なぜ、 カリキュラム・ マネジメントが 必要なのか

特集 1
合田 哲雄
天笠 茂
カリキュラム・マネジメント
とは何か?
き な ポ イ ン ト と な り ま し た。 こ の よ う な な
か、天笠先生などにご提起いただいたのがC
Mという考え方だったのです。
ト」(以下C M)という言葉が 登場し、注目
天笠 昨年 月に中央教育審議会になされた
①
※
諮 問 の な か で、「 カ リ キ ュ ラ ム・ マ ネ ジ メ ン
が、 た だ 先 生 を 増 や す だ け で は な く、 効 果
職員定数の改善の重要性が指摘されています
Mという言葉が登場します。もちろんまず教
●2008年中教審答申で登場
されています。
るPDCAサイクルの確立が必要で、そのた
2008年の答申では、教師が子供と向き
あう時間の確保などの条件整備の文脈で、C
そもそもこの言葉が文部科学省の文書に登
場したのは、2008年の中央教育審議会答
めのCMという位置づけです。
合田 昨年 月の諮問も、この観点からCM
に着目しています。現行学習指導要領の内容
的・効率的な指導のために、教育課程におけ
申が最初だったと認識しています。そのねら
●改訂学習指導要領とCMの関係
合 田 前 回 の 改 訂 に お い て は、「 ゆ と り 」 か
「詰め込み」か、という二元論をどう乗り越
や言語活動の重視といった考え方は各学校に
※②
いは何だったのでしょうか。
えるかが最大のテーマでした。
育活動に取り組んでいただいています。
回復したことはもちろんですが、同時に、各
う 転 換 す る か が 問 わ れ て い ま す。 ア ク テ ィ
次の改訂では、このような各学校の取り組
みや成果を前提に、教え方や学び方の質をど
おいてしっかり受け止められていて熱心に教
教科等で「言語活動」に取り組み、発達の段
ブ・ラーニング(以下AL)は「能動的な学
などを中学校に戻し、教科の内容の体系性を
階に応じて思考力等を一歩一歩着実に育成す
習」と言われますが、アクティブであればよ
学習指導要領に位置づけられるALの基本
的な考え方や理念を踏まえ、全国の学校にお
るためのALです。
い、ということではありません。深く思考す
る体系をつくっていく方向性が打ち出されま
した。
そのため、各教科等の内容項目と、言語活
動を通じ て資質・能力を育むこ ととの間を、
これまで以上に意識的に関連づけることが大
教職研修 2015.6 18
※①「初等中等教育における教育課程の基準等の在り方について(諮問)」
11
そ の 結 果、 高 校 の 指 導 内 容 に な っ て い た
「二次方程式の解の公式」や「遺伝の規則性」
11
文部科学省初等中等教育局
教育課程課長
なぜ、
カリキュラム・
マネジメントが
必要なのか
千葉大学教授
これからの
学校管理職に求められる
カリキュラム・マネジメント
対 談
これからの学校管理職に求められる
カリキュラム・マネジメント
特集 1
●カリキュラム・マネジメントの定義
っているという状況です。
領改訂にとってもきわめて重要な考え方にな
CMという文脈のなかで、CMが学習指導要
念を支える学習指導要領、その実践を支える
充実とともに、CMが不可欠です。ALの理
なるためには、教員養成や教員研修の改善・
思考するための教育実践が展開されるように
ける具体的な各教科等の指導のなかで、深く
法とするものです。
など経営資源との関連で捉える発想であり手
リキュラムをヒト・モノ・カネ・情報・時間
者の相互関係を全体的・総合的に把握し、カ
あり、手法としてCMを捉える立場です。両
三つ目は、とかく個々に捉えられがちな教
育内容と条件整備を、一体として扱う発想で
がCMに結びつき、理解することができます。
うことも、各教科を横断的に見るという発想
のCMということです。言語活動の充実とい
次代を担う子供たちに必要な資質・能力に
着目したうえ で、各教科等のあ り方を考え、
非常に重要です。
を超えて資質・能力をはぐくむという視点が
っては、とくに中学校・高校において教科等
く思考するためのALや学び方の改善に当た
そして、最後に、二つ目の意味が、今回の
改訂において非常に重要になっています。深
なってきたのだと思います。
CMを、教育行政も学校自身も考えるように
されていたのも事実です。三つ目の意味での
て い る 状 況 に あ り ま す。 そ れ ら を 整 理 す る
のか、どう具体化していくのかを自覚的に捉
今後学校現場で取り組まれていく際には、
この三つの側面のどこに強調点を置いている
習指導要領を資質・能力の体系に転換すると
め、今回の改訂では、知識の体系であった学
つ な げ て い く こ と が 問 わ れ て い る。 そ の た
天笠 まずはCMについて整理したいと思い
ます。今は、論者がそれぞれの立場から使っ
と、CMは次の三つに捉えられます。
えていく必要があるのではないでしょうか。
いう観点が重要になりますが、この質的転換
まず一つ目は、PDCAサイクルを回すと
いうことです。2008年中教審答申にも、
合田 おっしゃるとおりですね。
き に、 こ の 教 科 と あ の 教 科 の 基 本 を 学 習 し
な学習の時間をどう組み立てるのかというと
二つ目は、教育内容を相互に関連づけ、横
断するという意味合いです。たとえば総合的
くことが、CMだということです。
育課程を計画・実施・評価して、と回してい
実現するために、教育課程を編成し、その教
し上げることができようかと思います。
一つ目の意味でのCMが意識され始めたと申
事だと指 摘され、天笠先生の整 理で言うと、
効果的に実施していくかが問われるようにな
サイクルをどう回し、カリキュラムをいかに
前回改訂の際は、学校評価のガイドライン
が改訂されるなど教育活動におけるPDCA
こういうものだ」と定義し、具体的な実践例
の三点セットのなかで、解説書に「CMとは
天笠 CMをどう示すかについて、従来どお
りであれば、学習指導要領・指導書・解説書
●学習指導要領にCMはどう位置づけられる
なっていると思います。
しかし、今回の学習指導要領改訂のための
審議においては、学習指導要領のあり方その
を示すということになるでしょう。
のか
にとってCMの役割がこれまで以上に大きく
て、その先に課題意識を発展させ展開してい
同時に、いわゆる「ゆとり教育」批判のな
かで、文部科学省や教育委員会も含めた教育
この意味で登場しています。学校教育目標を
くとか、教科横断的な取り組みを考えるとい
行政のPDCAサイクルの必要性が強く指摘
っていました。このような観点からCMが大
う場合の、教育課程全体を捉えるに当たって
※②「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導
要領等の改善について」
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