の前において、それを参照しながら話す練習を
するのが最善の策である。
2. 要点や議論を、受信者の心に留まるような鮮明なイメージに凝縮するように努めよう。
3. 受信者たちを、漠然とした集団ではなく、個々人の集合体であるととらえて、語り掛
けよう。特にスピーチを始めるときは、受信者はぼんやりした塊のように見えがちで
ある。そのようなときは、受信者のあちらこちらから、3,4人を選んで、それらの人た
ちに自分の言葉を投げ掛けよう。これにはいくつかの利点がある。まず、からっぼの
空間に言葉を投げ入れているのではなく、本当に受信者に話していると実感できる
ので、「自分」を受信者とつなげることができる。自分を活気付けてくれる反応を受け
るだろう。自分の視線を受信者の1人から他の受信者に移すと、両者の間にいた受
信者 たちも話に加わっていると感じるだろう。
4. ボディー・ランゲージの力を使おう。ビジネスパーソンの間では、皆でテーブルを囲ん
で話す、演壇の後ろに立って話す、受信者との間に何も置いていない状態で話す、
の3つの状況のいずれかでプレゼンテーションを行うのが典型的である。これらの状
況での慣行はそれぞれで違うが、そのすべてに適用する特定のルールはある。すな
わち、ジェスチャーは控え目に使うこと、そしてそれが自分の考えに呼応しているか、
自分の考えをよく現すものかを確かめることである。受信者が多くなればなるほど、
皆にわかってもらうように、ジェスチャーをもっと大振りにしなければならない。自分が
動 いていないときには、リラックスして見えるような工夫をしよう。腕や手を使うとき
は、ぶらぶら振らないようにしながら、胴体から離しておこう。そのようにしなければ、
身構えているか、不安げであるか、人を欺こうとしているように思われるだろう。
5. 自分の言葉が聞く人の耳に届いているかを自分に示してくれるような、信頼できる聞
き手の目を絶えず見よう。人間は、他人が自分のことを見るように、自分自身のこと
を見ることはほとんどない。この点、練習をビデオに記録すれば、非常に助けになる。
6. ビジネスのプレゼンテーション発表者は誰でも、発表の仕方に上達することはできる
が、常に成功を保証できる定型的な方法があると想像してはならない。所詮、もし話
し手がその人自身の言葉で語らなければ、受信者は必ずそれに気が付くだろう。
図表の使い方
多くのビジネス・プレゼンテーションは、図表を使うことで効果を引き上げることがで
きる。一部のプレゼンテーションでは、慣行上、図表を使うことがほとんど要件にま
でなっている。図表には、フリップチャート(訳注:めくって見せられるように綴じ合わ
せた大判紙)・ハンドアウト(配布資料)・スライド・ビデオテープ・パワーポイントなど
が使われ、また黒板を使って図を描くこともできる。これらすべてを適切に使用すれ
ば、プレゼンテーションに活気を添えることができ、受信者にもっと記憶に留めてもら
えるようにできる、と同時に、それらはすべて乱用されることもある。実はそのような
場合の方が普通である。いくつか、一般的な経験法則を以下にあげる。
1.図表は単純なものにしよう
効果的な図表は一目でわかるものである。特定の状況、例えば予算案の詳細を専
門家たちに説明するときは、スクリーンのスライドやハンドアウトに、長い数字のリス
トを載せる方が適切である。しかし、大体において、絵が言葉よりも生き生きとしてお
り、空間を節約しやすい場合に限り、図表を使おう。例えば、棒グラフは、もし自分の
提案が採用されたら売上がどのように、どのくらい伸びるかを示すのに迫力のある方
法だろう。また、円グラフで、来年の資源配分についての自分の提案を受信者たちに
すみやかに知ってもらうことができるかもしれない。あるいは、新製品の実物を人々
に手に持って見てもらうように配れば、数パラグラフかけて書いた文章よりもはるか
に明確に説明できることもある。自分が提出するビジュアルが、「数千の言葉の価
値」を持つよう、心掛けよう。
2.図表の後ろに隠れるな
多くのビジネス・プレゼンテーションの発表者は、受信者たちとの直接のやりと
りを避ける手段として図表を使う。スクリーンに映写する概要や、ハンドアウトに
印刷された概要を見ながら発表内容を読み上げるのは比較的簡単なことであ
る。これは、いくつかの状況下では、 例えば、コンサルタントが依頼主に結果
を報告するときや、発表者が大量の技術的な情報を扱う研修を実施するときな
どには、期待されているやり方である。このような場合は、詳細な概要で、受信
者は複雑な議論を理解しやすくなったり、重要な点の意味を開きやすくなったり
する。しかしながら、ビジネス・プレゼンテーションの発表者は、受信者との対面
を回避しようと、スピーチの概要を利用することがあまりに多い。生身の人間に
向かって話すよりも、スクリーンに向かって話す方が心地よいと感じるのである。
そのようなときは、「自分は情報を売り込んでいるのか、それとも自分自身を売
り込んでいるのか」と自問しよう。書いてあるコメントを詳しく繰り返せば、話し手
はよけいな存在だと思われる恐れがあるし、受信者の方では、スピーチを聞く
よりも、自分のオフィスに帰って覚書の1つでも読んでいた方がよいと思い込ん
でしまうだろう。しばしば、受信者は発信者より先回りしてスピーチの原稿を読
んでおり、本人が実際に言っていることに注意を払わなくなることもある。図表
を使う場合は、受信者に注目して欲しい時間の間だけ、スクリーンに図表を映
そう。話し手がある主題の話をしているときに、それとは違う主題を図表が示し
ていることほど、聞き手の気を散らすものはない。上記で述べたような特別な
場合を除き、概略は要点を導入したり、強調したり、締め括るのに最高に機能
する。
3.どの状況にはどの図表が適切かを自問自答しよう
自分が受信者と相互にやりとりをする研修のときには、黒板やフリップチャートが
最適であるかもしれない。発表者の手で受信者たちの発言がそれらに書かれれ
ば、彼らは自分の発言が尊重されたと自分の目で見ることができるのである。絵
や見本やモデルを見せるのは、新しい製品ラインや製品デザインの価値を受信
者に納得させるのに、最適な方法であるかもしれない。キーワードの引用は、議
論のために有益な焦点を提供することがある。ラップトップ式の図表-例えば、文
章と図表が組み合わされたパンフレット-は受信者たちに自分のコメントを後で
思い出してさらに考えてもらうことを促す有益な持ち帰り用資料として役立つ可能
性がある。しかし、ラップトップ式の図表 が、プレゼンテーションの前に配布され
るべきか-その図表が受信者の理解を助けるものになるのか、それとも話し手の
話から気をそらすものになるのか-あるいはプレゼンテーションの後に配布され
るべきか-その資料は持ち帰り用資料として重宝がられるのか、捨てられるのか
-を一考すべきである。
4.図表は必要最低数だけ使う
図表は、プレゼンテーションに活気を添えたり、要点を聞き手の心に打ち込む
のに必要な最低の数だけを使用する。受信者はある一定量の情報しか吸収
できないのである。受信者は、自分に過度の負担を強いたり、必要と感じる以
上の量の情報を提供する話し手に対しては、知らず知らずのうちに反感を膨ら
ませていく。ビジネス・プレゼンテーションでは大抵の場合、図表はスピーチの
中身としてではなく、興味深い「句読点」として機能するべきである。ビジネス・
プレゼンテーションの目的は、受信者たちを自分の考えの熱心な提唱者に転
ずることにある。忘れてしまうような詳細の塊よりもむしろ、他の人に伝えられ
るような、いくつかの力強いイメージを彼らの心に残していくようにすれば、熱
心な提唱者になってくれる確率が高まるのである。
5.上手に扱う自信が持てない視覚資料は使わない
技術的な失敗ほど、プレゼンテーションを本筋から外れさせるものはない。もし間違った
スライドが映し出されたり、あるいは図表に活字の間違いがあったりすれば、受信者は
情報や議論の質よりも、話し手の能力を判断し始めるだろう。しばしば無視されるが、技
術的失敗に関連して明白な点は、図表が受信者全員に明瞭に見えるかを確かめようと
いうことである。これはしばしば、プレゼンテーションの環境を事前にテストすることも含
む。
一般的なルールとして、図表は話し手としての自分の信頼性を減ずるものではなく、そ
れに貢献するように確実に使用するべきである。所詮、信頼性は、話し手にとって最も
重要な資産なのである。自分が今回の受信者たちに再度話す可能性があるかどうか
にかかわらず、自分の評判が、同僚や将来受信者となる人たちの間でついて回る。ス
クリーンに気を奪われていた発表者であったとか、図表を一字一句変えずに読み上げ
た発表者であったと記憶されないようにしよう。そのようであったら、受信者たちが彼ら
自身で読もうと思えば読める資料に何らの価値も加えなかったことになり、自分にも自
分の提案にも不信感が及んでしまうのである。