ガスセンサーの開発 - 岐阜工業高等専門学校

ガスセンサーの製作
[応用物理研究室]
[藤井新太郎]
はじめに
これまで本研究ではNO2検出用ガスセンサー
材料としてSnO2を用いてきた。その薄膜作
製には、ガス中蒸発法による超微粒子を利
用する方法と、真空蒸着法による薄膜を利
用する2つの方法を採用した。それらの膜
構造を走査電子顕微鏡で観察し、センサー
感度との関連性を調べてきた。
センサー感度の定義
センサー感度Sは、大気中におけるセンサー薄膜抵
抗Rairに対する試験ガス(所定濃度のNO2を含む大
気)中におけるセンサー薄膜抵抗Rtestの比として、
S
=
Rtest
で定義する。
/
Rair
(1)
改良点
 400℃以上まで昇温可能なヒーターの製作
測定時にセンサーを加熱する際に、ニクロム線を
直に接触させて加熱していた。しかし、300℃以上で
はヒーター用導線が焼き切れ、センサーを300℃以上
で安定して加熱することができない。
 薄膜作製法の検討
これまでの作製法では、センサー抵抗値の再現性に
問題があった。
ヒーターの作製
市販の渦巻き型ヒーターを2つ購入し、固
定するためにステンレス製のカバーを加工
した。また、電流導入部を交換し、セン
サーを400℃以上まで昇温可能なヒーター
を作製した。
Fig.1 ヒーターカバー
センサー膜の作製方法
 センサー膜は真空蒸発装置によってアルミ
ナ基板(15×15×1mm)上に作製した。
 電極間距離はマスキング用にステンレス薄
板を用いて、2、4、8mmとした。
従来の作製方法
Auを真空蒸着し電極を作製 ・・①
↓
ZnOを真空蒸着し薄膜を作製・・②
↓
金線を銀ペーストで固着 ・・③
↓
1000℃1時間で焼結
↓
金線と電極上にAuを真空蒸着
変更の作製方法
金線を銀ペーストで固着・・①
↓
Auを真空蒸着し電極を作製・・②
↓
ZnOを真空蒸着し膜を作製・・③
↓
900℃1時間で焼結
Sample1
 室温上で作製
Sample2
 ZnOを真空蒸着時にアルミナ基板
を昇温
Table.1薄膜の電気抵抗
電極間距離
Sample1
Sample2
2mm
19(Ω)
0.123(kΩ)
4mm
22(Ω)
102(kΩ)
8mm
82(Ω)
0.44(kΩ)
 Sample1はSample2と比べて、電気抵抗が小さい。
また、電極間距離が大きくなるにつれ抵抗が増加
している。Sample2は電極間距離4mmで大きな抵抗
値を示している。これは昇温温度が均一でなかっ
たために、ZnO膜の膜厚が同じでなかったことに起
因するものと考えられる。
 Sample1を900℃で焼結を行うと導通がなくなった。
焼結後の膜表面のSEM観察から、ZnO膜にひび割れ
があったため導通が無くなったものと思われる。
Fig.2 Sample1 焼結前
Fig.3 Sample1 焼結後
スッパタ装置による薄膜の作製
 最適スパッタ条件は、Arガス圧200mTorr、
スパッタ電流20mAであった。TEM観察用に
岩塩結晶上に成長した膜をFig.3に示す。
電子回折像から膜状粒子がAuであることを
確認した。
Fig.5 アルミナ基板上に成長
したAuスパッタ膜
Fig.4 岩塩上に成長したAuスパッタ膜
今後の予定
 今後は真空蒸発法で作製されたセンサー膜
をセンサー感度測定装置により感度測定を
行う予定である。
 広い面積に均一な厚さの薄膜を成膜できる
スパッタ法を用いて、センサー膜の製作を
行う予定である。