トピック11 投薬の安全性を改善する Patient Safety Curriculum Guide 1 根拠 薬剤使用をめぐる状況は近年ますます複雑化している 誤薬は患者に防止可能な害をもたらす主要原因である 医療専門職を目指す学生にも,薬剤使用の安全性を高める 上で重要な役割が課せられている Patient Safety Curriculum Guide 2 学習目標 投薬の安全性について概要を示す 薬剤使用の安全性を高めるための手法を継続的に学習 及び実践するように学生を促す Patient Safety Curriculum Guide 3 習得すべき知識 誤薬の規模について理解する 患者が薬剤を使用する過程の各段階を理解する 誤薬の発生に寄与する要因を特定する 薬剤使用の安全性を高める方法を学ぶ 投薬の安全性に対する多職種アプローチの有益性を理解 する Patient Safety Curriculum Guide 4 習得すべき行動内容 投薬の安全性は一つの大きなトピックであるということと,この領域に関する理解が以下の 課題の遂行に影響を及ぼすということを認識する: 必要に応じて一般名を使用する 患者ごとに処方を個別化する 徹底的に薬歴を聴取する方法を学び,練習する リスクの高い薬剤を把握しておき,対策を講じる 自身が処方又は調剤する薬剤について熟知しておく 記憶補助ツールを活用する 薬剤を処方又は投与する際に5つのRを忘れずに確認する 明確なコミュニケーションを行う チェックの習慣を身に付ける プロセスに積極的に関与するように患者を促す 誤薬事故があれば報告し,そこから教訓を学ぶ Patient Safety Curriculum Guide 5 定義(1) 副作用(side-effect):薬剤の薬理学的特性に関係した既知の 作用のうち,目的とする主作用以外のもの • 例) オピオイド系鎮痛薬はしばしば悪心を引き起こす 有害反応(adverse reaction) :病状に対して適切な手順で実 施された正当な行為から発生した予期せぬ害 • 例) 薬剤の初回投与後に発生した予期せぬアレルギー反応 エラー(error) :計画した活動を意図したとおりに実施できない こと,又は不適切な計画に基づいて行動すること 有害事象(adverse event) :患者に害をもたらしたインシデント Source: Conceptual Framework for the International Classification for patient safety Patient Safety Curriculum Guide 6 定義(2) 薬物有害事象(adverse drug event) : • • 防止できる場合もあれば(例,エラーにより発生するもの) 防止できない場合もある(例,薬物有害反応又は副作用により発生 するもの) 誤薬は以下のような事態につながる… • • • 患者に害が及んだ場合は,有害事象 患者に害が及びそうになった場合は,有害でなかったインシデント (ニアミス) 害の発生もその可能性もなかった場合 誤薬は防止できる Patient Safety Curriculum Guide 7 薬剤使用の流れ 処方(prescribing) 投与(administering) モニタリング(monitoring) 注:これらの過程は,医療専門職によって行われる場合もあれ ば,患者自身によって行われる場合もある。 例) 自己判断で市販薬を購入し,自宅で服用する場合 Patient Safety Curriculum Guide 8 処方の段階では… 患者個別の要因(アレルギーなど)を考慮に入れつつ,臨床 状況に合った適切な薬剤を選択する 投与経路,用量,時間及びレジメンを選択する 計画の詳細についてコミュニケーションをとる: • • 実際に薬剤を投与する者と(書面か口頭又はその両方で) そして患者とも 記録する Patient Safety Curriculum Guide 9 処方段階での間違いは どのようにして起こるのか? 薬剤の適応及び禁忌についての知識不足 患者間違い,用量間違い,投与時間の間違い,薬剤間違い,投与経路 間違い 不十分なコミュニケーション(書面,口頭) 患者個別の要因を考慮しない(アレルギー,妊娠,併存疾患,併用薬な ど) 記録 ― 読めない,不完全,曖昧 用量計算の間違い 電子処方利用時の不正確なデータ入力(重複,省略,数字間違い) Patient Safety Curriculum Guide 10 見た目や名称の似た薬剤 二つの具体例: Avanza (ミルタザピン,抗うつ薬)と Avandia (ロシグリタゾン,糖尿病治療薬) Celebrex (セレコキシブ,抗炎症薬)と Cerebryx (ホスフェニトイン,抗痙攣薬)と Celexa (シタロプラム,抗うつ薬) Patient Safety Curriculum Guide 11 曖昧な表記 Tegretol 100mg S/C 1.0 mg .1 mg Tegreto 1100 mg S/L 10 mg 1 mg Patient Safety Curriculum Guide 12 曖昧な表記は避ける 少数の末尾には 0 を付けない • 例) 「1.0」ではなく,「1」と記載する 1未満の少数で先頭の 0 を省略しない • 例) 「.1」ではなく,「0.1」と記載する 各施設で受け入れられている用語体系を把握しておく 文字はきれいに書き,必要ならば印刷する Patient Safety Curriculum Guide 13 投与の段階では… 使用できる状態まで準備する(集計,計算,混合,ラベル 表示,何らかの調製作業が含まれる) アレルギーについて確認する 正しい患者に正しい薬剤を正しい時間に正しい用量と正 しい経路で投与する 記録する Patient Safety Curriculum Guide 14 投与段階での間違いは どのようにして起こるのか? 患者を間違う 投与経路を間違う 投与時間を間違う 用量を間違う 薬剤を間違う 投与を忘れる(オミッション) 記録が不十分 Patient Safety Curriculum Guide 15 5つのR Right Drug Right Route Right Time Right Dose Right Patient 正しい薬剤 正しい経路 正しい時間 正しい用量 正しい患者 Patient Safety Curriculum Guide 16 計算間違い 次の問題に答えられますか? 患者にある薬剤を300μg投与する必要がある。この薬剤は含 量1mgの1mLアンプルにて供給されている。このとき,患者に 注射すべき薬液の量はいくらか。 Patient Safety Curriculum Guide 17 モニタリングの段階では… 患者を観察して,投与した薬剤が奏効しているか,適切に使 用されているか,患者に害を与えていないかを判定する 記録する Patient Safety Curriculum Guide 18 モニタリング段階での間違いは どのようにして起こるのか? 副作用のモニタリングを怠る 無効と判明した薬剤やコースを完了した薬剤の投与を止め ない コースを完了する前に投与を止めてしまう 血中薬物濃度を測定しない,あるいは測定を継続しない コミュニケーションに失敗する Patient Safety Curriculum Guide 19 どの薬剤に血中濃度の測定が 必要か知っていますか? Patient Safety Curriculum Guide 20 誤薬のリスクが最も高くなるのは どのような患者か? 複数の薬剤を使用している患者 併存疾患がある患者(腎障害,妊娠など) 良好なコミュニケーションがとれない患者 複数の医師に掛かっている患者 自身の薬剤使用において積極的な役割を 果たしていない患者 小児や乳児(用量の計算が必要) Patient Safety Curriculum Guide 21 スタッフが最も誤薬を犯しやすくなるのは どのような状況か? 経験不足 チェック及びダブルチェックの習慣が欠如している 多忙な環境 多重業務 作業の中断 疲労,退屈,「オートパイロット」状態となってチェックやダブルチェックを 怠る チームワークやスタッフ間でのコミュニケーションが不良 記憶補助ツールの活用を怠る Patient Safety Curriculum Guide 22 どのようにして職場のデザインが 誤薬につながるのか? 職場における安全文化の欠如 例) 報告システムに不備があり,過去に発生した有害でなかったイ ンシデントや有害事象から教訓を学んでいない スタッフ向けの記憶補助ツールの欠如 スタッフの不足 Patient Safety Curriculum Guide 23 どのようにして薬剤のデザインが 誤薬につながるのか? 見た目や名前の似た薬剤 曖昧な表示 Patient Safety Curriculum Guide 24 薬剤の使用をより安全にする方法 薬剤使用をより安全にするために何ができるか: 一般名を使用する 患者ごとに処方を個別化する 完全な薬歴を聴取する方法を学び,実践する リスクの高い薬剤を把握しておき,対策を講じる 自身が処方又する薬剤について熟知しておく 記憶補助ツールを活用する 5つのRを忘れずに確認する 明確なコミュニケーションを行う チェックの習慣を身に付ける 積極的に関与するように患者を促す エラーがあれば報告し,そこから教訓を学ぶ Patient Safety Curriculum Guide 25 商品名ではなく, 一般名を使用する Patient Safety Curriculum Guide 26 患者ごとに処方を個別化する 次の事項を考慮する: アレルギー 併存疾患(特に肝障害と腎障害) 併用薬 妊娠と授乳 患者の体格 Patient Safety Curriculum Guide 27 完全な薬歴聴取の方法を学び, 実践する 各薬剤について名称,用量,投与経路,投与頻度及び投与期間を聴取する 最近になって使用を中止した薬剤について質問する 市販薬(OTC),サプリメント及び代替医薬品についても質問する 患者が実際にリストのどの項目に該当するかを明確にする: • • 医療の移行時には特に注意する 入院時及び退院時には処方確認(medication reconciliation)を行う よく知らない薬剤があれば,必ず調べるようにする アレルギー歴も必ず聴取する 薬物相互作用,中止される可能性のある薬剤や副作用が生じる可能性のあ る薬剤について検討を行う Patient Safety Curriculum Guide 28 リスクの高い薬剤を把握しておき, 対策を講じる 治療濃度域が狭いもの 他の薬剤と複数の相互作用を起こすもの 強力な作用を持つもの 用法とモニタリングスケジュールが複雑なもの 具体例: • • • • • • • 経口抗凝固薬 インスリン 化学療法薬 神経筋遮断薬 アミノグリコシド系抗生物質 静注用のカリウム製剤 緊急時に使用する薬剤(強力であり,プレッシャーのかかる状況で使用) Patient Safety Curriculum Guide 29 自身が処方又する薬剤について熟知しておく 処方する薬剤すべてについて自習をしておく 推奨される学習事項 • • • • • • • 薬理 適応 禁忌 副作用 注意事項 用量と投与方法 レジメン Patient Safety Curriculum Guide 30 記憶補助ツールを活用する 教科書 個人用情報端末( PDA ) コンピュータープログラム,電子処方 プロトコル 何かに記録できる事実や数字を暗記することではなく,自分 の脳は問題解決に活用すること 安全を確信できない場合は調べること。それは無能ではな い! Patient Safety Curriculum Guide 31 処方と投与の際には 必ず5つのRを確認する 5つのRを憶えていますか? Right Drug Right Dose Right Route Right Time Right Patient 正しい薬剤 正しい用量 正しい経路 正しい時間 正しい患者 Patient Safety Curriculum Guide 32 明確なコミュニケーションを行う はっきりとしゃべる 読みやすい字ではっきりと書く 5つのR コミュニケーションのループを 完成させる Patient Safety Curriculum Guide 33 チェックの習慣を身に付ける(1) 薬剤を処方する時 薬剤を投与する時: • • アレルギーのチェック 5つのRのチェック コンピューターシステムにもチェックが必要であることを 忘れてはならない 常にチェックを行い,これを習慣にすること! Patient Safety Curriculum Guide 34 チェックの習慣を身に付ける(2) 有用な格言がある… Unlabelled medications belong in the bin (表示のない薬剤は捨てるべし) Never administer a medication unless you are 100% sure you know what it is (何であるか100%の確信が持てる薬剤以外は決して投与しては ならない) Practice makes permanent, perfect practice makes perfect (練習は習慣を生み,完璧な練習だけが完璧を生む) あなたも今日からチェックの習慣を始めましょう! Patient Safety Curriculum Guide 35 プロセスに積極的に関与するように 患者を促す 新しい薬剤を処方する際には,患者に以下の情報を提供す る: • • • • • 薬剤の名称,投与目的,作用 用量,投与経路,投与スケジュール 特別な指示や安全上の注意点 一般的な副作用と薬物相互作用 投薬中のモニタリングの方法 使用した薬剤と自身のアレルギー歴を何かに書いて記録し ておくように患者を促す 医師を受診する際には必ずこの情報を提示するように患者 を促す Patient Safety Curriculum Guide 36 誤薬があれば報告し, そこから教訓を学ぶ Patient Safety Curriculum Guide 37 学生が安全に実習するために 習得しておくべき技能… 薬剤の使用に関わる技能を学習及び練習する際には,患者 に対する潜在的な危険と,患者安全を高めるために自分に何 ができるかを必ず検討すること 投薬の安全性に関する知識は,以下の行為に影響する: • • • • • • 薬剤の処方,記録及び投与 記憶補助の活用と用量の計算 薬歴及びアレルギー歴の聴取 同僚とのコミュニケーション 投薬に関する患者参加の奨励と患者の教育 誤薬事故及び有害でなかったインシデントからの学習 Patient Safety Curriculum Guide 38 要約 賢くかつ適切に使用すれば,薬剤は患者の健康を大きく改 善する しかし,誤薬が頻繁に発生しており,本来は防止可能である はずの健康被害や経済的損失を引き起こしている 患者に薬剤を投与すれば必ず何らかのリスクが伴うというこ とを忘れてはならない 自身の責任を把握し,患者に対する薬剤使用の安全性を高 めるべく全力を尽くすべきである Patient Safety Curriculum Guide 39 討論のために 投薬によって患者が害を被ったインシデントの実例を知っていま すか? 何が起きたか説明してください その状況は副作用,薬物有害反応又は誤薬によるものです か? Patient Safety Curriculum Guide 40 計算間違い(1) 次の問題に答えられますか? 体重12kgの2歳の男児に15mg/kgの薬剤を投与する必要が ある。この薬剤は濃度120mg/5mLのシロップ剤として供給さ れている。このとき,処方量は何mLになるか? Patient Safety Curriculum Guide 41 計算間違い(2) 次の問題に答えられますか? 患者にある薬剤を300μg投与する必要がある。この薬剤は含 量1mgの1mLアンプルにて供給されている。このとき,患者に 注射すべき薬液の量はいくらか。 Patient Safety Curriculum Guide 42 事例(1) 74歳の男性が新たに発症した安定型狭心症の治療を受け るために地域の開業医を受診した。 患者がこの医師を受診したのは初めてであったが,医師は 患者の既往歴と薬歴を一通り聴取した。 その結果,この患者はそれまで健康で,薬剤は頭痛薬しか 服用していないことが判明した。 しかし,患者はその頭痛薬の名前を思い出すことができな かった。 医師はその薬剤について,頭痛の出現時に屯用する鎮痛 薬であると推測した。 Patient Safety Curriculum Guide 43 事例(2) ところが,実際に患者が使用していたのはβ遮断薬で,片頭 痛の治療薬として毎日服用していた(この薬剤は別の医師 によって処方されたものであった)。 診察した医師は,狭心症に対してアスピリンとは別のβ遮断 薬の投与を開始した。 この新たな投薬の開始以降,徐脈と起立性低血圧がみられ るようになった。 不幸なことに,患者は3日後に起立時のめまいのために転 倒し,その際に大腿骨を骨折してしまった。 Patient Safety Curriculum Guide 44 この誤薬にはどのような要因が 寄与していたか? 同じクラスに属する二つの薬剤が同時に処方された結果, 副作用が増強された 使用中の薬剤について患者に十分な情報が伝わっていなかっ た 受診時に患者が使用している薬剤のリストを持参しなかった 医師が徹底的な薬歴聴取を行わなかった 1人の患者に対して2人の医師が薬剤を処方した 想定される副作用に関する警告と副作用が発生した場合の対 応が患者に伝えられていなかった可能性がある Patient Safety Curriculum Guide 45 この状況はどうすれば防止できたか? 次の事項に関する患者の教育: • • • 常用薬 想定される副作用 患者が自身の診療に積極的に関与することの重要性 例) 薬剤リスト より入念な薬歴聴取 Patient Safety Curriculum Guide 46 事例(1) 38歳の女性が, 痒みを伴った赤色の皮疹と顔面の腫脹が 20分間は続いていると訴えて病院を受診した。この患者に は重篤なアレルギー反応の既往があった。 ある看護師が0.01%アドレナリン(エピネフリン)液10mLを 10mL注射器に吸い上げ,医師から指示された場合に備え て,すぐに使用できる状態(総量1mg)にしてベッドサイドに 置いておいた。 その間,医師は静脈内留置針を挿入していた。 看護師が用意したこの透明な液体の入った10mL注射器を 見た医師は,生理食塩水が入っていると勘違いしてしまった。 Patient Safety Curriculum Guide 47 事例(2) その間,医師と看護師の間では何のコミュニケーションもとられ なかった。 医師は生理食塩水で静脈ラインをフラッシュするつもりで,この アドレナリン(エピネフリン) 10mLすべてを静脈内カテーテルに 注入してしまった。 すると患者は急激に恐怖心と不安をあらわにし,頻脈となった 後,意識を失い,脈も触れなくなってしまった。 心室性頻拍と判明して,心肺蘇生が開始された結果,幸運にも 良好な回復が得られた。 アナフィラキシー時のアドレナリン(エピネフリン)の推奨用量は 0.3~0.5mgの筋注であるが,この患者には1mgが静注された。 Patient Safety Curriculum Guide 48 このエラーに寄与した要因を 特定できますか? 思い込み コミュニケーションの欠如 不十分な注射器の表示 内容に関するチェック及びダブルチェックなしでの投与 強力な薬剤に対する注意不足 Patient Safety Curriculum Guide 49 このエラーはどうすれば防止できたか? それが何であるか確認できるまでは決して薬剤を投与せず,ラ ベルの貼られていない注射器は疑ってかかる 自分で薬液を吸い上げたのでない限り,ラベルの貼られていな い注射器は決して使用しない すべての注射器にラベルを貼る コミュニケーション ― 看護師と医師が互いに何をしているかを 常に教え合うようにする 例) 看護師:「今アドレナリンの準備をしています。」 薬剤の投与前には毎回チェックを行うことを習慣づける…5つ のRをすべて確認する 例) 医師:「この注射器に入っているのは何ですか。」 Patient Safety Curriculum Guide 50 事例(1) ある入院患者に足関節骨折後の深部静脈血栓症に対する 治療として経口抗凝固薬の投与が開始された。 当初予定された治療期間は3~6カ月間であったが,退院し た患者も地域の開業医も,この治療期間を把握していな かった。 そのため,患者は数年間にわたって抗凝固薬を服用し続け ることになり,抗凝固薬の使用に伴う出血リスクに不必要に 曝され続けた。 Patient Safety Curriculum Guide 51 事例(2) ある日,患者は歯科感染症と診断され,抗生物質が処方さ れた。 その9日後,後腹膜からの自然出血により背部痛と血圧低 下を来し,入院と輸血が必要になった。 プロトロンビン時間国際標準比(INR)が顕著に上昇しており, 抗生物質により抗凝固作用が増強されたものと考えられた。 Patient Safety Curriculum Guide 52 このエラーに寄与した要因を 特定できますか? コミュニケーションが欠如しており,それにより病院と地域医 療との間でケアの連続性が損なわれていた 投与期間の計画に関する情報が患者に伝わっていなかった 抗生物質と抗凝固薬の相互作用はよく知られた現象である にもかかわらず,抗生物質を処方した医師がこれに思い至 らなかった モニタリングが行われなかった(血液検査を行っていれば, 問題が大きくなる前に抗凝固作用の増強を検出できたもの と考えられる) Patient Safety Curriculum Guide 53 このエラーはどうすれば防止できたか? 効果的なコミュニケーション • • 例) 退院時の病院から開業医への紹介状 例) 患者情報 想定される薬物相互作用を医師に知らせる記憶補助や警 報システム 処方する薬剤でよくみられるピットフォールへの注意 必要に応じて薬剤作用のモニタリング Patient Safety Curriculum Guide 54 このエラーを防止するために, 患者にはどのような貢献ができたか? もっと質問する: • • 「この新しいお薬はどれくらい使用することになるのですか?」 「この抗生物質は,私が服用している別のお薬との飲み合せは大丈 夫ですか?」 患者にもっと質問するよう促すには,医師はどうすればよい か? Patient Safety Curriculum Guide 55
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