材料系物理工学031117 第6回 磁気付随現象

材料系物理工学031208
第9回 超伝導エレクトロニクス
佐藤勝昭
第8回の復習超伝導の歴史
Hgの電気抵抗の温度変化
• カマリンオネスは当時最も純
粋であったHgが極低温でどの
ような残留抵抗値を示すかを
調べていた。
• その過程で、4K付近で、0.1
程度の値から一挙に10-6以
下の測定できなくなることを発
見、超伝導と名付けた。
• その後、多くの金属・合金・化
合物にも発見された。
Tc:臨界温度(critical temperatute)
第8回の復習
完全導体と超伝導体のちがい
• (第1種)超伝導体を、無
• 完全導体だとすると、無
磁界中で冷却して磁界を
磁界中で冷却し後から磁
かけると磁束が排除され、
界を加えたときも、磁界中
始めに磁界を加えておい
で冷却したときも、同じよ
て冷却したときは磁束に
うに超伝導体から磁束は
変化はなく、磁界を取り去
排除される。経過した過
程によらない。
ると内部の磁束が保持さ
れる。
H=H0
H→0
H=0
H=0 冷却
H=H0
H→0
冷却
第8回の復習超伝導の歴史
BCS理論
• 1957年Bardeen, Cooper, Schriefferは、後にBCS理論と呼ば
れる理論を発表した。
• そのポイントは、次の通りである。電子は単独ではフェルミ粒子
なので1つの状態に上向きスピンと下向きスピンの2つの電子
しか収容できないが、互いに逆向きのスピンと運動量をもつ2
つの電子が電子対(クーパー対)を作ってボース粒子となると、
すべての粒子がエネルギーの最も低い状態が実現する(これ
をボース凝縮という)。
• クーパー対の広がりの程度がコヒーレンス長で、常伝導体中の
電子間の平均距離に比べて100倍以上広がっている。これが
超伝導状態である。
第8回の復習超伝導の歴史
第2種超伝導と超伝導磁石
• 超伝導が発見されてから50年近く、超伝導電磁石を実用
化することができなかった。これは、磁束の侵入によって
超伝導が壊れてしまうためであった。この問題を解決し
たのが、第2種の超伝導体の発見であった。
• 第2種超伝導体内で磁束はボルテックスと呼ばれる量子
化された渦糸状態となって侵入する。
• 1961年のクンツラーによるNb3Sn
の発見により、超伝導電磁石実用
化の道が開かれた。
第8回の復習超伝導の歴史
第1種と第2種超伝導体の
M-H特性の比較
佐藤勝昭編著:応用物性(オーム社)
第8回の復習超伝導の歴史
第1種・第2種超伝導体
佐藤勝昭編著:応用物性(オーム社)
第9回の課題:超伝導エレクトロニクス
(1)超伝導体と常伝導体のトンネル接合
• 超伝導状態(クーパー対 超伝導ギャップの存在は、SIN
がボース凝縮した状態)を 接合の実験から確認される。
常伝導状態(クーパー対
が分離した状態)にするに
は、ある大きさのエネル
ギー2を必要とする。こ
れが超伝導エネルギー
ギャップである。
第9回の課題:超伝導エレクトロニクス
(2)超伝導体と超伝導体のトンネル接合
• 図のように2つの超伝導体AとBで
非常に薄い絶縁体を挟んだ接合
(SIS接合)をジョセフソン接合という。
• トンネル電流は、両側の超伝導体
の間の相互作用の大きさと位相差
に依存するものとなり、印加電圧がゼロでも直流
電流Iが接合を通して流れる。これを直流ジョセ
フソン効果という。
• I=Ic sin; Icはジョセフソン臨界電流、は両超
伝導体の位相差である。
第9回の課題:超伝導エレクトロニクス
ジョセフソン接合の式
• I=Ic sin
• /x=(2ed/)0Hy =2Byd/0
ここに0=ch/2e=2.07x10-7Gcm2=2.07x10-15Wb
• /t=(2e/)V
• 第2式を積分するとジョセフソン最大電流の磁束
依存性が得られる。
• 第3式を積分すると交流ジョセフソン効果が得ら
れる。
第9回の課題:超伝導エレクトロニクス
ジョセフソン接合と直流特性
• ジョセフソン接合に電圧を印加
すると、両端の電圧が出ないま
まI=Icだけ電流が流れる。さらに
電流を流そうとすると、両端に電
圧が生じる。この電圧Vcは2/e
で表される。ここに2は、超伝導
ギャップである。
• さらに電圧を増加すると、常伝導
状態として期待される電流・電圧
特性に漸近する。
• この状態から電圧を下げると、
Vcで突然電流は0となる。
• このようにI-V特性はヒステリシ
スを示す。
第9回の課題:超伝導エレクトロニクス
ジョセフソン電流の磁界効果
• /x=(2ed/)0Hy =2Byd/0を積分すると
(x)= (2Byd/0)x+0が得られる。ここに0は磁束
量子の大きさである。また、dは、2つの超伝導体
におけるロンドンの侵入長の和に絶縁層の厚み
を加えたものである。厚さdの領域にある磁束は
ByLd で表される。ここにLは接合の長さである。
• この(x)をJ(x)=Jc sin に代入し、xy面について積
分すると全電流Iが次のように求められる。
I=∬dxdy J(x)=Ic{sin(/0)//0}sin0
ジョセフソン臨界電流の磁束依存性
• ジョセフソン
臨界電流は
磁束の大きさ
に対して、右
図のような
Fraunhofer
型の回折パ
ターンを示す
立木昌他編:高温超伝導の科学より
第9回の課題:超伝導エレクトロニクス
交流ジョセフソン効果
• /t=(2e/)V
を積分すると、 =(2e/) Vt+ 0となる。これを
I=Ic sinに代入すると、
I=Ic sin {(2e/) Vt+ 0}となり、角周波数が
=2eV/ の高周波信号であることがわかる。
このことは、直流バイアスVの大きさを変えることに
よりジョセフソン交流電流の周波数を制御できる
ことを示している。