猟奇的な彼女 井元 小塩 岩瀬 田上 育 美穂 佳子 加奈子 ストーリー <前半戦①> 大学生のキョヌ(チャ・テヒョン)が、“彼女”(チョン・ジヒョン)との運 命的な出会いを果たしたのは、夜の駅のホームだった。見た目は キョヌの好みだったが、彼女は酔っ払っていた。彼は酒に酔った女 は大嫌い。しかし、電車の中で倒れた彼女を放っておけず、しぶし ぶ、自腹でホテルに運ぶが、そこに警官がやってきて、人助けをし たはずのキヨヌは留置所に入れられる。 昨夜の記憶がなく、怒った彼女は、キョヌを電話で呼び出し、ホテ ルに行くまでのいきさつを問いつめる。しらふの彼女は、キュートな 外見とは裏腹に態度はとてもワイルドで、キョヌにコーヒー以外は飲 ませない。そして、酒が入ると、「私、きのう、好きな人と別れたの」と 言って泣き出し、再び気を失ってしまう。キョヌは、また、ホテルに彼 女を連れて行くが、子供のような寝顔の彼女にひかれ始め、その心 の傷をいやそうと決意する。 前半戦② そして、彼女とつきあい始めたものの、もちろん、普通の相 手ではなかった。キョヌの大学にやってきて、お腹の子供の 父親がキョヌだと嘘をついて教室の外に連れだしたり、川の 深さを確かめるため、カナヅチの彼を水の中に突き落とした りと振り回される。 ある日、「私の誕生日を忘れたら、殺す!」という脅迫めい たメールがキョヌのもとに届いた。そんな彼女を夜の遊園地 に連れ出し、誕生日を祝おうと考えたキヨヌだったが、そこに はあいにく、失意にくれる脱走兵がいて、キョヌと彼女は人質 になってしまう。しかし、勇気ある彼女の説得で、脱走兵は改 心する。タフな彼女は、勇気にあふれ、とても頼りがいがある のだ。 <後半戦> 彼女の猟奇的な態度は、さらにエスカレートしていく。電車の中で キョヌの頬を思いつきり殴ってみたり、ハイヒールが足に合わず、そ れをキョヌにはかせて走らせ、自分は彼のスニーカーでゆうゆうと歩 いたり。キョヌと出会って100日目には、1輪の赤いバラを彼女がピ アノを弾いている大学のホールまで届けさせた。 そんな彼女が両親からの強制でお見合いをした夜、キョヌは急に 現場に呼び出される。複雑な想いを隠し、彼は猟奇的な彼女とつき あう心得をお見合いの相手に伝える。そんなキョヌの温かさに心動 かされる彼女。彼を追って駅まで走り、場内アナウンスでキョヌを呼 び寄せる。現れたキョヌと抱き合ったのもつかの間、彼女のきつい パンチが再びキョヌの頬に飛んできた。そして、ふたりはある約束を かわした。お互いにあてた手紙をタイムカプセルに入れて、丘の木 の下に埋め、2年後に会おう…。 <延長戦> • キョヌにとって、それは辛く、長い日々に思えた。 猟奇的な彼女との楽しくも、どこかホロ苦い思い 出。それをインターネットで発表したら、映画会 社から映画化の話が舞い込んだ。かつての彼女 の夢を自分が実現したのだ。しかし、今は彼女 に知らせることはできない。ラケットボールや剣 道の腕前を磨きながら、再会の日を待つキョヌ だった。しかし2年後、キョヌは本当の意味で彼 女の秘密を知ることになる。 <登場人物紹介> ヒロイン(彼女) • 名門女子大に通う超美人 女子大生。 • 「ぶっ殺す」が口癖で、わが ままで凶暴。 • その反面、老人に席を譲ら ない若者を一喝したり、ポ イ捨てする青年を怒ったり、 正義感溢れる一面も。自分 勝手なように見えても、実 は人を配慮する心がある人 物 • 実はある切ない秘密を抱え ている。 キョヌ(彼氏) • 女の子を望んでいた両親 にまるで娘のように育てら れた気立てのいい青年。 • 徴兵制度が終わり、大学に 戻ってきたがあまり勉強を している様子はない。 • ある日、駅でベロベロに 酔っ払った女性を助ける。 • それが"猟奇的な彼女"との 衝撃的な出会いとなる。 原作者について • 99年8月、パソコン通信「ナウヌリ」のユーモア欄に掲載されたある男の恋愛話。 • 1975年生まれの大学生キム・ホシク氏が、「キョヌ74」のID名で、その年の5月 に地下鉄で出会ったタフな女性とのエピソードを書いた話。 • 当初は3編で終わる予定だったものが、ファンメールが殺到し、果てはキム氏の ファンクラブが結成されるほど好評に。 • 2000年1月には本として出版され、10万部以上を売り上げるベストセラーに。 • 2001年には映画化へと至り、全国で500万人近い人々が見る特大ヒットになっ た。 原作は映画と違ってハッピーエンドではなく、キム氏は、2001年10月に「彼女」 とは別の女性と結婚した。 • 実話が元になっているだけに、キム氏はこの猟奇的な「彼女」の写真を公開して 欲しいと迫られることが多かったと言うが、それは絶対に明かさない約束だからと 最後まで「彼女」の存在が公になることは無かった。キム・ホシク氏はその後大学 を卒業。インターネット関連会社に勤め、個人のホームページを開き作家志望の 人々の投稿文を載せている。 インターネット小説について 韓国ではインターネット環境が充実している。その利用者は 主に10代20代の若者たちと言うこともあって、若者文化は、 ネチズン(network citizen(ネットワーク市民)を短縮した造語) 間で人気を博して話題になり、メジャーになっていくというパ ターンが少なくない。この「猟奇的な彼女」もその代表格だ。 ・ 日本では「携帯小説」が、韓国では「インターネット小説」が女 子高生の話題 になり、ともに出版、映画化されたというのは 注目に値する。 今韓国は「ネットで連載→本として出版→映画化」という流れ は1つの成功方程式「ビジネスモデル」として確立されつつあ ります。 ブームになった“猟奇” “猟奇”の意味・・・「他とはちょっと変わってイケてる」「とんがっ た面白さ」 2000年夏、ネット上のコミック・サイトで「猟奇ウサギ」(マシマ ロ)が登場した。また2000年末にデビューした男性ソロ歌手の 「PSY(サイ)」も挑発的な歌詞にダンス、エキセントリックな舞 台マナーで猟奇歌手と呼ばれるようになった。(「マシマロ」は、 一見垂れ目でかわいい顔をしていながら、性格は皮肉屋で、 突拍子も無い行動を起こす、ひねくれウサギである。) “猟奇” はその年、MBCテレビの流行語大賞になり、また韓国のイン ターネット上で、2000年検索キーワードで最も多かった。 続き・・・ インターネット小説を書いている作家は10代の女 性が大半で、文体は会話体でしかも(^^;)のような フェイスマーク(韓国ではイモティコン と呼ぶ)や ネット用語(チャット語)が多用される傾向がある。 内容の大部分は軽くて感覚的であり、“平凡な女 子高生と不良!?男子学生(行動パターンも性格も 非現実的だったり)のドタバタ恋愛物語(ラブコメ)” という パターンがほとんどという声もあり、既存の 旧世代?からは「文学的価値なし」 「韓国語の破 壊」と酷評されるなど評判は良くないです。 役者紹介 チョン・ジヒョン 期待の新人女優チョン・ジ ヒョンがヒロインに扮して、 圧倒的な魅力を見せ、この 作品で韓国のアカデミー賞 といわれる大鐘賞の主演 女優賞と人気賞をWで獲得。 主な出演作品・・・「イル マーレ」「僕の彼女を紹介し ます」 チャ・テヒョン ドラマやバラエティに出演。 可愛らしさが茶の間で大ウ ケし、超売れっ子のタレント に。ヒット曲"I Love you" など歌手活動も活発で、'99 年には百想芸術大賞新人 賞、MBC/SBS新人演技 賞を受賞。映画は、「ハレ ルヤ」に出演後、「猟奇的な 彼女」で満を持しての主演 デビューとなり、記録的な 大ヒットを飾った。第39回 大鐘賞では、人気賞を受賞。 感想 ・ 勢いがあって、正義感に溢れた「彼女」が、堂々としてい て、素敵だと思いました。また、インターネットからのヒッ ト小説という点がネット社会の韓国らしく、男の子が気弱 になり、女の子がどんどん強くなっている社会情勢を反 映しているような現代的な若々しい作品だと思いました。 ・ この映画は、人間社会から考え方、表現の世界にまで、 何かにつけ保守的で規制の多かった韓国社会において 「猟奇」ブームは今までの古い殻を破り、自由表現という 新しい文化が胎動し始めるきっかけを与えた作品だと思 いました。 ・ これまで見た韓国映画とはまったく違う新鮮な印象を受 けた。強い現代女性と男らしくなくひ弱で優しさだけが取 り柄のキョヌのような対照的な二人のコントのようなラブ ストーリーは笑いあり涙ありで飽きることがなかった。そ れまでの韓国映画は女性が男性より一歩下がったもの が多いように思うが、現代の若者の姿をリアルに描いた この作品で韓国も確実に女性が強くなっていることがわ かる。100日記念日にバラを贈ったり軍隊に関すること や、家族が子供の恋愛にかかわってくるなど、韓国独自 のスタイルがまだ健在している点がよかった。 強烈キャラの彼女とひ弱で優しいキョヌとの間に 起こるエピソードは有り得ないようで、どこか共 感することができた。小説の状況描写はおもしろ く、リアルで、現代の韓国社会、新しい若者の生 活などがよくわかった。
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