CeCoIn5

ホール素子を用いた
重い電子系超伝導体CeCoIn₅の
局所磁化測定
高温超伝導体Tl₂Ba₂CuO6+δの
擬ギャップ状態について
4回生 岡崎竜二
• 重い電子系超伝導体
C / T    AT 2
m


me  e

物質名
γ(mJ/K2mol)
CeCu6
1600
CeCu2Si2
1000
UBe13
1100
UPt3
450
URu2Si2
110
CeやUなどを含む化合物
電子の有効質量m*が自由電子
質量mの100倍~1000倍
・f電子の波動関数の重なりが
少ない
・電子間のクーロン斥力が大き
い
Y.Onuki et al. J.Phys.Soc.Jpn. 71 162 (2002)
重い電子系超伝導体
f電子局在モデル
電気抵抗
f電子が内殻に局在するイオン
伝導電子とf電子(c-f相互作用)
による近藤効果
電気抵抗に-lnTの項が入り
ある温度で極小値をとる
この系の基底状態
・・・伝導電子と局在スピンが反強磁性
的(反並行)に結合
一重項束縛状態におちこむ
K.Yosida Phys.Rev. 147 223
(1966)
C.Petrovic et al. J.Phys.Condens.Matter
13 L337 (2001)
重い電子系超伝導体
近藤効果におけるc-f相互作用
・イオン中に局在するf電子
・結晶中を自由に移動する伝導電子
f電子と伝導電子との混成
f電子の遍歴
伝導電子と局在モーメントとの相互作用
近藤効果
局在モーメントを1重項におち
こむことで遮蔽する
RKKY相互作用
磁気秩序が発生し、局在モーメ
ントが安定化する
拮抗
Landauのフェルミ液体
有効質量m*をもった準粒子
量子臨界点付近では非フェルミ液体的な
ふるまいが観測される
NFL :   T
 FL :   T 2
・・・自己無撞着なスピン揺らぎの理論
量子臨界点の存在
重い電子系超伝導体
重い電子系超伝導
BCS理論
1. 電子-格子相互作用
超伝導転移における
比熱のとび・・・大
2. s-wave
重い電子系(f電子)
がクーパー対をなし
ている
強いクーロン斥力のため、
格子を媒介したモデルで
は説明できない
反強磁性的なスピン揺らぎ
が原因となる
準粒子1のとび移りに対し、周りのスピン配置は反
強磁性的に変化し、準粒子2が引力を受ける
C
 4.5  1.43
TC
BCSによる弱結合極限
( N(0)V0 « 1 )
重い電子系超伝導体
異方的超伝導
等方的な波動関数
の広がり
UPt3
CeCoIn5
Sr 2 RuO 4
• CeCoIn₅
Tc  2.3 K
 ~ 300mJ/K2mol
CeIn3層とCoIn2層が交互に
積層・・・2次元的な構造
d波超伝導体
a = 4.62 Å
c = 7.56 Å
CeCoIn₅
熱伝導率の測定
比熱の測定
A.Bianchi et al. PRL 91 187004 (2003)
PRL 89 137002 (2002)
熱伝導率:低温においてジャンプ
比熱:磁場の増加に伴いジャンプ(2次転移)
から対称的なピークに変化
K.Izawa et al. PRL 87
057002 (2001)
1次転移の可能性
CeCoIn₅
磁化の測定
臨界磁場においてヒステリシス
を伴ったジャンプ
低温高磁場領域において1次の相転移
T.Tayama et al. PRB 65 180504 (2002)
• 上部臨界磁場における1次転移
磁場による超伝導破壊
・軌道効果
量子化された磁束0が侵入
渦糸状態
0
 2H c
2 2
・パウリ常磁性効果
Hc2 
:軌道極限
ゼーマン効果によりスピン偏極
クーパー対(singlet)を破壊
HP 
H c (T )
4 [  n (T )   s (T )]
H P (0) ~ 1.84Tc [T ]
臨界磁場の補正
 1
1 

H   2  2 
 HC H P 
*
C

1
2
:パウリ極限
(BCS弱結合極限)
GLパラメーターκ大・・・HPが支配的
超伝導状態がパウリ極限によって制限されるとき、低温でHc2において1次転移する
上部臨界磁場における1次転移
ab面に平行な外部磁場
比熱測定・音速測定において
上部臨界磁場で2次の転移線
が枝分かれ
2 H corb
2

HP
:Makiパラメータ
 ( H // ab)   ( H // c)
H//ab・・・よりパウリ常磁性
効果が強い
T.Watanabe et al. PRB 70
020506 (2004)
A.Bianchi et al. PRL 91
187004 (2003)
FFLO状態の可能性
・超伝導状態
・パウリ常磁性状態
混合
安定化
フェルミ面の一部で超伝導破壊
残りの部分で対(k↑,-k+q↓)を組む
磁場方向にノードが出現
(r )  0 cos(q  r )
高温超伝導体のパンケーキ磁束に似
た状態
• 実験
ホール素子を用いて局所的な磁化を測定
V
 RH  B
I
・3He cryostat
・超伝導マグネット
0.4 K、7Tの低温高磁場での測定
sample size  1 0.25 0.05mm3
M.Konczykowski提供のホール素子
実験結果
T = 4.3 K
マグネット側のホール素子で外部磁場
測定
H//c
8000
6000
4000
T=4.3K>2.3Kにおいてホール素子に
ド・ハース-ファン・アルフェン効果
2000
 1  2 e
  
 B  cS
0
2
4
S : Bに垂直な方向のフェルミ面の断面積極値
6
 1 
 ~ 0.036T -1

 0 H 
0H (T)
180
180
RH-1200H ()
RH-1200H ()
RH ()
ホール係数~120mΩ/G > 35mΩ/G
160
140
120
100
140
120
100
80
80
0
160
1
2
3 4 5
0H (T)
6
7
0.2
0.3 0.4 0.5
-1
1/0H (T )
0.6
0.7
実験結果
T = 0.5 K
H//c
8000
μ0H~5Tでホール抵抗にプラトー
6000
量子ホール効果の出現
2000
Rplateau  6.8 k
RH ()
h
1

25.81

(k )
2
ne
n
plateau
0
-2000
-4000
-6000
n  4?
-4
0
0H (T)
4
400
RH-1200H ()
R
4000
0
-400
-800
0.15 0.20 0.25 0.30 0.35 0.40
-1
1/0H (T )
実験結果
T=0.5K,μ0H~5T
転移線付近での
プラトーの出現
期待した磁化のとび(1次転移)
観測できず
使用したホール素子・・・主に高温超伝導体測定用
接触抵抗も含めた電流端子間の抵抗・・・大
RI  ~ 20 k
Konczykowski ~ 1 k
• 高温超伝導体の擬ギャップ状態
CuO2面をもつ2次元的な構造の超伝導体
SIS型のトンネル電流特性を示す
電流-電圧特性
状態密度
電流-電圧特性
準粒子の状態密度を表す
Tc以上で状態密度の減少
擬ギャップが存在
M.Suzuki and T.Watanabe PRL 85 4787 (2000)
高温超伝導体の擬ギャップ状態
高温超伝導体における温度-ホール濃度相図
・母物質は反強磁性を示す
・T>Tcにおいて擬ギャップをもつ
・T=T*において消える
FL
相図におけるオーバードープ域でのT*
のふるまいを調べる
ホールをオーバードープしたサンプルの作製
• Tl₂Ba₂CuO6+δのアニール
高温超伝導体Tl2201
O2 , Ar 雰囲気でアニール
することでホール濃度を調
整
実際のホール濃度は超伝
導転移温度Tcとの経験式か
ら求める
Y.Shimakawa et al. PRB 40 16 (1989)
Tcの測定
・c軸方向の抵抗率測定
・サンプルの表裏のab面に金線を2本ずつepotekでつける
・4端子法測定、ガラスデュワー
sample size ~ 0.5 0.35 0.1mm3
Tl₂Ba₂CuO6+δのアニール
測定結果
0.30
c (·cm)
0.25
(~06/03/05)
Ar雰囲気でアニールした後、
epotek部分の接触を良くする
ため空気雰囲気で短時間ア
ニール
sample 2
annealed
in Ar 300°C,20hour
in air 420°C,10min*6
0.20
・端子間抵抗~20Ω
annealed
in Ar 300°C,12hour
in air 420°C,10min*4
0.15
0.10
0.05
0.00
sample 1
50
100
150
T (K)
200
250
・I=100μA
Tl₂Ba₂CuO6+δのアニール
30x10
25
sample1 : 10K>6K (12hour)
c (·cm)
測定結果
sample1,2共にArアニールにより
超伝導転移するときの温度幅減少
-3
20
15
sample 1
10
5
sample2 : 38K>26K (20hour)
0
25
元は同じサンプル
30
・空気中での短時間のアニール
0.10
sample2で特にテールが長い
現在sample1,2を共にArアニール中
320℃,40hour
c (·cm)
・epotekのつけ方
35
40
T (K)
45
50
sample 2
0.08
0.06
0.04
0.02
0.00
20
30
40
T (K)
50
60
Tl₂Ba₂CuO6+δのアニール
測定結果
抵抗率の温度依存性
金属的なふるまい
70~100K付近で観測
最もTcの低いサンプルで
フェルミ流体的なふるまい
 T
 T2
いずれのサンプルも下凸→直線
→上凸を示す
低温側において直線的な温度
依存から外れ、抵抗率が増加
擬ギャップの出現
状態密度の減少によってc軸方向のト
ンネル電流が減少し、抵抗が増える
• 磁場による擬ギャップの破壊
BSCCO
抵抗率が温度減少に伴い増加
T*において擬ギャップがひらく
磁場をかけることで擬ギャップを破壊
Hpg:擬ギャップ(pseudogap)の閉じる磁場
60Tの高磁場まで測定
T.Shibauchi et al. PRL 86 5763 (2001)
磁場による擬ギャップの破壊
Hpgを異なるホール濃度のサンプルで測定
ゼロ磁場において抵抗率が直線から外れる
温度 T*
gB H pg  kBT *
ゼーマンスケーリングが成立
擬ギャップの形成にかかわり
スピン1重項的な相関が
ゼーマン効果によってとける?