2流体シミュレーションを用いた 磁気島の時間発展に関する研究 足立潤[1]; 中村琢磨[2]; 藤本正樹[2] [1]東大・理・地球惑星; [2]ISAS,JAXA 目次 • イントロダクション – – – – 地球磁気圏尾部電流層 観測例 先行研究 研究目的 • 数値計算モデル – 基礎方程式(2流体コード) – 数値計算モデル • 数値計算結果 – X-line強度が等しいとき – X-line強度が異なるとき • 磁気島の加速 • 弱X-lineの活動度の低下 – parameter survey • まとめ 目次 • イントロダクション – – – – 地球磁気圏尾部電流層 観測例 先行研究 研究目的 • 数値計算モデル – 基礎方程式(2流体コード) – 数値計算モデル • 数値計算結果 – X-line強度が等しいとき – X-line強度が異なるとき • 磁気島の加速 • 弱X-lineの活動度の低下 – parameter survey • まとめ 地球磁気圏尾部電流層 太陽風 反平行磁場 電流層 ~1RE Nature Physics Vol.4 January 2008, Chen et al, 2007 反平行磁場では、磁気リコネクションにより、磁気島が形成される 磁気圏尾部での磁気島の観測例 Bz Earthward tailward Bx 衛星 最も地球寄りのC2が最も遅くBz反転 By Z Bz tailward Vx Earthward tailward Earthward X Vy Vz Earthward tailward 衛星 Z J. P. Eastwood et al. 2005 X 研究目的 • 2流体数値シミュレーションを用いて、電流層に1つの磁 気島が形成されたときの、その後の時間発展を調べる。 – 磁気島の時間発展の、磁気島両端のX-lineの力関係および 初期の磁気島の大きさに対する依存性を調べる。 時間発展 ? 目次 • イントロダクション – – – – 地球磁気圏尾部電流層 観測例 先行研究 研究目的 • 数値計算モデル – 基礎方程式(2流体コード) – 数値計算モデル • 数値計算結果 – X-line強度が等しいとき – X-line強度が異なるとき • 磁気島の加速 • 弱X-lineの活動度の低下 – parameter survey • まとめ 基礎方程式(2流体コード) charge neutrality 連続の式 運動量保存 状態方程式 一般化された オームの法則より 電流 Ni Ne N N Nv i t v i Pi Pe J B v i v i t 2N N Ps v s Ps Ps v s t 2 2 B e 2 B v e B e 2 B t J eN v i v e λe : 電子の慣性長 一般化されたオームの法則 E ve B 特徴 Pe me v e v v J e e eN e t 電子慣性項 • 電子慣性が磁力線凍結を破る • 粒子計算より大きなスケールを扱える • MHDと異なり、X-line の位置が時間変化する場合も扱える 異常抵抗 数値計算モデル • 2.5次元 – 磁場などの物理量はz方向成分を持つが、 • 自由境界 0 z – 周期境界だと、磁気島と強度の異なる2つのX-lineの相互作用と、その後の 発展を的確に捉えることができない • 初期の平衡状態 – – – y 初期平衡状態での磁場はHarris type B B0 tanh e x D プラズマ圧 + 磁気圧 = const mi / me = 25 β=1 Ti = 5.0 Te = 1.0 D=1 : 電流層の厚さ • 規格化 – 長さ、時間、速度をそれぞれ、イオン慣性長、イオンジャイロ角速度の逆数、 イオンアルフベン速度で規格化する(磁場はB0で規格化) • 初期擾乱 x X i 2 y 2 y Az (t 0) logcosh B0 D 0.4i exp B0 D D 2 D 2 D i 平衡状態時のAz 加える初期擾乱 Φi : 初期擾乱の大きさ i 1,2 X-line番号 ( x, y ) ( X i ,0) で磁力線をつなぎかえる ベクトルポテンシャル B A A : ベクトルポテンシャル 2次元の場合、磁力線はAzの等高線 Az : 大 白線:磁力線 3.5 Az : 小 y軸 Pi Az : 大 0.8 x軸 磁気島 Az X-line y軸 x軸 X-lineで磁力線がつなぎ変わる ↓ X-lineにおけるAzが大きくなる 目次 • イントロダクション – – – – 地球磁気圏尾部電流層 観測例 先行研究 研究目的 • 数値計算モデル – 基礎方程式(2流体コード) – 数値計算モデル • 数値計算結果 – X-line強度が等しいとき – X-line強度が異なるとき • 磁気島の加速 • 弱X-lineの活動度の低下 – parameter survey • まとめ X-line強度が等しいとき φ=12.8λi φ=1.0 X-lineでのAzの時間変化 5 φ=1.0 右X-lineのAz 4 左X-lineのAz t=0 3 Az B0 i 2 t=40Ω-1 1 0 0 10 20 30 40 50 60 70 80 time (Ω-1) t=60Ω-1 Az ・・・ つなぎ変わった磁力線の本数 dAz/dt ・・・ 磁力線のつなぎ変わる速さ (X-lineの活動度) 3.5 t=80Ω-1 Pi X-line O-line X-line 0.8 • 磁力線が積み重なり、 磁気島が成長する • 2つのX-lineはretreat • dAz/dtの値は、ほぼ一定 X-line強度が異なるとき φ=12.8λi φ=0.9 X-lineでのAzの時間変化 5 φ=1.0 強X-lineのAz 4 弱X-lineのAz t=0 Az B0 i t=40Ω-1 3 2 1 0 0 10 20 30 40 50 60 70 80 time (Ω-1) t=60Ω-1 3.5 t=80Ω-1 Pi 弱X-line O-line 強X-line 0.8 • 磁力線が積み重なり、 磁気島が成長する • 磁気島は弱い方のX-lineの 方向に加速 • 弱い方のX-lineにおける dAz/dt が低下する X-line強度が異なるとき X-line強度が等しいときとの比較 X-lineとO-lineの位置の時間変化 X-lineでのAzの時間変化 0 10 5 弱X-line 20 time (Ω-1) 強X-lineのAz 強X-line O-line 30 4 Az B0 i 40 50 60 弱X-lineのAz 3 2 1 70 80 -20 -15 -10 -5 0 5 10 15 0 0 10 位置(X方向)(λi) X-line強度が異なるとき X-line強度が等しいとき X-line強度が等しいときとの相違点 • 磁気島が、弱X-lineの方向に移動する • 弱X-lineが、磁気島に押し出されるようにして移動する • 弱X-lineの活動度(dAz/dt)が低下する • 強X-lineは retreat しにくくなる 20 30 40 50 60 time (Ω-1) X-line強度が異なるとき X-line強度が等しいとき 70 80 磁気島の加速 磁気島の両端のX-lineでつなぎ変わった磁力線の数(Az)が異なる 場合、磁気島の両側で、磁気張力に差ができる。 → 磁気島の加速 Az 小 Az 大 3.5 Pi 磁気島全体にかかる磁気張力は、2つのX-lineのAzの差(δAz)による。 (磁場の強さが一様なら、δAzに比例する) 0.8 弱X-lineの活動度の低下 φ=12.8λi φ=1.0 φ=0.9 弱X-lineの活動度と磁気島速度の相関 0.06 0.05 d Az dt B0 i 0.04 0.03 X-lineの 活動度 • 磁気島の移動速度が大きく なるほど、その前方の 弱X-lineの活動は弱くなる 0.02 0.01 0 X-lineが 活動を停止 0 0.1 0.2 0.3 磁気島の移動速度(VAi) 0.4 X-lineが1つのとき 磁気張力による outflow 補うためのinflow 3.5 Pi 磁気張力によって、X-lineから左右にoutflowが発生し、 それを補うために、X-lineの上下からinflowが発生する。 このinflowによって、リコネクションが持続する。 0.8 X-lineに向かって磁気島が移動する場合 移動する磁気島によって 跳ね上げられた流れ inflowを阻害 dAz/dt 低下 磁気島の移動速度 が大きいほど、 弱X-lineの活動は 弱くなる 磁気島 3.5 磁気島の移動方向 Pi 磁気島静止系での電子の速度 0.8 まとめ(磁気島移動と弱X-line減衰の相乗効果) φ=12.8λi t=0 • 磁気島両端のX-line強度が異なるとき 磁気張力の差によって、磁気島が 弱X-lineの方向に加速される t=40Ω-1 • 磁気島移動に伴い発生する、磁気島 前面のプラズマの跳ね上げによって、 弱X-lineの活動が弱まる φ=0.9 φ=1.0 • 磁気島両端のX-lineの強度差がさらに 大きくなり、さらに急激に磁気島が加速 される t=60Ω-1 • さらに、弱X-lineの活動が弱まる t=80Ω-1 弱X-line O-line 強X-line ・・・・・ parameter survey • 初期条件を変えて、その後の磁気島形成、成長の時間発 展を調べる – 初期のX-line間距離を固定したまま、初期擾乱の強度比を変え る。(強X-lineの初期擾乱強度は固定) – 初期擾乱の強度比を固定したまま、初期のX-line間距離を変え る。 φ= ? φ=1.0 L=? 数値計算結果 - 初期擾乱の強度比を変えた場合 初期X-line間距離をL=12.8λiで固定 弱X-lineでのAzの時間変化 X-lineとO-lineの位置の時間変化 6 0 5 Az B0 i 弱X-line φ=0.75 (L=12.8) φ=0.80 φ=0.85 φ=0.90 強X-line(φ=0.75) 4 強X-line O-line 20 40 3 time (Ω-1) 2 60 1 80 弱X-line活動停止 0 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 time (Ω-1) 初期擾乱の強度差が小さいほど、磁気島が動き出し、 弱X-lineの活動が弱まるまでの時間が長い -30 -20 -10 0 10 位置(X方向)(λi) 初期擾乱の強度差が小さいほど、 磁気張力の差が小さいため、 磁気島は加速されにくい 数値計算結果 - 初期X-line間距離を変えた場合 初期擾乱強度をφ=1.0, 0.5で固定 弱X-lineでのAzの時間変化 X-lineとO-lineの位置の時間変化 6 0 5 Az B0 i 弱X-line L=19.2 (φ=0.5) L=22.4 L=25.6 L=28.8 強X-line(L=19.2) 4 強X-line O-line 20 40 3 time (Ω-1) 2 60 1 80 弱X-line活動停止 0 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 time (Ω-1) 初期のX-line間距離が大きいほど、磁気島が動き出し、 弱X-lineの活動が弱まるまでの時間が長い -30 -20 -10 0 10 位置(X方向)(λi) 初期のX-line間距離が大きいほど、 形成される磁気島が大きくなるため、 磁気島は加速されにくい 弱X-lineの活動の低下 様々な初期条件の下での結果を重ねてプロット 用いた初期条件(初期擾乱) 弱X-lineの活動度と磁気島速度の相関 φ=1.0 φ= ? 0.08 0.07 L=? 0.06 0.05 d Az dt B0 i 磁気島が加速する までの時間が長い φ 0.04 0.90 0.85 0.80 0.75 0.03 X-lineの 0.02 活動度 0.50 0.01 0 0 X-lineが 活動を停止 0.1 0.2 0.3 0.4 磁気島の移動速度(VAi) 0.5 0.6 12.8 19.2 16.0 25.6 28.8 L(λi) 磁気島の移動速度と、磁気島移動 の前方のX-lineの活動度との間には 高い相関関係がある。 弱X-lineの活動の低下 弱X-lineの活動度と磁気島速度の相関 用いた初期条件(初期擾乱) 0.08 0.06 地球磁気圏尾部電流層で発生する巨大な磁気島 (JAXAホームページより) 0.05 d Az dt B0 i L=? 0.04 磁気島が加速する までの時間が長い φ 0.03 0.90 0.85 0.80 0.75 X-lineの 0.02 活動度 φ=1.0 φ= ? 0.07 0.01 0.50 0 0 0.1 0.2 0.3 0.4 磁気島の移動速度(VAi) 0.5 0.6 12.8 19.2 16.0 25.6 28.8 L(λi) • 磁気島速度が0.6VAi程度になると、その前方の弱X-lineの活動は停止し、磁気島成長も止まる • 初期擾乱強度差が小さく、初期X-line間距離が大きいほど、磁気島成長が止まるまでの時間が長くなる • 特に、今後、初期X-line間距離依存性の傾向を調べることで、地球磁気圏に発生する巨大な磁気島の 成長、移動のタイムスケールを見積もることができると考えられる 目次 • イントロダクション – – – – 地球磁気圏尾部電流層 観測例 先行研究 研究目的 • 数値計算モデル – 基礎方程式(2流体コード) – 数値計算モデル • 数値計算結果 – X-line強度が等しいとき – X-line強度が異なるとき • 磁気島の加速 • 弱X-lineの活動度の低下 – parameter survey • まとめ まとめ • 電流層に磁気島が形成されたときの、磁気島のその後の時間発 展を調べた。 – 磁気島は弱い方のX-lineの方向に加速された。 – 磁気島の加速に伴い、その前方のX-lineは次第に活動を弱めた。 – 磁気島の移動速度が大きいほど、弱X-lineは活動を弱めた。 • 2つのX-lineの初期擾乱の強度比と、初期のX-line間距離を様々 に変化させた parameter survey を行った。 – 2つのX-lineの初期擾乱の強度差が小さいほど、磁気島が加速されるまで に時間がかかった。 – 初期のX-line間距離が大きいほど、磁気島が加速されるまでに時間がか かった。 – 初期条件によらず、磁気島の移動速度と、弱X-lineの活動度との間には、 高い相関関係があることが分かった。 初期に磁気島が複数ある場合 • 3点以上で同時にX-lineが発生すると、 複数の磁気島が形成される。 • この場合、磁気島が合体し、最終的に1つの 大きな磁気島が形成される。 • X-lineの初期強度にもよるが、端のX-line が生き残りやすい。 • 磁気島が1つになった後は、そのときの 磁気島の大きさと、磁気島両端のX-lineの 力関係によって、その後の時間発展が 決まると予想される。 Sekiya, 修論 磁気島静止系でのイオンの速度 磁気島静止系での電子の速度 磁気島移動速度、y方向スケール、弱X-lineの活動度の相関 dAz/dt 0.08 0.08 0.07 0.07 0.06 0.06 0.05 0.05 0.04 0.04 0.03 0.03 0.02 0.02 0.01 0.01 0 0 1 2 0 (弱X-line移動速度) (磁気島縦スケール) × (磁気島移動速度) 0.08 0.07 初期擾乱強度比 0.06 0.9 0.05 dAz/dt 0.75 0.04 0.03 0.5 0.02 12.8 19.2 25.6 16.0 28.8 0.01 0 (磁気島移動速度) 初期X-line間距離 電子イオン質量比依存性 質量比100 質量比400 質量比25 初期擾乱の強度:φ= 0.9 , 1.0 初期X-line間距離L = 12.8 Az B0 i • 強X-lineでは、dAz/dtに 大きな変化なし 強X-line 弱X-line time (Ω-1) T=30λiまでmi /me = 100 で計算し、その後、質量比 を25、100、400の3通りで 計算した。 • 弱X-lineでは、質量比25 (電子が重い)のとき、 活動が弱まりにくい →電子のdiffusion region が大きいと、磁気島が 向かってくる影響が 小さくなる? モデル計算 磁気島の運動方程式 磁場の大きさが一様、 かつ磁場がy=0で上下対称の時 dV M k1 ( Az (強) Az (弱)) dt k1=2B/B0 (ここではB=B0/k2 とした) ・・・磁場の強さによって決まる比例定数 X-lineの時間発展 dAz(強) a dt a = 0.065 (X-lineが1つの時のdAz/dt、定数) dAz (弱) a (磁気島速度などの関数 ) dt 磁気島の質量の時間発展 下線部をシミュレーション結果から推定 L dM dAz (弱) 2L dt dt dAz(弱)/dt X-line間距離の時間発展 dL dAz(弱) dAz(強) k2 Maxk2 ,V dt dt dt ① ② ①強X-line が retreat しているか、 ②磁気島移動により、強X-lineが動いていないか k2=1.84 (X-lineの強さが同じときのretreat 率) 弱X-lineの活動度を決定する要素 磁気島の y方向半径 : Ly 磁気島の移動速度 : V dAz (弱) a (定数 V ) ? dt dAz (弱) a (定数 V Ly ) ? dt モデル計算と数値計算結果の比較 dAz (弱) a (0.03 V Ly ) dt の場合 V : 磁気島速度 Ly : 磁気島y方向半径 モデル計算 強度比 X-line距離 0.75 12.8 0.75 16.0 0.75 19.2 0.75 22.4 数値計算 7 6 強X-line 6 強X-line 5 5 4 Az B0 i 4 Az B0 i 3 弱X-line 2 弱X-line 2 3 1 1 0 0 0 20 40 60 time (Ω-1) 80 100 0 20 40 60 time (Ω-1) 80 100 モデル計算と数値計算結果の比較 dAz (弱) a (0.03 V Ly ) dt の場合 V : 磁気島速度 Ly : 磁気島y方向半径 モデル計算 0.75 16.0 0.75 19.2 0.75 22.4 数値計算 0 0 O-line 弱X-line 弱X-line 20 強X-line 強X-line O-line 20 40 40 time (Ω-1) time (Ω-1) 60 60 80 80 100 -40 強度比 X-line距離 0.75 12.8 -30 -20 -10 0 10 20 X-lineとO-lineの位置(λi) 30 100 -30 -20 -10 0 10 X-lineとO-lineの位置(λi) 20 磁気島成長が止まるまでにかかる時間 • 磁気島の形状が安定したときの磁気島のx方向スケール : L と、 磁気島が成長を止めるまでの時間 : T の関係は、初期の2つの X-lineの強度差δAz が等しいとき、 ① dAz (弱) a (定数 V ) dt のとき T L2 ② dAz (弱) a (定数 V Ly ) dt のとき T L2 基本的には、磁気島の質量がおよそL2に比例するため、 ①のとき、時間が経つにつれて磁気島が大きくなり、 磁気島が加速されにくくなるので、 T L2 ②のとき、時間が経つにつれてLyが大きくなり、 2 急速に弱X-lineが活動を弱めるため、 T L T L~2 モデル計算の問題点 • このモデルは、初期擾乱を与えてから、磁気島の形状(縦横比) が安定するまでの段階をうまく表現できていない。
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