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トランジット法による
低温度星を公転する地球型惑星の探索
成田 憲保 (国立天文台)
Thanks to: すばるIRDトランジット班、若手連携プロジェクトメンバー
目次
• 自己紹介とプロジェクト紹介
• 太陽系外惑星研究の現状
• 低温度星のサイエンスメリット
• 本研究の計画と現在の状況
• 宣伝:「生命居住惑星」の透過光分光観測
自己紹介
• 研究テーマ
– 太陽系外惑星、特にトランジット惑星系の観測
– 惑星系の形成過程・大気の観測研究と新しい惑星探し
• 本研究に関わるSWG・プロジェクト活動
– すばる望遠鏡IRD SWG 「トランジット班」 (班長)
– TMT SWG 「星形成・系外惑星・太陽系班」(班長)
– 若手研究者による分野間連携研究プロジェクト(代表)
自然科学研究機構「若手研究者による分野間連携研究プロジェクト」
テーマA(理論)
低温度星まわりでの「生命居住
可能領域」及び「植物特性」の
理論的考察
装置仕様から制限
される観測天体
テーマB(観測)
テーマC(装置開発)
トランジット観測による低温度星
まわりでの地球型惑星探索
地球型惑星の直接観測の
ための新しい観測手法の実証
候補天体の提供
低温度星まわりの生命居住可能惑星における
植物特性の考察とその観測に向けて
太陽系外惑星とは
• 太陽以外の恒星を公転する惑星
• 1995年に初めて発見され、既に700個余り発見されている
• 2011年にNASAのKepler衛星が1200個を超える候補を発見
• 地球型惑星の発見数も少しずつ増えてきている
54個の惑星がいわゆる
ハビタブルゾーンにある
うち地球型惑星は5個
Keplerの結果
• 地球型惑星のような軽い惑星は普遍的に存在
• 周期が短いところにも多数の惑星が存在している
• ハビタブルな惑星候補も発見されてきた
Keplerの弱点
• Keplerの惑星候補の星は遠すぎるものが多い
• 地球型惑星の存在確率など統計的な研究向き
• 非常に暗いため惑星の質量や軌道の決定、詳細な
特徴付けは困難
• 特に生命を探すといったような研究は太陽系に近い
明るい星でしかできない
プロジェクト・テーマBの研究提案
• 太陽系近傍の低温度星(M型~K型晩期星)をター
ゲットとしたトランジット観測によって、新しいトラン
ジット惑星の探索を行う
• 特にすばる望遠鏡に搭載される予定の赤外線視線
速度測定装置IRDを念頭に、IRDの稼働前に太陽系
近傍のトランジット惑星候補を発見する
• さらに発見された惑星の大気成分の調査を行う
なぜ低温度星か?
1. 主星が軽い→地球型惑星でも視線速度変動が大きい
2. 主星が小さい→トランジットをする場合、地球型惑星でも~1%
程度の大きな減光を起こす
3. 主星が低温度→ハビタブルな惑星が主星の近傍にあり、そう
した惑星がトランジットをする幾何学的確率が高い
 公転周期が短くトランジットが繰り返し観測できる
 トランジット惑星に対してはさまざまな追観測のサイエンスがある
 低温度星はトランジット惑星を探す魅力的なターゲット
低温度星の問題点と解決策
• 低温度星は太陽系近傍にもたくさんあるものの、例え近傍に
あっても可視では非常に暗い
– 10pcにあるM型星は V 等級では~13等程度
 可視での高精度な分光・測光観測は現在の装置では難しい
• 低温度星は近赤外で急激に明るくなる
– ~10pcのM型星、~15pcのK型晩期星は J 等級で10等以下
 近赤外の装置であれば高精度な観測も可能になる
 特に視線速度決定ではIRDが威力を発揮する
IRD稼働に向けた研究計画
• IRD稼働前→トランジットサーベイ
– アーカイブデータなどから候補を選定し、高精度測光観測に
よって本当に惑星かどうかを調べる
– 現在ある視線速度測定装置で連星の確認、惑星質量の制限
• IRD稼働後→トランジット惑星のフォローアップ観測
– 事前に発見した惑星候補の質量と軌道を決定
– 視線速度で発見された惑星に対するトランジット有無の確認
我々のトランジット惑星探しの流れ
•
トランジット候補の選定
–
•
共同研究グループによる地上サーベイからの惑星候補
これらに対して高精度近赤外測光観測を実施
–
トランジットが本当にあるか、トランジット天体のサイズ・周期
などを確認、惑星大気の研究
•
トランジットが確認できたものについては分光観測へ
–
分光連星かどうかの確認、惑星質量の制限(HDSなど)
–
惑星の質量と軌道の決定(IRD)
高精度近赤外測光観測の準備
• この計画には高精度な近赤外測光観測が不可欠
• 我々のグループは2009年から岡山のISLEで観測を開始
– 日本で初めて近赤外で~0.1%の相対測光精度を達成
– 現在では J等級で10等以下のターゲットについて、同等以上の
明るさの参照星があれば安定的に~0.1%が達成可能
• 2011年8月に南ア/IRSFでもJHKsで0.1-0.3%の精度を達成
• チリ/miniTAOでも試験中
岡山/ISLEのJバンド測光観測
HAT-P-13で~0.1%の測光精度を達成 (Fukui et al. in prep.)
南ア/IRSFのJHKs同時測光観測
GJ1214bで0.1-0.3%の測光精度を達成 (Narita et al. in prep.)
2011年から岡山への観測提案を開始
現在の状況と今後の計画
• 岡山を中心にして、トランジット惑星の探索を開始
• 精度としては、低温度星を公転するトランジット地球型惑星を
検出できる精度が達成できている
• 潜在的には候補が本当に惑星であれば確認できる
– false positive(偽検出)も多数あると考えられるが、今後3年間で
地道に観測数を稼いで惑星の発見確認を目指す
• すばる望遠鏡IRDの稼働後に、正確な質量と軌道を決定する
• 惑星大気の観測など派生的なサイエンスも実施する
トランジット惑星大気の観測
トランジット惑星の透過光分光
主星
主星の光
惑星および
外層大気
主星元素の
吸収線
惑星大気による
追加吸収
トランジットの深さは惑星大気の組成を反映して、
吸収線や観測バンドごとに異なる
将来の観測に向けて
• 将来ハビタブルゾーンを公転するトランジット地球型惑星が
発見された場合、透過光分光は重要な研究テーマのひとつ
になる
• その場合、本当にそのような観測で大気成分を調べることが
できるかどうか事前に模擬観測を行うことは重要
• 現在知られている唯一の生命居住惑星=地球で透過光分
光を実施できないか? → 実は可能
(皆既)月食の分光観測
トランジットと月食の類似性
Planetary Atmosphere
Star
Earth
Transiting Planet
Earth’s Atmosphere
Sun
Moon
Earth
すばる望遠鏡の系外惑星カテゴリで採択
TMT観測への布石として再来週すばる観測を行います
まとめ
• 太陽系近傍の低温度星のトランジット地球型惑星の探索を
実施中
• すばる望遠鏡IRDでのフォローアップを経て、将来のTMTでの
面白い観測ターゲットを発見していきたい