2007年度版 知的財産報告書 - オリンパス

2007
Intellectual Property Report
(2007年4月∼2008年3月)
07
Intellectual Property Report
2007 Intellectual Property Report
Contents
2
2
2
3
3
5
5
8
9
9
9
9
10
10
10
左上から時計回りに、技術開発センター宇津木(東京都八王子市)
、
三島事業場(静岡県長泉町)
、 宇津木全景、同メーンエントランス
技術開発センター石川(東京都八王子市)の新棟完成予想図
07
Intellectual Property Report
当社は1919年の創業以来、人々の生活や社会への貢献を願って
事業を展開してきました。世界で初めて実用化した胃カメラは、
日本人の胃がんによる死亡を大きく減らしました。最新の内視鏡
は、開腹せずに病変部の処置や治療までできる総合的な医療機器
に発展しています。創業事業である顕微鏡は、生きた細胞の観察
を可能とするレーザー顕微鏡に進化し、最新の遺伝子治療・創薬
研究に欠かせない存在となっています。デジタル一眼レフカメラ
「E-3」は、優れた堅牢性、世界最高水準のAF・手振れ補正機構
により、地球上のあらゆる撮影シーンに対応し、映像表現の可能
性を大きく広げました。
当社の企業スローガンである「Your Vision, Our Future」は、人々
とともに「夢(Vision)
」を実現し、
「未来(Future)
」を開く力を表
しています。さらに企業広告「ココロとカラダ、にんげんのぜん
代表取締役社長 ぶ、オリンパス」では、私たちが心と身体の両面から人々の生活
の質の向上に寄与できる企業であることを訴えております。
夢を夢で終わらせることなく実現し、新しい価値を生み出す源
泉となるものは技術であります。当社では、新たな技術を生み出
すための研究開発活動、および、研究開発活動の成果物である知
的財産の蓄積と活用を図る知的財産活動を活発に行っています。
本報告書を通じて当社の知的財産活動に関する皆様のご理解が
更に深まることを期待しております。また、皆様の忌憚のないご
意見・ご感想を頂ければ幸いです。
ジをデジタル化し、そして操る「電子映像技術」
、精密に
当社は、生活者として社会と融合し、社会と価値観を
モノを作り、制御する「精密技術」
、生きたままの細胞を
共有しながら、事業を通じて新しい価値を提案すること
観察する技術や再生医療の実現に向けた細胞分離培養技
により、人々の健康と幸せな生活を実現するという考え
術などの「細胞関連技術」を全社共通の基盤技術として
方を「Social IN(ソーシャル・イン)
」と呼び、すべての
位置付け、研究開発のリソースを集中投入することによ
活動の基本思想としています。この基本思想のもと、社
会とともに歩み成長しながら、社会が求める新しい価値
2.5
0.18
を創造し続け、かつタイムリーに提供することができる
「価値創造企業」を目指しています。
0.16
2.0
売
0.14 上
研究開発効率(左軸)
当社は、
「技術立社」の実現に向けた技術力強化の経営
高
研
究 1.5
開
発
効
率 1.0
0.12 研
究
0.10 開
発
費
売上高研究開発費比率(右軸)
0.08 比
を行っています。
当社のコアコンピタンスは、長い経験が培った光学技
術と最新のデジタル技術の融合からなる「Opto-Digital
Technology (オプト・デジタル テクノロジー)
」です。
0.06
0.5
率
0.04
0.02
0.0
2000
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
0.00
年度
このコアコンピタンスを更に強固にするために、光を捉
え、コントロールする「光学技術」
、光が織り成すイメー
注)表の中で売上高研究開発費比率・研究開発効率は、経済産業省による
「知的財産戦略指標」に準じ、5期の累計にて算出しています。
2
07
Intellectual Property Report
り競争優位を築き、
「映像事業」
「メディカル事業」
「ライ
フサイエンス事業」
「産業関連事業」の各事業において新
コアコンピタンス技術の公開特許件数、コアコンピタ
しい価値を創造しています。当期連結会計年度中に投下
ンス技術の保有特許件数の推移および割合は下図の通り
した研究開発費は約659億円であり、これは売上高のほぼ
です。
5.8%に相当します。
推移のグラフを見てわかりますように、出願につきま
また、研究開発効率は2007年度も向上しており、今後
しては厳選しつつ、各コアコンピタンス技術の保有特許
も、既存事業強化ならびに新事業創生の研究開発投資、
を増加させています。また、全体に占めるコアコンピタ
M&Aなどで積極的な投資をしていきます。
ンス技術の保有特許割合も前年度よりさらに3%上昇し、
研究開発戦略に見合った選択と集中の成果も見えてきて
います。
当社は、
「オプト・デジタル テクノロジー」をさらに強
化するため、4つの基盤技術において、次のような研究開
発を行っています。
「光学技術」では、光の無限の可能性を追求すべく、
1,200
1,000
光学技術
分光技術の診断技術への応用、大口径非球面レンズなど
の高性能光学素子の継続的な研究開発を行っています。
800
電子映像技術
件 600
数
その成果の一例が、全方位の投影・撮影ができる新光学系
400
「軸対称自由曲面レンズ」の設計手法です。
精密技術
「電子映像技術」では、各事業領域のニーズに応えるた
200
め、デジタル画像処理技術、カスタムイメージャ設計技
0
細胞関連技術
2004
2003
2005
2006
2007
年度
術、先進高精細画像構成技術等について研究開発を行っ
ています。その成果の一例が、逆光時の失敗を防ぐ「顔
検出逆光補正機能」や「ハイスピードイメージャAF」で
3500
す。
3000
「精密技術」では、超微細加工技術を駆使したMEMS
(マイクロ・エレクトロ・メカニカル・システムズ)
、超
精密加工技術、マイクロ実装技術、マイクロ・センサア
クチュエータ等の研究開発を行っており、各事業領域で
他社との差別化を図るためのキーパーツ、キーユニット
に応用されています。その成果の一例が、デジタル一眼
レフカメラに導入された業界最高性能の手振れ補正のた
光学技術
2500
2000
件
数
電子映像技術
1500
1000
精密技術
500
0
細胞関連技術
2005
2006
2007
年度
めの超音波アクチュエータ、デジタル一眼レフ交換レン
ズAF用超音波モータ、光エンコーダおよびAFセンサーモ
ジュールです。
「細胞関連技術」では、新たなバイオサイエンス・再生
その他
製品関連技術
31%
光学技術
37%
医療事業の創生のために、生細胞解析・操作技術、細胞
分離培養技術等の研究開発に取り組んでいます。その成
果の一例が、事業化に発展した骨補填材「オスフェリオ
ン」です。
細胞関連技術
2%
精密技術
10%
3
電子映像技術
20%
07
Intellectual Property Report
4
07
Intellectual Property Report
度の高い高性能レンズを
「技術立社」の実現に向け、事業戦略、技術戦略と連
惜しみなく投入してお
携した知的財産戦略のもと、知的財産権優位を目指した
り、小型化、良好な収差
研究開発活動を展開しています。
補正、高い描写力を獲得
具体的には、2006年を初年度とし、3年間の経営戦略で
しました。
ある経営基本計画(06基本計画)に掲げられている「企
さらに、2008年3月に
業価値の最大化」を目指し、「事業視点の知的財産活動」
発売した「μ1030SW」
と「技術視点の知的財産活動」の両面から知的財産活動を
は、水中10m防水、耐衝
推進しています。
撃2m、耐温度−10度と
その2年目にあたる2007年度では、
「事業視点の知的財
いうタフ仕様に加え、
産活動」の強化として、各事業体は、事業戦略の中で特
3.6倍ワイド光学ズーム
許優位を確立すべきコア技術を明確にし、目標値を明確
を搭載した個性的なモデ
にした知財戦略を策定し、達成に向けてメリハリのある
ルです。
効率的な活動を進めています。
そして、
「技術視点の知的財産活動」の展開として、全
μ1030SW
また、「オリンパスEシステム」のラインナッ
E-3
社基盤技術の中から中長期的に特許優位とすべき技術に
プ最上位機種として、プロユーザーやハイアマチュアを
ついて重点的に特許網構築を進めています。技術レベル
対象としたレンズ交換式デジタル一眼レフカメラ「E-3」
と汎用性の高いアイデアに対しては、各知財部門の確実
を2007年11月23日に発売しました。
「E-3」は、写真愛好家
な連携による全社横断的な知財活動により全社視点での
の厳しい要求仕様を満たし、過酷な使用環境にも耐えう
知的財産価値の最大化を進めています。
るべく、高画質、機能性、信頼性を徹底的に追及した当
社ラインアップの最上位に位置するデジタル一眼レフカ
メラです。新開発の11点全点ツインクロスセンサーによ
る世界最高速のAF(2007年11月23日時点当社測定条件に
デジタルカメラ事業を中心とする映像事業では、コアコン
よる)や5コマ/秒の高速連写、1/8000秒の高速シャッター、
ピタンスであるオプト・デジタル テクノロジーを核に、
「デ
最大5段分のボディ内手振れ補正機能、マグネシウム合金
ジタル一眼レフカメラ」
「デジタルコンパクトカメラ」
「光学
製の防塵・防滴ボディ、フリーアングルライブビューを
コンポーネント」事業に資源を集中しています。
実現する2軸可動式液晶モニタなど、機能面・性能面で大
幅な向上を果たしています。
医療用内視鏡を中心とする
メディカル事業では、患者さ
んのQOL(生活の質:Quality
μ1020
小型・薄型でスタイリッシュなデザインが特徴の「μ
of Life)向上に貢献する低侵
襲の診断治療を目指して、
(ミュー)シリーズ」では、光学7倍ズームレンズと1010万
「安全・安心」
、さらにコスト
画素CCDを搭載した「μ1020」を、2008年2月15日に発売
低減につながる高効率な医療
しました。
「μ1020」は、当社のレンズ開発技術により3倍
機器、システムの開発に取り
ズームモデルと同等の薄さで光学7倍ズームの搭載を実現
組んでいきます。
しました。このレンズには、デュアルスーパー非球面レ
光デジタル法による画像調
ンズ、非球面EDレンズ、高屈折率レンズなどの加工難易
整機能が可能な内視鏡ビデオ
5
EVIS LUCERA SPECTRUM
07
Intellectual Property Report
スコープシステム「EVIS LUCERA SPECTRUM(イービス
度の向上と、従来機種※2に比べ2倍の明るさをはじめと
ルセラ スペクトラム)」では、ハイビジョン画質による
した観察性能の向上とを実現しています。近年の高齢化
通常光観察に加え、粘膜表層の毛細血管や粘膜微細模様
により、脳血管疾患等の増加に伴い脳神経外科の手術件
が強調表示される「狭帯域光観察(NBI)
」、腫瘍性病変と
数も増加しており、この分野での活用が期待されます。
正常粘膜の自家蛍光強度の違いを異なる色調で強調表示
※1 顕微鏡を覗きながら直径1mmにも満たない細い血管同士を縫い合わ
せたり、微細な組織にメスを入れたりする手術。
※2 当社製品「手術用顕微鏡OME-8000」
。
する「蛍光観察(AFI)
」
、粘膜深部の血管や血流情報が強
調表示される「赤外光観察(IRI)
」の3つの光デジタル法に
よる画像強調機能を備えています。
オリンパスは、これ
ライフサイエンス分野は、マイクロイメージング(顕
ら画像強調機能の一つ
微鏡)事業や臨床検査用分析装置を核に新しい切り口で
として、分子イメージ
の事業創生に取り組み、ライフサイエンス分野でのトー
ングが可能な「分光ビ
タルシステムサプライヤーを目指していきます。既存事
デオ内視鏡システム」
業の「進化」を通じて、一人ひとりに最も適した予防法
技術を開発しました。
や治療法を提供する次世代医療分野に貢献できる新しい
先端部外径10mmの分
技術を開発していきます。
光ビデオ内視鏡は、通
ライフサイエンス研究の最先端においても、オリンパ
常観察(白色光)に加
スのオプト・デジタル テクノロジーが、生命現象の複雑
え、青色光を照射して
で緻密なメカニズムを解明するツールとして期待されて
分子プローブ(蛍光薬
います。病気になりやすさの判定や薬剤に対する応答性
剤)からの蛍光を捉え、
の違いなどを調べるSNPs(一塩基多型)解析や、タンパ
腫瘍性病変と正常粘膜を異なる色調で強調表示する蛍光
ク質解析システム、さらに生きた細胞を解析して生体内
観察機能を搭載しています。さらに、粘膜内部にとどま
の機能解明を行うための生細胞研究システムなど、着々
っている大きさ2mm以下の超早期がんに関連する分子を
と開発を進め、市場に提供しています。
検出するために、新たに内視鏡先端部に直径6.9mmの世
界最小の「小型分光素子」を搭載しました。
「EVIS LUCERA SPECTRUM」の「光デジタル法による
画像強調観察」技術に加え、上記のような分子を検出す
るための技術を組み合わせることで、より特異ながんの
芽(分子)を捉え、超早期がんの検出を目指します。
また、オリンパスは、マイクロサージェリー※1用に「手
FluoroPoint-Light
術用顕微鏡OME-9000」を2007年12月末に国内で発売しま
した。「手術用顕微鏡
これらライフサイエンス研究においては、ポストゲノ
OME-9000」は、脳神経
ム研究で進展したタンパク質機能解析により、生命現象
外科をはじめとするマ
での特有の役割を果たしたり病気の原因となったりする
イクロサージェリーを
タンパク質が次々と発見されています。さらに最近では、
行う臨床科において、
遺伝子からタンパク質を合成する際にDNA情報の仲介役
術者のストレス軽減や
と考えられてきた「RNA」にも注目が集まっています。
作業空間の確保による
このほど2008年1月から発売を開始した普及型1分子蛍光分
様々な術式への対応を
析システム「FluoroPoint-Light」は、従来法では難しかった
目的に、鏡体の大幅な
microRNAやsiRNA※(RNA:リボ核酸)の機能解析を容易
小型化による観察自由
OME-9000
とする1分子蛍光分析システムの普及を目指し、近年急速
6
07
Intellectual Property Report
に高まりつつある核酸医薬などの研究開発の発展にも貢
先進価値を追求
献してまいります。
し続けています。
※siRNA:標的となる遺伝子コピー(mRNA)の一部と同じ塩基配列を
持つ“短い2本鎖RNA”(Small Interfering RNA)。siRNAは特定の
mRNAを効率よく分解するので、次世代医薬品としての期待が高く、世
界の大手製薬会社やバイオベンチャーによる技術や特許の囲い込み並び
に厳しい開発競争が行われている。
オリンパスは、
半導体検査・解
析のニーズに合
わせて2種類のコ
ントローラが選
「Analysis-Engine」を選択した解析用途の
深紫外線観察電動組み合わせ
択可能といった
新コンセプトに基づいて、300mmウエハ対応の半導体自
動検査顕微鏡「MX61A」を、2007年7月25日に発売しまし
た。
「MX61A」は、当社の半導体検査顕微鏡「MXシリー
ズ」の最上位機種で、顕微鏡観察に必要な操作の自動
化・電動化を追及しつつ、
「検査」と「解析」とのそれぞ
れのニーズに対応させた優れた柔軟性と拡張性を備えて
AU680
います。
また、生化学分野の自動分析装置「AU680」を2007年10
月1日に発売しました。
「AU680」は、電子化が進んだ自動
車業界で国際規格化されている「CAN(Controller Area
Network)
」を採用し、各種動作の高い信頼性を実現しまし
た。また、超微量分析の採用により総反応液量を当社従
来技術比で約40%削減しランニングコストの低減を実現
しました。
オリンパスは、2006年6月には、自社開発試薬により免
疫検査分野に欧州から本格参入し、甲状腺、性ホルモン
用試薬から販売を開始し、順次、癌マーカー、心筋マー
カーなどの試薬を取り揃えていきます。そして、拡大傾
IPLEX FX
向にある免疫検査市場において、生化学検査事業で培っ
たノウハウを活かし、将来は免疫検査事業から当社のバ
非破壊検査装置分野では、世界初1.2m耐衝撃、全面防
イオ事業とのコラボレーションによって遺伝子臨床検査
塵・防滴構造を実現した工業用ビデオスコープ「IPLEX
へと発展させ、テーラーメード医療への貢献を目指しま
FX」を2007年7月4日に発売しました。
「IPLEX FX」は、ボ
す。
ディー内部の発熱量を抑え、軽量かつ剛性の高いマグネ
シウム合金をボディーに採用することにより密閉構造と
産業関連事業
耐衝撃性の向上を実現しました。この密閉構造の実現は、
工業用顕微鏡、非破壊検査装置を中心とする産業関連
粉塵の舞う工場内や雨中の検査など、検査対象を大幅に
事業においても、
広げました。
「IPLEX FX」は、シリーズ最高機種「IPLEX
当社のオプト・
SAⅡR」と同等の高性能・高機能を維持しながらも、体
デジタル テクノ
積比約25%、重量比約30%と大幅な小型・軽量化を実現
ロジーを活かし、
しました。
B to B領域におけ
る信頼のパート
ナーとなるよう
7
「Inspection-Engine」を選択した検査用途のデ
ジタルイメージング組み合わせ
07
Intellectual Property Report
成されています。
当社の研究開発体制は、コーポレートの研究拠点とし
知的財産体制は、コーポレート機能としての知的財産
ての研究開発センターと未来創造研究所、社内カンパニ
本部に加え、カンパニー、事業分社にそれぞれの知的財
ー、事業分社毎の製品開発に密着した技術開発部門で構
産活動を推進する部門が配置されています。知的財産本
オリンパス株式会社
代表取締役社長
未来創造研究所
新規中核事業企画本部
オリンパス知的財産サービス
(株)
知的財産本部
研究開発センター
研究開発統括室
知的財産担当部門
研究開発本部
デジタル基盤技術本部
映像基盤技術本部
生産技術本部
MEMS開発本部
ライフサイエンス事業統括室
知的財産担当部門
IMS事業部
知的財産担当部門
PS事業部
知的財産担当部門
オリンパスイメージング
(株)
開発本部
知的財産担当部門
オリンパスメディカルシステムズ(株)
開発企画本部
知的財産担当部門
ライフサイエンスカンパニー
8
07
Intellectual Property Report
部はグループ全体の知的財産戦略を策定・推進し、社内
す。オリンパスでは、今回の提携を始めとして抗体関連
カンパニー、事業分社の知的財産担当部門は、事業戦
技術に総合的に取り組み、バイオ関連事業で所有する従
略・技術戦略と一体化された知的財産戦略を策定・推進
来技術との組み合わせによって、世界最初の知見の獲得
しています。また、グループ全体の知的財産戦略を円滑
に貢献すると共に、世界最高の臨床応用技術の提供を推
に推進することを目的に、各部門の知的財産責任者から
進してまいります。
構成される知財会議を開催し、グループ全体の連携を図
っています。
「オリンパス知的財産サービス株式会社」では、国内
外の知的財産に関する先行技術調査・分析業務や、国内
当社は経済産業省が推奨する知的財産の取得・管理に
外の知的財産の維持管理業務を行っており、知的財産業
関する指針に沿って知的財産活動を行っています。営業
務の品質と効率向上を進めています。
秘密管理、技術流出防止に関しては、それぞれ「秘密情報
管理規定」「技術流出防止規定」「ノウハウ保護規定」を定
めて運用しています。
当社は、職務発明制度における特許法第35条への対応と
発明などへのインセンティブを与えることを目的に、特
オリンパスは、2006年度を初年度とした3年間の経営基
許出願時・登録時の一時金支払、社内実施・ライセンス
本計画(2006年5月発表)における重点施策として、医療
の実績に応じた報奨金制度、および特許活動を奨励する
事業分野でのさらなる高成長・高収益の基盤確立に取り
ための褒賞金制度を定めています。
組んでまいりました。
この中で、オリンパスは、2008年2月に英国医療機器会
社のGyrus Group PLC(ジャイラス社)の発行済み全株式
当社の知的財産ライセンス活動は、ライセンス収入を
を取得し、完全子会社化しました。これにより、低浸襲
得ることよりも、自社製品を差別化し、競争優位性を確
診断治療での事業を拡大すると共に、全世界での販売網
保することに主眼を置いて行っています。
を拡充し、医療機器メーカーのリーディングカンパニー
技術革新の激しい映像分野では、スピーディーに顧客
として、さらに信頼性が高く、効率性の優れた治療技術
のニーズに対応するために、他社が保有する権利も含め、
の提供を目指します。
多くの知的財産権を活用することが必要であり、クロス
オリンパスは、株式会社ジーンケア研究所と、オリン
ライセンスを重視しています。一方、医療用内視鏡の主
パスの1分子蛍光分析システム「MF20」を用いた「蛍光偏
力である消化器内視鏡分野では、自社保有権利に保護さ
光解析法 」により、siRNAの生体内濃度を簡便かつ高精
れた技術により他社参入障壁を築く戦略をとり、高い世
度に測定する手法を共同で開発しました。本手法により、
界シェアを維持しています。
※
siRNAの薬物動態の正確な分析を簡便にできるようにな
り、siRNA医薬品の実用化に向けた研究が促進されること
が期待されます。
※蛍光偏光解析法:液体中の蛍光分子の分子量の増減による偏光度の変
化を、鋭敏に捉え解析する当社独自の手法。
当社では、消費者保護と、
「オリンパス」ブランドの保
護の観点に基づき、模倣品対策を行っています。
具体的には、中国において、知的財産専任の駐在員を
オリンパスは、株式会社カイオム・バイオサイエンス
通じて継続的に模倣品についての情報を収集し、模倣品
による第三者割当増資を引受けることで合意しました。
業者の摘発などの対策を行っています。また、工商行政
薬剤デリバリのモニタリングなど生体内物質の可視化に
管理局や税関など関連する中国行政機関に対して、当社
は、対象物質の抗体を標識する方法が極めて有効な手段
の模倣品についてのセミナーを行い、模倣品押収に向け
となりますが、従来の手法では抗体の獲得が困難な場合
ての連携や情報交換を積極的に行っています。
もあり、多様な抗体獲得技術を持つことが重要となりま
9
今後も、模倣品に対する効果的な対策を継続的に実施
07
Intellectual Property Report
してまいります。
研究開発の成果は、厳選しつつも積極的に特許出願し、
12,000
権利化する方針としています。最近5年間における国別の
10,000
保有特許件数の推移は次の通りです。なお、製造拠点・
保
有
特
許
件
数
市場として重要な中国特許保有件数は、2007年度に296件
(前年度193件)と増加しました。国内の特許査定率の向
8,000
その他
中 国
6,000
米 国
国 内
上を目指すとともに、外国特許取得件数を増大させてい
4,000
く方針のもと権利化活動を進めてまいります。また、海
外で研究開発を担う関連会社との連携を強め、グループ
2,000
全体としてグローバルな知的財産ポートフォリオの強化
0
を図ってまいります。
2003
2004
2005
2006
2007
年度
2007年度末における事業別の保有特許件数と保有比率は次表のとおりです。映像事業、メディカル事業、ライフサイエ
ンス事業、産業関連事業のそれぞれの分野において事業拡大に繋がる特許を保有しています。特に、当社の主要事業領域で
ある「映像事業」
「メディカル事業」の両分野で、当社全体の保有特許件数の67%を占めています。
映 像
メディカル
ライフサイエンス
件数 %
件数 %
件数 %
産業関連
件数 %
研究開発センター
件数 %
合 計
件数 %
国内特許
1,985
31
2,451
38
668
10
203
3
1,060
17
6,367 100
米国特許
1,383
38
951
26
401
11
155
4
777
21
3,667 100
中国特許
195
66
24
8
47
16
6
2
24
8
296 100
その他特許
101
14
301
42
182
25
14
2
117
16
715 100
合 計
3,664
33
3,727
34
1,298
12
378
3
1,978
18
11,045 100
知的財産戦略の概要の項でも述べたように、
「事業視点
の知的財産活動」の強化として、各事業体は、事業戦略
2008年3月31日現在、経営に大きな影響を与える訴訟案
件はありません。
の中で特許優位を確立すべきコア技術を明確にし、これ
に関する特許ポートフォリオの構築を進めています。
一方、
「技術視点の知的財産活動」の展開として、全社
基盤技術の中から中長期的に特許優位とすべき技術につ
いては重点的に特許ポートフォリオの構築を進め、各知
財部門の確実な連携による全社横断的な知財活動により
全社視点での知的財産価値の最大化を進めております。
上述の報告にあたり、当社の方針、戦略、分析等、将来
にかかわる事項の記述にあたっては、当社が現在入手して
いる情報に基づくもので、一定の前提に基づいたものです。
その前提は、国際的な技術や需要動向、経済環境、競争の
状況にかかわるものであり、前提が変化する結果、この報
告書で述べられている、すでに実現した事実以外の事項は
変更する可能性があります。
10
2007
Intellectual Property Report
(2007年4月∼2008年3月)