固体電子物性特論 第3回 石橋隆幸 今日の内容 • フォノン(残り) • エネルギーバンド – バンドの形成 – 金属のバンド – 半導体のバンド 演習問題のヒント s番目の原子について運動方程式を立てる。 us-1 us us+1 C s-1 s x s+1 a (us-1-us)だけ縮んだ 右方向へ C(us-1-us) の力 (us+1-us)だけ伸びた 右方向へ C(us+1-us) の力 d 2 us M 2 Cus1 us C us1 us dt 解を us uq 0 expit qx と仮定し代入 固有振動数 q 2 波数 格子振動とフォノン 演習問題の答え 12 2C / M sinqa 2 格子振動とフォノン 演習問題の答え 12 2C / M sinqa 2 波が伝わる速度(群速度)は d 12 vg dq C / M a cos qa 2 vg C / M a 12 逆格子ベクトルの半分の 周期で繰り返す 第一ブリルアンゾーン qが小さい時 波は音波として伝わる a* vg 0 qが の時 a 2 波は定在波となる 2種類の原子がある場合 C1/ M1 1/ M 2 1/ M1 1/ M 2 4 sin qa 2 M1 M 2 2 光学分枝 音響分枝 2 12 音響分枝と光学分枝 光学的モード 音響的モード 3次元の場合 基本格子にN個の原子を含む場合、 分枝の数は3N本 音響分枝 3本 縦波音響分枝LA 1本 横波音響分枝TA 2本 光学分枝 3(N−1)本 縦波光学分枝LO N-1本 横波光学分枝TO 2N-2本 TA transverse acoustic LA longitudinal acoustic TO transverse optical フォノン 格子振動のエネルギーは量子化されている 光子(フォトン)と類似 E n n 1 2 N 1 exp 1 kT E0 1 2 波である 粒子である(ボーズ粒子) n個のフォノンが励起さ れたときのエネルギー 温度T、振動数における フォノンの平均粒子数 零点振動によるエネルギー 不確定性原理による 格子比熱 U Cv T 定積比熱 9Nk(T / D ) 3 xD 0 dx x e /(e 1) 4 x x D D /k D デバイ温度 D デバイ振動数 格子振動の振動数の上限 例えば、結合が強く原子が軽いとデバイ温度は高くなる ー>比熱は小さくなる 2 エネルギーバンド • 固体の電子エネルギー構造 – 孤立した電子とは異なるエネルギー構造をとる – 計算で求めるのは非常に大変 – 通常は近似法が用いられる • 代表的な近似法 – ハイトラー・ロンドンの近似 孤立電子からの近似 – ハートリー・フォックの近似 自由電子からの近似 K L M N 1s 2s 2p 3s 3p 19 K 2 2 6 2 6 1 2S 1/2 20 Ca 2 2 6 2 6 2 1S 0 21 Sc 2 2 6 2 6 1 2 2D 3/2 22 Ti 2 2 6 2 6 2 2 3F 23 V 2 2 6 2 6 3 2 24 Cr 2 2 6 2 6 5 1 7S 3 25 Mn 2 2 6 2 6 5 2 6S 5/2 26 Fe 2 2 6 2 6 6 2 5D 4 27 Co 2 2 6 2 6 7 2 28 Ni 2 2 6 2 6 8 2 3F 29 Cu 2 2 6 2 6 10 1 2S 1/2 30 Zn 2 2 6 2 6 10 2 1S 0 3d 最深項 4s 4F 4F 2 3/2 9/2 4 エネルギーバンド (孤立した電子からの近似) Siの場合 原子が孤立していると 3s軌道 3p軌道 3sまでは全部 詰まっている 電子2個 電子2個 Siの電子配置 1s22s22p63s23p2 スピンを考えると3p軌道には 6個まで入るがSiは2個入っている パウリの排他律 同じエネルギー状態(軌道)には 上向きスピンと下向きスピンの電子が 一つずつしか入れない エネルギーバンド (孤立した電子からの近似) Siの場合 原子同士が近づいてくると 軌道同士も重なり合ってくる パウリの排他律 軌道の広がり のために縮退した多くの準位ができる それらは連続したバンドと見なせる エネルギーバンド エネルギーバンド (孤立した電子からの近似) Si結晶の場合(格子定数5.4Å) 3s, 3p軌道は、 電子が満たされている価電子帯と 空の伝導帯に分かれる 結晶中の電子は伝導帯と価電子 帯の間のエネルギーを取ること ができない。この領域を 禁制帯(バンドギャップ) エネルギーバンド (自由電子からの近似) 固体(周期ポテンシャル)中の 電子どのような変化を受ける か考える。 (k) 自由電子のエネルギー分散 (k) 2 2m k2 k 運動量(k)空間での表示 (逆格子のところで出てきた) エネルギーバンド (自由電子からの近似) 自由電子のシュレーディンガー方程式 2 2m 2 運動エネルギー 波動関数 固有エネルギー 周期ポテンシャル中では? 2 2m 2 V ポテンシャル 周期ポテンシャル中の波動関数 (ブロッホの定理) シュレーディンガー方程式 周期 ポテンシャル 原子配列 uk (k)e ik r 2 2m 2 V 電子の波動関数は 自由電子の波動関数 e ikr に周期性を取り込んだ uk (k)e ikr e ik r 周期関数 ブロッホ関数 となる ブロッホの定理 ブロッホ関数 uk (k)e ikr n=1, 2, 3, …. N a 1次元の場合を考えてみる 周期ポテンシャル V(x) V(x na) 波動関数 (x Na) (x) (周期的境界条件を考慮) 演習 波動関数を (x a) C (x) とすると (x) はどのような関数になるか ただし、巡回的境界条件が成り立つとする。 波動方程式が解析的に解ける例 クローニッヒペニーのモデル 井戸型ポテンシャル 周期ポテンシャル中の電子 2 2m 2 V を解くと右図のような 結果が得られる。 電子がとることの できないエネルギー 自由電子 キッテル、固体物理より 禁制帯(バンドギャップ) エネルギーバンド 電子輸送現象とその応用 固体内電子の基礎物性 金属、半導体、絶縁体 導電率 (conductivity) 抵抗率 (resistivity) 1 cm1 cm 1 エネルギーバンドの構造 金属の場合 電子が取 りうる準位 がある 準位がない 許容帯 禁制帯 許容帯 E 電子が つまっている エネルギーバンドの構造 半導体、絶縁体の場合 E 許容帯 電子がない 禁制帯 許容帯 電子がつまっ ている 禁制帯の幅の大きさに よって分類 例 Si : 1.1 eV ダイヤモンド : 5.6 eV 半導体と絶縁体 おおよそ3 eVが目安 電子分布 どのように電子が分布するか 分布関数 電子が占める確率 状態密度関数 単位体積当たりの電子密度 分布関数と状態密度関数を掛け合わせたものが 電子分布を表す。 フェルミディラック分布関数 1 f () f 1 exp kB T f フェルミエネルギー f のとき 1 f () 2 状態密度関数 統計量子力学より とdの間にある状態密度は 32 V 2m 12 g()d 2 2 d 2 g() 状態密度関数 金属の場合 N 0 g() f ()d V 2m f 0 2 2 3 32 n N V 5 1022 cm3 とすると f 0 4.9 eV 58000Kの温度に相当 自由に動き回れる電子の もつエネルギーは フェルミエネルギー 半導体の場合 下側の許容帯は電子 が詰まっている 電子・正孔対 正孔ができる フェルミレベルは 禁制帯の中 正孔、電子ともに動き回る ことができる。 ただし有効質量が異なる 真性半導体の電子分布 電子 * 3 2 V 2me 12 ge 2 2 c 2 f f () exp ボルツマン分布 kB T 正孔 * 3 2 V 2mh 12 gh 2 2 v 2 f * * 1 f () exp m , m は電子、正孔の有効質量 e h kB T 伝導帯の電子密度 * 3 2 f V 2me 12 n 2 2 c exp d c 2 kB T c f n N c exp k B T m * k T N c 2 e B2 2 32 伝導帯の電子に対する 実行状態密度 価電子帯のホール密度 * 3 2 f v V 2mh 12 p 2 2 v exp d 2 k B T v f p N v exp k B T m * k T N v 2 h B2 2 32 価電子帯のホールに対する 実行状態密度 真性キャリア密度 真性半導体ではn=pなので p n ni N c N v 12 g exp 2kB T 真性キャリア密度は 電子、正孔の有効質 量、温度、バンド ギャップで決まる 真性キャリア密度 半導体 禁制帯幅 電子の有効質量 正孔の有効質量 Si 1.11 0.32 0.64 Ge 0.67 0.22 0.29 GaAs 1.43 0.067 0.48 GaP 2.26 0.37 0.60 真性フェルミ準位 f i c v 2 kB T N v ln 2 N c me mh のとき N N なので v c フェルミ準位はバンドギャップの中央
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