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Ⅴ-7.歯科医学教育への禁煙
指導・禁煙支援の導入の先進
的な事例とエビデンスの文献
レビューによる検討:医育機
関勤務教員への期待
埴岡
1福岡歯科大学
1
隆
2
小島美樹
2大阪大学大学院歯学研究科
抄 録
次世代の歯科医師・歯科衛生士となる学生教育指針と評価基準
が明確になり、実践的臨床教育における禁煙介入の教育の内容・
方法・評価の導入と展開を図るための基本調査が必要である。
【目的】歯学教育モデル・コア・カリキュラム、歯科医師国家試験出題基準への記載に
より、歯科医師の禁煙指導・支援の能力を教育するカリキュラムの本格的な導入
の実施と普及が医育機関に迫られている。カリキュラム提案資料とするとともに全
国の教育担当者への質問調査項目の策定を行う。
【方法】キーワードによる文献検索を行い歯科禁煙診療教育について世界レベルで
検討した。
【結果】73編がレビューの対象となった。40編が2006年以降に報告され、北米からの
報告は50編を超えた。禁煙診療の教育実態・準備状況の調査、モデル化、評価・
再評価が行われた。教示的教育は学生の参加型臨床実習には反映されておらず、
学生、教員、カリキュラムの障壁が同定された。主要な障壁を克服する対応策実
施のための基金応募が行われ、基金が採択された大学でモデルとなる教育カリ
キュラムが実施されるとともに、新しい教育内容・方法による教育が展開され教育
効果が再評価された。北米での教育は欧州にも広がりを見せていた。
【結論】欧米の卒前教育は臨床実習での自験の水準になっており日本でも臨床教育
への導入推進が急務である。北米の優れた経験実績と日本の実態予測を踏まえ
た教員調査を行い、調査結果に基づいた教育への導入の推奨が必要である。
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歯科医師国家試験出題基準
歯科医師、歯科衛生士の養成教育と歯学・歯科衛生学教育が連
結し、厚労省・文科省の政策面での「禁煙指導・支援」に関する
「臨床教育」の導入と充実が図られる段階にすすんでいる。
○歯科医師国家試験制度改善検討部会報告書 平成24年4月
Ⅱ 歯科医師国家試験問題について (2)出題基準 <社会的課
題への対応>時代の要請に応え得る歯科医師を確保できるよ
う、下記の出題について更なる充実を図り、資質向上を促進し
ていく必要がある。・歯科領域から推進する、口腔と全身疾患と
の関係に関する出題(禁煙指導と支援、食育と食の支援等)
○平成26年歯科医師国家試験出題基準 改訂案
①必修の基本的事項
3予防と健康管理・増進 I保健指導 b喫煙、禁煙指導、飲酒
8医療面接 C病歴聴取 e患者背景(喫煙歴)
②歯科医学総論Ⅱ 健康管理・増進と予防 D禁煙指導・支援
④歯科医学各論Ⅰ
歯科疾患の予防・管理 6保健指導 (新)禁煙指導支援
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歯学教育内容ガイドライン
○歯学教育モデル・コア・カリキュラム―教育内容ガイドライン―
平成22 年度改訂版
平成22年度版・歯学教育モデル・コア・カリキュラム改訂概要
(2)優れた歯科医師を養成する体系的な歯学教育の実施
疾病構造の変化への対応の観点から、
E(旧F)[臨床教育]に歯科における禁煙指導・支援による歯周
病、口腔がんなどの予防、ライフステージに応じた食育等を新
設した。
E 臨床歯学教育
E-1 診療の基本 E -1-6) 口腔保健
一般目標:口腔疾患を予防し、口腔保健を向上させるために必
要となる基本的な知識、技能および態度を身につける。
到達目標:E -1-6)-(2) 歯科保健指導
⑥禁煙指導・支援による歯周疾患、口腔がん等の予防を実施
できる。
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歯科衛生士教育(歯科衛生学教育)
歯科衛生士の教育も、歯科医師の教育に遅れて、教育制度の中
に包含された。したがって、歯科医師・歯科衛生士の職種間の連
携も、教育の中ですすめていく必要がある。
○平成23年版歯科衛生士国家試験出題基準改定版
八 歯科保健指導論 Ⅳ生活指導
1 基礎知識 A生活習慣の把握 a喫煙習慣
4 生活習慣 A禁煙支援
○歯科衛生学教育コア・カリキュラム―教育内容ガイドライン―
(2012年3月27日)
専門分野 D.歯科保健指導論(*実習が望ましい項目)
4.生活指導
一般目標:ライフステージと機能障害に応じた生活指導に必要
な知識、技術および態度を修得する。
到達目標:4)生活習慣
*① 禁煙指導と支援ができる。
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「歯科禁煙診療全体」文献レビューの概要
・1969-2012年タバコ介入歯科診療に関連のある文献754編抽出
・レビュー対象は総数366編のうち、卒前教育の文献は73編
・北米が最も多く、次いで、欧州、発展途上国にも拡大
・卒前教育論文は北米が大多数、欧州と西太平洋地域
歯科タバコ介入診療に関連する文献数の世界分布(WHOの6地域別)
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この10年間の歯学教育の流れ(北米中心)の概観
北米では1980年代から教育への導入が始まり、2000年以後は臨
床教育への展開が図られている。北米以外(一部除く)では、学生
の態度・準備状況の調査が始まったところである。
歯科禁煙診療推進の中での課題
世界健康機関・歯科機関が禁煙診療を推奨している診療活動は低い
活動の障壁調査トレーニング不足が診療活動が低い障壁となっている
歯科医学教育での効果的な禁煙診療能力の育成が急務である
歯科医学教育における実態と課題
禁煙診療教育実態・準備状況の調査/(再)評価
実態ある程度の教育が行われているが診療には反映されていない
準備状況学生・教員・カリキュラムに関する主要な障壁が同定された
障壁への様々な対応の提案各大学での企画・導入・実施
新しい内容・新しい方略による教育展開およびその効果の再評価
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卒前教育(1)
教育の展望が描かれ教育内容・方法、教育評価方法などの事例
報告とフィードバックにより教育開発が進行し、先進的導入事例報
告や教育効果のフィードバック、障壁や促進要因分析が行われた。
教育の展望
・タバコ介入教育は予防意識改革課題の中で最重要課題に位置づけられた。
・教示的な授業に加え、実践的な臨床介入が教育カリキュラムに導入された。
・次世代の歯科専門家は、喫煙の評価と治療能力を備えて卒業すべきである。
・歯学教育カリキュラムの嗜癖への介入に分類されていた。
・米国の健康政策Healthy People 2020の目標達成への貢献の意義が強調された。
・臨床実習導入で健康保険購入者が増加し、報酬として還元される意義が示唆された。
・米国歯学教育学会は全米54大学に禁煙診療の実態・障壁に係る基本調査を実施した。
教育開発
・高い教育意識の下でカリキュラム改編が行われたが教育環境への反映は容易ではなかった。
・1989年以後の追跡調査で、タバコ介入診療教育への教員、学生の意識の向上がみられた。
・2001年には歯学教育学会のタバコ介入教育の方針が明確に打ち出された。
・口腔病理の科学的根拠、NCI介入プログラム、事例と教育効果報告により全大学に展開した。
・2011年には北米の歯学教育ではタバコ使用介入は一般化していた。
・世界の歯学生の禁煙カウンセリング意識は高かったが正式な教育経験は少なかった。
・日本では公衆衛生教育と学生の禁煙の必要性が高かった。
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卒前教育(2)
教育内容
・ 5Aモデル、ステージ別アプローチと動機づけ面接技法が導入され教育効果が示された。
・歯周病患者に特異的な動機づけ面接技法の効果が示された。
・歯周病治療にとどまらず健康増進の観点からすべての歯科患者を対象にする姿勢が強調された。
・歯科衛生士学校教育担当者は10分以上の中程度レベルの介入能力を求めていた。
・教育担当者の要求と実際のカリキュラム目標との間にギャップが存在していた。
・禁煙困難者向け禁煙外来での臨床教育、地域での防煙教育・口腔癌スクリーニングが行われた。
教育方法
・小グループ学習でタバコ介入診療の準備性が高まった。
・動機付け面接の教育に動画を含んだCD-ROM媒体が用いられた。
・SPを用いたオスキー形式のトレーニングを受けた学生は良好な体験報告をした。
・メンターによるカウンセリング教育の追加でカウンセリング技術と自信の向上が示された。
・学生クリニックでの診療フォローのための機能的介入診療プログラムが導入された。
・動機付け面接実施状況の把握と評価にペーパーアサインメント法が役立った。
・学生によるタバコ介入診療を受けた患者の評価は良好だった。
・オンラインモジュールやICTを活用したネットワーク利用による教育情報の共有が報告された。
障壁と促進要因
・新入生には歯科の役割意識が低い者がいる。包括的な禁煙カウンセリング教育が望ましい。
・介入効果への学生の信頼意識が低く、患者抵抗への対応等知識技術の自信が不足している。
・メキシコ歯科大学長の口腔がんスクリーニングとカウンセリング教育の意識を高める必要がある。
・動機付け面接の歯科衛生士教育導入には教員の企図意識を高めることが重要である。
・歯科衛生士教育より遅れている歯学生教育のギャップを埋めることも臨床介入教育の課題である。
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