知的財産権 白井 豊 1.知的財産とは… 1.1 有体財産と無体財産 有体財産 (Tangible Property) 家具、土地、建物などの「物」 預貯金や賃借権などの「債権」 債権等を紙にした手形(有価証券) 無体財産 (Intangible Property) 小説・論文・絵などかいた物 作曲した結果、得られた著作物 発明・考案・デザインの結果の創作物 1.2 無体財産の色々な呼び方 古くは無体財産が一般的 最近は、知的所有権、知的財産権 (Intellectual Property) 国連専門機関「WIPO] (World Intellectual Property Organization 世界知的所有権機構)と 命名されている影響が大きい。 1.3 工業所有権と著作権 工業所有権 (Industrial Property) 「産業目的」に寄与するもの(広義) ………韓国では「産業的財産権」 著作権 (Copyright) 「文化目的」に寄与するもの(広義) 1.4 知的財産の特性 無体性 知的財産が形を持たない財産であること 知的財産性 知的労働の所産であること 社会性 他の権利に比べ支配が広範囲に及ぶので、 社会的影響が強い 1.4.1 無体性からくる特性(その1) 権利は知的財産の創作者に原則的に帰 属する。(例外:法人著作、法人発明、商品 形態の模倣に関する販売主体の保護) 有体財産は、物理的に1つしか成立しない 「占有」であるが、知的財産は幾重にも成 立する「準占有」である。(何回でも発明の 実施ができる) 1.4.1 無体性からくる特性(その2) 知的財産に対する事実的な占有は、知識 や情報を秘密にしておくしかない。 ↓ 技術の採用・発展ができない ↓ 「登録」した者に独占的な「排他権」を付与 1.4.1 無体性からくる特性(その3) 知的財産は有体物上に書かれるが、有体 物を移転しても、知的財産は移転しない。 (例) 本を購入しても、本そのものを所有することになるが、本 の内容を自分の著作物とすることはできない。 著作権者は、絵を売り渡しても画集等を作る権利を他人 に与えたり、譲渡することができる。 1.4.1 無体性からくる特性(その4) 知的財産は社会的に広い範囲に影響を及 ぼすので、社会的関心が高く、マスコミ等 に取り上げられることが多い。 知的財産の実効は、知的財産の無断利用 を禁止(差止請求、不作為請求)することで 知的財産権が効果を持つ。 1.4.1 無体性からくる特性(その5) 知的財産権の返還とは、知的財産を利用 しない・実施しないことを意味する。 1.4.2 知的財産性からくる特性 知的労働の所産であることから、精神的側 面を持っている。 同様に人格的要素を持っている。 著作者人格権、発明者人格権は、一身専 属権であり、人格的要素が高く、権利に よって人格権の強弱がある。(著作権を移 動しても著作人格権は、著作した本人に残 る) 1.4.3 社会性からくる特性(その1) 期限の制限によって、一般の技術使用の 自由とのバランスをとっている。 産業政策的、文化政策的な人為的配慮が 図られる。 保護対象についても産業・文化政策的な 考慮が働くことが多い。 1.4.3 社会性からくる特性(その2) 知的財産は国境を越えて影響を及ぼすの で、国際的に協力して制度内容の調和・統 一に努力している。 国の産業的・文化的発展に寄与するので、 創作者を保護して創作意欲を刺激する政 策がとられることが多い。 1.4.3 社会性からくる特性(その3) 国家的にも重要な役割を持つので、いち 早く法整備に取りかかる国が多い。(日本 では、憲法・民法より先に専売条例、商標 条例が成立、中国では民法通則より先に 特許専利法、商標法を制定) WIPOだけでなく、WTO(世界貿易機関) やANCTAD(国連貿易開発会議)の場で も討議されている。
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