保険研究特論(保険数理) アクチュアリー数学(第2回) 生命関数 早稲田大学大学院商学研究科 2015年4月17日 大塚忠義 1 講義資料 http://tyotsuka.cocolog-nifty.com/blog/ から各自事前にダウンロードしてください 2 Agenda 第2回 生命関数 • 記号の定義 • 連続空間上の生命関数 • 死力 • 死亡法則 • 脱退残存率 3 行政による調査 人口動態統計: http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jin kou/kakutei12/index.html 国勢調査: http://www.stat.go.jp/data/kokusei/2010/gai you.htm#mokuteki_1 政府統計ポータルサイト:e-stat http://www.estat.go.jp/SG1/estat/eStatTopPortal.do 4 ベルヌーイ試行としての死亡率 l0 100, 000 lx 1 lx d x lx 1 px lx dx qx lx qx px 1 死亡者dは、確率変数 であり、B(n, q)の二項 分布に従う nが十分に大きいとき はnはN(nq, npq)の正 規分布で近似すること ができる。このときqは N(q, pq/n)に従う 5 記号の定義(1) lx n n px lx lx lx n n qx 1 n px lx n lx n d x n qx n px qx n lx lx n lx n lx n lx n r n px r qx n n r qx lx lx n 6 記号の定義(2) ω:最終年齢:生存者がゼロになる 年齢:死亡率の水準、生命表の使用 目的によって決まる。 国民表では lω<1 となるωを定める ことが多い 計算処理の行いやすさ(余計な端数 が出ない)の観点から qω-1 1 とする ことも多い 7 年齢を確率変数とする死亡率 人は生まれたら必ず死ぬ、異なるのは 死ぬ時期 ω-1 ω-1 d t 0 x ω-1 t 0 (lt lt 1 ) l0 t 0 ω-1 t q0 t p0 q0t t 0 ω-1 lt dt 1 t 0 l0 lt ω-1 t 0 t qx 1 8 期待値 ω-1 ex = t t 0 ω-1 t ω-1 e0 = t t 0 qx t px : 平均余命 t 0 ω-1 t q0 t p:平均寿命(0歳の平均余命) 0 t 0 d xはx歳の誕生日からx 1歳の 誕生日の前日までに死亡する数 逆にいうとx年(端数月数切捨て) 生きた人の数。その期待値は生存 年数の平均 寿命中位数 9 連続空間上の生命関数(1) X歳(端数月数切捨て)の死亡率を定義する と死亡率は離散型の確率関数 時間t で定義すると死亡率は連続型の確率 関数となり、ルベーグ積分で扱うことができ る。 同様に生命表上のすべての変数をtで表現 することが可能となる 10 連続空間上の生命関数(2) n n Lx lx t dt : 定常空間上のx歳以上 t x n歳未満の人口 Lx : 定常空間上のx歳の人口 ω Tx lx t dt :定常空間上のx歳以上の人口 t ω ex t t px dt 金融工学のdurationはこの応用 11 死力(1) lx tを実数tのもとに定義すると微分可能 微小区間tにおける死亡率は lx lx t lx t x : t 0としたものを死力と定義 1 lx t lx x lim t 0 l t x d log lx 1 dlx lx dx dx 12 死力(2) 死力は確率変数ではない:1を超えることも あり得る 1 d x lx t x t dt 0 qx 1 0 p dt t x x t n 0 n p x e xt dt 13 離散型(生命表)への近似 Lx lx lx 1 2 Tx L e ex 0.5 x x t 0 x t lx 1 lx 1 2lx 14 死亡法則(1) 生命表の生命関数をxの関数で示したもの 死亡率の分布関数とその母数を得ることが できれば、死亡率のモデルを作成すること ができる 当然ながら適合する死亡率モデルは存在し ない しかし、統計データが得られない部分を埋め るために多くの死亡法則が活用されている 15 死亡法則(2) ・ド・モアブルの法則:古くから引用されてい た、単純で分かりやすい ・ゴンパーツ・メーカム:わが国で最も活用さ れているもの、国民表、経験表の高年齢の 補外に活用 ・ワイブル分布:ハザード関数の考えに立ち、 機械の寿命分布に適合するといわれる ・リー・カーターモデル:死亡率の改善予想 に世界的に広く活用されている 16 死亡法則(3) deMoibre 86 x lx l0 86 1 x 86 x Gompertz x Bc x 17 死亡法則(4) Gompertz Makeham x A Bc x ・ゴンパーツ・メーカムは40~70歳で統計結 果と適合 ・80歳以上は統計結果の信頼が低い ・ハザード関数の考えに立ち、寿命は指数に 従っている ・死力に下限が存在している:災害による死 亡と整合している 18 多重脱退率(1) ・生命表は誕生と死亡の2つの要素のみによ る人口の推移を示しているが、実社会ではあ りえない ・国民表は死亡の状況を示す目的 ・保険や年金の加入者の集団では誕生、死 亡以外の増減要素も重要 ・多重脱退率:それぞれの減少要因の発生率 ・多重脱退表:集団からの複数の離脱要因を 勘案した表(生命表の一般化) 19 多重脱退率(2) 用語の確認 ・被保険者集団:保険・年金の対象となる所 定の属性を持った人の集団 eg.加入者集団 ・閉集団:新規加入がなく、離脱により減少し ていく集団 ・開集団:離脱がある一方で、新規加入もあ り、構成員が変化していく集団、新規加入は 誕生に限らない 20 多重脱退率(3) ・閉集団の例:生命保険加入者集団:一定 時期に加入した集団を集合として離脱の状 況を観察する:加入年数別(保険年度別)の 発生率が重要 ・開集団の例:年金集団、特に、厚生年金、 企業年金等の被用者集団:入社数、退社数 は死亡数より多い:集団の規模の変化も重 要な要素 21 多重脱退率(4) 異なるモデルを用いる事例 死亡、解約(退職):以下この例を言及する ・多重脱退率を用いる典型例 ・離脱事由が独立と仮定(実はそうとはいえ ない:保険を解約するのは健康な人、重病 により会社を退職etc.という傾向有) ・離脱事由により給付が異なる ・離脱上からの復帰を想定しない 22 多重脱退率(5) 死亡、高度障害(傷害1級水準) ・高度障害を死亡と同様に扱う:経済的な死 ・保険金を支払い契約が消滅 ・高度障害発生率を死亡率に上乗せ 死亡、重大疾病(介護等) ・健常、介護xx級、死亡の各ステージへの 遷移確率を設定し、確率過程としてモデル 化 ・復帰(回復)を仮定 ・介護保険のプライシングで詳述 23 脱退原因A,Bの脱退率 lx 1 lx d xA d xB A x d q :A脱退率 lx A x B x d q :B脱退率 lx A:死亡、B:解約とすると、死亡数は解約後 に死亡した人を含めていない 本来の脱退率(死亡率、解約率)を絶対脱 退率としてそれらとの関係を考慮 B x 24 絶対脱退率 A x A x q q q 1 B* 1 B 1 qx 1 qx 2 2 証明省略 近似は没理論だが実務で広く使用 下式の方が脱退残続表を作成のために使 用されている * A x 1 B* q q (lx qx ) 2 A x A* x 25 Question? お疲れ様でした 26
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