請求権競合論 1.請求権競合論とは 2.問題点1,2 3.学説の対立 4.請求権競合説 5.法条競合説 6.規範統合説 7.民事訴訟法における訴訟物論争 8.まとめ 請求権競合論とは 同一の事実について目的を同じくする別個の 請求権が併存すること どのような場合に起きるのか(代表的なもの) 債務不履行と不法行為 物権的請求権と契約上の請求権 不法行為と不当利得返還請求権 物権的請求権と不当利得 問題点1 請求権競合が起きた場合、 1.請求権者は、自己に有利な請求権を主張して もよいのか? 2.両方を主張できないのか? 3.一方だけを主張して敗訴した場合に,もう一方 を主張して改めて訴えを起こせるのか?(既判力 の問題) 問題点2 併存する請求権の間に差異がある場合(不法行為と債務不履行) 要件の違い 不法行為:①故意または過失②権利侵害(違法性)③損害 ④因果関係 債務不履行:①有効な債権の存在、②債務の本旨に従っ た履行がないこと、③損害 効果の違い 消滅時効期間:債務不履行では10年(167条1項)、不法 行為では3年または20年(724条) 相殺:不法行為に基づく債権では相殺禁止あり(509条) 間接被害者(遺族等)の慰謝料請求権:不法行為のみ (710・711条) 遅延損害金の発生時期:債務不履行では412条の区分に よる。不法行為は損害発生時 学説の対立 1.請求権競合説 判例・多数説 2.法条競合説 かつての有力説(川島武宣博士) 3.規範統合説 最近の有力説、様々なバリエーションがある 1.請求権競合説 要件・効果の異なる別個の請求権はそれぞれ 成立すれば、別個の効果を主張できる。 請求権が複数成立する場合,いずれを行使し てもよい。 債権者の自由、保護が厚い 制度的沿革がもたらしたもの 判例・実務では常識。多数説。 2.法条競合説 不法行為を一般法、債務不履行を特別法と考 え、「特別法は一般法に優先する」ことから、 債務不履行だけが成立する。 単に法条文上の競合が起きるだけ。 川島武宣「契約不履行と不法行為の関係につ いて---請求権競合に関する一考察」法学協 会雑誌52巻1-3号 有力法学者による主張により有力説となるが、そ の後支持は増えなかった。 3.規範統合説 新訴訟物理論 三ケ月章(訴訟法学者) 訴訟法からのアプローチ。請求権は、給付をもとめ得る法 的地位の存否の主張である。 請求権二重構造説 奥田昌道 請求権の存在と請求権の属性という二重構造。 請求権規範統合説 上村明広(訴訟法学者) 実体請求権は一つだけ成立 全請求権規範統合説 四宮和夫 統一的な構成要件を創出する。これまでの学説を包摂。 民事訴訟法における訴訟物論争 旧訴訟物理論(実体法説) 訴えにおいて主張されている実体法上認められて いる個々の権利が訴訟物 新訴訟物理論 個々の実体法上の請求権を包含した上位概念が 訴訟物 新実体法説 新訴訟物理論で「訴訟物」とされたものが実体法 上も請求権となる まとめ 実務では「請求権競合論≒訴訟物理論」は意 味をなさない。理論での争いにすぎない。 もっぱら「債務不履行と不法行為」の競合を扱 うが、私法全体で発生する問題。 民法と民事訴訟法の両方に架かる問題点。 規範統合説を基本とした、新たな理論が必要。 これは、民法の根幹にかかわる問題提起。
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