IR スペクトルとは

IR スペクトルとは
分子に波数 4000 – 400 cm-1 の赤外線をあて,その吸収の様子を調べる分析法
光のもつエネルギー E (J) は
~
E = hn = hc/l = 100hcn
と書け,波数 4000 – 400 cm-1 の赤外線の光子は
E = 7.95 x 10-20 – 7.95 x 10-21 J
のエネルギーをもつ。これは、分子の振動 (結合の伸縮、結合角の変角) 運動
の励起を行う程度のエネルギーである。
h: プランク定数。6.626 x 10-34 Js
n: 光の振動数 (Hz)
c: 光速度。3.0 x 108 m/s
l: 光の波長 (m)。l = c/n。
~
n: 波数。I cm の長さに含まれる波の数。n~ = 100/l = 100n/c
IR スペクトルからわかること
分子の中にどのような構造・官能基があるか
構造・官能基の種類に応じて「特性吸収帯」と呼ばれる吸収がある。
メチル基:2960,2870 cm-1 (C-H 伸縮)
アルコール水酸基:3400-3200 cm-1 (O-H 伸縮)
この吸収を手がかりにして分子内の構造・官能基を推定する。
ただし、実際の IR チャートではこれらの吸収が重なり合って現れ、かなり複雑
となるので、IR チャートだけから分子の構造を特定することは現実的ではない。
また、官能基の種類はわかっても、官能基の数まではわからない。
特性吸収帯
C-H 伸縮 (Csp-H > Csp2-H > Csp3-H)
~n (cm-1) = 10000/l (mm)
CC 伸縮
C=C 伸縮
C-C 伸縮 (1200 – 800
かなり弱い
cm-1)
は
C-H 面外変角
主な特性吸収の出るところ
官能基領域
O-H
N-H
4000
Csp-H
Csp2-H
Csp3-H
3000
指紋領域
C C
C N
C-D
C=O
C=N
C=C
2000
C-O
C-N
C-C
1000
C-H
面外伸縮
領域
=C-H
C H
調和振動子モデル
A-B 結合の伸縮振動の波数 n~A-B
1
~
n =
2c
C-H:
1
1
1
+
=
m MA MB
f
m
(換算質量)
1
1
1
+
=
m MC MH
1
1
+
=
1
12
1 + 12
=
12
13
=
12 = 1.08
1
1
1
+
=
m MC MD
1
1
+
=
2
12
1+6
=
12
7
=
12 = 0.58
1
1
1
+
=
m M13C MH
1
1
+
=
1
13
1 + 13
=
13
14
= 1.08
=
13
12C-1H
12C-2D
13C-1H
f: 結合の強さ
fCC > fC=C > fC-C
fC=O > fC-O
etc
アルケンの置換様式と特性吸収
C-H 面外変角
(< 900 cm-1)
の吸収帯に注意
左右対称になると弱い吸収
内部アルキンの C C も弱い
IR チャートの例:2-ペンタノン
O
IR チャートの例:ベンジルアルコール
太いピークと鋭いピーク
1
~
n =
2c
A
mA
f
m
f
B
mB
c: 光速度
f: 結合の強さ (力の定数)
m: 換算質量
1
1
1
+
=
mA mB
m
c: 光速度で一定。
m: 原子 A, B が決まれば決まる。
f が一定値をとればピークは細くなり
f がいろんな値をとればピークは太くなる
O-H, N-H など水素結合できる官能基のピークは太くなる
IR チャートの例:ヘプタン酸