スライド 1

A-14
抗がん剤シスプラチンの細胞毒性に対する
極低周波磁界の影響評価
金沢大学大学院 自然科学研究科
電子情報工学専攻
西頭 浩司
目次
第1章 序章
1.1 研究背景
1.2 研究目的
第2章 抗がん剤シスプラチンの細胞毒性における
極低周波磁界の影響評価方法
2.1
2.2
2.3
2.4
抗がん剤シスプラチン
大腸菌(E.coli)
磁界発生装置
コロニーアッセイ法
第3章 抗がん剤シスプラチンの細胞毒性における
極低周波磁界の影響結果
3.1 細胞毒性における極低周波磁界の影響結果
3.2 磁界影響の持続性
第4章 まとめと考察
今後の課題
1.1 研究背景
がん・・・1981年から日本人の死亡原因1位
代表的な治療法・・・化学療法,外科療法,放射線療法
化学療法:抗がん剤を用いてがん細胞を死滅
強い副作用
①体内に投与された抗がん剤が血流とともに全身に広がる
②がん細胞だけでなく全身の正常細胞にも作用する
・がん細胞に届く抗がん剤の量が数千分の1
・抗がん剤の投与量を増加=さらに副作用が強くなる
抗がん剤の副作用を抑えるための研究
ドラッグ・デリバリー・システム,副作用の少ない抗がん剤
がん細胞のみに作用する抗がん剤
etc…
化学療法に磁界を併用した研究
①がん細胞A-451を移植したマウスに抗がん剤シスプラチンを投与
パルス磁界(磁束密度0.525 mT,パルス幅100 µsec,100 or 250 Hz)
腫瘍サイズが52 %小さくなる
(参考文献:Hannan Jr.,et al. “Chemotherapy of human carcinoma xenografts during pulsed magnetic field exposure” 1994.)
② 腺がん細胞HCA-2/1cch移植したマウスに抗がん剤シスプラチンを投与
(シスプラチン単独使用時:がん細胞の生存率44.2 %)
パルス磁界(磁束密度1.5 mT,パルス幅180 µsec ,1 or 25 Hz)
1 Hz :× 効果なし
25 Hz :◎ がん細胞の生存率が39.1 %に減少(p<0.05)
(参考文献: Ruiz-Gomez, et al .“Inflience of 1 and 25 Hz,1.5 mT magnetic fields on antitumor drug potency in a human adenocarcinoma cell line” 2002.)
磁界曝露により抗がん剤シスプラチンの細胞毒性が増強
抗がん剤シスプラチン
大腸菌に抗がん剤
シスプラチンを添加
+
交流磁界曝露
磁束密度50 mTrms,周波数60 Hz
→
抗がん剤の
細胞毒性が増強
①がん治療における化学療法
①
・全身の正常細胞⇒強い
・がん細胞⇒強い
② 減少
②抗がん剤の投与量を減らす
③
・全身の正常細胞⇒弱い
・がん細胞⇒弱い
③がん細胞付近に磁界を曝露
:磁界曝露
Fig.1 抗がん剤と交流磁界の併用効果
④がん細胞への細胞毒性を増強
・全身の正常細胞⇒弱い
・がん細胞⇒強い
1.2 研究目的
抗がん剤マイトマイシンC,ブレオマイシンでも交流磁界
(磁束密度50 mTrms,周波数60 Hz)曝露による細胞毒性が増強
医療応用に向けて
抗がん剤シスプラチンの細胞毒性に対する磁界影響の解明
・交流磁界(磁束密度5~50 mTrms,周波数60 Hz)曝露下では
磁束密度が大きいほど増強率が高い
・交流磁界(磁束密度50 mTrms,周波数60 Hz)曝露下では
シスプラチンの濃度を変えても増強率は一定
磁界周波数に対する研究は行われていない
・他の周波数でも細胞毒性は変化するのか?
・うず電流による影響は?
本研究の目的
磁束密度50 mTrmsに統一,磁界周波数変化における実験
直流磁界,交流磁界周波数0.1,6,30,60,600,6000 Hz
2.1 磁界発生装置
200
f
f
30
30
I
150
I
60
90
60
Experimental area
Coil
mm
Ferrite core
磁界発生装置の特徴
・磁束密度50 mTrmsで0~60 Hz出力可能
・実験領域内は50 mTrms±2 %以内の均一性
・恒温装置を用いて磁界曝露側の実験領域内を36 ℃に保つ
・磁界非曝露側も同一恒温装置を用いる(磁束密度5 µT程度)
f
I
Experimental area
Coil
I
f
Ferrite core
磁界発生装置の特徴
・磁束密度50 mTrmsで600 ,6000 Hz出力可能
・実験領域内は50 mTrms±5 %以内の均一性
・恒温装置を用いて磁界曝露側の実験領域内を36 ℃に保つ
・磁界非曝露側も同一恒温装置を用いる(磁束密度9 µT程度)
Temperature(℃)
Temperature(℃)
40
39
38
37
36
35
34
33
32
31
30
60
120
180
240
300
360
0
120
180
240
300
Measurement time (mim)
磁界曝露側(0~60 Hz)
磁界非曝露側(0~60 Hz)
40
39
38
37
36
35
34
33
32
31
30
0
60
Measurement time (mim)
Temperature(℃)
Temperature(℃)
0
40
39
38
37
36
35
34
33
32
31
30
60
120
180
240
300
360
360
40
39
38
37
36
35
34
33
32
31
30
0
60
120
180
240
300
Measurement time (mim)
Measurement time (mim)
磁界曝露側(600,6000 Hz)
磁界非曝露側(600,6000 Hz)
実験領域における温度の影響は小さい
360
2.2 抗がん剤シスプラチン
一般名:シスプラチン(Cisplatin)
分子式:Cl2H6N2Pt
分子量:300.05
構造式:
H3N
Cl
Pt
H3N
Cl
がんの化学療法で用いられる代表的な抗がん剤
副作用:強い腎毒性,悪心,嘔吐,脱毛 etc…
H3N
Cl
H2O
H3N
Pt
H3N
Cl
+
G
Pt
Cl
Cl-
H3N
①Hydrolysis
NH3
NH3
OH2
Pt
NH3
G
G
Cl
DNA
Pt
②Intrastrant crosslink
Fig.2 抗がん剤シスプラチンの細胞毒性における過程
・反応過程で加水分解(上図①)
・DNA鎖に架橋結合することでDNAの複製を阻害(上図②)
NH3
2.3 大腸菌(E.coli)
参考:http://www.biological-j.net/blog/2008/04/000458.html
大腸菌の特徴
・およそ直径1 µm×長さ2 µmの円柱状
・ヒト細胞と同様にシスプラチンの細胞毒性を受ける
・細胞の増殖サイクルが早く扱いやすい
ヒトの細胞:2倍/1日⇔大腸菌細胞:2倍/30分
・JE5595 recA1:自己修復遺伝子の一つを機能しないようにしてある
磁界影響が顕著に表れやすい
2.4 コロニーアッセイ法
抗がん剤
シスプラチン
2.5 μ g/ml
磁界非曝露
(Control)
一定時間経過後
菌液を採取
大腸菌液
recA1+LB溶液
LBプレート
一晩培養
コロニーを形成
コロニー数を比較
LBプレート
36℃
磁界曝露
(Exposure)
・LB (Luria-Bertani)溶液
組成:Tryptone 10 g/l,Yeast Extract 5 g/l,NaCl 10 g/l,2N NaOH 0.5 ml/l
・大腸菌の生菌数=コロニー数
磁界非曝露のコロニー数>磁界曝露のコロニー数⇒細胞毒性:強
磁界非曝露のコロニー数<磁界曝露のコロニー数⇒細胞毒性:弱
3.1 細胞毒性における極低周波磁界の影響結果
実験方法:コロニーアッセイ法
実験条件:大腸菌(JE5595 recA1) シスプラチン濃度 2.5 mg/ml
交流磁界(磁束密度 50 mTrms,周波数 60 Hz) 実験回数13回
1000000
106
C1とE1
Viable cell number of E. coli(cfu/ml)
C1
100000
105
C1:生菌数が増加
E1:C1と生菌数がほぼ等しい
E1
10000
104
大腸菌の生命の維持,増殖
磁界影響はほとんどない
1000
103
100
102
C2とE2
C2
C1:Control
E1:MF(60 Hz)
C2:Cisplatin only
E2:Cisplatin+MF(60 Hz)
101
10
11
0
2
4
Exposure time(h)
C2:時間ともに生菌数が減少
E2:C2より生菌数が減少
E2
6
Fig.3 60 Hzにおける磁界影響
8
シスプラチンの細胞毒性
磁界影響により増強
実験方法:コロニーアッセイ法
実験条件:大腸菌(JE5595 recA1) シスプラチン濃度 2.5 mg/ml
磁束密度 50 mTrms
直流磁界,交流磁界(0.1,6,30,60,600,6000 Hz)
C:Cisplatin only
0.1 Hz:Cisplatin+MF(0.1Hz)
30 Hz:Cisplatin+MF(30Hz)
600 Hz:Cisplatin+MF(600Hz)
1.2
DC
C1
E2
コロニー相対比=
C2
E1
100000
105
10000
104
1000
103
100
102
C2
C1:Control
E1:MF(60 Hz)
C2:Cisplatin only
E2:Cisplatin+MF(60 Hz)
101
10
11
0
2
4
Exposure time(h)
E2
6
Fig.3 60 Hzにおける磁界影響
8
Relative ratio of colony forming unit
Viable cell number of E. coli(cfu/ml)
1000000
106
DC:Cisplatin+MF(DC)
6 Hz:Cisplatin+MF(6Hz)
60 Hz:Cisplatin+MF(60Hz)
6000 Hz:Cisplatin+MF(6kHz)
SD
C
1
0.8
0.1 Hz
6000 Hz
6 Hz
600 Hz
30 Hz
0.6
60 Hz
0.4
0.2
1 1.05 0.83 0.56 0.47 0.40 0.55 0.70
0
6
Exposure time(h)
Fig.4 極低周波磁界における磁界影響
直流磁界:細胞毒性に変化なし
交流磁界:細胞毒性を増強→60 Hzが最も細胞毒性を増強
t検定による評価
2つの母集団の『平均の差』が偶然誤差の範囲にあるかを評価
t検定の結果・・・p値がp<0.05の場合に有意差あり
→5 %未満の確率で誤差の可能性を残しつつ違いがある
Relative ratio of colony forming unit
C:Cisplatin only
0.1 Hz:Cisplatin+MF(0.1Hz)
30 Hz:Cisplatin+MF(30Hz)
600 Hz:Cisplatin+MF(600Hz)
1.2
DC
DC:Cisplatin+MF(DC)
6 Hz:Cisplatin+MF(6Hz)
60 Hz:Cisplatin+MF(60Hz)
6000 Hz:Cisplatin+MF(6kHz)
SD
C
1
0.8
0.1 Hz
6000 Hz
6 Hz
600 Hz
30 Hz
0.6
60 Hz
有意差あり(p<0.05)
(a)シスプラチン単独群⇔実験を行った交流磁界群
有意差なし(p=0.95)
(b)シスプラチン単独群⇔直流磁界群
95 %の確率で同じ
2.周波数に対する評価
0.4
0.2
1.磁界影響に対する評価
1 1.05 0.83 0.56 0.47 0.40 0.55 0.70
0
6
Exposure time(h)
Fig.4 極低周波磁界における磁界影響
有意差あり(p<0.05)
(c)直流磁界群⇔実験を行った交流磁界群
(d)周波数0.1 Hz群⇔6,30,60,600 Hz各群
(e)周波数6 Hz群⇔60 Hz群
(f)周波数6000 Hz群⇔30,60 Hz各群
実験方法:コロニーアッセイ法
実験条件:大腸菌(JE5595 recA1) シスプラチン濃度 2.5 mg/ml
磁束密度 50 mTrms
直流磁界,交流磁界(0.1,6,30,60,600,6000 Hz)
DC:Cisplatin+MF(DC)
6 Hz:Cisplatin+MF(6Hz)
60 Hz:Cisplatin+MF(60Hz)
6000 Hz:Cisplatin+MF(6kHz)
SD
C
1
0.8
0.1 Hz
6000 Hz
6 Hz
600 Hz
30 Hz
0.6
60 Hz
0.4
0.2
1 1.05 0.83 0.56 0.47 0.40 0.55 0.70
0
6
Exposure time(h)
Fig.4 極低周波磁界における磁界影響
1.2
Relative ratio of colony forming unit
Relative ratio of colony forming unit
C:Cisplatin only
0.1 Hz:Cisplatin+MF(0.1Hz)
30 Hz:Cisplatin+MF(30Hz)
600 Hz:Cisplatin+MF(600Hz)
1.2
DC
1
0.1 Hz
0.8
6000 Hz
6 Hz
0.6
60 Hz
600 Hz
0.4
30 Hz
増強
0.2
増強
0
0.1
1
10
100
1000
10000
Frequency(Hz)
Fig.5 磁界影響の周波数依存性
磁界影響:周波数に影響
周波数に対して指数関数に近い増減
3.2 磁界影響の持続性
交流磁界(磁束密度50rms,周波数60 Hz)を6時間曝露
抗がん剤シスプラチン+交流磁界
磁界曝露により細胞毒性:増強
磁界曝露をやめると?
磁界曝露をやめた後
:磁界曝露
細胞毒性
増強したまま
Fig.6 磁界影響の持続性
細胞毒性
持続しない
磁界曝露により細胞毒性:増強
磁界曝露をやめた後
細胞毒性
増強したまま
細胞毒性
持続しない
増強したまま:
細胞毒性の増強が持続するので磁界曝露時間の短縮
持続しない:
細胞毒性の増強を得るためには磁界の連続曝露が必要
実験方法
0 ~2 h:交流磁界曝露(磁束密度50 mTrms,周波数60 Hz)
2 ~6 h:試料を磁界非曝露領域に移動
実験方法:コロニーアッセイ法
実験条件:大腸菌(JE5595 recA1) シスプラチン濃度 2.5 mg/ml
交流磁界(磁束密度 50 mTrms,周波数 60 Hz) 実験回数1回
Viable cell number of E. coli(cfu/ml)
1000000
106
C1
0時間
100000
105
E2とE3を磁界曝露
E1
10000
104
2時間後
1000
103
E2を磁界曝露のまま
E3は磁界非曝露へ移す
C2
100
102
E3
E2
C1:Control
E1:MF(60 Hz)
10 1
10
4時間以降
C2:Cisplatin only
E2:Cisplatin+MF(60 Hz,6 h)
E3:Cisplatin+MF(60 Hz,2h)
E2とE3の生菌数に差
11
0
2
4
6
8
Exposure time(h)
Fig.7 60 Hzにおける磁界影響の持続性
シスプラチンにおける細胞毒性の増強:持続性がない
4.まとめと考察
抗がん剤シスプラチンの細胞毒性に対する極低周波磁界の影響結果
直流磁界:抗がん剤シスプラチンの細胞毒性に変化なし
交流磁界:磁束密度50 mTrmsにおいて0.1~6000 Hzにおいて細胞毒性の増強
周波数60 Hz付近が最も細胞毒性を増強
0.1~60 Hzと60~6000 Hzに対して指数関数に近い周波数依存性
→磁束密度依存性と合わせて
磁束密度50 mTrms,周波数60 Hz付近が効果的
磁界影響の持続性
抗がん剤シスプラチンの細胞毒性への磁界影響は持続しない
細胞毒性の増強を得るためには磁界の連続曝露が必要
磁界周波数依存における考察
・抗がん剤シスプラチンと大腸菌またはDNAとの接触確率が増加
①磁界周波数が高いほど抗がん剤に加わるローレンツ力のベクトルが変化
・交流磁界や渦電流により大腸菌の細胞膜が変形し抗がん剤の取り込み量の増加
①電気穿孔法や磁気刺激により細胞膜に一時的な穴が生じる
②磁界により細胞膜の穴が引き延ばされる
今後の課題
磁界影響のメカニズム解明
・大腸菌単体,抗がん剤単体,抗がん作用, 細胞膜など
磁界影響を受ける場所を検討
⇒他の抗がん剤における磁界影響の検討
臨床応用に向けて
・ヒト細胞,がん細胞を移植したマウスを用いた磁界曝露実験
⇒交流磁界(磁束密度50 mT,周波数60 Hz)を使用
ブラウン運動
流体中に懸濁した質量mの粒子のx方向の変位はニュートンの運動方程式から
次式で表される
d 2x
dx
m 2  
 Fx (t )
dt
dt
右辺第1項:粘性抵抗
右辺第2項:液体分子の衝突による力
ローレンツ力
磁界中(磁束密度B)を電荷qに帯電したシスプラチンが速度vで移動しているとき
加わるローレンツ力
F
F  q (v  B )
磁束密度50 mTrmsに統一
ローレンツ力の大きさは一定
v
Cisplatin
交流磁界曝露によりローレンツ力のベクトルが変化⇒シスプラチン:振動に近い動き
周波数
抗がん剤の移動
接触確率
細胞毒性の増強
0.1 Hz付近
ゆっくり動く
低
小
60 Hz付近
周波数が高いほど早く動き移動距離が増加
高
大
低
小
6000 Hz付近 粘性抵抗により移動距離が減少
細胞膜に対する影響
交流磁界により大腸菌細胞の細胞膜が変形し抗がん剤の取り込み量の増加
①電気穿孔法(1.5 kV,数msのパルス磁界) により細胞膜に一時的な穴が生じる
→均一な電気定数(導電率σ,誘電率ε)な球体(半径r)に空間的に
一様な変動磁界(磁束密度 B,周波数f)が入射されたときの電流密度Jは
J=πσfrB
(例)磁束密度50 mT,周波数60 Hzの場合,大腸菌および抗がん剤シスプラチンの入った
LB溶液のチューブ(25 mm×10 mm)の半径を10 mmと仮定して,導電率2.8 S/mを代入する
と0.26 A/m2となる
電流密度は周波数に比例
また,渦電流損が影響している場合は周波数の2乗
②磁界により細胞膜の穴が引き延ばされる(生体物質、有機化合物には反磁性体が多い)
→磁界中で常磁性体が自由エネルギーを最小にする方向にトルクを受け配向
磁化線J,磁化率x,磁界強度H
J=xH
ただし,生体の磁化率はとても小さいため(10-5程度)磁界影響も小さい
磁界
イオンチャンネル
周波数:低い
磁界
周波数:高い
周波数が高くなると穴が広がりきらない
取り込み量の増加
細胞の抗がん剤取り込み量が増加
全身に広がる抗がん剤の量が減少
抗がん剤が多く作用する
:磁界曝露
副作用が軽減できる可能性
Fig.8 抗がん剤の取り込み量
ドラッグ・デリバリー・システムと併用
実験方法:コロニーアッセイ法
実験条件:大腸菌(JE5595 recA1) シスプラチン濃度 2.5 mg/ml
交流磁界(磁束密度 50 mTrms,周波数 60 Hz) 実験回数1回
磁界曝露
E3の大腸菌の抗がん剤の取り込み量:増加
Viable cell number of E. coli(cfu/ml)
1000000
106
C1
100000
105
E1
10000
104
菌液中の抗がん剤濃度
C2よりもE3の抗がん剤の濃度が低くなる
大腸菌:多い
抗がん剤:多い
1000
103
100
102
大腸菌
大腸菌:少ない
抗がん剤:少ない
C2
E3
E2
C1:Control
10 1
10
大腸菌の死骸
E1:MF(60 Hz)
シスプラチン
C2:Cisplatin only
C2
E2:Cisplatin+MF(60 Hz,6 h)
E3
E3:Cisplatin+MF(60 Hz,2h)
11
0
2
4
6
Exposure time(h)
Fig.7 60 Hzにおける磁界影響の持続性
8
E3の大腸菌,抗がん剤ともにC2よりも少ない
シスプラチンと大腸菌の接触確率が低い
生菌数の減少カーブの傾きが緩やかになる
他の抗がん剤における磁界影響
シスプラチン 増強率1.4倍
分子量300.05
がん細胞のDNA鎖に架橋結合でDNAの複製を阻害
反応過程で加水分解する
マイトマイシンC 増強率2.3倍
分子量334.327
がん細胞のDNA鎖に架橋結合でDNAの複製を阻害
ブレオマイシン 増強率1.2倍
分子量1487.47
がん細胞のDNA鎖を切断することでDNAの複製を阻害
反応過程に鉄イオンが関係している
Relative ratio of colony forming unit
シスプラチンの細胞毒性における磁界影響
C:Cisplatin only
0.1 Hz:Cisplatin+MF(0.1Hz)
30 Hz:Cisplatin+MF(30Hz)
600 Hz:Cisplatin+MF(600Hz)
1.2
DC:Cisplatin+MF(DC)
6 Hz:Cisplatin+MF(6Hz)
60 Hz:Cisplatin+MF(60Hz)
6000 Hz:Cisplatin+MF(6kHz)
SD
1
0.8
0.6
0.4
0.2
0
0
2
Exposure time(h)
4
6
シスプラチンの細胞毒性における磁界の周波数依存性
1
6000 Hz
0.1 Hz
0.8
6 Hz
60 Hz
0.6
600 Hz
30 Hz
0.4
0.2
0
0.1
1
10
100
1000
Frequency(Hz)
2時間後
10000
1.2
1
0.1 Hz
6000 Hz
0.8
6 Hz
60 Hz
0.6
600 Hz
0.4
30 Hz
0.2
0
0.1
1
10
100
Frequency(Hz)
4時間後
1000
10000
Relative ratio of colony forming unit
1.2
Relative ratio of colony forming unit
Relative ratio of colony forming unit
1.2
1
0.1 Hz
0.8
6000 Hz
6 Hz
0.6
60 Hz
600 Hz
0.4
30 Hz
0.2
0
0.1
1
10
100
1000
Frequency(Hz)
6時間後
30~60 Hz付近が最も細胞毒性が高まる傾向がある
10000
磁界発生装置を2つ用いた理由
磁界発生装置の回路方程式
V
I
2fL
磁束密度50 mTに統一⇒電流Iが一定
B  NI
(1)電圧Vを大きくする場合 ・・・電源
周波数60 Hzから6000 Hz⇒電圧が100倍
(2)インダクタンスLを小さくする場合 ・・・装置
SN 2
L
l
S:断面積を小さくすると実験領域が確保できない
N:巻数を減らすと電流を大きくしなければならない
銅線を太くしなければならない
l:磁路長を長くするとギャップが狭くなり実験領域が確保できない
磁束の表皮効果
磁界影響あり
磁界影響あり
周波数:低
シスプラチン
周波数:高
磁界影響あり
シスプラチン
DNA
磁界影響なし
DNA
交流磁界によって生じたうず電流が反作用磁束を生じる
内側ほど反作用磁束が大きいため,外側ほど磁束が通る(表皮効果)
・周波数が高いほど磁束の表皮効果の影響が大きい
・大腸菌の内部では磁界の影響がほとんどなくなる
その他
比透磁率(真空中の比透磁率 µs=1)
・プラチナ
1+360×10-6
・純鉄
~200000
・水
1-12×10-6
・空気
1+0.4×10-6
大腸菌の大きさ およそ1 µm×長さ2 µm
ヒト細胞の大きさ 数十µm
反磁性体と考えられているもの
有機化合物,生体物質(タンパク質,DNA)
P値(probability:確率)
導電率
マイトマイシンC 334.33 2µg/334.33≒0.06 導電率2.8 S/m
シスプラチン 330.55 2.5µg/300.55≒0.08 導電率2.8S/m
ブレオマイシン 1611.7 11.75µg/1611.7≒0.007 導電率2.8S/m
がん治療法
外科的手術
がんを物理的に切除、臓器(または一部)の摘出
×体への負担、摘出しきれない場合がある
白血病など切除できないがんがある
放射線療法
併
用
し
て
が
ん
治
療
放射線照射によりがん細胞を攻撃
×照射部位の皮膚表面がただれる等の副作用
化学療法
抗がん剤によりがん細胞を攻撃
×全身の正常細胞にも作用し副作用
ブレオマイシンの作用機構
ブレオ
マイシン
がん細胞
DNA
ブレオマイシンが細胞内へ
細胞内の鉄イオンを結合
O2
Fe2+
DNAに結合
酸素を活性化
DNA鎖を切断
細胞増殖阻害