現代物理学概論II 講師 1.石川健三 2.大川房義 3.加藤幾芳 4.山本昌司 講義予定 • • • • • • • • • • • • • • • • 2011年 1学期の講義予定 月 日 副題 講師 1(4月14日) 入門+ガイダンス (石川健三) 2(4月21日) 物質の変換と+エネルギー (石川健三) 3(4月28日) 素粒子間の力と原子力エネルギー (石川健三) 4(5月12日) 素粒子物理 (石川健三) 5(5月19日) 物性の物理:対称性とその破れ (大川房義) 6(5月26日) 物性の物理:対称性とその破れ (大川房義) 7(6月2日) 原子核発見100周年:原子核物理の課題 (加藤幾芳) 8(6月9日) 核エネルギーと人類 (加藤 幾芳) 9(6月16日) 放射線の科学 (加藤幾芳) 10(6月23日)核反応の物理と応用 (加藤幾芳) 11(6月30日)物性の物理:自然現象から人類の営みまで (山本昌司) 12(7月7日) 物性の物理 :相互作用と相転移 (山本昌司) 13(7月14日)物性の物理:環境問題に挑戦 (山本昌司) 14(7月21日)物性の物理+物理の歴史 (大川房義) 授業の目標 科学技術リテラシーとして、現代物理学の 基礎から最先端分野までの展開、現代物理学 の成果が社会に活用されている状況を紹介し、 物理学のおもしろさ、重要さ、そして自然の 仕組みを理解する。特に、現代社会で重要な 役割を果たすエネルギーや環境問題について、 幅広い観点で原子力エネルギーまで含めて論 ずる。 到達目標 現代物理学の基礎から最先端科学のトピッ クスの知識を修得し、それが科学的、文化的 にどのような意味をもつのかを考える。また、 物理学が私達の生活にどのように関与して いるかについて考察する。特に、 原子力、原 子力発電、環境問題、大地震・大津波、また これらによって引き起こされた原発事故に関 する物理を通して、科学の役割を理解する。 物理学の二つの側面 1 1 自然の認識(考え方)の基礎 力学、電磁気学、熱学、統計力学 量子論、相対論 運動の法則:ニュートン 物体の運動で、加速度は力に比例して、質 量に反比例する。 新たな概念:質量、力 物理学の二つの側面 2 2 最先端科学・技術の礎でもあり、“frontier” としての担い手でもある。 電気、電子、半導体、エネルギー、 素粒子、原子核、宇宙、--- 電子:陰極線(ガイスラー)、電荷(ミリカン)、 電磁波:電磁誘導(ファラデイ、マックスウェル) 物性理論 統計理論 原子核理論 強相関電子物性 磁性 素粒子論 高温超伝導 宇宙理論 低次元物質 極低温物性 宇宙観測 光物性 複雑系 現代物理学 • 物理学の柱 I 古典物理学 力学、電磁気学、熱力学、統計力学 II 現代物理学 量子力学、相対論 物理学科では何を学ぶ? 電磁気学 解析力学 熱力学 量子力学 物理数学 演習 外国語文献講読 素粒子物理学 統計力学 原子核物理学 相対論 物性物理学 物理数学 物理学実験 宇宙物理学 卒業研究 正しい自然観 力学 • ニュートンの運動法則 1 慣性の法則 2 物体の質量(M)x加速度(A)=物体に働く 力(F)、MA=F 3 力の作用と反作用 すべての物体は固有の質量をもつ。 力は、物体に運動を引き起こす原因となる。 電磁気学 • 電荷をもつ物体の間には、電荷に比例して距 離の2乗に反比例する大きさで、両電荷を結 ぶ方向の力が働く。 • 電流間には、電流の積に比例しほぼ距離の 2乗に反比例する大きさの力が働く。方向は、 ベクトル積で決定される。 • これらの力は、電場や磁場によって引き起こ される。また、磁場の時間変動は電場の働き をし、電場の時間変動は磁場の働きをする。 熱学・統計力学 • すべての物体は、非常に小さな原子、分子等 の集まりから構成されている。 • 温度はこれらのランダムな運動の程度を表わ す。熱量は、温度変化を引き起こす原因とな るが、力学的なエネルギーと等価である。 原子論 (i)すべての物質は、小さな基本的な物質の構 成要素である原子からできている。 (ii)物質の性質の多くは、原子論から理解するこ とができる。 例: 気体の法則 PV=nRT、熱力学の法則 多様な物質の存在、電磁気現象、他 (iii)物質の生成、変換、崩壊する物質 原子論の進 展 水素原子の質量 水素原子は1モルで1グラムである。1モルは、アボ ガドロ数(6x10^23)の原子からなるので、一個の 水素原子は、1/6x10^23=1.6x10^(-24)グラムである。 水素は、電荷が+|e|の水素原子核が中心にあり、電 荷が-|e|の電子が周りを回っている。 陽子の質量は、電子の質量の約2000倍である。 エネルギー・質量の換算 陽子質量 m 静止エネルギー 量子論 ミクロな世界は、粒子性と波動性を併せ持つ複 素ベクトル空間で表わされる。 複素波動関数が基本的な方程式であるシュ レーデインガー方程式に従い時間発展する。 波動関数は、決まった方程式に従うが、物理状 態を観測すると、事象は、確率的に発現する。 確率は、波動関数の大きさで決定される。 1 光は波か粒子か? (i)光は、波である。 干渉や回折現象を示す。 Youngの2重スリットの実験 ニュートン・リングの干渉縞 (ii)光は粒子である。 1個、2個、3個、のエネルギーや運動量 光電効果、黒体輻射 (i)光は波である (ii)光は粒子である 光が素過程で持つエネルギーは、振動数に 比例する。(波としての強度ではない) E=h(振動数);h プランク定数 6x10^{-27}エルグ秒 光電効果 光が金属中の電子と衝突して、電子が外にはじき出される 1.電圧ー電流特性 2.光の振動数と最低電圧(電子の運動エネルギー) 光電効果のまとめ 一個の光のエネルギーが一個の電子のエネル ギーに変換された。 電子エネルギー=光のエネルギー ー W 光のエネルギー=h(振動数) W=仕事関数(金属で決まっている) 電荷と光の相互作用(電磁相互作用) 光 • 光は、 マクロな世界で波であるが、 ミクロな世界における素過程では、波と粒子 の両性質を併せ持つ。ーー量子力学 Wheeler‘s Classic Delayed Choice Experiment (波動性と粒子性の共存) 相対論 • 時間と空間は別個のものではなく、等速度で 運動する観測者からみた時刻や空間座標は、 静止した観測者から見た時刻と座標で決定さ れる。 • 光の速度は、いかなる観測者からみても同じ 大きさである。 質量の換算 陽子質量 m 静止エネルギー エネルギー保存則 • エネルギーは、一定に保たれる。 1. 力学的エネルギー =位置エネルギー + 運動エネルギー 物体を落下させると、大きな速度をもつ。 2.熱量+力学的エネルギー 化石燃料が燃焼すると、熱が生ずる。 3.物質の変換 質量が変化すると、エネルギーが生成される。 エネルギーの生成と変換 • 位置エネルギーの変化:落下 • 化学エネルギーの変化:燃焼 • 質量の変化: アルファ、ベータ、ガンマ崩壊、 核分裂、核融合 電気エネルギー:電流と電圧 2 電磁波と光 • 電磁波 波長 エネルギー 電波 10^{-4} m 以上 赤外線 10^{-5} m eV 可視光 10^{-7} m 紫外線 10^{-8} m X線 10^{-9}-10^{-12} m keV ガンマ線 10^{-12}m以下 MeV以上 2-1 ミクロな世界における電磁波 黒体輻射 熱された金属はなぜ赤色や黄色に輝く か? 物質の熱エネルギーが、光のエネルギー に変換される。 暗闇にいる犬の赤外線カメラ像 温度 T 気体の温度がTKであるとき、気体分子は 平均エネルギー E(平均)=3/2 kT(k:ボルツマン定数)、 分布関数 P(E)=e^(-E/kT) をもつ。 k=8.61x10^{-5} eV/K 2-2 温度と光(電磁波) 電荷を持つ物体の衝突の素過程では、光が生 成される。 A+B > C+D+光 光+A >光+C 光と電荷を持つ分子や原子は、衝突で熱平衡 になる。 光の平均エネルギーも “kT” になる。 光のエネルギーの分布関数は? 光の熱平衡状態? • A+B > C+D +光 当初光は存在しなくても、AやBが電荷をもつな らば、電荷と光の相互作用により、熱平衡状 態には、光がたくさん含まれる。 (光の数は保存しない) 温度が高いほど、光のエネルギーも高く、個数 も多い。 2-3 黒い壁に囲まれた温度 T の空間 壁を作る原子や分子は、電荷を持つ原子核 や電子からできている。 壁の分子+壁の分子>壁の分子‘+ 壁の分子 +光 壁を、高い温度Tにすると内部は真空でも、 光が充満する。光の温度は、壁の温度と同 じになる。 2-4 熱した金属 黒体輻射と同じで、温度に応じた光を放射する。 放射される光の分布は、高い温度ほど高い エネルギーを持つ。 エネルギーは振動数に比例するので、高いエ ネルギーは、短い波長に対応する。 分布関数 ミクロな状態の光の性質で決まる。 光はボース・アインシュタイン統計に従う。 光のエネルギーは、光子のエネルギーと光子 の数の積できまり、光子のエネルギーは 振動数に比例する。 プランク分布 P(E)=1/(e^{hx振動数/kT}-1) プランク分布 プランク分布 P(E)=1/(e^{hx振動数/kT}-1) 6000 K 強度分布 vs 波長 太陽光 • 太陽表面で生成された光が、地球上まで伝 播してくる。 • 電磁波の形で、エネルギー(輻射エネル ギー)が伝播してくる。 • 太陽の内部では、いかなる機構で大きなエネ ルギーが生じているか?太陽は、何故燃え 尽きないのか?化石燃料の燃焼とは、異なる 機構で、エネルギーが生成されている。 天体で典型的な温度 宇宙開闢の頃 10^32 K 太陽中心 10^7 K 太陽表面 6000 K 宇宙の晴れ上がり 4000 K 星間雲 10-100 K 現在の宇宙背景放射 2.74 K ミクロな世界の特徴(量子力学) • 光は、波であると同時に粒子である。 • 電子も、粒子であると同時に波である。 ーーー> 1.電子は、干渉や回折を示す。 2.電子は、原子の構成要素であり、弦や波動 の特徴である固有振動モードをもって、とびと びのエネルギーをもつ。 電子の干渉(外村) 原子論の進 展 水素原子内の電子の固有エネルギー • En=- R 1/n^2 (n=1,2,3,--E1=13,6 eV • 酸素原子の固有エネルギー • 水分子(H2O)の固有エネルギー • En=複雑な式となる。とびとびの値、化学結 合エネルギー エネルギー保存則 1 力学 運動エネルギー+位置エネルギー=一定 物体(M)は高い位置(h)にある時、Mghの位置エネルギー をもつ。これが落下すると、 Mgh=1/2 M v^2--- v^2=2gh g = 9.8m/s^2-h=100mで v= 45m/s(秒速45m) ---> 毎秒1トンの水では、 --->W=1000x100x9.8=10^6ジュールの エネルギー 2 熱力学 • dU=-PdV+dQ‘ 内部エネルギーの変化 dU 圧力:P、 体積:V ー>PdV 体積変化の仕事 熱量 d‘Q • 熱量と力学的なエネルギーは同じ。1カロリー は、4.18ジュールである。 ジュールの実験(重力エネルギーを水の温度上 昇に換算) 3 様々な反応 • A+B--- C+D • 炭素(C)+酸素(O^2)2酸化炭素(CO_2) + 化学結合エネルギーの差 化石燃料や木の燃焼で、発生する熱を利用。 炭素と酸素を結合させる。 炭素と酸素は、安定な物質であるので、両物体を接しただけ では、化学反応は起きない。 高温にさせて両物体を接すると、化学反応が起き、さらに熱 を発生する。発生した熱が、つぎの化学反応を起こさせる。 この連鎖反応によりエネルギーが、生成されるのが燃焼 である。 分子や原子の結合エネルギー • ミクロな世界の固有(振動)エネルギー • 分子や原子がいかなる構成要素から成っているの か、に応じて決定される。 • 量子力学を使い、難しい計算を実行できれば、理論 的に値を求めることができる。 • 電荷間に働く電気的なクーロン引力によって、+電 荷とー電荷をもつ原子核と電子が束縛された状態 である。 水素原子の固有エネルギー E_n=-R (1/n^2) (n=1,2,3,--) 4 多くの種類の原子 • 原子は、原子核と電子の束縛した状態である。 原子核と電子は、電気的なクーロン力で引 き合う。 • さらに原子核は、陽子と中性子の結合した束 縛状態である。 陽子と中性子は、核力で引き合う。原子核 の固有エネルギーは、ミクロな世界の量子力 学で決定される。 化学エネルギー • 化学結合のエネルギーは、 おおよそ 数eV の大きさである。 5 原子核の2つの反応 1 崩壊反応 アルファー崩壊(核力)、ガンマ崩壊(電磁気力)、ベー タ崩壊(弱い相互作用) 1-1 ベータ崩壊の例: ヨウ素^{131} キセノン^{131}+電子+ニュートリ ノ 1-2 ガンマ崩壊の例: キセノン^{131}の励起状態-> 基底状態+ガンマ線 1-3 アルファ崩壊の例: 原子核の反応 2 • A+B C+D 核分裂 核融合 原子核のエネルギー準位 太陽内の核融合 • 陽子+陽子 ー> 重陽子+陽電子+ニュートリノ • 重陽子+陽子ー>ヘリウム(3)核+光 • ヘリウム(3)核+ヘリウム(3)核 →> ヘリウム(4)核+2 陽子 • 放出エネルギー= 25MeV ( E=mc^2 ) • ニュートリノ一個 MeV=10^6 eVは、化学エネルギーeVの約、10万倍 エネルギーの比較 水1分子当たり換算: 1.100m落下の重力エネルギー: 18x10^{-3}x9.8x100 J/mol=18 J/mol=2x10^{4}eV 2.摂氏10度温度上昇熱: 4.18x180 J/mol= 8x10^{-3} eV 3.蒸発熱:40kJ/mol= 0.4 eV 4.化学結合エネルギー: 10 eV 5.核の変化: MeV= 10^{6} eV 3 素粒子間の力と原子力エネル ギー • 現代原子論と4種類の基本的な力 1 2 3 4 重力(万有引力) 電磁気力(クーロン相互作用) 弱い相互作用 強い相互作用 この4つの力が、すべての変化の起源となってい る。身近な力(バネ、抵抗、抗力、筋力、-)は、 基本的な力ではなく、物質の効果で生成される。 原子論の進展 何故、このような分子、原子、 原子核、陽子(ハドロン)、等 ができているのか? これらの働く力は、すべて同じ か? 電磁気力と強い相互作用 第一の周期律表(1869)(原子) (メンデレーエフ) H Li Be B C N O F Na Mg Al Si. P S Cl K Ca Sc Ti V Cr ---- Ga Ge A Se Br Rb I Cs (略) Fr ----1 He Ne Ar Kr Xe Ga,Ge :当初は未確認でメンデレーエフが予言した。 原子の構造 重い原子核(正電荷)と軽い電子(負電荷) 原子核 H 水素原子核 He ヘリウム核 LI リチウム核 Be A ひとつの核 (電荷) +1 +2 +3 +4 電子 1 2 3 4 +A A (電荷) -1 -2 -3 -4 -A すべての原子核は陽子と中性子から構成 例: 一人の人体(60Kg) 中での陽子数、中性子数、電子数 質量組成比 個数 水素 49% 炭素 25% 酸素 25% 陽子数(電子数) 1x10^28 中性子数 10^28 第二の周期律表(1960)(バリオン、中間子) • 陽子や中性子の沢山の同類(仲間) 中性子 シグマ(ー) シグマ(0) ラムダ グザイ(-) 陽子 シグマ(+) グザイ(0) • 陽子、中性子、シグマ、ラムダ、グザイは 3個のクォークから構成 SU(3)群 • 第三の周期律表 (1970-) クォーク u c t d s b と レプトン ニュートリノ e e SU(2)xU(1)xSU(3)ゲージ理論 3 自然界の4つの力 • 電磁気力 光 (光子) 電荷間や電流間の力 電磁場 • 弱い相互作用 ウィークボソン (W、Z) ベータ崩壊 • 強い相互作用 グルーオン (gluon) 核子内のクオーク間の力や核力 • 重力相互作用 重力子 万有引力 電磁気力と重力 • 距離の2乗に反比例する大きさ x電荷の積または質量の積に比例 電磁気力 原子核と電子間の力 ー ー 原子、分子を構成 する起源 重力 太陽と惑星の間の力ー ー 太陽系、銀河、等を 構成する起源 電磁気力の特徴 • 距離の二乗に反比例する。 • 同符号の電荷間で斥力、異符号の電荷間で引力で ある。 • 電荷だけで力は決まり、物質の詳細に依存しない。 • 物質の電荷は、e(電子の電荷)の整数倍である。 • 電荷の周囲には電場が、電流の周囲には磁場がで きている。電場や磁場の振動が、電磁波であり、空 間を伝播する。 “光が電磁気力を媒介している”とは? 1.もしも光が存在しなかったら、荷電粒子は自由運動 をする。 2.電場・磁場がなければ、力が働かない。 3.荷電粒子の運動を急激に変化させると、 光(電磁波)が放射される。 4.電場・磁場の時間・空間振動が、電磁波 (光)である。(マックスウェル方程式) つまり、“ 場が力を媒介し、場の振動が光である。” 水素原子の固有エネルギーと線スペクトル E_n=-R (1/n^2) (n=1,2,3,--) 弱い相互作用と強い相互作用 短距離で,素粒子に働く力( 10^{-15}m ) • 強い相互作用 (閉じ込め) 原子核の内部で、核子間に働く引力 クォーク間に働いて核子や中間子を構成する • 弱い相互作用 (重い弱ボソン) 物質の崩壊の起源 例 :ベータ崩壊 起源 強い相互作用 • 原子核は、10^{-15}mの大きさであり、陽子と中 性子が結合した束縛状態である。 • 力は、近距離でV(r)=Ve^{-m r}/r(湯川型ポテ ンシャ ル)、m=140MeV(湯川中間子) • 核力は、中間子が媒介にしている。 • 核力によって陽子や中間子が束縛した状態が、原 子核であり、沢山の基底状態や励起状態がある。 • 強い力で、また近距離力であるので、励起エネル ギーは、大きい(MeV) KeV 質量数131の原子核(陽子数+中性子数=131) 核力や中間子の現代的描像 • すべてのハドロン(核子、中間子)はクオークと反クオー クから構成されている。力は、グルーオンによって引き 起こされる。ゲルー(のり)オンが、新たな力を与える場 である。 • 陽子(qqq; uud) • 中性子(qqq; ddu) • パイ中間子(湯川粒子)(q-反q; u-反d,d-反u,u反u-d反d) 等 • クオークや反クオークの入れ替えが、中間子を媒介にす る力となっている。 クオークと反クオークがグルーオンの力で 結合して中間子となる。 クオーク 反クォーク グルーオン 中間子 3クオークがグルーオンの力 で結合して陽子となる。 クオーク クオーク クオーク グルーオン 陽子 第二の周期律表(1960)(バリオン、中間子) • 陽子や中性子の沢山の同類(仲間) 中性子 シグマ(ー) シグマ(0) ラムダ グザイ(-) 陽子 シグマ(+) グザイ(0) • 陽子、中性子、シグマ、ラムダ、グザイは 3個のクォークから構成 SU(3)群 弱い相互作用 • 物質は、崩壊や変換を行う。これは、引き起こす力(相 互作用)が自然界にあるからである。 ベータ崩壊 中性子---> 陽子+電子+電子ニュートリノ ミュー--> 電子+電子ニュートリノ+ミューニュートリノ 原子核のベータ崩壊(2種類) A---> A’+電子+ニュートリノ(ベータ崩壊) A+電子--->A‘+ニュートリノ(電子捕獲) 電磁相互作用と弱い相互作用の例 電子 陽子 水素原子 光子 ミューニュートリノ ミュー ミュー崩壊 Wボソン 電子 電子ニュートリノ 弱い相互作用の起源 • 弱い相互作用は、弱ボソン(W,Z)によって引き起 こされる。 • WとZは、大きな質量をもつ(陽子の90倍)。 • W,Zは、重い光子の性質をもつ。 • W,Zは、弱電荷と普遍的に結合し、物質に依存しな い。ゲージ場として、振動し、伝播する。 • 弱い相互作用のために、物質の崩壊や変換が引き 起こされる。このさい、エネルギーが生成される。 • ベータ崩壊は、人工的に変えることは難しい。 ベータ崩壊 Aが崩壊する。崩壊先は、B,C,D,Eで ある。 どのモードに崩壊するか、確率はわかる。しかし どのモードに崩壊するのか、確率以上のことはわ からない。量子力学 多くのモードに崩壊する • 各モードへの崩壊確率が決まっている。 • すべての崩壊確率の総和は1である。 • 大きな分岐比のモードへの、崩壊確率が大きい。 • どのモードへ、崩壊するのかは、予め分からない。 確率だけが、わかる。 • 崩壊の平均寿命が分かれば、時間的な変化が分か る。指数関数的に、減衰する。 ベータ崩壊の様子(質量数131) 太陽内の核融合(3種の相互作用の結果) • 陽子+陽子 ー> 重陽子+陽電子+ニュートリノ • 重陽子+陽子ー>ヘリウム(3)核+光 • ヘリウム(3)核+ヘリウム(3)核 →> ヘリウム(4)核+2 陽子 • 放出エネルギー= 25MeV ( E=mc^2 ) • ニュートリノ一個 ニュートリノの歴史 • ベータ崩壊では、ニュートリノが生成される。 1 ベータ崩壊の発見 1896 ベックレル 2 ニュートリノ仮説 1930 パウリ 3 実験的存在証明 1953-1956 ライネス、 コーエン 4.空間反転の破れ 1957 リー、ヤン、ウ― 5.二つのニュートリノ 1962 6.ニュートリノ天文学 1987神岡(小柴他) 7 ニュートリノの質量と振動 現在 重力 • 万有引力(ケプラー、ニュートン、--) • 太陽系、銀河、宇宙等の大きなスケールにおける、 自然現象で、重要な働きをしている。 • ミクロな世界では、力の大きさは、電荷間の力よりも はるかに小さい。 • 電子と陽子の間の力では、約40桁小さい。 万有引力定数G • 万有引力の法則 G=6.6742(10)x10^{-11} m^3/Kg s^2 Gを精密に決定する方法はあるか? 銀河 質量は、力学的に決まる。 • 自然の成り立ちには、原因がある。 • 各素粒子の質量は、ヒッグス場によって決 まっている。 • その機構は?また実験的な検証は? • 宇宙には、ダーク・マター詰まっている。 • 次回のテーマ。 電荷 +2/3|e| ー1/3|e| 0 ー|e| 現代の素粒子 1 質量とは何か? (1)万有引力の法則: すべての物体間には、質量の積に比例し、距離の自 乗に反比例する万有引力が働く。(重力質量) (2)ニュートンの運動の法則 物体の加速度は、物体の質量に反比例し物体に 加わった力に比例する。(慣性質量) F=m a (3)多数の物体の質量は、各質量の和である。 M=m1+m2 質量について 1.合成系の質量は、各要素の質量の和である。 2.質量は不変か? 3.質量の起源は何か? 2.基本粒子と4種の基本的相互作用 • 基本粒子 それ以上分解できない粒子、すべての物質 の構成要素である。 • 基本的相互作用 それ以上分解できない相互作用、すべての 相互作用が導かれる。 基本的でない相互作用の例:摩擦の力、張力、 、垂直抗力、ばねの力、 • 素粒子の質量の和から物体の質量が決まる (1)有限の質量の素粒子 荷電レプトンとクォーク 電子 ミュウ タウ(τ) u,d,c,s,t,b クォーク、W、Zボソン (2)ほぼ零質量の素粒子(波) ニュートリノ (3)零質量の素粒子(波) 光子(電磁波)と重力波(重力場) 三世代の物質粒子 • 第一世代 電子、電子ニュートリノ、uクォーク、dクォーク • 第二世代 μ、μニュートリノ、cクォーク、sクォーク • 第三世代 τ 、τニュートリノ、tクォーク、bクォーク クォークレプトンの質量 陽子質量 電子質量 W,Zボソン 3 素粒子の崩壊と安定性 • 重い素粒子はベータ崩壊で軽い素粒子に崩 壊する。 • 重い素粒子は不安定であり、軽い素粒子は 安定である。 • 安定な素粒子: 電子、ニュートリノ、陽子(uud)、光子、 (ダークマター) 4:ニュートリノの質量の発見 • ニュートリノの質量は、極めて小さい M_ニュートリノ < M_電子/10^{6} • ニュートリノ振動実験 ()太陽の内部では核融合反応が進行中。 ニュートリノが生成され、約500秒かけて地 球に到達する。 () 原子炉内ではベータ崩壊によるニュートリノが 生成される。炉から200kmの距離にある 測定器で観測する。 ニュートリノの歴史 • • • • • • ベータ崩壊の発見 ニュートリノ仮説 実験的存在証明 空間反転の破れ 二つのニュートリノ ニュートリノ天文学 1896 ベックレル 1930 パウリ 1953-1956 1957 1962 1987神岡(小柴他) • ニュートリノの質量と振動 現在 ニュートリノの生成 SN1987A 超新星爆発 太陽 核融合 宇宙線の崩壊 大気ニュートリノ 加速器 素粒子の崩壊 原子炉 ベータ崩壊 ・ニュートリノの質量が有限であることが分かっ た。 • 太陽内の核融合 • 陽子+陽子 ー> 重陽子+陽電子+ニュートリノ • 重陽子+陽子ー>ヘリウム(3)核+光 • ヘリウム(3)核+ヘリウム(3)核 →> ヘリウム(4)核+2 陽子 • 放出エネルギー= 25MeV ( E=mc^2 ) • ニュートリノ一個 太陽ニュートリノの観測 (i)デイビス(1960年代) : ニュートリノが引き起こす化学反応を利用 :太陽のエネルギー生成機構から予想される ニュートリノ量の半分が観測された。 (ii)神岡チェレンコフ測定器(1980-2000年代) :太陽ニュートリノによる反応で生成される電 子を測定する。予想値の6割程度が観測 デイビスの実験 神岡実験(小柴、戸塚他) 太陽ニュートリノ欠損 電子 ニュートリノ 太陽 E= 数 Mev ミューオン ニュートリノ 地球 ミューニュートリノ は ミュー オン (m=100Mev/c^2)を生 成する 太陽ニュートリノの観測量が太陽理論よりも半分程度になっているのは、太陽内 で生成されたニュートリノが地球まで伝播する間に他のニュートリノに変換され た。 これから、ニュートリノの質量差が分かる。 ニュートリノの質量差 • (M1)^2ー(m2)^2=10^{-4}(eV/c^2)^2 • (m2)^2-(m3)^2=10^{-2}(eV/c^2)^2 • 質量の差が分かったが、質量の値はまだ分 からない。これからの問題である。 • 光や電子波の空間的な位相干渉と同様な ニュートリノ波の干渉はあるか? O ニュートリノを筑波で生成し神岡(岐阜)で観 測する O ニュートリノを柏崎で生成し、神岡で観測する 5:素粒子の質量 5-1特徴 • 軽いニュートリノと重い“t”クォークで 12桁 以上異なる。 • WボソンやZボソンは、陽子の約90倍の質量 をもち非常に重いが、光に近い普遍的な性質 を持つ。 • 但し、WボソンやZボソンは通常の電荷とは 別の弱い電荷と結合する。 • 同じ粒子が、質量がある場合(相)とない場合 (相)がある。 クォークレプトンの質量 陽子質量 電子質量 W,Z ボソン 5-2:質量の起源は何か? • 物理的な相の効果は、未知の場(ヒッグス場) による。 • 質量は未知の素粒子(ヒッグス粒子)が原因 である。 • 真空中ではヒッグス(場)粒子が凝縮している (超伝導や超流動のようになっている)。 • ヒッグス粒子を探す実験(LHC実験) が始まる。 2 質量は物理的な相の機構で決まり、 相の効果で質量が有限になる 高エネルギー粒子:一部反射 低エネルギー粒子: 完全反射 相 1 相 1(零質量) 相 2(有限質量) 南部陽一郎 相 2 LHC加速器 5-3 ヒッグス粒子探索 • LHC実験(CERN) ヒッグス粒子の発見 は? 質量の起源であるヒッグス粒子を探す 6.宇宙における質量 • ダークマターが宇宙に沢山存在する。 • 現在の素粒子標準理論では、ダークマターに なる粒子はない。新粒子か? 6-1 宇宙の始まりは超高温 6-2 宇宙の過去を覗く(WMAP) 温度の角度分布を角運動量で分解して表 示 宇宙はダークマター、ダークエネルギーが 占めている 6-3:銀河とダークマター 見えない質量(ダークマター)を見る • x星の運動 7.ダークマターと素粒子 • 電荷を持たない物質(ダークマター)が宇宙の 質量の大部分である。 • ダークマターが素粒子であるとしたら、未知の 素粒子である。 現代の素粒子 ダークマターは新たな素粒子? • 既存の素粒子には、ダークマターとなる素粒 子はない。 • ダークマターは、今まで見つかっていない、新 たな素粒子であろう。 8.まとめ • 現在、質量の起源となるヒッグス粒子がわか りつつある。 • なぜ、ニュートリノの質量が特異なのか?そ の絶対値は? • 質量の起源であるヒッグス粒子の探索がLHC 実験で始まる。 • 宇宙の起源や、構造で重要なダークマターは 新しい素粒子か?
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