スライド 1

一般の不法行為
1.不法行為の成立
2.故意・過失
3.権利侵害ないし違法性
4.違法性をめぐる問題
5.違法性と過失の関係
6.責任能力
7.損害の発生と因果関係の存在
8.賠償範囲の画定
1.不法行為の成立 A  B
 第709条(不法行為による損害賠償)
 ①「故意又は過失によって」②「他人の権利又は法
律上保護される利益を侵害した」③「者は、」④「これ
によって生じた損害」を⑤「賠償スル責任」を負う。
①Bに故意又は過失があったこと。→故意又は過失
②Aの権利が侵害されたこと。→権利侵害
③Bに責任能力があること(712条,713条)→責任能力
④Aに損害が発生し、Bの加害行為との間に因果関係があ
ること。→損害発生の因果関係
⑤Aに生じた損害が、Bに賠償させるのが妥当と認められる
範囲に含まれていること。→賠償範囲の画定
新しい民法と古い民法での709条対比
新しい民法
第七百九条 故意又は過失によって他人の権利
又は法律上保護される利益を侵害した者は、これ
によって生じた損害を賠償する責任を負う。
古い民法
第七百九条 故意又ハ過失ニ因リテ他人ノ権利ヲ
侵害シタル者ハ之ニ因リテ生シタル損害ヲ賠償ス
ル責ニ任ス
2.故意・過失
 1.自己責任の原則
 2.故意と過失の関係
 故意・過失の異同
 過失の客観化とその理由
 3.過失概念の意義
 客観的義務違反
 過失概念の規範化の影響
 立法者の見解
 4.過失の法的構成
 結果回避義務と予見可能性
 過失の構成と被害者救済
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結果回避義務違反説
予見可能性説
心理状態説
 5.過失の基準
 抽象的過失と具体的過失
 信頼の原則と注意義務の配分
 取締法規と違反と過失
 6.過失を判断する3ファク
ター
 1.加害者の支配下にある行為に内在す
る損害惹起の危険性の大きさ
 2.被侵害利益の大きさ
 3.結果回避義務を課せられることによっ
て犠牲にされる利益
 7.故意・過失の立証
 立証責任の負担者
 過失の一応の推定
 立証責任の転換
3.権利侵害ないし違法性
 権利侵害の意義
 法文上の要件 「他人ノ権利ヲ
侵害シタ」
 法文からの乖離
 末川博『権利侵害論』→「権利
侵害から違法性へ」
 違法性説と権利拡大説
 違法性説
 権利概念にとらわれることなく、
違法性という法文にない概念を
用いて弾力的な解決をはかる。
 権利拡大説
 権利概念を拡大的に解釈(権利
の種別を増やす)して、保護範
囲を拡大する。
 違法性の判断基準
 二つの考え方
 1.権利侵害を違法性の徴表と見
る。
 2.相関関係説
 相関関係説
 違法性の判断において、被侵害利
益と侵害行為の態様とが相関的な
関係にあるものと考え、それに基づ
く比較衡量のあり方を定型的な枠組
みとして提示したもの。
 相関関係説の成果とその問題点
 成果
 侵害行為の態様を違法性判断要
素として積極的に取り入れたこと
にある。
 問題
 違法性と過失の混淆ないし融合
4.違法性をめぐる問題
 不作為による不法行為
 不法行為法上の意義
 他人の損害発生に積極的
に関与(作為)しなくても、
消極的態度をとった(不作
為)こと自体が、不法行為
になる場合。作為義務を前
提とする
 個人の自由と作為義務
 不法行為法上の帰責を考
える原点。
 違法性阻却事由(正当化事
由)
 意義
 他人の法益に対する侵害
行為があっても特別の事
由により不法行為が成立
しない場合。
 正当防衛と緊急避難
 正当防衛は「他人の不法
行為」、緊急避難は物とし
ての「危難の原因」。
 自力救済
 被害者の承諾
 正当業務行為
 社会的に相当な業務行為
5.違法性と過失の関係
 不法行為法の基本概念  不法行為法の構造
二つの基本概念
 違法性と過失
不法行為理論の変容
学説の対立
 過失一元説
 過失・違法性二元説 過
失→予見可能性、結果
回避義務→違法性
 学説の問題点と展望
 複眼的アプローチ
6.責任能力
 責任能力と責任無能力者
 不法行為によって他人に損
害を与えた者に損害賠償責
任を問うためには、その者
が、知能ないし判断能力に
ついて、最低限一定の能力
をそなえていることが必要。
 責任能力制度の説明方法
 過失との関連で説明
 政策的免責規定と説明
 行為者の違法性認識能力
と説明。
 責任無能力者の種別
 未成年者 責任弁識能力
 判例12歳あたり
 心神喪失者 責任弁識能力
7.損害の発生と因果関係の存在
 損害の発生
 損害の現実性
 英米法の名目的損害賠償は認
められない。
 損害=財産的損害、精神的損
害(非財産的損害、慰謝料)
 因果関係の意義
 相当因果関係の分析→加害行
為と相当因果関係にある損害が
賠償される。
 1.加害行為と損害発生との
間に、原因と結果の関係があ
るか。←純粋な因果関係の問
題
 2.賠償されるべき損害の画
定。
 3.金銭に算定する評価。
 事実的因果関係の分離
 因果関係の存否
 条件関係の有無(conditio sine
qua non)
 因果関係の立証
 立証責任は原告(被害者側)に
ある。
 医療過誤事件-ルンバール事件
 自然科学的証明でなく通常人が
疑いを差し挟まない程度の立証
 公害事件における蓋然性説
 コッホの疫学的証明の公害版
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1.因子の先行存在
2.両者間の高い関連性
3.医学的理論との整合性
4.量と反応の関係があること。
8.賠償範囲の画定
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序
 賠償範囲の画定と帰責性
 従来の議論との関係
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 完全賠償主義と制限賠償主義(416条)。不法行
為では制限賠償主義をとっていない。
 賠償範囲画定の法的判断基準としての加害者
の帰責性。
 賠償範囲画定の帰責基準--416条を不法行
為に適用しない、相当因果関係を基本概念とし
ない共通点。
709条における二つの「因リテ」 前者は不法行為
の成立に、後者は賠償範囲に関する因果関係。相
当因果関係説により定まる。
 問題点
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1.相当因果関係は、不法行為の成立要件とその
効果を区別して、後者のみに適用されているわけ
ではない。
2.死傷損害説からの批判。
3.不法行為成立要件と切り離すことはできないの
ではないか。

 富貴丸事件(大審院連合部大正15年5月22日判
決民集5巻386頁)
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損害賠償法に通じる原則としての相当因果関係説。
しかし不法行為と債務不履行とは沿革的には異質
な考えに基づいている。
通常生ずべき損害(通常損害)の賠償を原則として、
特別の事情による損害(特別損害)は当事者に予
見可能性があれば賠償を請求できる。 これは制
限賠償の原則。
相当因果関係説の問題点
 実質的理由:債務不履行と不法行為を同じルー
ルに服させるのは妥当でない。
 理論的理由:賠償範囲は因果関係の問題でない
ことを明らかにするには、相当因果関係の概念
で説明しない方がよい。
三つの問題
 1.賠償範囲に帰責性を判断基準としたときの、
他の不法行為の責任原因(故意・過失)との関係
は?
 2.損害論 死傷損害説
 3.法文の趣旨・体裁との整合性
相当因果関係説=416条(類推)適用説
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賠償範囲を画定する基準
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義務射程説、危険性関連説
故意不法行為を区別する。
不法行為における原因の競合
 1.病的素因のような潜在的原因
 2.集中豪雨といった自然的原因
 3.加害者の行為と第三者の行為が競合する場
合(共同不法行為の問題もあり)
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過失相殺と割合的因果関係