平成20年度 県薬アドバンス講習会 平成20年7,8月 薬剤学:ジェネリック医薬品とDDSの進歩 長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科 生命薬科学専攻 臨床薬学講座 准教授 西田孝洋 Koyo Nishida, Ph.D. [email protected] Nagasaki University Graduate School of Biomedical Sciences 1 研究内容: DDS & 薬物速度論 Repeat p.o. administration 0.7 毒性 薬物血中濃度 生体材料 Concentration (mg/L) (b) 通常の製剤 0.6 0.5 治 療 域 0.4 0.3 無効 0.2 (a) 放出制御製剤 0.1 0 00 1 24 2 48 3 72 Time (h) 投与後日数 Drug Delivery System: 薬物送達システム 「薬物送達システムにおける 放出制御と生体材料」 工業材料, 55 (3): 36-40 (2007) 日刊工業新聞社 2 本日の講義内容 ジェネリック医薬品とDDSの進歩 ジェネリック医薬品の進歩 – 日本薬局方:溶出試験・崩壊試験 – バイオアベイラビリティ – ジェネリック医薬品の製剤学的ポイント DDSの進歩 – 遺伝子・核酸医薬のデリバリー – 新しい投与形態による癌治療の最前線 – 肝臓表面からの吸収を利用した新規投与形態 の開発 臨床製剤学 南江堂(5,700円) 3 薬剤学会のシンポジウムのリスト 経口剤開発のstrategy:消化管吸収性評価と製剤設計 トランスポーター研究の新展開 医薬品の包装シンポジウム 製剤設計において注目される新技術 医薬品・薬品情報の品質確保~ジェネリック医薬品の新 たな展開と医療への真の貢献~ 革新的人工遺伝子デリバリーシステムの創製と実用化 への展開 薬学教育改革の課題:社会のニーズに応え薬剤学教育 は何を目指すべきか 日本薬剤学会第23年会:2008/5/20-22 札幌 4 ジェネリック医薬品 新薬の特許期間が満了し、有効性と安全性が確かめら れたのちに売り出される後発医薬品 ・有効成分 ・投与経路 ・用法・用量 ・効能・効果 http://www.sawai.co.jp/ 安価だが品質が問題? BAが同等か? 製剤学的側面から考える 朝日新聞, 2008.6.25 5 局方改正点:経皮吸収型製剤 Transdermal Therapeutic Systems (TTS) 第15改正より収載 有効成分が皮膚を通して全身の循環血流に送達するよ うに設計された製剤。 支持体 薬物貯蔵層 放出制御膜 粘着剤 皮膚 ライナー(使用時にはがす膜) 薬物が全身循環へ http://www.novartis.co.jp 6 局方改正点:錠剤コーティング 製剤の表面を被覆し、水や空気、光との接触の防止や、 臭気、苦味のマスキング、徐放性や腸溶性などの製剤 的な特性を付与するため、あるいは外観を改善して商品 価値を高めるために用いられる。 代表的なコーティング剤: HPC(ヒドロキシプロピルセル ロース)、HPMC(ヒプロメロース)、エチルセルロース http://ja.wikipedia.org/wiki/ 第15改正より、コーティング錠 の規定が追加 7 各種製剤が吸収されるまでの過程 溶出過程 ここからは同じ 8 安定性に影響する因子 アレニウス プロット 温度(活性化エネルギー) pH(H+, OH-) 他のイオン イオン強度、誘電率 金属、光、湿度、空気 アスピリンの pH-rate profile 9 安定性試験 長期保存試験 – 原薬または製剤の物理的、化学的、生物学的、および微生物学的性質が有効 期間を通じて適正に保持されることを評価するための試験 加速試験 – 長期間保存した場合の化学的変化を予測すると同時に、流通期間中に起こり うる規定された貯蔵方法から短期的に逸脱した場合の影響を評価するための 試験。原薬または製剤の化学的変化または物理的変化を促進する保存条件を 用いて行う。 苛酷試験 – 流通の間に遭遇する可能性のある苛酷な条件における品質の安定性に関す る情報を得るための試験。加速試験よりも苛酷な保存条件を用いて行う。 10 薬物の溶解性への影響因子 粒子径 – 粒子径小→表面積大(微粉化)→溶解速度大 結晶多形 – 化学組成が同一であるが、異なる結晶構造 結晶形を持つ現象を結晶多形 準安定形→溶解速度大 結晶多形 (テトラサイクリン) 無晶形 – 無晶形は、原子や分子の配列が不規則で、熱力学的に準安定 な状態。結晶エネルギーに打ち勝つ必要がなく、溶解速度大 無水物、塩形成、固溶体、溶解補助剤 温度、撹拌、溶媒の粘度、pH 11 製剤添加物の種類と性質 固形製剤には、微粒子に崩壊・分散させることを目的として添加される 崩壊剤など、様々な添加剤が含まれている。 添加剤の種類 – 崩壊剤 – 賦形剤 – 結合剤 – 滑沢剤 – コーティング剤 12 先発と後発品の添加剤の違い(例) 対象薬剤 先発品 後発品 商品名 (メーカー名) メバロチン錠10 (第一三共) 製品A (某社) 有効成分 (1錠中) プラバスタチンナトリウム (10.0 mg) プラバスタチンナトリウム (10.0 mg) 添加物 ヒドロキシプロピルセルロース 低置換度ヒドロキシプロピル セルロース メタケイ酸アルミン酸マグネシ ウム 結晶セルロース 乳糖 三二酸化鉄 ステアリン酸マグネシウム ヒドロキシプロピルセルロース 無水ケイ酸 三二酸化鉄 ステアリン酸マグネシウム D-マンニトール 13 崩壊試験とは 錠剤、カプセル剤、顆粒剤、丸剤が試験液中、定められた条件 で規定時間内に崩壊するかどうかを確認する試験法である。 本試験は、製剤中の有効成分が完全 に溶解するかどうかを確認することを 目的としていない。溶出試験の規定 があるものについては、崩壊試験を 省くことができる。 吸収に関連を持つ試験法 だが、直接の対応は乏しく、 製剤行程や品質の管理の ための試験法と考えられる。 第15改正より 国際調和 14 崩壊試験のビデオ 15 溶出試験 溶出試験法は、内用固形製剤からの主薬の溶出を試験する方法。 薬物吸収では、まず製剤から溶出しなければならないから、溶出速 度の大小がバイオアベイラビリティを左右することがある。 本試験法は、in vivoのバ イオアベイラビリティとの 相関を最終目的とするが、 現在のところ検討の余地 があり、製剤設計・品質 の管理手段としての試験 法にとどめられている。 16 溶出試験のビデオ 17 溶出曲線のデータ:学生実習 120 100 溶出率(%) 80 ヂアベトース1号 ブタマイド錠 ラスチノン錠 60 40 20 0 0 5 10 15 20 時間( 分) 25 30 30分後の様子:ラスチノン錠 18 バイオアベイラビリティとは どんなに優れた薬理作用を有する物質でも、投与部位から吸収されな ければ医薬品として用いることはできない。投与部位における吸収性の 程度、すなわち生体への利用されやすさのことをバイオアベイラビリティ (生物学的利用能bioavailability)と呼ぶ。 BA 製剤技術によって BA大きく異なる 19 バイオアベイラビリティの定義 量(AUC)は同じ 動的BAが異なる ※ 治療域との関連 ・全身循環血流へ出現する速度 (動的バイオアベイラビリティ rate of bioavailability) ・全身循環系へ到達する量 (量的バイオアベイラビリティ extent of bioavailability) 20 量的BAの算出方法 量的バイオアベイラビリティ ・血漿中濃度からの算出: ・尿中排泄量からの算出: Fpo Fpo AUCpo / D po AUCiv / Div Xu po / D po (経口投与) Xu iv / Div AUC0→tn+AUCtn→∞ 一次速度式で近似 モーメント解析 台形法 tn 対数補間法 21 動的BAの算出方法 ・特定のモデルを用いない場合: 最大血漿中濃度(Cmax) 最大血漿中濃度到達時間(Tmax) MRT, MAT by モーメント解析 ・モデル当てはめを行う場合: 残差法を用いて 吸収速度定数(ka)を算出 ※ コンパートメントモデル ※ グラフから 22 生物学的同等性 経口固形製剤は、同一の薬物で等量の同じ剤形に調製されていても、 薬物自体や製剤学的因子の違いで、異なった臨床効果を示す場合があ り、医薬品の有効性・安全性の点で問題。異なる製剤間においてBAが 等しい場合、両製剤は生物学的に同等、あるいは生物学的同等性 (biological equivalency)を有する。 生物学的同等性試験評価法 クロラムフェニコール血中濃度(各種カプセル剤) BAに製剤間差 生物学的同等の許容域 生物学的同等の許容域は、AUCt およびCmaxが対数正規分布する場 合には、試験製剤と標準製剤のパラ メータの母平均の比で表すとき0.81.25である。 23 ジェネリックでは製剤処方が進歩 治療の同等性 •Therapeutic equivalent •Bioequivalent •Pharmaceutical equivalent 製剤の処方設計 配合変化 DDS技術 製剤工程 物性に基づく 動態予測 安定性改善 流動層造粒装置 http://www.fa-mart.co.jp/ ササッとわかるジェネリック医薬品, 講談社, 2007 24 製剤学的視点からの薬剤師の関わり 承認後10年の製材技術 ササッとわかるジェネリック医薬品, 講談社, 2007 付加価値・利便性向上 口腔内崩壊錠 プレフィルドシリンジ プラボトル -アンプルカット時のガラス破片飛沫防止 ソフトバッグ 大きさ 剤形-製剤特許やDDS技術 苦味 副作用-アレルギーなど 感触 安定性-取り扱い 苛酷試験 溶解性-注射薬の視認性 配合変化 医薬品情報- 安定性、配合変化、製剤特性 25 患者さんへの情報提供 ジェネリック医薬品企業が行う 各種試験・調査 ジェネリック 医薬品企業 – 動物などでの薬効薬理試験 – 動物などでの安全性試験 – 製剤の安定性試験・崩壊・溶出試験 – ヒトでの臨床試験 – ヒトでの体内動態試験 (生物学的同等性試験) 薬剤師 患者さん 医薬品情報の流れ – 使用成績調査・特定使用成績調査 – 製造販売後臨床試験 – 副作用症例調査 – 文献・学会報告調査 かんじゃさんの薬箱 http://www.generic.gr.jp/ 26 近年の遺伝子治療の動き 1990年 米国で世界初の ADA欠損症への遺 伝子治療始まる 1995年 国内初の遺伝子 治療始まる (北海道大) 1990 1987年 カチオン性リポ ソームを用い細 胞への効率的遺 伝子導入 1990年 Naked DNAを用い in vivoで筋肉へ効 率的遺伝子導入 1995 2001年 世界で遺伝子 治療患者数3000人 越える 2000 1991年 米国で癌の遺伝子 治療始まる 現在 2009年? HGF遺伝子の 遺伝子医薬品 発売(日本)? Naked DNA 筋肉内投与 27 注射によるHGF遺伝子治療 ●糖尿病などにより足の血管が閉塞:末梢性血管疾患 ●心臓の冠動脈の血液の流れが悪化:虚血性心疾患 HGF(Hepatocyte Growth Factor)肝細胞増殖因子 肝疾患治療薬として研究されていたが、HGFの遺伝子を投与し血管を新しく増やす 治療法が発明された。HGF遺伝子治療薬は、血管が詰まり血流が悪くなっている虚血 性疾患に対して、血管を新生するというこれまでにない治療薬になる可能性がある。 アンジェス MG株式会社:http://www.anges-mg.com/ 28 HGF遺伝子治療薬の開発状況 平成20 年3 月28 日 各位 会社名 アンジェス MG 株式会社 アンジェス MG株式会社: http://www.anges-mg.com/ HGF 遺伝子治療薬の国内承認申請のお知らせ 当社は、3 月27 日、重症虚血肢を有する閉塞性動脈硬化症及びバージャー病を適応症として、 HGF 遺伝子治療薬(一般名:ベペルミノゲン ペルプラスミド、製品名:「コラテジェン」)の国内での 承認申請をいたしましたのでお知らせいたします。 29 プラスミドDNA ホタルルシフェラーゼを コードしたプラスミドDNA Luc cDNA BGH pA CMV promoter f1 ori pCMV-Luc SV40 ori 7.1 Kb.p. 細菌の染色体外遺伝子の一つ で、宿主染色体とは物理的に独 立して自律増殖できる寄生性の 遺伝因子(染色体外DNA)。 複製起点や薬剤耐性遺伝子な どを利用して人工的につくられた プラスミドが遺伝子クローニング などの遺伝子操作にベクターと Neor r Amp Col E1 して広く用いられている。 SV40 pA 30 アンチセンスDNA 本来転写されるべきmRNA(センスRNA)に対し、相補的な塩基配列をも つDNAをさす。DNA鎖を制限酵素で切出し、180度回転させてから、プロ モーターとターミネーター/ポリ(A)付加配列の間に、もとの位置につなぎ 直し、裏側配列を有した遺伝子DNAを作製する。 遺伝情報の発現を抑制 ※ 翻訳阻害 最初にFDAが認可 (網膜炎治療薬) 31 DNAワクチン DNAワクチンとは、生ワクチンより も安全に、そして不活化ワクチンより も強力に細胞性免疫を誘導できる新 しい免疫方法。 病原体の蛋白質をコードする遺伝子 (DNA)を直接体内に接種することで、 ウイルス感染と同じように、宿主細胞 内で病原体蛋白質を発現させると、発 現させた病原体蛋白に対して免疫が 誘導されるという仕組みを利用。 ワクチン効率を向上させ、実用 化のためにDNAの接種方法や免 疫賦活剤にいろいろと工夫。 32 iRNA:RNA干渉 2本鎖のRNAを細胞の中に入れると、その配列に相同な細胞のmRNAが 分解され、遺伝子発現を抑える現象。将来的には治療用途にも期待。 もともとは、線虫で発見された現象だが、その後、単細胞生物から植物、 哺乳類でも同様の現象が確認され、広く研究用途で使われるようになった。 33 癌化学療法 癌化学療法とは がん患者の集い http://www.gan-joho.com/ – 癌化学療法は抗癌薬を用いて癌細胞の分裂を抑え、癌細胞を死滅させる治療 役割 – 術前・術後の 補助化学療法 – 全身的な癌の治療 副作用 – 避けられない、副作用 – 副作用は治療できる 34 分子標的薬 受容体や酵素など、疾患に特異的な分子だけに作用する 医薬品。正常な細胞をも攻撃した従来の抗がん薬とは異な り、がん細胞だけに作用する。 ・ハーセプチン® (乳がん) トラスツズマブ ・リツキサン® (悪性リンパ腫) リツキシマブ ・グリべック® (慢性骨髄性白血病) メシル酸イマチニブ ・イレッサ® (非小細胞がん) ゲフィチニブ 35 抗癌薬の投与経路 全身化学療法、局所注入療法、動注化学療法 静脈注射 経口投与 – 5-FU系, TS-1, メルファラン, (モルヒネ) 皮下注射 – リュープリン® 経皮 動注内注入 – 動注, 動脈塞栓術、局所灌流 腫瘍内注入 – 直接注入 – 経皮的エタノール注入術 体腔内注入 – 腹腔、胸腔、髄腔など – 5-FU軟膏, (フェンタニル) 直腸投与 – 5-FU・テガフール坐剤 http://ganjoho.ncc.go.jp/public/ 36 組織分布 血漿蛋白や赤血球との結合 血管壁の透過性 連続内皮(筋肉、皮膚、肺) 膜透過(低分子) 組織への蓄積 有窓内皮(小腸、腎臓) 蛋白質, DNA, チューブリン, 酸性リン脂質など 膜透過(高分子) 不連続内皮(肝臓、脾臓、骨髄) 組織: 4 0 % 組織液:1 6 % 血漿: 4 % 37 EPR効果 Enhanced permeability and retention (EPR) effect 腫瘍における微小脈管レベルの特異性 ①新生血管の増生 ②腫瘍血管の機能と構造上の欠陥 ③血管透過性の著明な亢進と高分子物質の腫瘍血管 を介する回収の欠如 マウスへi.v. 24 h後の組織分布 ④リンパ系を介する回収の欠如 http://www.nanocarrier.co.jp/ Maeda et al, Adv. Drug Deliv. Rev. 46:169-185 (2001) 38 EPR効果と昇圧療法 アンジオテンシンⅡを含有する注射剤・デリバート静注用による昇圧化学療法 (Induced Hypertention Chemotherapy:IHC) スマンクスの昇圧療法 Nagamitsu et al, DDS, 22, 510, 2007 アステラス製薬の製品情報より アンジオテンシンⅡ含有注射剤・デリバート静注用による昇圧化学療法は、腫瘍組織と正常 組織のアンジオテンシンⅡに対する微小循環の機能的差異を利用して、腫瘍組織へ抗がん 剤をより高率に到達させ、胃癌に対する化学療法の治療効果を増強させることを目的としたド ラッグデリバリーシステムとして期待されています。 http://med2.astellas.jp/jp/ 39 リポソーム (liposome) Doxil®:アドリアマイシン封入PEGリポソーム EPR効果(高分子が、より多くがん組織に透過・移行) AmBisome®:アムホテリシンB封入リポソーム 大日本住友製薬 http://ds-pharma.jp/ 40 外部からの誘導・活性化 標的に選択的に作用する物質を用いる試み、腫瘍部位でのみ血流を上昇させ選択 的に抗癌薬を腫瘍に送り込む昇圧化学療法や血液脳関門を浸透圧ショックで開かせ る方法のように、外部からの刺激に対する生体側の特異的な反応を利用する方法。 あるいは、磁気、熱(熱感受性リポソーム)、レーザー光、超音波など外部からの物 理的な力により標的での薬物挙動を制御可能。 熱感受性リポソーム 局所温熱療法 (ハイパーサーミア) との組合せ 41 肝動注化学療法 リザーバー付カテーテルを鎖骨下動脈や大腿動脈から肝動脈に 挿入し、皮下に埋設したリザーバーから抗癌薬を注入する治療法。 抗癌薬を肝動脈より動注するため、静脈内投与した場合の10倍以 上の抗癌薬濃度が得られ、高い抗腫瘍効果が期待できる。 ※ 塞栓・持続放出 全身への副作用が軽減できる。 薬物キャリアー:化学塞栓 ※ 生体内分解性 マイクロカプセル、リピオドール、リポソーム など 副作用・合併症 嘔気、食欲不振 消化性潰瘍 白血球減少 血小板減少 肝予備能悪化 腎障害 カテーテル感染 ポート留置部血腫 カテーテル閉塞 肝動脈閉塞 脳塞栓、一過性脳虚血 北海道消化器科病院 http://www.hgh.or.jp/ 42 腫瘍内直接注入の最新状況 ゲル製剤 IntraDose® – 5-FU or cisplatin/epinephrine 肝癌、膵癌 Lancet 4: 199 (2003) ゲル製剤 OncoGel® – paclitaxel 皮膚癌 Anticancer Drugs 18: 283 (2007) 直接注入の利点: ・投与の正確さ ・病巣への十分な分散 ・高い病巣薬物濃度 ・副作用の低減 Implant Liver – doxorubicin 肝癌 J. Biomed. Mater. Res. 81A: 205 (2007) カテーテル – 5-FU etc 肺癌 Lung Cancer, in press (2008) 高分子ミセル – cucurbitacin 黒色腫 Int. J. Pharm. 347: 118 (2008) ナノカプセル – doxorubicin 固形癌 Eur. J. Pharm. Biopharm. 65: 300 (2007) J. Pharm. Sci., 97: 1681 (2008) 43 腹腔内注入:腹膜転移形成の機序 ① 腹膜面への進展・ 露出 ② 腹腔内への剥離・ 脱落 ③ 腹腔内への移動・ 生存 ④ 腹膜面への接着・ 浸潤 ⑤ 着床部位での増 殖・血管新生 腹膜転移 → 消化器外科手術の根治 性を妨げる最大要因 Cancer Sci. 98: 11 (2007) 44 腹腔内注入:実際の手法 Int. J. Gynecol. Cancer, 17: 1 (2007) Clin. J. Oncol. Nursing, 11: 881 (2007) 45 腹腔内注入:使用される抗癌薬 Int. J. Gynecol. Cancer, 17: 1 (2007) Cancer Res. 49: 3380 (1989) 46 腹腔内注入:臨床試験の現状 ASCO 2006 ハイライト 組織学的に漿膜浸潤がんと診断された進 行胃がんに対する低浸透圧性シスプラチン 腹腔内投与法は5年生存率を大きく改善する ―無作為化第III相試験:山陰共同腫瘍学グ ループ(SCOG)研究 SGC3― Int. J. Gynecol. Cancer, 17: 1 (2007) http://www.medical-tribune.jp/congress/asco2006/ 47 腹腔内注入:DDS製剤の利用 デキストラン結合体 MMC 癌性胸腹水患者 Drug Delivery System 2: 134 (1987) 活性炭 MMC 胃癌患者 Lancet 14: 339 (1992) 水酸アパタイト carboplatin 癌性腹膜炎モデル Drug Delivery System 14: 185 (1999) マイクロカプセル cisplatin 担癌モデル J. Control. Rel. 80: 295 (2002) PEGリポソーム doxorubicin 担癌モデル Toxicol. Lett. 116: 51 (2000) Drug Delivery System, 22: 522 (2007) Doxil®:アドリアマイシン封入PEGリポソーム 48 新しい投与形態による癌治療の最前線(ビデオ) 米国国立がん研究所 NCI:http://www.cancer.gov/ NHKスペシャルより 隔離灌流治療(2:30) 奥野哲治先生(クリニカET) 血管内治療(2:36) http://www.etclinica.com/ http://www.tbs.co.jp/yumetobi/backnumber/20070121.html 49 隔離灌流治療:癌治療の最前線 50 血管内治療:癌治療の最前線 51 隔離灌流治療の治療成果1 Pingpank, ・・・, Alexander et al, J. Clin. Oncol., 23, 3465, 2005 52 隔離灌流治療の治療成果2 Pingpank et al, J. Clin. Oncol., 23, 3465, 2005 53 隔離灌流治療の治療成果3 参考スライド Pingpank et al, J. Clin. Oncol., 23, 3465, 2005 Grover A, Alexander HR Jr.: The past decade of experience with isolated hepatic perfusion. Oncologist, 9, 653, 2004. 54 動注の優位性の検証1 Scheme of two-compartment physiological model Vs plasma Cs systemic Qs Ct Vt target organ Et rest <i.v. constant infusion> dCt Vt Q t Cs Q t Ct CLt Ct dt Q t Cs Q t Ct CLt Ct 0 dCs Vs Q t Ct Q t Cs CLs Cs k 0 dt Q t Ct Q t Cs CLs Cs k 0 0 local <i.a. constant infusion> Qt 定常状態 k0:注入速度 dCt Vt Q t Cs Q t Ct CLt Ct k 0 dt Q t Cs Q t Ct CLt Ct k 0 0 dCs Vs Q t Ct Q t Cs CLs Cs dt Q t Ct Q t Cs CLs Cs 0 CLs Daemen et al, Adv. Drug Deliv. Rev., 6, 1, 1991 55 動注の優位性の検証2 局所注入による病巣部位薬物濃度の上昇 →強力な抗腫瘍活性 初回通過効果による全身への薬物流出の抑制 →全身における副作用軽減 Kinetic advantages of i.a. target-organ infusion vs systemic iv infusion in rat systemic regional advantage advantage Drug cleared by the target organ Hippuric acid in the kidney (high extraction ratio) EDTA in the kidney (low extraction ratio) Acenocoumarol in the liver (low extraction ratio) 0.2 0.7 0.8 1.0 1.1 1.0 Drug not cleared by the target organ Kidney (high flow organ) Propranolol (high systemic clearance) Acenocoumarol in the liver (low systemic clearance) 1.0 1.0 2.0 0.9 Testis (low flow organ) Acenocoumarol in the liver (low systemic clearance) 1.0 15 Brain via CSF (low flow organ) Propranolol (high systemic clearance) 1.0 100-300 Daemen et al, Trends Pharmacol. Sci., 9, 138-41, 1988 <systemic advantage> Cs, ia 1 Et Cs, iv <regional advantage> Ct , ia CLs 1 Ct , iv Qt 56 新規投与形態の進歩 標的指向化の最も簡便な方法は、病巣に対する薬物の直接投与で、最近では腹腔内視鏡、超音波診断 装置や経動脈カテーテル法の利用など、種々の医療技術を用いて様々な部位に薬物を直接投与すること が可能。 動注療法 腹腔内視鏡 57 肝臓表面からの吸収を利用した新規投与形態の開発 Proposed drug distribution in the liver Diseased region Liver surface application Normal route 薬物吸収メカニズムの解明 薬学雑誌, 123: 681-689 (2003) 局所ターゲティング能の評価 臨床応用するための吸収制御 他の臓器への応用、投与形態の比較、遺伝子デリバリー 58 Concentration (µg/g liver) Liver concentration of PSP at 30 min after application to liver surface (LSA) or i.v. administration in rats 60 50 ■:Site 1 ■:Site 2 ■:Site 3 † ** 40 30 Site 3 Site 1 Nishida et al, Pharm. Res., 22, 1331, 2005 Site 1: 投与部位(拡散セル直下) Site 2: 投与部位以外の外側左葉 Site 3: 非投与葉 20 10 Site 2 * 0 LSA 30 min i.v. 30 min *p < 0.01, **p < 0.001, vs. site 3 †p < 0.001, vs. site 2 FD-70の実体蛍光顕微鏡による観察 (拡散セル内に投与、2 hr後) 59 遺伝子デリバリーへの応用 Luc cDNA BGH pA CMV promoter f1 ori pCMV-Luc SV40 ori 7.1 Kb.p. Neor r Amp Col E1 実体蛍光顕微鏡による観察 SV40 pA カテーテル(SURFLO®) 内径 0.60 mm 外径 0.85 mm Kawakami et al, BBRC, 294, 46, 2002 皮膚 薬液 肝臓 腹壁 Hirayama et al, Pharm. Res., 20, 328, 2003 現在の検討項目 移行・発現メカニズム、テーラーメイド型 60 長崎大学薬学部HP http://www.ph.nagasaki-u.ac.jp/ ご清聴ありがとうございました プレゼンファイルのDL 薬剤学研究室HP http://www.ph.nagasaki-u.ac.jp/lab/dds/index-j.html 61
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