水田におけるダイオキシン研究 の動向 (独)農業工学研究所 丹治 肇 ダイオキシンとは • ダイオキシン 8つの同族体、75種類の化学物 質(異性体)の総称 – 同族体:有機化合物で、CH2の数だけが異なる化合 物の一群 – 異性体:分子式が同じで構造が異なる化合物 • ポリ塩化ジベンゾフラン 8つの同族体、135種類 の異性体 • コプラナーPCB 4つの同族体、13種類の異性 体 ダイオキシン類とは ポリ塩化 ダイベンゾ-パラ -ダイオキシン ダイオキシン類 ポリ塩化 ジベンゾフラン ダイオキシン PCDD PCDF Co-PCB コプラナーPCB PCB 環境ホルモンとは • 内分泌攪乱物質 • 動物の生体内に取り込まれた場合に、本 来、その生体内で営まれている正常なホ ルモン作用に影響を与える外因性の物質 (環境省:環境ホルモン計画SPEED’98) • 米国研究協議会(NRC) ホルモン様作用 物資(HAA: Hormonally Active Agents) ダイオキシン類以外の環境ホルモン • 調査物質は多数、黒は少ない • PCB アザラシ、シロイルカの免疫機能低下と個 体数減少 • DDT フロリダ州アポプカ湖のワニの数の減少 の原因 • 有機スズ イボニシやバイなどの貝類のメスにペ ニスが発生する「インポセックス」の原因物質 • ノニルフェノール 魚の雌雄同体化の原因として 疑われている ダイオキシン類の毒性 • 最も毒性の強い2,3,4,8ーテトラクロロ ジベンゾーパラーダイオキシン(TCDD)は 「史上最強の毒物」、青酸カリの約1万倍、 サリンの2倍 • 急性毒性(1回の投与により生体に及ぼす 有害な作用、動物では致死量を基準) • 慢性毒性(3~6ヶ月に及ぶ反復投与によ り、生体に有害な作用) ダイオキシン類の環境ホルモン 作用 • 女性ホルモン作用を抑制 – 2,3,7,8-TCDDで甲状腺から分泌される チロキシンの分泌量が減少 – アカゲザルで子宮内膜症が増加 • 精子を作る機能を障害 – 脳下垂体や視床下部に作用して黄体形成ホ ルモンの分泌を阻害する 環境ホルモンの研究 • 1995年頃英米などで分析法の確立、研究 が進む • 1997年9月 コルボーン 失われし未来 日本語版出版 • 1998年1月 橋本総理の施政方針演説で 「環境ホルモン」対策の強化を宣言 • 1998年補正予算183億2千万円 (前年予 算は5300万円) 発生源から人に至る経路 ダイオキシンのリスク評価では、発生源から 人に至る経路を検討する必要がある 途中では生物による濃縮が発生すること、経 路をカットしやすいところとそうでないところが あることが重要である ダイオキシンの発生源 • 塩素を含むゴミの燃焼による生成 • 塩化フェノールとそれを原料にする殺菌剤、 除草剤の副産物として生成 • PCB製造時の副産物または燃焼による生 成 • 塩素殺菌や塩素漂白による生成 出典:環境ホルモンに挑む PCPとCNP • PCP 1960~1970年代初めにかけて使わ れた主要水田除草剤 – 高塩素系異性体の7及び8塩素化物PCDDs/Fs が特徴的に検出される • CNP 1960年代末~1908年代中頃にかけ て使われた主要な水田除草剤 – 低塩素系異性体の4塩素化物1,3,6,8-,1,3,7,9TCDDsと“,4,6,8,-TCDFが特徴的に検出され る 我が国におけるPCDD/Fsの 環境放出量 • 農薬による放出量は1960年代のPCP, 1970年代のCNPにピークがあり、20,0 00-40,000g-TEQ/yearに達する • それ以外の放出量は5,000g-TEQ/y earと予測され、ちいさい。 水田でのダイオキシン類の動態 • 土壌を中心に移動する • 揮発、下層土壌への移行もあるが小さい • 下層土壌との移行では、シロカキ作業によ る年1回の移動量が大きい 水田由来ダイオキシン類の特徴 • • • • • 主にSSに含まれている SSに含まれる含有比率などは不明 分解は極めて遅い 新たな蓄積の増加はない 主な流出経路 – シロカキ時期の濁り水 – 豪雨時の排水 水田のダイオキシン類の対策 • 収集 – 植物による吸収 • 分解 – 微生物等の利用の可能性 • 流出抑制 – シロカキ排水対策、循環利用、植生 今後の方向(環境ホルモン一 般) • 吸収分解はかなり、困難 • リスク管理(許容できる範囲で、コストを考 えながら、危険と共存する) • 未知のリスクには対応不可能?(モニタリ ングは不可欠、遺伝子組み換え食品、予 防原則) • 費用対便益の導入、中西準子 – LCC,LSCAなどと、密接な関係がある。 付:SS調査の問題点整理 測定器の種類 ダイオキシン サンプル場所 濁度計測 濁度計測 SS濃度分析 濁度計測 仮定:同一地点のSSのダイオキシン比率は変化しない。
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