臓器表面からの吸収を利用した新規投与形態における 臓器内局所への

臓器表面からの吸収を利用した新規投与形態における
臓器内局所への薬物ターゲティング能の評価
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○西田 孝洋 、川上 茂 、向 高弘 、藤原 里恵 、児玉 幸修 、亀之園 学 、
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堀本 知美 、中村 純三 、中嶋 幹郎 、佐々木 均 、栄田 敏之
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長崎大・薬
長崎大・医・病院薬剤部
神戸大・医・病院薬剤部
EVALUATION OF DRUG TARGETING ABILITY TO THE LOCAL ORGAN SITE BY
A NEW ADMINISTRATION UTILIZING ABSORPTION FROM ORGAN SURFACE
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Koyo NISHIDA , Shigeru KAWAKAMI , Takahiro MUKAI , Rie FUJIWARA , Yukinobu
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KODAMA , Manabu KAMENOSONO , Tomomi HORIMOTO , Junzo NAKAMURA ,
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Mikiro NAKASHIMA , Hitoshi SASAKI and Toshiyuki SAKAEDA
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2)
School of Pharmaceutical Sciences, Nagasaki University, Department of Hospital
3)
Pharmacy, Nagasaki University School of Medicine, Department of Hospital Pharmacy,
School of Medicine, Kobe University
【 目 的 】 薬物の腹腔内臓器への標的指向化、
滞留性の向上および副作用の軽減を目的とし
て、我々は新規投与部位として臓器表面に着目
した。これまでに、臓器表面からの薬物吸収メ
カニズムを最初の段階で明らかにし(1-4)、さら
に臨床応用可能な投与形態として開発するた
めの製剤学的な基礎的検討を行った(5-8)。
そこで本研究では、生体内で中枢的な役割を
果たしている肝臓および腎臓の臓器表面から
の吸収を利用した投与形態における、薬物の局
所ターゲティング能に関して、肝臓あるいは腎
臓表面より吸収された薬物の臓器内分布を速
度論的に評価した。低分子性および高分子性モ
デル薬物として、phenol red および FITC-dextran
をそれぞれ用い、さらに癌化学療法への本投与
法の応用を目的として、抗癌剤 5-fluorouracil を
選択し、様々な角度より検討した。
【 方 法 】 Pentobarbital 麻酔下、Wistar 系雄性
ラットの肝臓外側左葉あるいは右腎臓表面に、
吸収部位を限定させるために、円筒状のガラス
製拡散セル(内径:6, 9 mm、適用面積:0.28, 0.64
cm2) を外科用アロンアルファで装着した。
等張リン酸緩衝液に溶解させた薬物 (PR:
phenol red; FD-4: FITC-dextran, Mw 4,400; 5-FU:
5-fluorouracil)を拡散セル内に投与し、血液、胆
汁および尿を経時的に採取した。一定時間後、
拡散セル内に残存する薬液を回収し、各種臓器
を摘出した。肝臓および腎臓については、いく
つかの部位に分け、薬物濃度を測定した。対照
として、静脈内投与による同様の検討を行った。
PR は分光光度法、FD-4 は蛍光光度法、5-FU
では HPLC-UV 法を用いて、各薬物濃度を測定
した。
【結 果 ・考 察 】
1.肝臓表面投与後の薬物の局所肝臓移行動態
肝臓表面へ PR (1 mg)および FD-4 (5 mg)を投
与し、拡散セル直下(投与部位)の site 1、投与部
位以外の外側左葉の site 2 および非投与葉の site
3 における肝臓内各部位の濃度を測定した。site
1 における PR および FD-4 の濃度は、site 2 お
よび site 3 と比較して有意に高く推移した。一
方、静脈内投与後、肝臓内各部位の濃度は同程
度で、部位差は認められなかった。
肝臓表面投与した場合、site 1 における PR と
FD-4 の AUC は、血漿中の AUC よりもはるか
に高い値を示しており(Table 1)、肝臓表面投与
法による薬物の投与部位近傍での高いアベイ
ラビリティーが示された。さらに 5-FU におい
ても、肝臓表面から吸収され、site 1 へ高度に分
布した。
Table 1 Ratio of AUC until 360 min of PR and
FD-4 after application to the liver surface (LSA)
or i.v. administration in rats.
PR
ratio
FD-4
LSA
i.v.
LSA
i.v.
site 1/site 2
6.6
site 1/site 3
9.6
site 1/plasma 16.5
1.0
1.1
4.5
4.8
4.5
21.1
1.0
1.0
1.5
2.生理学的モデルによる薬物の肝臓内局所動
態のシミュレーション 肝臓表面投与法によ
る肝臓内局所への薬物ターゲティング能を生
理学的モデルに基づいて速度論的に評価する
ため、肝臓内各部位からの PR の消失速度定数
を実験的に求め、各種クリアランスを誘導し、
3.腎臓表面投与後の PR および FD-4 の尿中排
泄および腎臓移行 PR 1 mg を右腎臓表面に投
与後、左右の尿管より尿を採取し、左右腎臓か
らの尿中排泄量と腎臓中濃度を比較した。未変
化体の PR の右腎臓からの尿中排泄量は有意に
多く、投与後初期において右腎臓に顕著な PR
の蓄積が認められた。したがって、片方の腎臓
表面へ投与することにより、PR の高い投与部
位選択性が示された。静脈内投与後の PR の尿
中排泄量および臓器中濃度は、左右の腎臓でほ
ぼ同等であった。
一方、FD-4 1 mg を右腎臓表面へ投与した場
合、尿中排泄量は左右でほぼ等しい値を示した。
腎臓表面投与後の臓器中濃度も、左右の腎臓で
有意な差は見られず、選択的移行性は低かった。
尿細管分泌を受ける PR と糸球体ろ過される
FD-4 の排泄過程が異なるため、両者の腎選択的
移行性に差異が認められたと考えられる。
4.5-FU の体内および腎臓内動態制御 抗癌剤
のモデルとして、5-FU 5 mg を右腎臓表面へ投
与した。右腎臓中の 5-FU 濃度は、左腎臓およ
び他臓器より高い値を示し、右腎臓からの 5-FU
尿中排泄量は、左腎臓と比較して顕著に多かっ
た。また血中濃度は、静脈内投与に比べ、腎臓
表面投与では低い値を維持した。
さらに、腎臓を腎門中央より半分に分け、投
与側の拡散セル直下(site 1)、それ以外の投与側
(site 2)、非投与側の拡散セルの下(site 3)、それ
以外の非投与側(site 4)の 4 つの部位に分割し、
それぞれの 5-FU 濃度を測定した。静脈内投与
では均等に 5-FU が移行したものの、腎臓表面
投与では、site 1 での 5-FU 濃度は、site 2, 3, 4
および左腎臓と比較して極めて高い値で推移
した(Fig. 1)。したがって、腎臓表面投与により、
5-FU を腎臓内局在的に送達できる可能性が示
された。
Renal concentration (µg/g)
肝臓表面投与時における PR 分布をシミュレー
ションした。肝臓内各部位および血漿中の PR
濃度のシミュレーションカーブは、実測値と同
様に、site 1 の PR 濃度が、site 2、site 3 および
血漿中の PR 濃度に比べはるかに高く推移した。
したがって、種々の条件下における薬物肝内分
布が、生理学的モデルにより予測できる可能性
が示された。
20
15
10
5
1
0
1
0
1
1
1
30
60
90
120
Time (min)
Fig. 1 Renal concentration of 5-FU in each
site after application to rat right kidney surface.
Key: Site 1 (●), site 2 (◇), site 3 (△), site 4
(▽), left kidney (×).
【 結 論 】 臓器表面投与により薬物が投与部
位近傍に高濃度で分布する可能性が明らかと
なり、ゲノム製剤などの投与経路拡大への臨床
応用が期待される。
[ABSTRACT] We have proposed the organ surface as a novel application site of drugs, and elucidated the
absorption mechanism from the organ surface. In the present study, we examined the drug distribution after
application to the rat liver and kidney surface and evaluated possibility of site-selective drug targeting to the
organ. We selected phenol red (PR), FITC-dextran (FD-4, Mw 4,400), and 5-FU as model drugs. The
concentration of the model drugs at the administered site after application to the rat liver surface was
significantly higher than those in the other two sites. In addition, the concentration of PR and 5-FU in the right
kidney after application to the rat right kidney surface was high compared with that in the left kidney, although
no significant difference was observed in FD-4. A similar tendency was observed in the urinary excretion rate.
Moreover, selectivity advantage of the organ surface application was proven kinetically based on the
physiological model. Consequently, drug application to the organ surface could improve availability in the
desired site of a new drug such as genome medicine.
[References] 1) K. Nishida et al., J. Pharm. Pharmacol. 46, 867 (1994). 2) K. Nishida et al., J. Pharm.
Pharmacol. 47, 227 (1995). 3) K. Nishida et al., Biol. Pharm. Bull. 18, 1548 (1995). 4) K. Nishida et al.,
J. Drug Targeting 4, 141 (1996). 5) K. Nishida et al., J. Pharm. Pharmacol. 49, 976 (1997). 6) J. Nakamura
et al., Biol. Pharm. Bull. 22, 713 (1999). 7) K. Nishida et al., Eur. J. Pharm. Biopharm. 50, 397 (2000).
8) K. Nishida et al., J. Pharm. Pharmacol. accepted.