第1章 問われている教師の指導力

はじめに─問われている教師の指導力
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(1)今、何が変えられようとしているのか
・09.6.10民主党議員立法「教育職員の資質および能力の向上のための教育職員免許法
の改革に関する法律案」参院可決 (提案者鈴木寛現文科省副大臣他)
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免許状を「一般免許状」「専門免許状」とし、一般免許状取得条件として、修士の学位、
1年間の実習等
・民主党の政策マニュフェスト(09.7.27)
「教員の資質向上のため、教員免許制度を抜本的に見直す。教員の養成課程を6年制(修
士)とし、養成と研修の充実を図る」
・政権獲得後
「22年度から更新講習廃止」(新聞報道)→免許法改正まで現行通り実施
教員免許制度6年制→「4+2」「4+α」
免許取得者12万5千の4,5万へ削減
中教審審議経過報告「教職生活の全体を通じた教員の資質能力の総合的な向上策につ
いて」(H23.1.31)(資料参照)
・キーワード:教員の資質向上
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2015/9/28
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(2)背景(07.3.教育再生会議の提言)
・今日の学校教育(公立学校)は、学力低下や未履修問
題、いじめや不登校、校内暴力、学級崩壊、指導力不足
の教員、「事なかれ主義」とも言われる学校や教育委員
会の責任体制のあいまいさ、高等教育の国際競争力の低
迷など、「機能不全」に陥っている
・「全ての子供たちが学校で、特に公立学校できちんと
良い教育が受けられる」ようにすることが課題だ
・そのための緊急提言→「教育三法」改正
・「教育三法」とは?
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学校教育法・教育職員免許法・地方教育行政の組織と
運営に関する法律(地教行法)+教育公務員特例法
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(3)教育三法改正の趣旨
①学校教育法改正のポイント
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1.義務教育の年限の規定
2.義務教育の目標の規定
3.各学校段階の教育目標の修正(以上いずれも教育基本法
改正に伴うもの)
4.各学校は、学校運営の状況について評価を行うこと、そ
の情報を公開すること
5.大学の使命として「社会貢献」を加えたこと
6.小、中、高に副校長をおくことができるようにしたこと
など
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②地方教育行政の組織と運営に関する法律(地教行
法)改正のポイント
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1.教育委員会の法令違反や事務の管理及び執行の怠りによ
り、児童、生徒等の教育を受ける権利が侵害されていること
が明らかであると場合には、文部科学大臣は、是正要求を行
うことができるとしたこと

2.各教育委員会の法令違反や事務の管理及び執行の怠りに
より、児童、生徒等の生命又は身体の保護のため、緊急の必
要があり、他の措置によっては是正を図ることが困難なとき
は、文部科学大臣は教育委員会に対して指示を行うことがで
きることとしたこと
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③教育職員免許法および教育公務員特例法改正のポイント
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1.教員免許状に10年の有効期間をつけたこと
2.更新講習(30時間以上)の過程を終了したものは、有効期
間を更新できること
3.公立の小学校、中学校、高等学校、中等教育学校、特別支
援学校及び幼稚園(以下「小学校等」という。)の教諭、助教
諭及び講師(以下「教諭等」という。)の任命権者は、児童、
生徒又は幼児(以下「児童等」という。)に対する指導が不適
切であると認定した教諭等に対して、その能力、適性等に応じ
て、当該指導の改善を図るために必要な事項に関する研修(以
下「指導改善研修」という。)を実施しなければならないこと
としたこと。(教育公務員特例法)
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(4)指導が不適切な教員への対応
①経緯
・平成12年度に「指導力不足教員に関する人事管理」に関する調査
研究事業を、16府県・指定都市教育委員会に対し委嘱、(平成13
年度及び平成14年には、全ての都道府県・指定都市教育委員会へ委
嘱)
・以後、各都道府県・指定都市ごとに独自の制度化を導入
・今回の法改正において平成20年度から義務化
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②指導が不適切な教員の認定者数(資料参照)
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③条件付き採用について
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(5)「指導が不適切な教員」とは
平成20年2月8日「指導が不適切な教員に対する人事管理シス
テムガイドライン」作成(文科省)
「ここでいう「指導が不適切である」教諭等とは,知識,
技術,指導方法その他教員として求められる資質,能力
に課題があるため,日常的に児童等への指導を行わせる
ことが適当ではない教諭等のうち,研修によって指導の
改善が見込まれる者であって,直ちに後述する分限処分
等の対象とはならない者をいう」
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・具体例
 1. 教科に関する専門的知識、技術等が不足してい
るため、学習指導を適切に行うことができない場合
(教える内容に誤りが多かったり、児童等の質問に正
確に答え得ることができない等)
 2.指導方法が不適切であるため学習指導を適切に行
うことができない場合(ほとんど授業内容を板書する
だけで、児童等の質問を受け付けない等)
 3. 児童等の心を理解する能力や意欲に欠け、学級
経営や生徒指導を適切に行うことができない場合(児
童等の意見を全く聞かず、対話もしないなど、児童等
とのコミュニケーションをとろうとしない等)
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・その他各教育委員会が独自に示す判定基準
 使命感、自覚、向上心
 広く豊かな教養、教育に関する見識
 他の教職員との連携、協力
 父母、地域住民への対応
 事務処理能力
 人権尊重(人権感覚)
 責任感、使命感
 学校運営への理解、協力
 迅速、機敏な対応
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(6)教師に求められている資質
新たな時代に向けた教員養成の改善方策について (教育職員養
成審議会・第1次答申)(1997年7月)
1.いつの時代にも求められる資質能力
「学校教育の直接の担い手である教員の活動は、人間の心身の
発達にかかわるものであり、幼児・児童・生徒の人格形成に大
きな影響を及ぼすものである。このような専門職としての教員
の職責にかんがみ、教員については、教育者としての使命感、
人間の成長・発達についての深い理解、幼児・児童・生徒に対
する教育的愛情、教科等に関する専門的知識、広く豊かな教養、
そしてこれらを基盤とした実践的指導力が必要である」
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2.今後特に教員に求められる具体的資質能力
1)地球的視野に立って行動するための資質能力
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国際社会で必要とされる基本的資質能力
豊かな人間性
地球、国家、人間等に関する適切な理解
変化の時代を生きる社会人に求められる資質能力
教員の職務から必然的に求められる資質能力
2)変化の時代を生きる社会人に求められる資質能力
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人間関係に関わるもの
課題解決能力等に関わるもの
社会の変化に適応するための知識及び技能
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3.得意分野を持つ個性豊かな教員
 画一的な教員像を求めることは避け、生涯にわた
り資質能力の向上を図るという前提に立って、全
教員に共通に求められる基礎的・基本的な資質能
力を確保するとともに、さらに積極的に各人の得
意分野づくりや個性の伸長を図ることが大切
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4.教員の職務から必然的に求められる資質
能力
 教科指導、生徒指導等のための知識、技能及び態
度
 教職に対する愛着、誇り、一体感
 幼児・児童・生徒や教育の在り方に関する適切な
理解
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(7)子どもの目線─これまで教育を受けてき
たものとして、子どもの目線に立って、どの
ような力が求められていると思うか
1.生徒への対応(生徒との関わり方)
2.授業を組み立てる力(授業力)
3.教科外活動の指導力
4.教育への情熱
5.人間的魅力
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現在の自分を振り返って、自分の力量形成上
何が課題だと考えるか?
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