不法行為法の効果 1.序 2.損害賠償の方法 3.損害賠償の主体と複数者の関与 4.損害賠償額の算定 5.損害賠償額の調整 6.損害賠償請求権の特殊問題 2.損害賠償の方法 不法行為の効果として、被 害者には損害賠償請求権 が発生する。 疑問点 • 加害者に損害賠償責任を負 わせることにどのような意味 があるのか。 • なぜ原状回復ではなく金銭 賠償なのか。 • 被害者救済とは何か。 損害賠償の方法 金銭賠償の原則 • 立法者の選択 貨幣経済の 社会では金銭によって損害 を測定するのが便宜である との理由から金銭賠償を原 則とする主義を採った(722条 1)。 • 原状回復 特約や特別規定 の無い限り認められない。 • 不法行為法の差止め 差止めの根拠 • 権利的構成と環境権的構成 3.損害賠償の主体と複数者の関与 損害賠償請求権の主体 自然人(1条ノ3) 胎児(721条) 法人 • 名誉毀損(710条) 複数の賠償主体が問題となる場合 生命侵害と遺族固有の慰謝料請求権 • • 711条の請求権者の範囲をどう考えるか 類推適用による範囲拡大 710条と711条の関係 被害者の死亡と遺族の保護 • 相続的構成と固有損害説の関係 – – • 固有損害説=慰謝料は一定の親近者に 固有の賠償請求権が認められている 相続的構成(判例)=被害者自身が損害 賠償請求権を取得し、それが相続人に承 継される。 慰謝料請求権の場合 – 相続的構成 – 時間的間隔説=致命傷を受けた とき死亡との間の間隔を認め、傷 害によって生じた損害賠償請求 権が瞬時に相続される。問題は 一身専属的な慰謝料請求権が意 思表示なしに相続される根拠。残 念事件。 – 当然相続説=被害者が死亡した ときは、相続人は当然に慰謝料 請求権を相続する。←問題多し。 • 財産的損害の場合 – – 立法者は固有の権利(扶養請求権)を侵 害されたことにより709条で賠償請求できる と考えた。 判例=死者の逸失利益の相続 治療費の賠償請求権者 間接被害者と間接損害 二つのアプローチ • • 賠償請求の主体の問題(間接被害者) 直接の被害者と一定の関係にあるものに 生じた損害そのもの(間接損害) 企業損害 • 相当因果関係説 4.損害賠償額の算定 損害の概念と賠償額の算定 財産的損害と精神的損害 • 差額説+個別積上方式 損害概念の意義 • • 差額説 具体的損失説 人身損害―┬財産的損害┬積極的損害(治療費等) │ └消極的損害(逸失利益) └精神的損害(慰謝料) 賠償額算定のあり方 逸失利益算定方法 中間利息控除法 • • • 単式ホフマン方式 複式ホフマン方式 大阪地裁 複式ライプニッツ方式 東京地裁 創造的・裁量的性格 賠償額算定の基準時 • 富貴丸事件 賠償額算定の具体例 人身事故被害者の救済 • • 生命侵害の場合 死傷損害説と賠償額の定額化 – • 傷害の場合 財産権が侵害される場合 精神的損害(非財産的損害)に対する慰謝料 • 慰謝料算定の特殊性 – • – • 算定が困難な故に、財産的損害のように算定 の基礎となる具体的資料や係数的根拠を示す 必要はなく、諸般の事情(被害の種類、程度、 当事者双方の社会的地位、職業、資産、加害 者の動機、態度)を斟酌して、妥当な額を判定 すれば足りる。←通説 慰謝料の補完的機能 賠償総額引き上げのための補完的機能ないし 調整的機能 制裁的慰謝料論 – クロロキン薬害訴訟の原告側の主張。後藤孝 典弁護士『現代損害賠償論』 弁護士費用の請求 • • 不当起訴への対応と不法行為に基づく損害賠償訴 訟請求提起 加害者に弁護士費用を賠償させるのが一般的な方 向 – 逸失利益=(死者の得べかりし年間収入X稼働可能年数]-生活費)-中間利息 西原理論、淡路理論、一括請求、一律請求、包 括請求 相当因果関係の範囲内 5.損害賠償額の調整 過失相殺 損益相殺 損害の発生・拡大に被害者の関 与があれば、その過失を斟酌し て加害者と被害者との間で損害 の公平な分担を図る制度(722条 2) 相殺される側の過失の定義 • 被害者の過失とは。 – 義務違反の程度が軽いもの (単なる不注意ないし怠慢)で も、過失相殺可能。責任能力 が無くても事理弁識能力が備 わっていれば足りる。 • 被害者側の過失とは。 – 被害者本人と身分上、生活関 係上、一体をなすとみられる ような関係にある者の過失は、 被害者側の過失として、過失 相殺の対象とすることができ る。 不法行為によって損害を被った 者が、反面では利益も得ている と解される場合は、被害者は、 その利益を控除したものについ てのみ賠償を請求できる。 相当因果関係にある利益が控 除対象となる。 6.損害賠償請求権の特殊問題 損害賠償請求権の性質 相続性、譲渡性、遅延利息(419 条、404条)、相殺の禁止(509条) 紛争解決後の損害の現実化 損害賠償請求権の消滅時効 短期の消滅時効3年 20年の除斥期間 不法行為法と契約責任と の関係 例:タクシーに乗っていたとこ ろ運転者の過失で傷害を受 けた場合には、不法行為責 任と契約責任のいずれも成 立する可能性がある。 請求権競合問題 1.請求権競合説(判例通 説) 2.法条競合説 3.規範統合説 中間利息控除算定式 1 ホフマン方式 ×A n1 1 ni ライプニッツ方式 1 ×A n n1 (1 i )
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