講義レジュメNo.11 定款変更 事業の譲渡等 Ⅰ 定款の変更 Ⅱ 事業の譲渡等 テキスト参照ページ:443~449p 381~385p 1 Ⅰ 定款の変更 1. 定款変更の意義:会社は、その成立後、原則と して株主総会の特別決議により定款を変更す ることができる(466、309Ⅱ⑪) • 定款の変更とは実質的意義の定款を変更するこ とをいう • したがって、定款の変更は、これを記載・記録し た書面・電磁的記録(形式的意義の定款)の変更 がなくても効力を生じる 2 2 手続(1) • 株主総会の招集:取締役(取締役会設置 会社⇒取締役会)は、定款変更を目的と する株主総会の招集を決定する(298Ⅰ、 Ⅳ) • ただし、株主に不利益を与えない一定の 場合には、株主総会決議によらず、取締 役の決定(取締役会設置会社⇒取締役会 決議)のみで定款変更をすることができ る(184Ⅱ・191・195) 3 (2)株主総会の特別決議 • 原則として株主総会の特別決議(309Ⅱ⑪)が 必要 • すなわち、当該総会において議決権を行使でき る株主の議決権の過半数(3分の1以上の割合 を定款で定めた場合はその割合以上)を有する 株主が出席し(定足数)、出席株主の議決権の 3分の2以上の賛成を必要とする • これに加えて、一定の数以上の株主の賛成を要 する旨その他の要件を定款で定めることもでき る(309Ⅱ) 4 種類株主総会を要する場合 • 株式の種類の追加、株式の内容の変更、発行可 能株式総数または発行可能種類株式総数の増加 を行う定款の変更が、ある種類の株主に損害を 及ぼすおそれがあるとき • 全体としての株主総会の特別決議のほか、当該 種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主 総会の特別決議を要する(322Ⅰ①、324Ⅱ① ④) • ただし、当該種類株主総会において議決権を行 使できる株主がいる場合に限る(同但書) • 定款で不要とすることもできる(322Ⅱ)。 5 特殊な決議を要する場合 • 全株式の内容について譲渡制限の定めを設け、 あるいはそれと同等の結果を生じる場合:当該 株主総会において議決権を行使できる株主の半 数(定款で加重可)以上であり、かつ当該株主 の議決権の3分の2(定款で加重可)以上の賛成 による決議(309Ⅲ) • 109条2項による定款の定めの新設・変更には、 総株主の半数(定款で加重可)以上であり、か つ総株主の議決権の4分の3(定款で加重可) 以上の賛成が必要(309Ⅳ) 6 株主全員の同意を要する場合 • 取得条項付株式:発行する全部の株式の 内容として取得条項付株式についての定 款の定めを設定・変更する場合 – 強制取得となるため(110) • 種類株式発行会社でない会社に限る (107Ⅰ③の設定・変更):廃止する 場合を除く 7 (3)反対株主の株式買取請求権 • 一定の定款変更等に反対の株主には、会社に対 し、自己の有する株式を公正な価格で買い取る ことを請求することができる(116Ⅰ①・②・ ③) • ただし、3号については322Ⅱの規定による定款 の定めがある場合に限る:種類株主総会決議で 反対する機会の保障が与えられない場合 • 価格決定の手続等については、組織再編におけ るのと同様 8 (4)変更登記等 • 定款変更の効力は原則として株主総会の 決議があったときに発生すると解される • 会社は、定款変更の効力発生日から2週間 以内に、本店所在地において、変更の登 記をしなければならない(915、例外とし て同Ⅱ、Ⅲ参照) • 原始定款、会社設立時における定款変更と異なり (30)公証人による定款の認証を要しない 9 Ⅱ 事業の譲渡等 総論 事業の譲渡等 事後設立 10 1 総論 • 467条1項各号の行為をなすには、原則として、 当該行為の効力発生日の前日までに、株主総会 の特別決議によって、当該行為にかかる契約の 承認を受けなければならない(461Ⅰ柱書、 309Ⅱ⑪) • 1号から4号:事業の全部または重要な一部の譲 渡、事業全部の譲受け、事業全部の賃貸、経営 の委任、損益共通契約(事業の譲渡等という) • 5号は、いわゆる事後設立(旧商246Ⅰ)に相当 11 2 事業の譲渡等(1)意義 1. 事業の全部の譲渡:一定の事業目的のために組織化され有機的 一体として機能する会社の財産の譲渡をいう • 事業譲渡は、取引行為であるから本来は業務執行機関の権限に 属する。しかし、会社の経営のあり方に重大な影響を及ぼす事 柄であり、会社法は株主保護のため株主総会の特別決議を要求 する。 • そこで、本条にいう事業譲渡の意義が問題となる。判例は、旧 商法下において、24条以下と245条以下の営業譲渡を同義に解 し、「一定の営業目的のため組織化され、有機的一体として機 能する財産(得意先関係等の経済的価値のある事実関係を含 む)を譲渡し、譲渡人が営んでいた営業的活動を譲受人に受け 継がせ、譲渡人がこれに応じて法律上当然に競業避止義務を負 う結果を伴うものをいう」としていた(最判昭40・9・20民集 19・6・1600:百選92事件参照) • 旧商法245条1項1号と24条以下の「営業譲渡」を同一に解する ことが法解釈の統一性、法律関係の明確性の見地から望ましい こと、営業活動の承継の有無を総会決議要否の基準とすること 12 が取引の安全確保に資することを理由とする 参考 • 営業と商号が一対一の関係にある個人商 人については営業譲渡(商15条以下)、 これに対して複数の種類の営業を行う場 合でも商号は一つである会社においては 事業譲渡というように用語の区別がなさ れたが、会社法総則の事業譲渡(21~ 24)と総会決議を要する事業譲渡(467) の関係において、従来の議論が維持され る 13 2 事業の譲渡等(1)意義 2. 事業の重要な一部の譲渡:当該譲渡により譲 り渡す資産の帳簿価額が当該株式会社の総資 産額として法務省令で定める方法により算定 される額(以下「会社の総資産額」)の5分の 1(これを下回る割合を定款で定めた場合はそ の割合)を超えない場合は重要な一部に該当 しないことを明確化 3. 他の会社の事業全部の譲受け :譲り受ける資 産に譲受会社の株式が含まれるときは、取締 役は、株主総会において、当該株式に関する 事項を説明しなければならない(467Ⅱ) 14 2 事業の譲渡等(1)意義 4. 企業提携契約:技術提携・生産提携・販 売提携等の企業提携契約を締結すること は、原則として、業務執行機関の権限に 含まれる。しかし、会社の経営に重大な 変動を生じる一定の企業提携契約の締 結・変更または解約については、株主保 護の観点から、事業譲渡と同様の手続が 必要とされる 15 企業提携契約 a. 事業全部の賃貸借:会社の有機的一体として 機能する組織的財産全部を一括して賃貸する 契約 b. 経営の委任:会社の事業全部の経営を他の会 社に委任する契約 • 狭義の経営委任契約と経営管理契約に分けられる c. 損益共通契約:複数の会社が法律上は独立性 を保ちながら、損益について共同計算を行う 契約 d. その他上記の各種契約に準ずる契約 16 (2)手続 • 原則として、株主総会の特別決議による 契約の承認を要する(467Ⅰ、309Ⅱ⑪) • 例外的に株主総会の特別決議による承認 を要しない場合として以下の2つがある – 略式事業譲渡等 – 簡易な事業全部の譲受け 17 ⅰ)略式事業譲渡等 • 事業譲渡等の契約の相手方が当該事業譲渡等を する会社の特別支配会社である場合(468Ⅰ) • 特別支配会社:原則として、ある株式会社の総 株主の議決権の90%(定款でこれを上回る割合 を定めることもできる)以上を有している会社 をいう(会施規136参照) • 単独で90%以上保有する場合だけでなく、当該 会社が発行済株式の全部を有する株式会社 (100%子会社)その他これに準ずるものとして 法務省令で定める法人が保有する議決権と併せ 18 て90%以上保有する場合も含まれる 特別支配会社 100%子会社ま たは90%以上 の議決権支配 100%子会社ま たは90%以上 の議決権支配 完全子会社 (株式会社に 限らない) 完全子会社 (株式会社に 限らない) 50% 以上の 議決権 支配 40%の議 決権支配 19 ⅱ)簡易な事業譲受け • 対価として交付する財産の帳簿価額が譲受会社 の純資産額の5分の1を超えない場合には、株 主総会の特別決議を要しない(468Ⅱ) • 従来の20分の1という基準から簡易組織再編と 同等の5分の1(20%)に引き上げられた • ただし、法務省令で定める数の株式(議決権を 行使できるものに限る)を有する株主が、次で 述べる通知または公告の日から2週間以内に反 対の通知(反対株主の異議)をなした場合には、 簡易事業譲受の手続によることはできず、通常 の手続によらなければならない(468Ⅲ) 20 株主への通知または公告 • 事業譲渡等をしようとする会社は、効力発生日 の20日前までに、株主に対し、事業譲渡等をす る旨(467Ⅱに該当する事実がある場合は当該 株式に関する事項も含む)を通知しなければな らない(469Ⅲ):反対株主の株式買取請求権 行使の機会を保障する趣旨 • 事業譲渡等をする会社が公開会社である場合ま たは事業譲渡等に関する契約につき株主総会の 決議により承認を受けた場合には、公告をもっ て通知に代えることができる(469Ⅳ) 21 反対株主の株式買取請求権 • 事業の譲渡等に反対の株主には、事業譲渡に関 する株主総会決議と同時に解散の決議(471 ③)がなされた場合を除き、株式買取請求権が 認められる(469Ⅰ・Ⅱ①イ) • 議決権を行使することができない株主にも買取 請求権が認められることが明文化された (469Ⅱ①ロ) • 株主総会の決議を要しない場合:すべての株主 に買取請求権が認められる(469Ⅱ②) 22 3 いわゆる事後設立 • 会社の成立後2年以内に、その成立前より存在 する事業用財産(事業のために継続して使用す る財産)を会社の純資産額の5分の1以上の対 価で取得する契約(467Ⅰ⑤) • 検査役の調査制度を廃止し、株主総会の特別決 議による承認のみを要求 • 規制の対象となる事業用財産の規模:従来の20 分の1以上から会社の純資産額の5分の1 (20%)超へと大幅に緩和された(467Ⅰ⑤但 書) 23 手続 • 会社の純資産額の5分の1を超える対価で財産を取得 する場合には、株主総会の特別決議による契約の承認 が必要(467Ⅰ⑤本文、309Ⅱ⑪) • ただし、事業譲渡等の場合と異なり、反対株主の株式 買取請求権は保障されていない • なお、新設合併・新設分割・株式移転といった組織再 編行為により設立された会社については、従来から解 釈上、事後設立規制の対象外であると解されていた。 これらのケースでは、組織再編行為自体が株主総会の 特別決議を経てなされており、現物出資・財産引受の 規制の脱法として利用される危険がないからである。 そこで、会社法は、これらの場合に事後設立規制を適 24 用しないことを明文化した(467Ⅰ⑤括弧書)
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